戯言ニュース

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唯「ミステリー!」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:08:24.01 ID:2txrWpErO
以下携帯から

長いからどんどん投下します
さるになったらごめん

律編とオリキャラ編の、交互で二部構成です。
オリキャラの名前は別スレの方からいただきました、許してね。

では、いきます。




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ブログパーツ 唯「ミステリー!」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:10:26.61 ID:2txrWpErO
幸・壱

春。
進学に就職。クラス替えに職場異動。寮生活に一人暮らし。
そんな新生活のスタートとなる季節は、この街にも例外なくやってきた。


私の名前は横山 幸(さち)。
親の異動で引っ越してきたこの街の桜ヶ丘高校に入学する、ホヤホヤの高校一年生だ。

中学時代、運動部と文化部を掛け持ちしてたものの、
ボールを追いかける傍ら、楽器の演奏練習をする、そんなハードな日課をこなせるほど私は器用でなかった。

せめて高校では文化部一本にしぼって、マッタリと三年間を過ごしたいと思ってたんだ。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:12:04.34 ID:2txrWpErO
幸「こんにちはー!入部希望なんですけど……」

私はほぼ迷うことなく部活を決め、軽音部の扉をたたいた。
ガタッと派手に椅子を引く音がして、まちきれんとばかりの勢いで扉が開かれた。

「はいはい!入部希望!?わはぁぁぁ!さ、入って入って!」

袖をムンズとつかまれ、音楽準備室の中に引っ張りこまれた。

「入部希望者だぞっ!
ムギっ!お茶の準備だぁ!!」

「はい♪」

ムギと呼ばれた先輩はそそくさとティーセットを用意する。
……ってかティーセットがあるよこの部屋……。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:13:49.66 ID:2txrWpErO
幸「横山 幸です!新歓ライブ見ましたっ!
私この部に入部したいです!」

まずは自己紹介。大事な“通過儀礼”だ。できれば明るい子だなぁって思われたいし。

「キーボードを担当しています、三年の琴吹紬です」
綺麗な金髪をした、育ちの良さそうなお姉さんだ。

「えっと、ベースを担当してます中野梓です」

髪をツインテールに束ねた、小柄な先輩だ。
……なんだか抱きついてみたいかわいさがある。

「んで、私が部長やってる、ドラム担当の三年田井中律だ!よろしくな幸!!」

活発そうな部長さん。カチューシャがとても似合ってる。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:15:49.65 ID:2txrWpErO
不本意ながら、これまで「さっちゃん」「さっちん」としか呼ばれることがなかった私にとって、
初回から「幸」と呼んでくれた先輩には、なんだか無意味に好感が持てた。


……あれ、でも……

幸「よろしくお願いします!!
あれ、でも田井中先輩は新歓のときギター弾いてませんでした?」

確か、そうだ。

律「下の名前、律でいいよ。
あ、うん。そうだな。ただ私本職はドラムなんだ」

幸「本職がドラムなのに、ギターがあれだけ弾けるなんて凄いですよ!」

律「まぁな!!めちゃくちゃ練習したし」




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:17:26.52 ID:2txrWpErO
紬「ふふ♪ところで幸ちゃんはどんな楽器を弾くの?」

幸「うっ……。そ、その……。
律先輩がドラムだって知らなくて……。私ドラムなんですけど必要ないんじゃ……?」


次の瞬間、私は三人が三人とも違う表情をしたのを見逃さなかった。

紬先輩はどこかホッとした表情、律先輩はなにか不満そうにむくれた顔。
そして梓先輩は二人の顔色をおそるおそるうかがっている、そんな感じだった。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:19:14.02 ID:2txrWpErO
紬「ちょ、ちょうど良かったじゃない?ね、りっちゃん?
これでギターに専念できるじゃない!」

律「……」

律先輩は押し黙ったままだ。
私がドラムだとやはりまずいのだろうか。新規参入の私が部の秩序を乱すわけにはいかないよね……


私が楽器の変更を申し出ようとした、その時……



紬「…………唯ちゃん」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:20:33.45 ID:2txrWpErO
律「ムギ!!!」

私を含めて全員がビクッと体を硬直させた。
誰かも分からないその名前は、かなり律先輩の癪にさわったらしかった。
大声で紬先輩を制止、わなわなと体をふるわせている。

律「その名前は口にするなって言ったろ!」

紬「ごめんなさい!……りっちゃん……」

なんだ……?場の状況が飲み込めない。唯?



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:22:43.68 ID:2txrWpErO
幸「あ、あの……」

会話の真意が分からない私はこう続けるしかなかった。


律「えっ?……あぁ悪いな幸!おいてけぼりにしちゃったな!
悪い悪い、気にしないでくれ!」

律先輩は瞬時に明るさを取り戻した。……けむに巻かれた感じだ。

幸「は、はぁ……」

律「そうだなぁ、幸がドラムやってくれるなら助かるよ!
私もギターに専念できるし、その方がみんなやりたい楽器できるしな!」

紬「りっちゃん!」

紬先輩も梓先輩も嬉しそうな顔をする。




23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:25:35.38 ID:2txrWpErO
梓「良かったね、えぇーと、さ……幸!ドラム期待してるよ!」

後輩相手にまだ慣れてないのだろう。目線を伏せがちに、顔を赤くして後輩を呼ぶ梓先輩は可愛らしかった。

幸「す、すみません律先輩!紬先輩も梓先輩も。なんだか私がわがまま通しちゃったみたいで……
あの、私一生懸命練習して皆さんと演奏できるよう頑張ります!!これからよろしくお願いします!!」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:29:03.12 ID:2txrWpErO
紬「こちらこそよろしくね、幸ちゃん。
あ、あと私のことはムギでいいわよ?」

梓「先輩……先輩……ハッこちらこそですっ!」

律「梓ー、敬語出てるぞー。
よろしくな、幸。一年間頑張ろうぜ!」

幸「はいっ!」

良かった、私なんとかやっていけそうだ!
ちょっと不穏な空気があったけど、大雑把な私はまるで気にしていなかった。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:30:23.81 ID:2txrWpErO
律「よっしゃー!!軽音『部』昇格を祝ってぇ!!」

一同「かんぱ~い!!」

ティーカップの縁が陽気に口笛をならす。
…………って!

