戯言ニュース

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律「そりゃあたしは、部長だからな」
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:54:12.82 ID:iSdzGiGo0
次の日。
学祭の2日前。
私は学校を休んだ。
滅多に学校を休まない私が調子が悪いというので、両親と弟は過剰に気づかってくれた。
その気遣いが、今は嬉しい。熱もなく、風邪をひいている訳でもないのだが、兎に角誰とも会いたくなかった。

そして、頭の中を整理したかった。
あの後、よたよたと保健室へ行き、3時間程寝てから家へ帰った。唯に会いにも行かなかった。
その時は、ただひたすら寝たかった。夢を見たくもなかった。何も考えず、頭を空にしたかった(結果として夢を見てしまうことにはなったが)。

一つの仮説を立てた。
私の夢は、あちらの世界の自分が見ている世界なのではないだろうか。
私が寝ている時に、断片的にあちらの世界の自分が見ている日常、
例えばどうでもいい会話とか、軽音部でドラム叩いてるとことか、唯と澪からかってるとことか、等々が夢として自分の脳裏に入り込む。

その仮説が正しいとすれば。
いや、そんな非現実的な仮説を認めたくはなかったが、やむを得ない。
最近の訳分からない事柄に説明をつけるには、非現実的な仮説で対応するしかないのだ。

律(……これって、私が狂ってきてるってことなのかな? 私には周囲の世界が狂って見えるっていうアレ……)

狂人にとっては、周囲の世界は狂って見えているらしい。
狂人は、自分が正しいと思い込もうとする。世界が狂っていると思い込む。

律(……だとしても)
だとしても、私は、自分が与えられている情報を信じるしかないのだ。





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律「そりゃあたしは、部長だからな」 前半
ブログパーツ 律「そりゃあたしは、部長だからな」
180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:59:13.26 ID:iSdzGiGo0
今の「同じ夢」を見始めたのは、つい3週間前くらいからだ。
最初は偶然かと思ったが、今まで途切れることなく、その夢を見続けている。

律(……その周辺にあったことはと言えば…)
律(………いや、特に何もないな。)
律(でも…その夢が微妙にこっちの世界にリンクしてるってことに気付き始めたのは…)
律(唯に会おう、って私が澪に提案して、実際に唯に会ってからだ…)
律(そこから、何だか自分にも歯止めが利かなくなって…)

知らなくても良いこと、というものは確実に存在する。
それを身をもって知らされた。

律「んで、こういう風にあたしは考えてるんだけどさ、唯」

唯「………」

律「ま、あほらしいって笑ってくれても良いぜ。自分でもあほらしいと思うし」

唯「…………」

律「でもあたしの仮説はさておき、あたしが経験してきたことは全て本当。
  もう一人の自分がそこに居たってのも本当。あ、そこにお前も居たぜ」

唯「………………」

律「すまん、誰かに話してないと、やってられなくてさ。こんな馬鹿らしいこと」

唯「………ねぇ、りっちゃん」



181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:04:41.13 ID:iSdzGiGo0
律「ん、何だ?」

唯「……なんで…なんで、紬ちゃんは居なかったんだろう?」

律「なんでって……そりゃ、琴吹さんは穴を通ってこっちの世界に来てたからだろ?」

唯「………ごめん。私が言いたいのは、………紬ちゃんは「どっちの世界の」紬ちゃんかってことは、わからないってことだよ」

そういえば。
世界が二つあるならば、人物も二人居るはずだ。
こっちの世界の琴吹さんと、あっちの世界の琴吹さん。

律「……まぁ、そりゃまだわからないわな」

唯「………」

律「でも、いきなり何でそんなことを言い出すんだ?」

唯「………」


律「………でも、それは問題じゃない気がするぞ。
  あたしが会った紬があっちの世界の紬だったとすれば、こっちの世界の紬とあたしはまだ知りあって居ない。
  あたしがあった紬がこっちの世界の紬だったとしたら、あっちの世界の紬は、多分まだ音楽室に来ていなかった
  そういうことじゃないのか?」

唯「……………これ見て」



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:12:37.42 ID:iSdzGiGo0
ドアの隙間から差し出される、A4用紙。
文字と写真が印刷されている。YAHOOとかgoogleとかで普通に見れる、ニュースサイトのレイアウト。
これを読めということだろうか。

律「なになに…………」


女子高生殺害 他殺の可能性高し

○月×日( )、桜ケ丘高校グラウンド脇にて、生徒である琴吹紬さん(17)が遺体で発見された。
死因は絞殺で、首にひものようなもので絞められた跡が見られた。
○○警察は、詳しい死因と犯人の行方を調査している。

その記事の横には、昨日目にした琴吹さんの写真。
妙に神妙な彼女の面持ちが、昨日の彼女の印象と一致する。
しかし。夢の中の彼女は、もっと柔らかい印象だった………。

律「ってえ? うそ、ちょ、何、何コレ? 何なの、ちょっと唯!」

唯「………………」



185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:13:29.73 ID:97T6Cusn0
まさか…



188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:17:50.39 ID:iSdzGiGo0
○月×日は、昨日。
死亡時刻は記事に書かれて居ないものの、少なくとも、私が会っていた時に、琴吹さんは死亡していたことになる。

律「………………もうやめてよ、こういうの」

唯「……りっちゃん、落ち着いて」

律「もう嫌だ。もう嫌なんだって。もうやめよう。もう普通の生活に戻してよ。気持ち悪いよ。もうやめてやめてやめて」

唯「りっちゃん!!」

律「!?」

唯の鋭い声で、我に帰る。

唯「……今は、落ち着こうよ。ね、りっちゃん。
  疲れてるのは分かるよ。りっちゃん今まで頑張ってきたもんね。
  けど、今はちょっと我慢して」

律「…………ごめん」

唯「……いや、正直あたしも、いっぱい話すの慣れてなくて、疲れるんだけどね。ははは」



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:19:48.70 ID:aWl2noDA0
まさかやつが…



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:20:13.03 ID:k47sgNG+0
犯人はだれなん



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:25:38.78 ID:iSdzGiGo0
唯「この記事と、りっちゃんの紬ちゃんに会ったっていう話は、一見矛盾してて変だけど……だけど、」

律「………」

唯「ふたつの世界が存在してる、っていう紬ちゃんの話が仮に正しければ、りっちゃんの話も紬ちゃんが死んでるっていうこの記事も、何の矛盾もなくなるよね」

律「……つまり、」

唯「『どっちかの世界の紬ちゃんは死んでるけど、どっちかの世界の紬ちゃんは生きてる』ってこと。意味わかる?」

律「………なるほど。って、全然現実感も何もないんだけど、取り敢えず理論の上では合ってる、気もする。
  あたしも澪も唯も中野さんも、あっちとこっちの世界に一人ずつ居るんだから、仮にこっちの世界で一人死んでも、あっちの世界から一人来れば……」

唯「そういうこと………………つかれちゃった」

律「あー、お疲れ唯。唯がいきなり話すから、多少びっくりしちゃったよ」

唯「…………りっちゃん」

律「なんだ、まだ何かわかるのか、探偵ゆい」

唯「……明日、音楽準備室に行こう」

律「……………え?」



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:33:09.49 ID:iSdzGiGo0
―――
――


律「大分イイ感じになってきた! この分だと学祭まで遊んでもいいくらいだぜ!」

澪「唯、お前追試勉強であんま練習できなかったのに、腕が全然落ちてないな」

唯「へへー、実は家で勉強しないで練習してたんだ」

梓「って先輩! 試験の方は大丈夫なんですか?」

唯「わかんない、けど何か、ギー太弾きたくてたまらなくなって」

律「……恐るべし天才肌、ギター中毒」

紬「私もスウェーデンまでピアノ持って行って、弾いてたよ、唯ちゃん」

律「……もう何も言うまい」

澪「でも何はともあれ、あとはさわ子先生の衣装が完成すれば……完成…しなければいいのに…」



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:34:57.58 ID:iSdzGiGo0
唯「へへー、衣装楽しみだねー」

律「てか、いよいよ明後日なのに、まだ完成してなくて大丈夫なのか?」

梓「あの人なら何とかするでしょう……だって、さわ子先生ですもの…」

唯「さわちゃんなら、きっと何とかしてくれるよ! だってさわちゃんだもん」

律「まぁさわちゃんだしな!」

澪「……………そうだな…」

律「ちょっと澪ちゃん! 暗くならんといて! さ、次いくぞ、ふわふわ時間やろうぜ!!」

唯・梓・紬「おー!!」

―――
――




201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:43:08.24 ID:iSdzGiGo0
律(あっちの世界も学祭が近いみたいだな……)

律(時間までリンクしてるのか? まぁ今まで注意払ってなかったからわからないけど)

律(私も学祭ライブやりたいな……)

律(てか、あっちの世界に移住したい……もうこんな訳わかんないのに構ってたくない…)

律(いや……でも、行かなくちゃな。あとちょっと、頑張りますか)


律「え、今日学校休み?」

澪「知らなかったのか律? ほら、隣のクラスの琴吹さん、殺されたって言うだろ。だから、今日は学校休みだ」

律「あたしは昨日学校休んだから……いや、でもメールの1通くれたっていいじゃない」

澪「ごめん、つい知ってると思ってさ」

律(昨日一緒に学校行ってないもん、私が学校休んでるの知ってるだろ、こいつ)

律「じゃ、帰るわ。まぁどっちにしてもラッキーだしな」

澪「なぁ律」

律「んだよ」

澪「この頃お前、やっぱりおかしいよ」




203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:51:09.72 ID:iSdzGiGo0
律「ん、何が?」

澪「夢の話した時辺りから、突飛なこと言いだしたり、何かいつもイラついてたり……怖い。
  目つきがさらに悪くなってるしさ。何か悩みあるなら、共有しようよ」

律「……どの口がそんなこと言ってんだ」

澪「!?」

律「………今まで全然親身でもなく、ただ一人で学校行きたくないから私をお伴にしてただけの癖に。
  全然私に構ってもくれないしさ。変わったのはお前の方だろ、中学の頃からさ。
  文芸部文芸部言ってさ。挙句の果てに、昨日はメールもくれないし。一体何考えてるんだ、お前?」

澪「…………ごめん」

律(……何か言い返せよ、やりづらいから…)

律「……帰るから」

澪「…………」
  

律「ゆいー! 来たぞ! お前学校行きたいんだろ!」

唯「…………りっちゃん…ちょっと待って」




204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:52:35.87 ID:iSdzGiGo0
ドアが音を立てて開く。
埃が舞う。形容の出来ない、思わず鼻をつまみ顔をしかめてしまう程の臭いが、鼻をつく。

そして、暗闇から、出てきたのは、紛れもなく、平沢唯だった。
白い肌はさらに白くなり、髪は腰のあたりまで伸びている。清潔感のかけらもない。
前髪が伸びているので、目を見ることはできない。けれど、その口元と輪郭から、私にはわかった。
ピンク色のパジャマの上下を着た、とても細身の少女。
彼女は、平沢唯だと。

唯「……お待たせ」

律「おぉ………久しぶり」

唯「………りっちゃんに会うの、初めてなんだけどね」

律「まぁ何と言うか……私もあんまし久しぶりって感じではないな」

唯「……いっつも夢で会ってるからね」

律「ですよねー!」

唯・律「はははは!!」

律「でも、流石にその格好じゃ、外に出ちゃいけないわ。
  ちょっと憂ちゃんにも頼んで、身づくろいしてから行こう」



206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:59:18.58 ID:iSdzGiGo0
憂ちゃんは、はしゃぎまわりながら唯の身だしなみを整えるのを手伝ってくれた。
一緒に風呂場に入って体洗ったり、自分の服の中からおしゃれな服をチョイスしてくれたり……
てか、学校行くんだから、服チョイスしてもらってもあんまし意味ないよ!

律「うっし、あとは学校行く途中に美容院に行けば、一丁上がりってところかな」

唯「……りっちゃん、実はまだあんま外に出る心の準備が、……そこまで出来てなかったりして」

そういえば、半年引きこもって口の聞いてなかったのに、ここ2週間でいきなり外に出るのは、
唯にとっても大変だろう。
それほどまでに唯を駆り立てるものって、一体何なんだろう?

美容室に行った後(夢の中の唯と全く同じ髪型になった)、私たちは学校へ向かった。
唯は、とてもゆっくりと歩いた。私はそれに歩調を合わせる。
一歩一歩踏みしめるように歩き、桜高に着いたのは、午後1時をちょっと過ぎたくらいの時間。

唯「……誰も居ないね」

律「…………そりゃ今日学校休みだからな」

唯「でも、パトカーが居るね」

律「……見つからないように入れってことか」



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:08:36.97 ID:iSdzGiGo0

しかし、案外忍び込むのは簡単だった。
琴吹さんの遺体はグラウンドで見つかったらしく、校舎の中まで警察は入ってきて居なかったのだ。
それは詰めが甘いとしか言えない、と私たちは彼らに詰め寄りたくなる気分になるのだが……。

私たちは今、音楽室の中の、音楽準備室に居る。
一昨日と、何も変わっていない。
私の吐瀉物までそこにあった……

唯「なんかゲロ臭いね」

律「だって、そこにゲロあるもん、しゃーないじゃん」

唯「まー、そうなんだけど」

唯は肩で息をしている。音楽室に至るまでの階段を昇るのが苦しかったらしい。
人が沢山居たら来れたかさえもわからない、と言う。

唯「……人自体が、怖いんだ。憂とりっちゃんとかは大丈夫なんだけど」

律「そういや、お前の不登校に至る経緯とか……聞いてなかったな…」

唯「……………ごめん、きいてほしくないんだ」

律「わかってるって! で、何でここに来たかったんだ、唯?」

唯「それは……」



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:13:49.96 ID:iSdzGiGo0
唯は私を真っすぐに見据える。

唯「あっちの世界に、行ってみたいんだ」

律「そんな予感はしてました」
 そうじゃないと、ここに来ようとは言わないだろうし。

律「……正直、私はそこまで気乗りしないんだけどな」

唯「ごめんねりっちゃん。私、りっちゃん居ないと、ここまでさえ来れないだろうから」

律「憂ちゃんに頼めばいいじゃん」

唯「憂に変な話して、これ以上困らせたくないんだよ」

律「……それもそっか。で、何であっちの世界に行きたいんだよ。
  正直、私はあんまし行きたくはないよ。だって、自分がもう一人居る世界なんて、奇妙で奇妙で、
  正気を保ってられるかわからない」

唯「……私、生まれ変わりたいんだ」

律「………ん?」

唯「そこの窓、見て」



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:17:43.35 ID:iSdzGiGo0
また何かがあるのか、と指差された方の窓に目をやると……

律「いや、どこにでもある普通の窓だけど」

唯「いや、その窓の下の方」

律「…………ん?」

確かに、何か傷ついたみたいな跡が……何か引きずったみたいな、いや、側面に?
でも………その赤黒い跡は……駄目だ、わからない。

唯「あれ何か分かる?」

律「分からないけど」

唯「……この窓の下、何があるか分かる?」

律「何って、グラウンド…………あ」

唯「………そういうことだよ」

頭の中で整合性を持たなかった情報が、今整列した。

律「じゃ、紬の遺体は、この窓から……」

唯「誰が投げたかっていう明確な証拠はないけど……、けど、「推測する」ことは出来るよね
  あれが音楽室から死体を投げる時に引っかかっちゃった跡だってことくらい」



218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:23:10.97 ID:iSdzGiGo0

律「もう、言わなくていい」

唯「………」

だいたいわかったから。
だいたい唯がしたいことが、わかったから。
恐らく、恐らくだけど、琴吹さん……紬がしたことは、唯としたいことと同じなのだろう。

律「………じゃ、行くか」

音楽準備室のドアに手をかける。
これからどんなことが起こるのか、私は知らない。
音を立てて開くドア。

唯「……うん」

二人で中に入る。

そして、雑多に置かれ、つみあがった物の奥に、私たちはその穴を見る。
しかし、その穴からは微かな光も見えなかった。いや、比喩的な意味ではなく。
どんなに暗いところでも、ちょっとでも光があれば、目がその光をとらえて穴の輪郭を浮かび上がらせるはず。

律「ま、取り敢えず行ってみましょっか」




222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:28:49.42 ID:iSdzGiGo0

穴に頭から入る。そして、奥行き30センチ程度のその穴を抜けようと試みるが……

律「痛っ!」

頭を思い切り何かにぶつける。
何これ、何か置いてある? それとも、

唯「どうしたの、りっちゃん」

律「いや……穴が、塞がれてるみたい」

律(ベニヤ板……か? それだけじゃなさそうだけど……とにかく、何かであっちから塞がれてるみたいだ)

唯「……………」

律「………どうしよ」

唯「…………………」

律「……わかったよ、何とかするよ」

唯の視線を後ろに感じながら、私は穴に手を入れる。
そして、満身の力を入れて、穴を塞ぐ「何か」を押す。押す。押す。
パンチしてみる。何度も何度も。



223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:33:45.40 ID:iSdzGiGo0

6回くらいの試みで、それは少し壊れた。微かな光が私の目を捉える。
ただの板だ。もっと塞ぐなら頑丈なものでしないとな。

律「おい唯、この部屋に鋸とか無かったっけか?」

唯「……ない、んじゃないかな。ごめん」

律「勿論持ってる訳もない、っと」

唯「…………ごめん」

律「わかったよ、蹴り壊しますよ」

ガツガツガツガツガツガツガツガツ

と、何度も何度も蹴っている内に、板が後ろに倒れた。どうやら両端から釘か何かで打ちつけられていたらしい。
塞いだ人、詰め甘っ!

いや……でも、ただでさえ暗い音楽準備室で、塞がれた小さな穴に気付く人って…
塞ぐことが狙いじゃなくて、気付かせないことが狙い?