幸「えぇー!今結成なんですかぁ!?」

紬「うふふ♪まあそうなるのかもね」

律「なにしろ部の条件は四人以上の入部が必要だったからなぁ」

梓「昨年までは同好会だったんだよ?
それでも、ムギ先輩の家で練習してたけどね」




28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:31:20.37 ID:2txrWpErO
幸「そうなんですか。でも練習なさってたことに変わりはないですよね!
私も頑張って追い付きたいと思います!」


今年度、部として誕生した、と聞いてなぜか急に先輩方が身近に、親密に感じた。
軽音部スタートの一員として、先輩達と一緒に名前を刻めるんだから。



一生懸命練習して楽しい高校生活を送ろう!!
決意を胸に、私の、新しい街での生活は始まったのである。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:38:51.51 ID:2txrWpErO
律・壱


唯「ストーカー?」


その日は見事な秋晴れで、いつにも増して、軽音部はのんびりと放課後のティータイムに興じていた。

パンケーキをほうばりながら、唯がはふはふと答える。
うつらうつらしていた私も、澪の突然の話に、起きかけの聴覚を働かした。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:40:02.82 ID:2txrWpErO
澪「そおなんだよ!!昨日律と別れたあと誰かにつけられたんだ!!」


さっきから澪だけそわそわしていると思えば……
存外、深刻な話だった。



律「勘違いじゃねーの?大方、帰る方向が一緒だったサラリーマンだった、とかさ」

唯「澪ちゃんなら、猫でも怖がりそうだもんね」

うん、澪ならありうるな。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:41:33.94 ID:2txrWpErO
澪「ホントだって!!
あれは……あれは勘違いなんかじゃない!!」

澪が食い下がる。
話をまともに聞いてもらえず、涙目になっている澪。

やっぱかわいいなぁ。からかうのはやめてやるか。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:42:47.71 ID:2txrWpErO
紬「まぁまぁま(ry
最近世間も物騒ですし、澪ちゃんの言ってることが本当なら、気を付けないと」
ゆっくりとした口調でムギ嬢が場を落ち着かせてくれる。

梓「そうです!澪先輩にもしものことがあったら……
唯先輩も律先輩も、もっと心配すべきです!」

軽音部に入部してはや五ヶ月、もうすっかり“ダメになって”しまった我が部の猫ちゃん。


律「さっきまで日溜まりでごろにゃんしてたくせに、急にはりきりだしたなぁ」

梓もからかってやると、う、と言って顔を赤くする。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:43:55.00 ID:2txrWpErO
律「分かってるって、澪!からかって悪かった!
そうだな……しばらく家まで送ってやるよ!」

澪「ほ、本当か!?ありがとう、律!」

当たり前だ。澪になにかあったらたまんない。

律「当たり前だろ?怖がり澪しゃんは私が守ってやらないとだなぁ!」

澪「う、うるさいっ!」

素直に『澪が大事だから』なんて、とても言えない。
いつもの照れ隠しだ。




39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:45:38.12 ID:2txrWpErO
唯「ねぇねぇムギちゃん」

紬「どうしたの唯ちゃん?…………あぁ、お菓子が食べたいのね?」

唯は返事の代わりに、とびきり幸せそうな笑顔で首肯した。

ムギは、しかし、全く嬉しそうにお茶菓子の準備をし始める。
もはやみんなに給仕することは、ムギの楽しみの一つとなっているのだろう。


梓「深層心理が表にでるって怖いですね……」

律「もろに顔に出てるもんな……ってか話聞いてろよ、緊張感ねぇなぁ」


唯「だって後ろからついてこられるだけでしょ?危なくないし、怖くないじゃん」




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:47:03.66 ID:2txrWpErO
菓子をほおばりながら、唯が呑気に応じた。
危機感のなさは唯らしいなぁ。

澪「いや怖いって!!」

紬「そうよ唯ちゃん?ストーカーがエスカレートして殺人事件まで発展することもあるのよ?
相手を思いすぎるあまりに、ね。歪んだ愛、というものなのかしら」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:48:31.66 ID:2txrWpErO
唯「ほぇ!?そうなのムギちゃん!?
……気を付けてね、澪ちゃん!」

ひとごとかよっと澪のツッコミがはいる。
えへへーと笑う唯。

律「殺人かよ……ヤバいな。
ま、なんにせよ、だ!しばらく気を付けて下校しようぜ!」



―――
―――――
―――――――



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:51:13.93 ID:2txrWpErO
―――
―――――
―――――――

帰り道!


律「ここまでは特に変わったことはなかったな」

梓「そうですね。いつもの解散場所まで来ちゃいました」

律「ここからは私が責任もって澪を送りとどけますっ!」

唯「うん、気を付けてねりっちゃん隊員!」

唯がビシッと敬礼を返す。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:54:44.35 ID:2txrWpErO
紬「ホントに気を付けてね……?」

澪「う、うん……たぶん大丈夫だよ……それに今日はでないかもしれないし」

澪のヤツビクビクしてんなー?
大丈夫っ!!私が守ってやるって、安心しろ!