律「ま、良いんだけどね。行こうぜ、唯」
唯「……静かにね。誰か居るかも知れないから」



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:41:03.62 ID:iSdzGiGo0
そして、「あちら側の世界」の音楽準備室に到達。
もう後戻りは出来ない、のかな。今なら引き返せるけど。

律「……外から音はしないな」

唯「そうだね」

律「誰も居ないのかな」

唯「…………」

ドアを少しずつ、ゆっくりと、音がしないように開ける。
恐る恐る覗き込むと、そこは、音楽室だった。
私たちの世界と、間取りと奥行きは全く同じの音楽室。
しかし、そこに存在する物品は、全くの別物。

ホワイトボード。沢山の落書き。「学祭頑張ろう!」の文字。
二つ連結した生徒用机の周囲に配置された椅子6つ。
黒板の周囲には、ドラム。キーボード。
壁に立てかけられている、ベース。

人は誰も居ない。助かった……のかな。

律「誰も居ないみたい」

唯「……そっか…よかったよー」



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:43:47.28 ID:/cnWyfn+0
こわすぎわろえない



229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:46:51.53 ID:iSdzGiGo0
唯がへなへなと体勢を崩す。

唯「…………疲れがどっと出てきちゃった。猛烈に眠いよ、りっちゃん」

律「ちょっと今寝られるとまずいっす、唯隊員」

唯「わかってるますですよー、りっちゃん隊員」

「おぉ、律に唯、先来てたのか」

唯・律「え!」

視線をドアの方向へ。
そこには、……澪が居た。
正真正銘の、秋山澪だ。
あー、もう目にしちまった。澪が居るのを目にしてしまった。
自分の姿を視線の隅で見るってのと訳が違う。言い逃れは出来ない。
これで、あっち側の世界が存在するってのは「確定」って訳だ。

澪「どうしたんだ、二人とも。何か怖いものでも見たみたいな顔してるけど」

唯「……い、いやぁ、みおちゃん、これはですね、その、

律「あぁ、唯の奴が私のケーキ食べやがるから、ちょっとお仕置きしてやろうと思ってたんだけどさ、
  でも唯の野郎抵抗し始めて、そんでちょっと取っ組み合いしてたんだー、はは、ははははは」
何度も夢に見た、このシチュエーションが、そのまま役に立つなんて。



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:50:45.38 ID:iSdzGiGo0
澪「? ……ん、ま、良いけどさ」

疑問が残るようだが、そのまま澪は椅子に座った。

澪「あー、明日学祭ライブ本番なんて、信じられないよなー」

律「……あ、あぁ、そうだな」

唯「そ、そうだね。全然、しんじられない、よねー!」

何故か片言で話す唯。私も似たようなものだが。

澪「……二人とも、何だかおかしいぞ。どうしたんだ」

唯「いや、これはですね……ちょっと緊張してしまいまして、ほら、明日学祭のライブだし? ね、りっちゃん」

律「あぁ、そうだな。それに澪、今私は猛烈にトイレに行きたいんだ。いや、唯もトイレに行きたいんだよな。なぁ、唯?」

唯「う、うん、そうなんだよみおちゃん、今結構やばい状態なんだよ、ちょっと行ってくるね!」

と言うや否や、私と唯は、猛スピードで音楽室の外に出る。
そして、猛スピードで1階のトイレへと駆け込み、どちらが示し合わせることもなく、同じ個室に入った。



238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:52:52.05 ID:As5PjkI0P
唯が別の世界に行ったら、元の世界から唯が消えるわけだから、元の世界の憂が不幸なことになるだろうな…
そんなことも知らずに、唯が部屋から出たときは憂は喜んでたわけか。



241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:53:56.89 ID:4Co90SlpP
>>238
だが、別の世界の憂は発狂するほど大喜びだな



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:58:37.00 ID:iSdzGiGo0
律「あー、びっくりしたびっくりした、死ぬかと思ったー」

唯「…………死ぬ、ってか死ぬ寸前まで行ったよ、アレは……」

お互いに息絶え絶え。そして、お互いに笑う。

律「ははははは、澪の奴、何も理解できてないって顔だったぞ! まさに「ポカンとした」って表現がぴったり!」

唯「そうだねそうだね! あんなにポカンとしたみおちゃん、始めてかもしれない!」

律「けど唯、お前澪と知りあいじゃないだろう!」

唯「……いや、まぁ…その、りっちゃん……ん…まぁ、夢で会ってますし、ね?」

律「ん? ま、そうですか」

それにしても。今後どうすればいいんだろう。

律「なぁ、唯。私はお前がしたいこと、だいたい推測はできてるんだけど、
  具体的にどうするのか、とか、段取り、とかは一切聞いてないんだ」

唯「……そうだね。でも、その前に、ちょっとだけ休ませて」

律「……うん、わかった……って、ちょっと待って唯、ここで寝るのかよ!
 寝るんなら、あたしが出て行った後、自分で鍵閉めてからにしてくれよ!」



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:05:44.50 ID:iSdzGiGo0

唯は微かに微笑みを浮かべた

私は唯に感じている違和感。
それは、今私の目の前に居る唯は、夢の中の唯とは性格が違う、ということ。
外見はほぼ全く同じ(目の前の唯は、結構痩せて色が白いけど)、声も同じ、
服装も(夢の中の制服を着ている唯と)同じ。

だが、性格は大分異なる。
夢の中の唯は、何というか、もっとぽえっとした感じ。
頭もそこまで切れないし、もっと単純だし、もっと子供だ。
だけど、温かみがあった。人を惹きつける温かみが。

一方、こちらの唯は。
頭の回転が速い。私が提示した情報で、すぐに結論を導き出す。
喋り方も、幾分知的だ。
だが……、冷たい。目に宿る温かさも、消え失せてしまっている。
私は、夢の中の唯と目の前にいる唯を、別人と捉えてることが出来る。

そんなことを言えば、澪だって少し違う気もするが、基本は同じだ
(中野さんは会って日数が浅いので、わからない)。

なのに、何故唯はここまで違うのだろう。




250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:13:37.28 ID:iSdzGiGo0
なんてことを考えながら、廊下を歩いてみたりする。

生徒でごった返している。みんな楽しそうに笑って、大道具を作ったり、
劇の練習をしたり(わざわざ衣装まで着て!)、衣装を作ったり、
屋台の宣伝ポスターを作ったり。1年前に経験した学祭も、こんなんだったっけか。
勿論、あまり関わっていなかったので、良い思い出はないけれど。

またブルーな気持ちになる。
でも、ひとまず、だ。
知人に会ってはいけない。特に軽音部の面子とは。あと、「自分」と会っては駄目だ。
それこそ大問題。私はここには居られない(まぁあちらの世界に帰ればいいんだけど)。
けど、唯の願いを叶えてやるまでは、こっちに留まらないといけないからな。
あんま人目につかないところに行きたいところではあるな。

?「あ、りっちゃんじゃん」
律「ん?」

全然知らない女子。ジャージの色からして、私たちと同じ学年か。

?「軽音部の練習行ったんじゃないの?」
律「あー、そ、そうだったんだけど、ちょっと用事が出来ちゃって」
?「そうなんだ。その用事って何?」

笑顔で問い詰められる、私。笑顔で問い詰める、相手。
何なんだ、この構図は。




252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:21:56.33 ID:iSdzGiGo0
律「な、何って言われても」
?「大事な用事じゃなかったら、クラスのお化け屋敷手伝ってよ」
律「………んー」

これは、大丈夫なのかな?
もし軽音部のメンバーとか居たら……面倒なことになるな。
そこに唯とか紬とか居たら……特に紬は面倒なことになる。
あと、私とか居たら、大惨事。

?「あ、その顔は大丈夫ってことだね。じゃ、はい来る来る」
律「あ、ちょっと」

引っ張られるがままに、クラスへ。
クラスの中に引っ張られていく私。
中には、ジャージ姿で作業しているクラスメイト多数。
きょろきょろ見渡すが、幸いなことに軽音部の皆さまは居ない……らしい。

様々な角度から、クラスメイトが私に声をかける。
?「え、りっちゃん何で制服なの?」
?「またりっちゃんサボろうとしてたでしょ」
律「え、制服なのはちょいジャージが洗濯中だからで、サボるってのは、
  いや、軽音部の練習の時間がずれたの、サボりではない!」
?「まーたそんなこと言って」
律「あー、まー、本当かどうかはわからないんだけどね」
と、小さなこえで付け加えておく。



257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:29:18.07 ID:iSdzGiGo0
?「唯ちゃんと紬ちゃんは?」
律「し、知らねーけどな。買い出しとかじゃね?」
買い出し、とそれっぽい言葉をつけておけば、ごまかせるかも、という安直な考え。

?「じゃ、早速だけど、手伝ってね。そのすずらんテープ、そっちにつけて」
律「は……ははぁ…」
と、何となく断れない流れを形成されてしまう。私、こういうの断るの苦手なんだっけ。

漫然と作業をしていく。クラスメイトとの会話を楽しみながら。
……会話を楽しみながら? 何て私らしくない言葉!
高校入ってから、クラスメイトと会話を楽しむなんてことがあったっけ?
最も、周囲から言葉なんてかかってこないから、別にこちらから会話を投げ返さなくて良いし、楽なんだけどさ。
それでも、少しだけ、楽しくなった。学祭の準備。
このクラスには、私が顔を知ってる奴らもちらほら居た(勿論話したことある奴は稀だけど)。
けれど、その話したことない奴らでさえも、私に話しかけてくれる。

律(これは……)

これは、こっちの世界の私が、クラスに溶け込めるってことなんだろうな。
お調子者で面白いりっちゃん、って感じ。
中学までは私もそんなんだったから、懐かしい気分。

そして、ちょとtこっちの世界の私に嫉妬。

と。
ふと時計を見ると、17時ちょっと過ぎ。



258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:33:31.51 ID:iSdzGiGo0
作業始めてから1時間は経ってるじゃん。我に返る。
駄目だ! 温かさと懐かしさに埋没していた。
ここに居ることで、どんどん知りあいに会う確率が上がってくじゃん!

律「ごめん、今度はまじで軽音部の練習あるんだ! 明日ライブだから、勘弁しておくれ!」
とか言い捨てて、私は教室を出る。
皆、何やかんや言いながらも、「頑張れー」「ライブ楽しみにしてるよー」とか優しい言葉をかけてくれた。
優しい言葉を。

あー、本当にもう、わけわかんない気持ちにさせられる

早足で1階女子トイレに向かう。唯を起こす為だ。
無駄な動きなく唯が眠っているはずの個室へと、向かう。
向かうのは、良いが。

ノックする。
返事がない。
律「ゆーいー」
返事がない。

激しくノックしていると、気付く。
このドア、鍵がかかっていない。ということは。
急いでドアを開ける。
そこには、誰も、居ない。
誰もいないということは、唯が居ない。

そこは、確かに唯と私が別れた個室だった。
唯が、疲れたから眠る、と言って別れた個室だ。



259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:39:01.73 ID:iSdzGiGo0
……どうしよ。
あー、こんな可能性もあるってどうして事前に予測できなかったんだろう!
ずっと唯と一緒に居ればよかった!
もしくはこれが唯の狙い? 私の役目は別の世界まで連れてくるところまでですかい?

律「………わかんないけど」
取り敢えず、今は安全なところに身を隠そう。
学校を出よう。明日が学祭ライブなら、軽音部メンバーは遅くまで練習に励む……はず。
だから、ここは元の世界に戻った方が安全だ。

……しかし。
冷静に元の世界とかこっちの世界とか考えている自分にも多少戦慄を禁じ得ないが、そんなことより。
世界の間の出入り口が、音楽準備室にあるんなら、軽音部が練習している限り、元の世界へは帰れないじゃん。

……ため息を一つ。
兎に角、学校から出よう。どっか喫茶店でも入ろう。そこで色々考えよう。
話は、それからだ。



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:45:33.84 ID:iSdzGiGo0
学校の近くのファーストフード店(この世界は地理は全く元の世界と同じ。学校の構造も然り。
違うのは人間が置かれている境遇だけか?)で、時間を潰す。

取り留めもなく考える。
唯の目的は、恐らくこの世界の自分の殺害。
そして、この世界の自分にすり替わって、何事もなかったかのように、この世界で生きる。
「生まれ変わりたい」ってことはそういうことだろう?
加えて、紬はもうそれをやってる、はず。
あの窓の血痕は、わざわざ紬がこっちに死体を持ってきて、捨てたことの証拠。
そして、現にこっちで紬の遺体が発見されている。
……完全犯罪だよなー。自分が自分の殺人者なんて。
尚且つ自殺じゃないって、新しすぎるよ、犯罪の形体が。

そして、私の目的って何だ?
それは、最初からわからなかった。
私に、明確な目的がない。
唯をここに連れてくるってのは達成したけど、それからのことを全く考えていなかった。
……いつもの悪い癖だ。
私も唯や紬みたいに、自分を殺して、ここで生活するか?
それもありっちゃありかも知れない。
元の世界の自分なんて、死んでるようなものだし。

それもいいな。
それもいいかも知れない。




264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:51:44.00 ID:iSdzGiGo0
と、考え込んでる内に寝てしまったみたいだ。
店内の時計を見る。22時ちょっと過ぎ。
やばい、寝すぎた。どうしませう。

学校へ戻ろう。そして、元の世界に帰ろう。安全なところで考えるのが先だ。
帰ってくる必要が出れば、また帰ってくれば良い。……また塞がれてたらどうしおう。
ここは危険すぎる。

唯や紬が、私を殺す危険もない訳じゃない。

背筋が凍える。殺される。文字にすると仰々しいが、それはあくまで「リアルな」言葉。
現に、一人死んでいる。

小走りで学校へと向かう。日は当たり前ながら完全に沈んでおり、街灯の明かりが点々と歩道を照らしている。

「じゃ、また明日ねー」
「……おぅ! 風邪引くなよ、唯!」
「ひかないよ!」
「風邪ひいて憂ちゃんを替え玉にするとか、しないよな」
「あ、それもありかも」
「ありかも、じゃないですよ!」
「じゃーね、みんなー!」

と。
何てタイミングの悪い。
軽音部御一行様のお帰りだ。




268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:57:32.84 ID:iSdzGiGo0
横断歩道を挟んで、私の方の歩道に、唯と中野さん。
向こう側の歩道に、澪と……田井中律、つまり私。
紬は居ないみたいだ。

梓「いよいよ明日なんですね、ライブ」

唯「あずにゃーん、緊張してるの? 私が緊張ほぐしてあげる!」

梓「うわ、抱きつかないで下さい!」

唯「えー、だってあずにゃん抱きつき心地がいいんだもーん」

梓「ん……そんなこと言ってる唯先輩が一番緊張してるんじゃないですか?」

唯「……ばれちった、てへ☆」

梓「そうだったんですか……」

やばい、何も考えられない。逃げられない。
どんどんこっちに向かってくる二人。もうこれは、覚悟するしか。

唯「あ、りっちゃん」

梓「あれ、律先輩、どうしてこっちに? 澪先輩はどうしたんですか?」



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:01:40.04 ID:iSdzGiGo0
唯「あ、りっちゃん」

梓「律先輩、どうしてここに? 澪先輩はどうしたんですか?」

律「あ、な、なんといいますか、これは、その」

唯・梓「?」

律「澪は疲れたから眠りたいって言ってたんだけどさ、
  わ、私は何か緊張しちゃって、もうちょっと、みんなと話したいな、
  っていうか、……ん、」

唯「あー、りっちゃんも緊張するんだねー、いがいー」

梓「……いえ、律先輩が澪先輩の次くらいに、隠れて緊張している
  タイプかと踏んでいましたが、まさか本当にそうだとは」

律「う、うっさいな! 誰だって緊張くらいするわ!」

唯「そうだよねー、ライブの前って、いっつもご飯食べられなくなるくらい
  緊張しちゃうよねー」

梓「……立話も何ですし、公園でも行きましょうか?」

律「そ、そうだな。それがいいな、ははは、ははははは」
(これは……ごまかせた、のか?)



271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:03:02.87 ID:/cnWyfn+0
俺も向こうの自分を殺して……
ダメだ 気付けば俺、高校いってる年じゃねえじゃん



272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:07:15.21 ID:3sxdtWAE0
向こうの自分も幸せなリア充じゃなかったら泣くな俺



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:08:47.46 ID:iSdzGiGo0
近くの公園へ。
勿論、私たち以外は誰も居ない。
唯と中野さんと私。一つのベンチに座る。
少しだけ肌寒い。

唯「この3人って、何か珍しい組み合わせかもー」

梓「言われてみれば、そうかもですね」

律「…………」

唯の顔を見る。そして、確信する。
これは、元の世界の唯じゃない。「ここの」世界の唯だ。
喋り方も違うし、言葉の節々に怯えが感じられない。
私が毎日夢に見ていた唯だ。

唯「りっちゃん、ねぇりっちゃん」

律「ん? なんだ、なんだ唯?」

梓「……律先輩、相当緊張してるみたいですね、ふふふ」

律「ふふふって何だよ? し、仕方ないだろ!」
あなたがた思ってることとは違う意味で緊張してるんですけれどもね。

律「……そりゃ、緊張もするさ。こんな状況だとさ」

梓「………まぁ、そうですよね」



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:11:52.96 ID:iSdzGiGo0
梓「覚えてますか、先輩。今年の4月のこと」

律「4月?」

唯「勿論覚えてるよー、あずにゃん。あずにゃんが軽音部に入ってきてくれたんだよね!」

梓「まぁそれもありますが」

唯「そんで、わたしたちがふまじめだったから、あずにゃん怒っちゃったんだよね…
  あの時はごめんね、あずにゃーん」

梓「そんなこともありましたね……けど、私が言いたいのはそれじゃないです」

律「………」

梓「新歓ライブのことですよ」

唯「新歓ライブ……」

梓「前も言いましたけど、先輩方の演奏が、すっごくかっこよくて。
  あ、上手! っていうのじゃなくて、かっこいい! って感じでした」

律「それを区別する必要ってあるのかよ」
思わず突っ込んでしまう。



281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:18:20.41 ID:iSdzGiGo0
梓「すみません。けど、私が言いたいのは、上手くなくたって良いってことです。
  上手くなくなって、カッコいい演奏が出来れば、それで良いんです。
  変に気負う必要はない、魂込めた演奏が出来れば、それで十二分です」

中野さんは……梓は、私に向かって微笑みかけた。
目を細めて。首を少し傾げて。
その笑顔を街灯が照らし出す。
無音。自分の心臓の鼓動しか、聞こえない。

律「……梓」

梓「す、すみません、偉そうに語ってしまって……
  けど、律先輩と唯先輩に、ライブの前に伝えておきたくて…」

唯「あずにゃーん……ありがとうぅ……」

梓「うわ、ゆ、唯先輩、何故にここで泣くんですか?」

唯「だって、何か感動しちゃってー! 私は絶対カッコイイ演奏するよ! 歌詞も絶対間違えない!」

梓「そこからですか!」

唯「基本は大事だよー、ってあずにゃんが言ってたんじゃんー」

梓「それはあまりにも基本すぎます!」




287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:24:02.41 ID:iSdzGiGo0
2人は、楽しそうに笑う。
屈託なく、笑いあう。私も、つられて微笑んでしまう。

そして、何故か泣きそうになっている。意味もわからず。
ただ、ただ、この人たちは、特別なことは言っていないはずなのに。
ただ夢の中で話すように、楽しそうに話しているだけなのに、何で。

律「……なぁ、梓」

梓「はい、なんですか……って、律先輩まで泣いてるよ…」

律「な、泣いてなんかいないやい、これは汗だい!」

梓「はいはい。で、何ですか?」

律「あのさ、」

律「もしも、だよ」

梓・唯「………」

律「もしあたしがさ、突然消えたら、どうする?」



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:29:33.32 ID:iSdzGiGo0
梓「絶対そんなことはさせません」