唯・紬・梓「それじゃまた明日!(です)」

律・澪「(お-)またなー」

―――
―――――
―――――――




45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:56:31.23 ID:2txrWpErO
―――
―――――
―――――――


律「大丈夫だって澪!
というか本当に勘違いかもしれないぞ」

後ろが気になるのだろう、そわそわと、しきりに背後をふりかえる澪を私は勇気づける。


澪「信じてくれ、律!昨日のは間違いなかった!
私のペースに絶対合わせて歩いてたし……それに、勘違いならそれに越したことはないよ……」



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:57:28.35 ID:2txrWpErO
律「そ、そうだな。……言っとくけど、澪のこと疑ってるわけじゃないぜ?」


澪は本気で怖がっているように見えた。部活のときからそうだが、冗談だなんて毛頭思ってない。

律「私は澪を信じてるよ!」

澪の顔に少し安心の色が戻ったようだ。澪にはいつも笑顔でいてほしい。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 00:58:42.98 ID:2txrWpErO
ストーカーへの畏怖を少しでも払拭させようと、たわいもない世間話を持ち出す。
話も弾み出し、このままなにごともなく家にたどりつけそうだ、そう思っていたら……







--ジャリッ




48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:01:48.33 ID:2txrWpErO
律・澪「!!!」


その音は、まるで無音の世界でその音だけが鳴り響いたように、私の耳にはっきりと聞こえた。
隣の澪の膠着具合からして、おそらく澪にも聞こえたのだろう。


澪「り、り……」

律「あ、あぁ……」


澪はもう呂律も回っていない。
しかし……私もそうだ。言葉をしぼり出すのに精一杯だった。




49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:03:46.18 ID:2txrWpErO
これは…………




これは……確かに怖い!!
分かる。見られている。ソレの視線に舐められるように。
背中がジトッとしてくる。冷や汗が止まらない。
首さえ動かせたら、犯人の姿も自ずとわかるだろう。
だが。動かない。動かせない。

どうした私のからだ。動け、動けよ。澪を守るんだろう?

澪は、私が傷つけさせない!


律「クソオォォ!」




50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:05:12.62 ID:2txrWpErO
私は大声を出して体の呪縛を解き、おもいっきり右足で大地を踏みつけた。
足を軸に一気にからだを反転させる。
数m後ろの電柱の陰から現れたのは……






唯「イェイ☆わたしだよンッ!」

って!

律・澪「おいぃぃぃッ!!!!!」



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:07:07.34 ID:2txrWpErO
澪「なんで唯がいるんだよ!?」

唯「えへへー、お二人さんがあまりに仲良さそうに帰ってくの見て、つけてこっかって。ね、ムギちゃん?」

紬「はい♪」

律「うひゃぁっ!?」

反対側の電柱からヒョコッと顔を出す。忍者かおのれらは!!


紬「唯ちゃんがどうしてもって聞かなくて♪」

梓「私のレーダーが反応するわッって言ってつけだしたのムギ先輩じゃないですか」

澪「あ、梓までぇ」


澪がその場にへなへなと崩れおちる。
私にも一気に安心感と脱力感が襲ってきた。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:08:31.56 ID:2txrWpErO
律「お・ま・え・ら・なぁぁぁ!めっちゃめっちゃめぇぇっちゃびっくりしたぞ!!」

紬「ごめんなさい、驚かすつもりはなかったんだけど……」

律「いやいや、これ以上はないってくらい驚かしてくれてありがとう!!」

唯「どういたしまして~」
律「誉めてねぇっ!!」



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:10:04.95 ID:2txrWpErO
梓「ほんとにすみませんでした。……澪せんぱぁい?」

澪は泣きながら口をパクパクさせている。……うん、私も泣きそうだった、正直。

唯「りっちゃん隊員だけだと力不足だよ~。やっぱ私達もいないとね!」

律「なにお~?あのなぁ!!おまえらがいなくたって、私一人で澪くらい守れるわい!!」

紬「まぁまぁ、今日は大丈夫だったことですし」

律「そうだな……予想以上にストーカーって怖いんだな」




55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:11:44.19 ID:2txrWpErO
唯「ほぅ?」

なんでもねぇよ!と強がる。

梓「でもこれからもこんな恐怖に脅えるのはやですよね……
何かいい方法はないでしょうか?」

唯「あっそおだ!明日土曜日で休みでしょ?
みんなでお店に対策グッズ買いにいこーよ!」

澪「対策グッズ?」

澪がようやく口を聞けるようになった。
対策グッズ?唯がまた変なこと言い出すんじゃ……



56 名前:ふふ……:2009/11/18(水) 01:13:34.17 ID:2txrWpErO
唯「ほら例えばおっきな音がなるヤツとか身を守る武器とか」

紬「防犯ベルと護身刀?」
律「刃物?物騒だな、おい。」

梓「とか言って先輩はみんなと買い物に行きたいだけじゃないですか?」

唯「えへへー。……はっ、澪ちゃんの心配してるんだよ、もちろん」

うんうん、と唯が殊勝にうなずく。
梓の指摘のほうが的を射てるなこりゃ。



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:15:06.09 ID:2txrWpErO
澪「私は……構わないよ?」

一同「さんせー!(です)」

律「じゃ、明日の昼、駅前商店街集合なっ!……唯遅れるなよ?」

唯「了解しました、りっちゃん隊員!」

本日再敬礼だ。残念ながら甚だ疑わしい。

澪「じゃ、私達家すぐそこだから。……ここまできたら怖くな、ないぞっ!」

律「今度からストーカーに遭ったらダッシュだな!」
梓「普通はそうする……あいてっ」

天誅っ!そんなに私達怖がって見えたか?お?

紬「では、また明日」




58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:20:50.68 ID:2txrWpErO
澪「解散だな」

梓「律先輩、澪先輩を家までお願いしますね?」

律「分かってるって!私一人で全然大丈夫!
そんじゃあし…………」





瞬間
ゾクッ、とした。

俗っぽい言い回しがこうも当てはまるほどに、背筋が凍りつく。


さっきのあの視線だ。




59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:22:24.39 ID:2txrWpErO
あの視線だ。……見られている。明らかに敵意を持った者の目だろこれは……


とっさに周りを見回す。……誰だ?……誰なんだ?





瞬間的に出処を探りだした私は、小さな声で呟いた。




律「……唯?」




61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:25:55.08 ID:2txrWpErO
はい、幸編、律編の第一回が終了です。

携帯からなんで分からないんですが、改行とか見辛くないですか?
あと地の文中途半端ですよね、すみません。

ちょっと風呂いってきます……



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:30:19.13 ID:Du3GZ8J6P
俺は見辛いとは思わない

期待して待ってる



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:16:21.84 ID:2txrWpErO
幸・弐


幸「こんにちはー」

紬「こんにちは、幸ちゃん。
今日はフルーツジュレよ♪今流行りのヒアルロン酸入り♪」

ムギ先輩は今日も笑顔でお茶菓子をふるまってくれる。

幸「わあぁぁ!おいしそうです♪どんどんぐれーどあっぷしてる感じですよね。
いつもいつもありがとうございます!」



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:17:28.84 ID:2txrWpErO
紬「いいのよ、たんと召し上がって♪」


鞄を長椅子に放り、席につく。
スプーンでふるえるゼリーをすくいとり、口へ運ぶ。
どこかで冷やしてたのか、と思うほど冷たいゼラチンがほてった喉をとろけ落ちた。



軽音部に入部して一ヶ月半、街にも学校にも慣れてきた。

音楽室の扉をくぐるのも、はや50回か……早いものだ。



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:20:15.34 ID:2txrWpErO
紬「幸ちゃん、調子はどう?」

ムギ先輩はティーカップを口に運んだ。窓から入る涼しい風が、ふわりと金髪を撫であげる。
三時のティータイムがこれほど似合う女性もいないのではないか。

幸「はい!ドラムの方はだいぶ勘が戻ってきました。
返却されたテストは散々でしたけど……」

紬「幸ちゃんならしっかりしてるから大丈夫よ♪
次で取り戻しましょう。私も頑張るから♪」


どうやら私はしっかり者に見えるらしい。
あはは、と苦笑い。




72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:21:45.46 ID:2txrWpErO
梓「横ちゃん、食べ終わったら早く練習しよっ」

梓先輩はまるで私が親友であるかのように後輩を可愛がってくれる。
今日も練習熱心だ。早くもベースを取り出している。


幸「はぁぃ!横ちゃんすぐ行きま~す!」

元気よく返事をかえす。
横ちゃんとは梓先輩が使う呼び名だ。幸と呼ぶのは恥ずかしいとのこと。
新しい呼び方、私は好きですよ?先輩。



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:23:24.99 ID:2txrWpErO
幸「あれっ?律先輩は今日はどうしたんですか?」

紬「りっちゃんは今日は月例のクラブ部長の集会ね。
遅くなるだろうから、先に練習始めてましょうか」

幸「は~い!」

最後の一口を味わいながら流し込み、設置されたドラムの方へ向かった。


椅子に腰掛け、個別練習に入る。
運動部の忙しさのあまり、軽音部に出られず、ドラムをほとんど触る機会のなかった私も、最近ようやく感覚を取り戻してきた、という感じだ。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:24:31.64 ID:2txrWpErO
ジャーン

ドラムの音に負けない、ベースの重低音が響く。
梓先輩は最近同じパートを繰り返し、練習している。
……なかなか上手くいかないみたい。

梓「ふぅ、やっぱり四本は慣れないなぁ」

幸「四本?今弾いてる部分のことですか?」

梓「え?あ、あぁなんでもないよ。うん、ここ難しいんだ。
……頑張らないと」

そう言ってうつむいてしまった。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:25:33.04 ID:0dhczfUfO
おいおい、横山のあだ名はよこちん一択だろ・・・



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:26:16.76 ID:2txrWpErO
梓先輩のベース演奏は上手だと思う。それに練習にここまでひたむきにうちこめるのはすごいことだ。
しかしたまに違和感のようなものを感じるのは気のせいだろうか?

例えば、梓先輩がベースを持つポーズはキマってるし、ストロークからも、長年やってきた、という感じを受ける。

だが、そこそこ簡単だと思われる場所で間違えることがよくあるのだ。
あと、たまに弦を押さえる指が泳いだりする。

なんと言えばいいか、そう、『楽器に苦心している』、そんな印象をうけるのだ。


幸「せんぱぁーい」




78 名前:>>75女子校で横チンは……w:2009/11/18(水) 02:28:56.97 ID:2txrWpErO
梓「にゃっ!」

元気づけようとして後ろから抱きついたら、驚かれた。
……先輩は猫ですか?