唯「りっちゃんは消えないよ」

即座に、二人とも、同時に答えた。

梓「もし消えても、探します。探して探して探しまくります」

唯「だって、りっちゃんが消えたら、すっごい泣いちゃうもん、わたし。
  だから、りっちゃんは消えたりしないの」

律「………ははは、二人とも、全然支離滅裂じゃん!」

梓「そ、そんなことないですよ!」

律「だって梓、私が消えるんだから、探しても見つからないの!」

梓「でも探すんです! 見つかるまで探すんです!」

唯「あずにゃん、わたしも探す! あずにゃんと一緒に探す!!」

律「じゃ、私が死んだら……」

静か。とても、静か。

律「私が死んだら、どうするよ?」



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:30:42.86 ID:0JAhvPrb0
おいおい…



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:37:39.84 ID:iSdzGiGo0
梓「……………」
 黙り込む梓。
 目に涙を浮かべて、口を一の字に結ぶ。

梓「な、なんでそんなこと聞くんですか、なんで……」

唯「だから、りっちゃんは、死んだりなんかしないよ、私は信じてる!」

唯の声は、明るい。ように聞こえる。しかし、それは確実に震えている。

唯「だって、りっちゃんは、みんなの頼れる部長だもん。
  だから、みんなを悲しませたりなんかしないんだよ。
  りっちゃんは意地っ張りだから、死にそうになったとしても、
  どうでもないよう顔で学校に出てくるの。そして、またお菓子食べたり、
  ドラムたたいたり、みんなで笑ったりするの
  ね、りっちゃん、そうだよね?」

律「…………」

梓「もし律先輩が死んだら……許しません」

律「……」

梓「律先輩が死んだら、私が先輩を許しませんからね。
  絶対死なないで下さいね、消えるとか言わないで下さいよ、
  …………うわあああああああああああん!!」



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:43:12.51 ID:iSdzGiGo0


唯「でも、なんかりっちゃんが死ぬとか、考えたこともなかったね。
  考えるだけで、なんか、なんか、なんか、かなしくなるよ」

唯「りっちゃん、きえたらやだよ」

唯「絶対だよ、ぜったい消えちゃいやだよ?」

律「……わかった。わかったから、二人して抱きつかないでくれるか?」

ベンチに3つの影。
中央の影は私の影。
両脇に、唯と梓。
わんわん泣いてる、唯と梓。
誰か居たら……恥ずかしいけど、ま、いっか。

何で、この人たちは、人のことを思って、泣けるんだろう。

律「……ごめんな、唯、梓。変なこと言って」

律「………あたしは消えないから。安心しろ。
  ただ、ちょっと怖くなっちゃってさ。色んなことが」

律「……だけど、もう大丈夫。あたし、決めたから」


律「ありがと」



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:51:10.04 ID:iSdzGiGo0
―――
――


澪「……なー律」

律「ん、何?」

澪「明日のライブ、楽しみだな」

律「あー、確かになー!
  私たちの調子も絶好調だしな!」

澪「……なぁ、律?」

律「ん?」

澪「いつも、ありがとな」

律「な、な、なにオッシャッテルノミオチャン?」

澪「……いっつも言う機会がないからさ」

律「……ハイ」

澪「ありがとう。お前と居ることができて、幸せだ」

律「へ、へーん、ありがとうって言われたからって
  こっちからありがとうって返すと思ったら、大間違いなんだからな!
  淡い期待してんじゃんーぞ、このばかみお!」



308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:52:19.45 ID:iSdzGiGo0
澪「……ふふ、わかってるよ、りつのばーか」

律「………ははは」

澪「ははははははは」

律「よっしゃ、あの夕日に向かってダッシュだ!」

澪「もう真っ暗だよ! 夕日のゆの字も見えないよ!」

律「馬鹿野郎! 根性だ、少年!元気があれば、何でもできる! 澪、ありがとう」

澪「…………ふふふ」

律「じゃ、みおの家まで、最初に着いた方が勝ちね」

澪「え、私の家、律の家より近いんだけど」

律「関係ねぇやい! じゃ、位置について、よどん!!」

澪「よどんって何だよ、あーもう、律のばーか! ばーか! ははは!!」


――
―――



312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:56:59.75 ID:iSdzGiGo0
結局、梓と唯と別れた後、私は公園のベンチで眠った。
夢では澪と私が青春してた……ん、羨ましいというか、背中痒いというか。
兎に角、今日が学祭ライブの日。

公園の時計を見る。午前10時。こんな大事な日に何時まで寝てるんだ、私。
いますぐ学校へ行かなければ。

学校へ行く。唯が唯を殺すのを止める。
あいつらのライブを成功させる。
それが、私の務めだ。

私はベンチから起き上がり、地面に立つ。
もう2人の温かみは残っていない。しかし、気付かされたことは、未だに心に残っている。
温かい。とても、温かい。
私が、ずっと欲しかったもの、なのかも知れない。




320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:05:39.91 ID:iSdzGiGo0

学校は生徒と一般客でごった返していた。
当然か。桜高の学祭は、地元客からの評判も高い。

律(それにしても、こんなに人が居たら、また軽音部の連中に会いそうで怖いな……)

いや、単体だとごまかせるんだけど、こっちの世界の自分と一緒に居たら、一発アウト。

律(まぁ、昨日の別れ際、梓と唯には「このことは恥ずかしいから他のみんなには言わないで」と
  言っといて良かったな……あの時は、ただ単に恥ずかしいからって理由で言い放ったけど)

そして、今一番会いたい人物が、「元の世界の唯」。
何とかして説得しないと。
あいつの狙いが「生まれ変わる」ことならば、その狙いを叶える為に、こっちの世界の唯を殺すことは、ほぼ確定的。
それを通じて、この世界で、充実した生活を送る。元の引きこもった、鬱屈とし、人にも会えない自分を脱ぎ捨てて。

しかし、それにしても、元の世界の唯は、人間恐怖症だったはずなんだが……大丈夫なのかな、違う意味でも。

ひとまず、学内の目立たないベンチに腰をおろして、待つことにする。
……腹減った。焼きそばでもかってこよっかな。

憂「あ、律さん。お久しぶりです」
そして、これだよ。焼きそばの列の前に、憂ちゃんが居るよ。




323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:12:39.76 ID:iSdzGiGo0
律「お、おぉ、憂ちゃん、久しぶり」

憂「お昼ご飯ですか!」

律「そ、そうなのよ! ライブもうすぐ始まっちゃうから、オリンピックで食べないと、間に合わなくて」

憂「あれ、変だな……お姉ちゃん、ライブは16時からって言ってたけど」

ミスった。綺麗にミスった。まぁ、知らないから間違えて当然なんですけどねー。

律「あたしにとって、16時ってのはすぐの範疇なんだよ。長いように感じるとか言う人も居るけど、
  本当に一瞬なんだ。だから、景気づけに昼食食べとこっかなー、っと思ったり」

憂「そうなんですか! 実は私も昼食買いに来たんです!」

律(深く追求してこない! 出来た子や、このこ出来た子や!!)

憂「では、一緒に食べませんか?」

律「ハイ?」

憂「つ、都合悪いですか……律さんのファンっていう子が居て…
  律先輩とご飯食べれたらなー、って言ってたんですけど…」

律(断る口実断る口実……くそ、思いつかねっ)




327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:19:20.51 ID:iSdzGiGo0
?「どうぞ、これは私からのおごりです! 食べて下さい!」

律「はぁ、どうも……」 
(3パックですか……ありがた迷惑……)

憂「すみません、この子感情が行動に表れてしまうところがあって」

?「あ、私ジャズ研1年の鈴木純で言います! 律先輩のファンなんです!」

律「は、初めまして。あたしは田井中律って言います」

純「も、もし宜しければメルアドとかくれませんかね?」

律「メルアド、ですか?」
律(いきなり何だよ……あった、けど……)

律「圏外……」

純「どうかしました?」

憂「純ちゃん、いきなりメルアド聞くのは失礼だよー」

純「は、すみません! ちょっと調子に乗っちゃったみたいで!」

律「いや、全然いいんだけどさ」
 (そっか、元の世界の携帯は、ここでは使えない、という訳ですね)

律(………え、でももしかして)

律(…………可能性としては、有り得る。五分五分ってとこかな)



328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:24:20.45 ID:iSdzGiGo0
律「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」

純・憂「は、はい……」

律(……っと、逃げ切ったところで。あのなんちゃらって子はともかく、憂ちゃんと居るのは危険だからな)

律(…………あった。こっちに来る前に聞いておいた、「元の世界の唯」のケー番!)

律(これで、あいつに連絡出来る! 大分楽になったかもしれない)

ブー ブー ブー ブー 

律(携帯のバイブ?)


新着メール1件

差出人:平沢 唯

内容:









邪魔しないでね。



329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:25:44.60 ID:aWl2noDA0
なんという恩仇



330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:25:50.17 ID:j5uWgUuu0
わお



331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:26:05.00 ID:As5PjkI0P
こええwww



335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:33:54.36 ID:iSdzGiGo0
律(………何これ)

律(……やっぱ素直に元の世界帰ろっかな、私)

律(いやいやいやいやいや、駄目だろそこは)

律(ここが正念場、頑張れ田井中りっちゃん!!)

律(そうだよ、このメールが「元の世界の携帯であれば圏外でも通じる」って証拠になってる!)