梓「もぉっ!びっくりするじゃん!
……大丈夫、落ち込んでないよ?」

梓先輩は顔を赤くしながらも、優しい表情で後輩を気にかけるのを忘れない。
ほんとにいい先輩だ。


幸「ふふ、先輩抱きつきやすいんです。あったかぁい」

先輩に少し寂しげな表情が浮かんだ。



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:30:14.55 ID:2txrWpErO
紬「うふふ♪ほんと仲良いわね二人とも」

幸「先輩方すごく面倒みてくれるんで、私もつい甘えちゃうんです」

私が梓先輩に抱きつく時、いつも以上にムギ先輩はニコニコする。
……いやニヤニヤかもしれない。



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:31:54.75 ID:2txrWpErO
ムギ先輩は、うん、どちらかと言えば率先して練習しないほうだ。ちなみに律先輩もそう。
なのに二人とも担当楽器はすごく上手い。三年間そうとう練習してきたんだろう。


ムギ先輩は、時折、遠い目をして窓の外を見つめている。なんとなく哀愁を感じてる大人の女性に見えて、妙に色っぽい。
ただ、そういう日には練習の方に身が入らないみたいであるが。


梓「ムギ先輩も練習しましょうよー」

紬「え?……えぇそうね……」

どうやら今日はそんな日らしい。



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:33:18.26 ID:2txrWpErO
と、そこでドアがいきおいよく開いて、律先輩が入ってきた。

律「いやー、終わった終わった!」

梓「お疲れ様です。意外に早かったですね」

律「ん? あぁさわちゃんにプリントもらってちょい話聞くだけだったからさ」

さわちゃんとは、顧問のさわ子先生。
私は今年度からの新任教師と聞いているが……
昨年謹慎処分となっていたとの専らの噂である。



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:34:40.25 ID:2txrWpErO
律「今日はやる気しないなー。ムギ、お茶ー」

梓「もぅっ!練習しましょうよぉ!」

紬「まぁまぁ、梓ちゃんも幸ちゃんもお茶にしましょ?」

幸「梓先輩、ちょっと休憩しましょ?」

う゛ーと言って席につく梓先輩。

私はこの放課後のティータイムが気にいっていた。
練習より、ティータイムの時間が長いことにも特に抵抗なく楽めた。



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:36:01.87 ID:2txrWpErO
とりとめのない話に花を咲かせる。
やっぱり何が楽しいかって、雑談している時が一番楽しい。


律「そんな焦るなよ、梓。
今年の文化祭までまだ五ヶ月以上あるんだからさ!」

梓「文化祭……そうですね……」

先輩の表情が陰る。

幸「ん、梓先輩どうかしました?」



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:37:57.58 ID:2txrWpErO
梓「えっ? ううん、軽音部で初めての文化祭だなぁって思ってさ……」

幸「そうですね!それまでに完璧にできたら……
それにしても、今練習している曲オリジナルですよね!?
独創的ですけど、誰が作詞したんですか?」



とたん、場が水をうったように静かになった。
や、やばい。まずったかも……。



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:39:34.22 ID:2txrWpErO
や、やばい。何か私まずいこと言っちゃったかな。

幸「す、すみませんっ」

とりあえず意味もなく誤る。

律「わ、」

律先輩が声を上げたので、私は嘆願の目で先輩に場のフォローを求めた。

律「私が作詞したんだぁ!あはははは!
独創的で悪かったなこのやろ~!」

幸「えっ、そ、そうなんですか!?
いや、あの……」




88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:43:36.40 ID:2txrWpErO
幸「そのぉ、上手い言い回しを使った良い曲だなぁ、と思って」

あはは、と軽く笑って流せた。
先輩達の様子は、どうも腑に落ちないな、とは思ったけど。


紬「あ、雨……」

窓にふと目をやったムギ先輩の言葉に外を見やると、ザァァと大粒の雨が降り出していた。



梅雨。温かいあめ。
まるで『これから暑くなるぞぉ!溜めとけよ!』とでも、お天道様がいっているようだ。



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:45:56.20 ID:2txrWpErO
律「雨かぁ……」

律先輩が、どこか感慨深げにつぶやく。



誰もしゃべらなくなった。

みんながみんな、心ここにあらず。別々の一点をぼんやり見つめている。


歌詞で?

雨で?


軽音部に入部して一ヶ月半、
この軽音部には、私の知らない過去があるのかもしれない。

そう私が初めて感じた日であった。


季節は六月・梅雨。
立ちこめる湿気が、夏の到来を示唆していた。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:50:39.15 ID:2txrWpErO

幸編・弐終わりです。先輩になったあずにゃんが脳内変換できない……


律編・弐を書いて、今日は寝ます……『なんでこんな時間に立てた?』……すみません、すみません……



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:52:04.61 ID:2txrWpErO
律・弐


唯「ごめんねー遅れちゃったぁ」

律「てぃっ!やっぱ遅れてんじゃねーか!!
いいだしっぺが遅れるな!」




93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:54:03.70 ID:2txrWpErO
唯の肩にチョップを繰り出す。
今に始まったことじゃないから、もうさすがに慣れたよ、唯。


よくじつ、私達は予定通りに、買い物をするため駅前商店街に集まった。
夏休みは練習、宿題となんだかんだで忙しかった。みんなと買い物にくるのは、合宿の買い出し以来になるだろうか。
なんにせよ、澪を含めて全員が買い物を楽しみにしているようだった。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:54:54.57 ID:2txrWpErO
唯「えへへーごめんごめん。
それにしても買い物久しぶりだねー。今日はいっぱいお金持って来ちゃった!」

唯なら何をやっても『えへへー』と『ごめんねー』のコンボで許されるよな。

澪「おーい、当初の目的を忘れるなー」

澪が恨めしそうに唯をトントンとたたく。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:58:01.52 ID:2txrWpErO
梓「それじゃ、行きましょうか。………分かってます、唯先輩、服からですね?」

唯「やったぁ!!さすがあずにゃん!!大好きだよぉ」

梓「えへへ……ハッ、も、もちろん澪先輩の用事も忘れてないですよ!?」

梓……唯と澪、両立は難しいぞぉ?