律(……さて)

律(……電話するか。正直気が進まないけど)


律「…………………」

律「……もしもし」

唯「……………」

律「もしもし、唯か?」

唯「……………………なに?」

律「……いや、んーっと、その、話したいことがあるからさ、今どこに居るか教えてくれないかなー、
  なんて思ったり思わなかったり」




336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:35:11.66 ID:iSdzGiGo0

唯「話したいことなら、今この電話ですればいいんじゃないかな」

律「……いや確かに。確かにそうなんだけど、ちょっと会って話したいんだよ唯。
  な、10分かそこらで良いからさ?」

唯「………邪魔しないでよ、りっちゃん。お願いだから、邪魔しないで。
  わたし、りっちゃんにひどいことしたくないんだ。
  りっちゃんには感謝してるから。
  わたしにきっかけをくれて、ここまで引っ張り出してくれたりっちゃんには、感謝してる。
  だから、だから、りっちゃん、お願い」

唯「邪魔しないで」

律「…………」

律「…………いつ唯を殺す」

唯「………………ライブの直前」

律「え、ちょ、ちょっと待て唯!」

ツーツーツーツーツー

律(……切れた………)

律(探すしかないってことか)



337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:35:57.57 ID:yXqB+juQ0
うわー・・・・



338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:37:26.23 ID:fBYwhtqO0
予想外にサスペンスな展開



341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:40:19.44 ID:iSdzGiGo0
その後、私はひたすらに桜高の中を捜しまわった。
たまに私に声をかけてくるものもあったが、生返事だけ返して、あとは駆けずり回って探した。
しかし、どこにも唯は見当たらない。

律(でも、待てよ……)

律(もし本当に唯が唯を殺したいなら、私に本当の唯を殺す時間なんて教えないんじゃないか?)

律(……そうだ! それこそライブ前に唯を殺して、入れ替わったとしても、元の世界の唯は上手にギターが弾けるのか?
いや、弾けるはずがない。それは混乱を引き起こす。それは後々死体を前の世界に運ばなきゃいけない唯にとっても不都合なこと!)

律(つまり、唯は「ライブの後に唯を殺す」っと考えてもいいのかな……全然確証ないけど…)

律(でも、唯を探さなきゃいけないってことに変わりはないか)



349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:46:39.20 ID:TvHyY1QH0
どう頑張っても誰かは不幸になるなこれは…
といっても既にムギが一人犠牲になってるのか



351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:47:33.04 ID:iSdzGiGo0
律(で、結局15時30分……まだ見つからない)

律(やばいな、本当にやばい。どうしようどうしよう)

律(落ち着けりっちゃん、数々の修羅場を乗り越えてきた私なら、このくらいのこと出来る!)

律(……でもその修羅場も運で乗り越えてきたんだけどね、てへ☆)

律(………自信無くなってきたな)

律(…………あ、)

廊下の奥に、軽音部の面子が見えた。
何故こんな人ごみの中で見えるのか。
それは、「派手」という形容詞がこの上なく似合う衣装が身につけて居るからに他ならない。

律(うわー……、これ作ってんの山中先生だっけか?)

律(他に時間使うことないのかよ……ん?)

メンバーは、澪、梓、律(もう律と呼ぶことにする)。

2人足りない。

2人………唯と紬。




364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 20:55:30.02 ID:iSdzGiGo0
駄目だ。これは、最悪なパターンだ。

何とかしてどちらかの唯を見つけ出さないと……紬が居ないってのも、危ない臭いがする。

どうする。どうする律。どうすれば良い………。

………危ないけど、ここまで来たら仕方がないか。

私は、前髪を下ろす。前髪が目にかかって、前が見えづらい。
だけど、これなら、何とかなるかも知れない。

澪や梓(と律)の居るところまで走る。

私(律)「す、すみません」

澪「ん、どうしたんですか?」

私「唯先輩どこに居るか知りませんか?」

律(この世界の)「唯か? 唯なら、トイレだと思うけど……」

私「ど、どこのトイレですか?」

律「どこの、って言われても……体育館に近いから、1階とかだと思うけど、
  それにしても、どしたんだ」

私「いえ、ちょ、ちょっと憂に、唯先輩に届け物頼まれてて……それでは!」



365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:01:06.11 ID:iSdzGiGo0
ダッシュで遠ざかる。
まぁ狐につままれたような顔してるけど、それは仕方ないってことで。
前髪下ろし+裏声だけで一時的になんとかなるとは、人間は人のどこをもって人間と認識してるんだ?

いや、それは良い。早く1階のトイレへ!

そして。辿りついた。1階のトイレ。
個室は全て空いている、ただし一つを除いて。

律(これで人違いだったら赤っ恥だけど……今はそんなこと考えてる場合じゃないっ)

律「唯ー、早くしろ、ライブ始まるぞー」

ノックしながら唯(恐らくこっちの世界の)に呼びかけるが、反応がない。

気配さえもない。耳を澄ませても、息さえも聞こえない。
しかし、鍵はかかっている。

……嫌な予感。
本当に嫌な予感。

緊急だ。上から昇って入るしかない。

無理矢理個室によじ登って、鍵がかかった個室へ入る。

律「…………………」

律「………嘘だろ」



369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:07:18.28 ID:iSdzGiGo0
律「………嘘だろ」

律「………………なぁ、おい、ちょっと、唯!!」

唯が、目を閉じて、個室に倒れこんでいる。
その唯は、元の世界の唯ではない。こちらの世界の唯だ。
ちょっとふっくらとした頬、目の下には隈もなく、見てて和むほうの唯だ。
目は固く閉じられて、壁にもたれている。

律(あれ?)

律(ちょっと待った)

律(息は……してるよ)

律(つまり、寝てるってことか?)

律(……………一瞬取り乱して損した)

律(けど、何故ここで寝てる………)

律(何だか昨日とデジャブだが………個室で、寝てる理由……)

律(……ライブが終わった後にゆっくり殺す為、とか………)

律(ははは………そんな陳腐な理由)

有り得るよな。
有り得る。おおいにあり得るよ。
まぁ元の世界の唯がギター弾けて歌えるかってのは疑問だが、それは不可能ではない。



372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:14:16.56 ID:iSdzGiGo0
律(てか、今更ながら、この唯制服なんだな……あの派手な衣装じゃなくて…)

律(衣装着替えに行ってくる、って言って。そこで襲われた、とか…?)

律(今こいつを起こすのが得策か否か………)

律(下手に起こして、この唯を外に出したら、パニックが起こるかもしれない…)

律(だがしかし……えーい、やってやるわい、見てろや唯と唯! りっちゃん本気だしちゃうぜ!)


唯「みんなー、お待たせ」

澪「おい、遅いぞ唯」

律「もー、いっつも唯はぎりぎりさんだなー、このーこのー」

唯「へへへー、みんな、ごめんなさい」

梓「結果オーライですよ、唯先輩」

唯「あずにゃーん……あずにゃんはわたしの味方だ!」

律「はいはーい、お決まりのパターンは後でねー」




374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:18:40.20 ID:JPbVquRw0
りっちゃん万能すぎワラタwwww



375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:19:50.56 ID:2CGK1i5i0
律さん状態



377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:22:08.07 ID:iSdzGiGo0
紬「………………」

澪「紬、今日は無口だな」

紬「わ、わたし、ちょ、ちょっと緊張しちゃって」

律「へー、紬、大丈夫だって、観客の顔全員唯だと思えば万事解決だって!」

紬「………そ、そうね。ありがとう」

澪「? 流石の紬でも緊張するんだ」

律「あたしはそんなもん、したこともないけどな☆」

梓(どの口が言ってるんですか、そんなこと)

和「軽音部のみなさん、楽器の準備お願いします」

澪・律・紬・梓・唯「はーい!!」


私(律)「あー、何とか間に合った……」

唯「え、だから何がどうなってるの、誰かさん」

私「いいからシャベラナイデー。あとで全て説明するからサー」



379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:26:18.45 ID:iSdzGiGo0
唯「えー、なんかおかしいよー」

私「ほら、これ持って、みんなに合流しておいで」

唯「これ……なんで持ってるの?」

私「頼む、頼むから気にしないでくれ! この通りだから! あと私の顔凝視しないでくれ頼む!
  それじゃ、私時間だから行くワ! さらばだ少女!!」

唯「わ、ちょっと待って!」

一気に女子トイレから駆け出す。そして、向かう先は決まってる。

軽音部室だ。

もうこれは賭けだ。勝てる確率のものすごく低い賭け。
でも、零じゃない。
たぶん30パーセントくらい……もうちょっと高いかな…そう信じたいところだけど…

私の読みが当たっていれば、元の世界の唯は、ここに戻ってくるはず。

何故って、………そりゃ、ね。

あれがないと、演奏できないもんね。




381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:33:06.82 ID:iSdzGiGo0
唯「あれ?」

梓「どうしたんですか、唯先輩?」

唯「ギー太が、見当たらないんだけど」

澪「本当かよ……唯らしいっちゃ唯らしいけど」

律「和、まだ時間ある?」

和「5分あるわよ」

律「5分あれば間に合う! 唯、走ってとってこい!」

唯「……え、えー、とってくるってどこに」

律「どこって、部室しかないだろ! お前今日朝は確実に持ってきてたから、絶対そこにある!」

唯「でも……」

律「急げっ!」



律(私)「……お、演奏聞こえてきたきた」




389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:39:07.87 ID:iSdzGiGo0

唯「……………」

律「最初っから君への恋はホッチキスかぁ。選曲誰だよ、紬かな、案外澪かもなー」

唯「………」

律「なぁ、お前はどう思うよ、唯」

唯「………なんで…」

律「ん?」

唯「……なんで……一体どうやって…」

律「あぁ、隙間時間あなどるなかれってこと。
  お前が軽音部に合流して、ステージにギター運んでくだろ?
  んで、一回楽器おろしてみんな喋り出すんだよな。鏡見て衣装直したり、髪直したり、
  緊張ほぐすために喋ったりしてる。
  その時に、こっそり私がそこに忍び込んで、唯のギターを取って、女子トイレに帰る。
  そして、こっちの世界の唯に渡す」

唯「………………」

律「最初は無理かと思ったし、今でも無理だと思ってるけど、
  何というか、宝くじにも当たりくじは必ずあると言いますか、まぁできちゃった訳ですよ」

唯「……………っ」

律「まぁ、一番驚いてるのは、お前じゃなくてあたしなんだけどな」



397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:51:22.47 ID:iSdzGiGo0
唯「………ねぇ、じゃましないでって言ったよね?」

律「言われたっけか? りっちゃん忘れちゃったかも☆」

唯「…………いいよ。まだ時間はあるからさ。ライブ終わった後でも、まだタップリ時間はあるから。その時に、」

律「ちょっと待てって唯。話聞いてくれ、あたしの話」

唯「…………どうせ、下らないお説教でもするんでしょ? そういうの、イイから」

律「……まぁ、そんな感じだけど、けど、本当に伝えたいことが」

唯「本当に伝えたいことって、何? 陳腐な言葉でその場だけの涙を流させる気でしょう?
  馬鹿、ばっかじゃないの? 私にとっては、自分の生活のほうがずっとずっと大事なの!
  あなたは自分のことじゃないから、正義のヒーローきどって駆けずり回ってるんでしょうけど、
  私は、わたしは、」

唯「わたしは、自分で幸せな生活を手に入れることにしたの! だから、わたしは、もうにげるのを止めたの!
  だから、りっちゃんからこの世界の話を聞いた時、絶対にこっちの世界にきて、軽音部に入って、
  笑顔で過ごせる生活を送るって決めたの!! だから、じゃましないでよ! ねぇ!!」

律「…………」



406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:56:35.93 ID:iSdzGiGo0
律「………こっちの世界の唯の気持ちは、どうすんだよ」

唯「……………」

律「…こっちの世界の唯だって、生きてるんだぜ?」

唯「うるさい」

唯「りっちゃんだって、わたしと同じことやろうとしてたくせに」

律「そ、そんなこと」

そんなこと、なくは、ない。そんなこと、あった。

でも、私は。私は、変わったんだ。そう、今の私は、あの時の私じゃない。

律「……………」

唯「あ、りっちゃんにひとつ言っておきたいことがあったの」

律「………?」

唯が、ニヤリと笑った。唯は、ニヤリとなんか笑わないはずなのに。
唯が、目をそむけたくなるような笑いを浮かべた。

唯「昨日の夜、こっちの世界のあたしとあずにゃんと、公園に居たでしょ?」

律「!? 何でそれを……」

唯「ふふふー、わたしもそこに居たからね」




408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 21:57:12.84 ID:iSdzGiGo0
背筋が、ゾクゾクとした感触に内震える。
体が小刻みに震える。

唯「でさー、その時あずにゃんとあたしが、りっちゃんが死んだらどうするかって話してたじゃん。
  その時に、りっちゃんが死んだら許しませんよー、とか、りっちゃんが死んだら悲しくて泣いちゃうー、っとか2人は言ってたじゃん?」

もういい。もう言葉を発さないでくれ。頼むから。



唯「でも、その言葉ってさ、
  
  りっちゃんにかけられてるんじゃなくて、『この世界のりっちゃん』にかけられてるって、知ってた?」



413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:03:13.83 ID:iSdzGiGo0
律「…………」

唯「……………じゃ、わたしは行くから。
  あ、次見かけたら、今度はどうなるかわからないよ」

律「………」

唯「じゃーね、『ここの世界にいない りっちゃん』」

律「…」

唯「わたしは、この世界にしか、居場所がないんだよ」




律(あーあ……)

律(………もー、なんか…)

律(どうでもよくなってきた……)

律(………………確かに唯の言う通りだよなー)

律(この世界で居場所を作ろうとしない限り、私に居場所はない)

律(………帰ろっか。まぁ、帰っても居場所なんてないんだけどね)

律「……ははっ」



416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:08:18.18 ID:iSdzGiGo0
律「ははは」

律「はははははははははは……っく…………っく……」

律「一番居場所が欲しかったのは、あたしなんじゃないか!」

律「だから元の世界でも、色んなところを駆けずりまわって、ほじくりまわして、でも結局得たものは何もない!」

律「そんでこっちの世界でも色々頑張ってみたけど」

律「………駄目。駄目。駄目。駄目」

律「……………私の居場所なんて、もうどこにもないんだなー」

律「ま、それが私にお似合いなのかもねー」

 ……何か音がする。

 …………何の音だろう。

 ……歓声。微かだけど、確かに聞こえる。

「……まで……っきり………す。……! …わ………いむ!!」



422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:15:37.75 ID:iSdzGiGo0
軽快なギターソロ。それに呼応するような手拍子。
続いて入るベース、ドラム、キーボード、違うギター。


きみをみてるといつもハートどきどき

ゆれるおもいはマシュマロみたいにふーわふわ

いつもがんばる いつもがんばる
きみのよこがお きみのよこがお
ずっとみてても きづかないよね

ゆめのなかなら ゆめのなかなら
ふたりのきょーりー ちぢーめられるーのになー




423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:16:20.52 ID:iSdzGiGo0
律「…………行こう」

行こう。しかし、どこへ?
どこへ行くっていうんだ?

律「……行かなきゃ。あたしには、やんなきゃいけないことがある」

みんなとの距離を縮められなくたっていい。
そんなのは、夢の中だけで十分だ。

居場所なんかなくたっていい。
でも、あとちょっとだけ何かが出来るなら……

田井中律は、それをやりたい。



428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:25:27.19 ID:iSdzGiGo0
走った。走った。走った。
体育館へ、必死に走った。
こんなに走ったのいつぶりだろう。
なりふり構わず、走る。
長い、体育館までの距離。それでも、走る。

歌に導かれるようにして、走った。

体育館に着く。まだライブは続いている。

ふわふわタイムだ。一番後ろからでも、みんなの顔が見える。

あー、唯、間に会ったんだ。お前制服じゃねーか、一人だけおっかしーな
澪、お前……そんなに溌剌と歌えるキャラだったっけ?
私……輝いてるなー、すげーよ私。
梓、そんなにキラキラした顔でギター弾いてたら、多分体育館全体明るくなっちゃうんじゃないか?
そして、紬………笑ってる。微笑んでる。

唯「もういっかーい!」

ああ かーみさま おーねがーい ふたりーだーけーの
どりーむたーいーむ くだーさーい
おきーにいりーのうさーちゃん だいてー
こんやーも おーやーすみー

あぁ、ライブが、ライブが、私たちのライブが、終わる。



436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:31:26.85 ID:iSdzGiGo0
最後のギター、ベース、ドラム、キーボード。
音が全身に伝わってくる。最後まで全力だ。

そして、私が、最後のドラムを叩いた。


歓声、歓声歓声。

拍手、拍手、拍手。

大歓声。

なりやまぬ、拍手。

いつまでもいつまでも、その歓声は鳴り響く。

私は、恍惚としていた。
ステージ上で、みんなが微笑む。
何か唯が喋ってるみたいだけど、私の耳には届かない。




437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:32:51.54 ID:iSdzGiGo0
ライブは、成功した。

ここで、学祭における、放課後ティータイムの物語は、一旦終わり。

そして、あと少しだけ、私の物語は続く。




439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:40:58.99 ID:iSdzGiGo0
律「………結局、できなかったんだ」

唯「……………」

律「……そりゃ、出来ないだろうね」

唯「……」

律「…………気持ちはわかるよ」

唯「……………嘘つき」

律「……嘘じゃない。嘘じゃないさ」

律「あのステージには、あの唯の居場所しかないんだ。
  あの唯、あの澪、あの律、あの紬、あの梓」

律「……唯の居場所も、勿論あたしの居場所も、ないんだ」

律「それを、完膚無き程に示されたって訳だよな」

唯「でも、紬ちゃんは違うでしょう?」

律「いや、……、あたしはこう考えてるんだが…」

ちょっとだけ逡巡する。




449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:48:19.39 ID:iSdzGiGo0

律「あまりにも唯の要領が良すぎるから、ちょっとばかし疑ってみたんだが。
  こういうのも有り得るよな。
  紬を殺したのは、唯だっていうのも」

唯「…………」

律「何も引きこもりだからって、外に出られないって訳じゃない。
  それは自分で作り上げた「外に出ないであろう」という信頼であって、絶対のものではない」

唯「………」

律「勿論、「あたしたちの世界の紬」は死んだ。
  あたしは恐らくその紬に会った。そんで、紬はその日の内に死んだ。
  記事に死亡時刻は書かれて居なかったから、紬は「その日」の内なら、いつでも死んでもつじつまは合う」