澪「いいよぉ!服からでもっ!!」

紬「ふふ♪」



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 02:59:44.10 ID:2txrWpErO
律「そんじゃ行くかっ!」


今日、私は買い物以外にもうひとつ目的があった。

唯のことだ。

気のせいならいいんだ。
あのストーカーを思わせる目線が唯のものなんて……
むしろ気のせいであってくれ……


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100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:00:57.82 ID:2txrWpErO
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唯「ぷっはぁ、いっぱい買ったねー!!」

澪「結局私もたくさん買っちゃったな…疲れた……」
梓「お疲れ様でした。澪先輩が買ったレギンス私もいいと思いましたよ」

澪「あ、ありがと」

澪はみるみる赤くなって、声はデクレッシェンド。
私もかわいいと思うぞ、自信もて!



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:01:41.74 ID:2txrWpErO
律「それじゃ目的の品探しにいくか!!」

紬「そうね、夕飯にはまだ時間もあるわ」

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102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:04:00.24 ID:2txrWpErO
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やってきたのはこぢんまりとした店。
防犯専門店と銘打ってある。分かりやすい。


唯「こういうお店だよね?
あ、あったよ防犯ベル!!護身刀もある!!」

澪「ベルは分かるけど、護身刀なんて持ってもいいのか?銃刀法に違反するんじゃ………?」

律「銃刀法って……やっぱ物騒だぁ」




103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:05:50.81 ID:2txrWpErO
律「銃刀法って……
まぁいいんでない?何もみだりに振り回すわけじゃないしさ」

紬「護身刀って威嚇用ですしね」

見ると意外にも種類は豊富だ。
すると唯がお目当てを見つけたらしく、そっちの方へ駆けていく。

唯「ねーこの刀かっこよくない?
柄に天使?が彫りこんであるよ!」




104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:07:01.94 ID:2txrWpErO
なるほど、確かにその刃渡り20cmほどの刀の柄には天使の絵が刻まれていた。
紬「ラファエロの聖母子像ね。上手に描いてあるわ」
その聖母は優しい微笑をたたえこちらを見ている。
本当に上手に彫りこんであり、そのリアルさがかもす深遠さが、御利益があるのでは、と思わせた。


唯「こんな刀で刺されたストーカーさんは、間違いなく地獄いきだね!」

律「わっ!こっちむけんな!」

梓「怖いこと言わないでくださいよ唯先輩。使わないに越したことはないんですから」

澪「そうだぞ!…まぁでもかわいいな、買っちゃうか」

律・紬「え」



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:08:16.57 ID:2txrWpErO
かわいい、とは大分違う気が……

澪「だってかわいいじゃん、律もそう思うだろ?」

律「えぇー!趣味悪ぃ!澪はやっぱ変なとこでセンスが独特だな」

唯「いいじゃんいいじゃん、テンスみたいな澪ちゃんにはぴったりだよ!!」

澪「」

紬「ふふ♪」

梓「ムギ先輩笑うところじゃない気が……」

大方最近インターネットでみかける言葉を誤用したのだろう。確かに笑うとこではないな(笑)

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107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:09:53.10 ID:2txrWpErO
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律「結局ベルも刀も買っちゃったな」

紬「刀といってもナイフくらいの大きさだから、大っぴらに人前に出さなければ大丈夫ね」

澪「そうだな、しばらく携帯してみるよ。あっでも」
律「?」



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:11:50.44 ID:2txrWpErO
律「?」

澪「あの、さ……しばらくは家まで送ってくれるないか?
律はさ、その……やっぱ頼りになるからさ」

萌え萌えキュ(ryだ。
ウルウルした目で、たまに素直にこういうことを言うから困る。

律「澪…… 仕方ねぇなあ!!頼られてあ・げ・る♪
ほらみろ!あたしは唯隊員より頼りになるってよ!!」
唯「ぶー」

梓「よかったですね律先輩」

律「う、梓にいわれるとあたしが子供みたいだ……」
紬「ふふ♪」



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:12:54.11 ID:2txrWpErO
澪「じゃ、今日はここで解散しよっか」

唯「うん、そだね。憂が晩御飯つくって待ってるよぉ」

梓「お疲れ様でした」


特に何事もなく買い物終了ぉ!やっぱり五人だと安心するよな。
観察してたけど唯にも特に変わったことはなかったし。澪にも頼られて気分は上々!!
明日もいいことありそうだ!!



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:24:28.96 ID:2txrWpErO
律編・弐終わりです。
初めて書き溜投下するんですけど、思ってたほどレスかかりませんね。普通に終われそうです。

とにかく三分の一、終了っす。ただ、幸の三回目と最終章書き溜まだなんで……頑張って仕上げます。

すみません今日は寝ます、明日学校なんで……申し訳ないです。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 03:25:25.22 ID:ZZHJ7JJk0

また明日がむばれい!



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 18:09:24.56 ID:2txrWpErO
律・参


それから約二週間、私は澪を澪の家まで送った。
その途上で不審者に会うことは一回もなかった。防犯グッズもお役御免だ。


あれを澪の勘違いだと考えることもできる。実際ムギも梓も、そう考えてるらしかった。

ただ後ろを歩いていた人をストーカー扱いするなんて思い上がりだ、なんて……そこまでは言ってないけども。


でも私は澪を信じている。
なによりあの日の澪はほんとに脅えてたから。自分で作りあげた話に、あそこまでは脅えないだろう。



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 18:11:10.80 ID:2txrWpErO
九月ももう終わろうかという今日、私はさわちゃんに呼ばれて居残ることになった。


律「なんか月例のクラブ部長の集会だって、今日は先帰っててくれ」

澪「えっ!?……う、うん。
……大丈夫だよ、途中まではみんな一緒だし。心配しないで、律?」

律「あぁ悪いな!気を付けて帰れよな!」

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155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 18:16:55.51 ID:2txrWpErO
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律「なんだよ、書類提出だけかい!」

さわ子「いいじゃなーい、早く終わるほうが。
それより澪ちゃん大丈夫なの?」

私たちはもちろんこのことを顧問にも相談していた。……とくに安全策が講じられることはなかったが。



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 18:25:20.79 ID:2txrWpErO
私が妙にそわそわしているのを見て、感づかれたようだ。

さわ子「でも二週間もたつわよねー。
そろそろりっちゃんのお守りも必要ないかもね。澪ちゃん一人で大丈夫なんじゃなーい?」

……何が、大丈夫なんじゃなーい?、だ。
私が必要ないって言われたような気がして、ちょっとムッときた。

律「澪は私がいないとダメなんだよっ。
ってかみんなさっき帰ったばかりだよな……走れば追い付くかも……。
そいじゃね、さわちゃん!!」

さ「忙しいわね~。はぁぃ、気を付けて……ね~」

さわちゃんは大きくあくびをした。

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158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 18:26:58.69 ID:2txrWpErO
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律「ハァ、ハッふぃ~、解散場所では追い付けなかったか。澪はもう帰ったかな」

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159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 18:28:01.77 ID:2txrWpErO
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あっ澪だ。なんだろ、妙に早足だな。
こわばった首筋、固まった体を無理に動かそうとしている、ギクシャクした歩み。
……って!!まさか……今ストーキングされてるのか!?
どこだ、どいつだ!?澪を怖がらせるヤツは私が許さない!!



澪「!!律ぅ、助けてぇ!」
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161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:21:11.40 ID:2txrWpErO
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律「澪!!大丈夫か!?つけられてたのか!?」

私は急いで澪のもとに駆け寄った。

澪「ヒック、うん……ま、間違いない……」
う、後ろに……後ろに人が歩いているなとは気づいて、いたけど……
お、追い掛てきたんだ!!す、すごい勢いで……そ、その……後ろ振り向く暇もなくて……」

かわいそうに、澪は芯まで震えていた。
顔は青ざめ、呼吸は荒い。
……まてよ、そいつは今もこの近くにいるんじゃ……。



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:22:26.12 ID:2txrWpErO
澪「い、今は……?今は後ろに誰かいない?」

同じことを考え、澪がことさら脅えた声で私に尋ねる。
私は急いで通りを見渡した。


すっかり暗くなった空の下、家並みと路地を照らすのは消えいりそうな街灯だけ。

街灯の照らさない路地端の闇が、もう人を消してしまっていた。
聞こえるのは紅葉しかかった木の葉を、風が吹き抜ける音だけ……。



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:23:37.08 ID:2txrWpErO
律「だ、大丈夫そうだ。とにかく早く家に帰ろう!」

私だって怖い!
あの視線を感じたから分かる……ほんとに殺されるっ……!



そのあと私たちは走って澪の家までたどり着き、澪を送り届けたあと、私も一目散に家へ駆け込んだ。

律「なんだよ、マジでストーカーかよ!!シャレになんねーって!」

ムヴィーンムヴィーン

律「ん?」




164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:25:17.20 ID:2txrWpErO
律「電話? !!澪からだ!」

急いで電話にでる。

律「もしもしッ!?」

澪「律……?」

律「澪ッ、どうした!?」



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:34:09.80 ID:2txrWpErO
声がか細い。消え入りそうだ。何かあったのか、と気が気ではない。

澪「いや、特には………
その、今日のことで…」

どうやら澪は家で安静にしているようで、私はいくぶんか安心した。

……澪は続ける。



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:37:57.54 ID:2txrWpErO
澪「こ、怖かった…ほんとに後ろ振り返るヒマもなく……なくてッ……ほんっ……殺されちゃうんじゃないかって」

泣いていた。澪は泣いていた。切れ切れに聞こえる澪の嗚咽が私の胸を閉めつける。

同情と一緒にストーカーに対する言いようのない怒りが沸き上がる。

……澪に……けなげな澪にこんなことしやがって!



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:39:28.45 ID:2txrWpErO
澪「でもね」

澪の声の調子が少ししっかりした。

律「?どうした澪」

少しの沈黙……

私は澪から何か言うのを待つ。


澪「律が助けにきてくれて嬉しかった……。
ほんとに怖くて……こ、殺されちゃうんじゃと思って……
軽音部のみんなや……律に会えなくなっちゃうと思うと、足、動かなくて……」

律「……うん……うん……」


澪「でもね……?」




168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:41:58.85 ID:2txrWpErO
澪「でもね?……でも律が見えた瞬間、怖さの半分以上安堵に変わっちゃったよ。
律が来てくれただけで助かったような気がしてさ……」