律「あたしはあの世界から出てきて、吐いて、すぐ保健室へ行った。その間になら、唯に紬は殺せるよな?」

唯「………随分無理矢理な推理だけど」

律「あぁ、無理矢理さ。でも一番の根拠は、『新聞記事出すところから、窓の血痕を指摘するところまで、全てが流暢すぎる』ってこと。
  その辺、あっちの世界の唯と、こっちの世界の唯は、別人だわ。こっちの唯は要領が良すぎ」



456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 22:56:18.78 ID:/cnWyfn+0
なんという伏線



458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:00:07.14 ID:iSdzGiGo0
唯「………………別に必要があった訳じゃないんだけど。ただ、その方がリアリティ出るかな、って思って」

律「でも、私が言う前に知ってたのかよ。夢の世界が本当に存在するってこと」

唯「だって、夢に見た世界なんだから、取り敢えずこっちの世界の部室に行ってみたくなるじゃない。
  そしたら、見つけるっていうパターン。夢は3週間前から見始めたから、多分紬ちゃんもそうなんだと思う」

律(だとしたら、早く見つけてたら私が死んでたってこともあり得た……かも…)



461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:02:25.90 ID:iSdzGiGo0

唯「で、りっちゃん。これから、どうするの?」

律「いや、何するっつっても……取り敢えず、部活だろ」

唯「部活?」

律「そこ聞き返すところか……軽音部だよ。まずは部員集めないとな」

唯「………こっちの世界で?」

律「あったり前じゃないですかっ。もうあっちの世界には行かない。
  あたしは、こっちの世界の人間だから」

唯「……………」

律「なぁ、ところで唯、お前」

唯「わたしを責めないの?」

律「は?」

唯「わたしは人殺しだよ? こっちの紬ちゃんを殺したんだよ?
  あっちのわたしのことも、殺そうとしてたんだよ?」



463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:04:31.40 ID:iSdzGiGo0

律「……んー、っつってもなぁ」

律「あたし、そういうの良くわかんないし……罪とか本当に許されるのかとか…」

唯「……………」

律「それはお前の問題だ。けど、どうしても死にそうになったら、あたしんとこ来いよ」

唯「……………」

律「あ、あたしはもうお前の家行かないからな、通いづめだったから」

唯「…………………」

律「こんどはあたしの家にこいよな」




465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:05:51.37 ID:IiT4Dhk70
半年も出かけてなかったら歩くこともキツいらしいからな
それに声もずっと出してなけりゃしばらく出せなくなるらしいし
唯が出かけてたのはつじつまが合うな



466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:06:11.64 ID:+JECJXrP0
まあ、ここで唯を責めたって律の希望したようには世界は変わってくれないよな。

希望もコンプレックスも共有してる唯がいないと、律も変われない。



473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:14:58.66 ID:iSdzGiGo0
―――
――



「りっちゃん、りっちゃん」

「何だよ、いきなり」

「お礼を言いに来たの」

「りっちゃん、本当にありがとう。」

「まぁ、そりゃ、こんくらいのこと、当たり前じゃん!」

「いや、本当にさ。別に敬われたいか思ってやった訳じゃないし」

「………ちょっとかっこつけさせてもらえるなら、

「だって、そりゃあたしは、       」



――
―――



475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:16:40.82 ID:iSdzGiGo0
律「みおー」

澪「おぉ、何だ律か。何かやけに元気だな」

律「なぁみお、バンドやろうぜバンド!」

澪「バンド?」

律「軽音部だよ軽音部! 今あたしともう一人、ギターしか居ないんだ! お前、ベース弾けただろ!」

澪「そりゃ弾けるっていっても、中学のころちょっといじってたくらいだし……」

律「じゅうぶんっすよ! ささ、これ入部届けだから、ささっとサインしちゃって…」

澪「って、もう名前も書いてるし!」

律「あー、兼部とか全然構わないから。そこんとこ宜しく! じゃ、あたしは他に用があるんでー」

澪「なーにわけわかんないこといってんだよ律! おいちょっと待て!」



477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:17:43.13 ID:iSdzGiGo0




律「そりゃあたしは、部長だからな」
              END



482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:20:27.27 ID:VIw5jbpd0


殺されたムギはどっちのムギなんだ?律が出会ったムギはけいおん部の方だよな?



488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:21:54.21 ID:iSdzGiGo0
>>482
 殺された紬は、「こっちの世界(語り手の律の世界)」の紬
 律が出会ったのも、上記と同様の紬

わかりにくくてスマソ



491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:22:47.82 ID:U4i5L0SI0

穴はいったいだれが・・・



496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:26:23.23 ID:/cnWyfn+0
凄いよかったよー! 乙ー!
で、穴は誰が塞いでたんだ



498 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 23:27:23.51 ID:iSdzGiGo0
律・紬・唯、夢を見始める

(この時点で唯と律、初接触の可能性)

紬、部室に行ってみると穴発見

(この時点でも唯と律、初接触の可能性)

唯も発見

(この時点で紬は夢と別世界の仕組みについて理解している)

紬、律と穴で出会う

紬、律が穴の仕組みに気付いてると思って「やっぱ気付いて……」発言

律、早めに脱出(脱落)

唯、穴へ

紬が穴から出てくるか(この確率の方が高い)、紬と一緒の別世界で殺害

穴をふさいだのは唯か紬
どちらがふさいだかは謎



516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:09:19.64 ID:TqIvUNfD0
蛇足(てか残ってたもの) なんかごめん

律「なぁ梓、軽音部入らない? 外バンと掛け持ちでいいからさ」

梓「田井中さん……って梓って何ですか梓って」

律「え? だって梓は梓だろ?」

梓「なんていうか…その……馴れ馴れしすぎませんか? まだ私たち会って3回ですよ?」

律(私はナンパ師か……いや、あながち間違ってないけどさ)



517 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:10:40.48 ID:TqIvUNfD0

――

唯「みおちゃん、何か昨日変な夢見た」

澪「ん? どんなだ?」

唯「軽音部で私が練習してるんだけど、私が何だか怖い顔してる夢」

澪「?」

唯「なんかね、すっごいこわいの!」

澪「すっごい怖い唯って、どんなんだろ……想像できないけど」


――


律(語り手)「現実は想像を超えるってことが証明されたな」


・・・・・・・・・
以上、読んでくれてありがとなノシ




520 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/31(火) 00:13:12.47 ID:UjCXW3FmP

あっちの世界のムギは犠牲になったのだ・・・




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この記事へのコメント
唯はムギちゃん殺しといてお咎めなしなのかよ
2010/09/01(水) 13:54:31 | No.7378 | 戯言ヴぃp | #z7XDr28E[ 編集]
ムギが死んでる時点でバットエンド直行だからなぁ
救いが欲しかった
2010/09/01(水) 19:54:52 | No.7383 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
あずにゃんペロペロ
2010/09/02(木) 01:01:07 | No.7387 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
ムギちゃん…ムギちゃん…
2010/09/02(木) 01:55:02 | No.7389 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
釈然としない箇所もあるが、おもしろかったなあ。頭切れる唯っていうから、唯と憂が入れ替わってるのかと早合点してしまったorz
2010/09/02(木) 05:36:34 | No.7391 | USHI | #-[ 編集]
ドッペルゲンガーの話にある自分を殺しに来る理由は
こういったバックボーンがあるからじゃないかと普通に納得するくらい
上手い設定を考えたなあと思った
殺してでもなり代わりたくなるよなそりゃ

このSSじゃ失敗どころか別の人間殺してるけど
なんにせよとても面白かった
2010/09/02(木) 05:41:11 | No.7392 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
唯はなんでムギ殺しちゃったんだっけ…
2010/09/02(木) 15:32:10 | No.7396 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
考え語ろうとしたらスパムコメント認定されて萎えた。
とりあえず知りたいのは、唯が紬を殺害する辺りの詳細な時系列。律が唯によってそう思うように誘導させられた考えである「こちらで死んだのはあっちの紬。今あっちにいるであろう紬はこっちの紬」は間違ってて、だからこそあっちのライブ前で紬にもこちらの唯同様の不安を抱いてたのは分かった。実際こっちの紬があちらの紬を殺した後、唯がこっちの紬を殺したのも。ただ最初に言った通りここら辺の時系列が不明瞭すぎて、考える可能性が多すぎる。
2010/09/03(金) 00:42:54 | No.7406 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
>>488改めてみて納得いった。やっぱりこっちの律が準備室で紬とあった際、別世界紬を装っていたが実際はこっちの紬だったのか。

でもそれじゃぁ唯のこっちの紬殺害タイミング、それと別世界紬の死体がどこにいったのか分からん
2010/09/03(金) 00:47:07 | No.7407 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
つか、別世界ムギ死んでないだろ
2010/09/04(土) 22:08:23 | No.7464 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
作者はミステリー臭醸そうとしたんだろうけど、これ単なるSFだわ
律が気持ち悪がる理由も意味不明
唯と律が学校行くまでに何度か何かに疑問を抱く場面があったけど、何一つ疑問に思うべきものが無いのに「はあ?」と思わざるをえなかった
2010/09/20(月) 17:14:52 | No.7633 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
ミステリ要素はいらなかったな
普通に頑張って律っちゃんが
元の世界でメンバー集めて・・・
って話の方がよかった

やっぱ5人いてこそのけいおんだもん
誰かが殺されてるって・・・
ハッピーエンドになれるはずがない
2010/09/27(月) 04:00:31 | No.7705 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
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2010/11/26(金) 23:10:00 | No.7852 | | #[ 編集]
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2011/01/04(火) 03:25:29 | No.7872 | | #[ 編集]
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2011/06/18(土) 23:45:43 | No.7913 | | #[ 編集]
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