澪「律は……律はこれまでも私がいてほしい時にそばにいてくれたよね?
難しいことなのに、律は当たり前のように来てくれた……今日も。
ほんとに感謝してる。ありがと」


ありがとう、律。大好きだよ。


律「み…お…」




169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:42:54.64 ID:2txrWpErO



怖い思いをしたのは澪なのに、泣きたいのは澪のはずなのに。

何故か私が泣いてしまった。

澪が私を頼ってくれている。大好きだって言ってくれる。……私も……私も大好きだよ、澪

律「……当たり前だろ?
今だって……これからだって、私はずっと澪のそばにいるよ。
だから……安心してくれ。
澪は私が必ず守ってやるから!」


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170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 19:44:20.38 ID:2txrWpErO
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それから二言、三言短い会話を交し、電話を切った。
胸の動悸が早い。

それは今日のストーカーの脅威からくるものではない。
自分の、澪に対する好意の高まりを裏付けていた。

律「好きに、……なっちゃったのかな……」



177 名前:おさる初めて……:2009/11/18(水) 20:26:35.99 ID:2txrWpErO


でも不思議と後ろめたい気はしない。
むしろずっと一緒だった幼馴染みに好意を抱くのは自然な感情に思える。


律「澪は私が守ってやらないと!
明日からも澪には笑顔でいてほしいしな!
明日からはストーカーなんて、でませんよーに!!」

なんか胸の中がすっきりした。

気恥ずかしさに、一人、えへへと頭を掻く。

澪が、私のこと、大好きだって。えへへ///







そして次の日から、ストーカーは全く姿を見せなくなった。



178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 20:28:48.54 ID:2txrWpErO
幸・参


「おぉーい梓~。後輩の子がきてるよ~」

教室の数人が一瞥をやる。……うぅ、恥ずかしいなぁ。

梓「んー?
あ、横ちゃんじゃん」



179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 20:31:23.32 ID:2txrWpErO
私の姿を認めて、梓先輩がとことこ駆けてきた。

梓「なになに?どうしたの横ちゃん?
上級生の階に来るなんてめずらしいね」

幸「あ、はい、さわ子先生から、みんなに渡しといてってプリントもらったから……」

そう言って、私はプリントを取り出した。

梓「さわ子先生自分で配ればいいのにね?横ちゃんにまかせっきりじゃん。
とにかくありがと!
……へぇ、夏休みの音楽室使用日程かぁ。もう夏なんだねー」

先輩は、廊下に入ってくる日射しを眩しそうに見上げた。



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 20:32:55.81 ID:2txrWpErO
もう夏である。
白い校舎は夏の日射しを照り返し、桜高の気温は日に日に上昇中だ。
外ではセミがやかましく鳴きわめき、体育のソフトボールの掛け声が、灼熱の鉄板と化したグランドから響いてくる。


梓「これから三年の教室にも行くんでしょ?
私も先輩に渡すものがあるから、一緒に行くよ」

そう言ったときに、女の子が一人こちらに近づいてきた。



186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:02:01.44 ID:2txrWpErO
「梓ちゃん、今日日直だって!」

髪を後ろで束ねた、整った顔立ちをした先輩が梓先輩に声をかけた。

梓「えっ、そうなの?
参ったなぁ……。今渡しに行きたいのに……」

「あ、梓ちゃん。もしかしてこの子が新入部員の……?」



187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:03:38.07 ID:2txrWpErO
梓「うん、そうだよ。一年生の横川 幸」

紹介され、私はペコリと頭をさげる。

「初めてまして。平沢 憂です!
梓ちゃんとは二年間クラス一緒で友達なの。
横川さんのことは、梓ちゃんからよく聞いてるよ!
しっかりしてて、可愛げがあるいい後輩だって」

梓先輩が居心地悪そうに咳払いする。



188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:04:49.51 ID:2txrWpErO
幸「いえそんな、しっかりだなんて……。
梓先輩も練習熱心で頼れる、いい先輩です!!」

誉め言葉の応酬。でも私はほんとにそう思ってる。

梓「ごほん、まぁでも、しっかりさにかけて憂の右に出るものはいないんだよ?
ほんとにできた妹なんだから!」

憂先輩には姉がいるらしい。



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:06:24.64 ID:2txrWpErO
憂「そんなこと全然ないよぉ。
それよりもし良かったら、梓ちゃんの渡したいもの、三年生の教室に届けにいくよ?
私も用事があるんだ……」

そう言って憂先輩は目を伏せた。
梓先輩が何かを気遣ってか、声をかける。

梓「……律先輩のとこだね……」



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:07:51.27 ID:2txrWpErO
梓「……うん、分かった。お願いするね!
横ちゃんのことも頼んだよ」

幸「すみません、お世話になります」

憂「いいよ、気にしないでー」

憂先輩が優しく声をかけてくれた。
声の調子がとても柔らかくて、聞いていてこちらも穏やかになれる、いい声。

憂「じゃ、いこっか?」

梓「あっ憂!」

憂「ん?どうしたの、梓ちゃん?」

梓「その……落ちこまないで……?
あと、気をつけてね?」


またひとつ、腑に落ちないことが増えた。

―――
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193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:08:54.78 ID:2txrWpErO
―――
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―――――――


憂「横川さん、軽音部はどんな感じ?」

幸「あ、あの呼び捨てでいいですよ?
軽音部ですか? はいっ、とってもいい部だと思います!!
先輩方はみんな優しくしてくれるし、のんびりした雰囲気も私大好きなんで!」

憂「そうなんだ、良かったね!
じゃ、梓ちゃんにならって、横ちゃんって呼ぶね♪」




194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:09:46.72 ID:2txrWpErO
幸「楽器もみんなとっても上手で……私のドラムなんて、とても聞けたもんじゃないです」

憂「大丈夫、横ちゃんはまだ一年生だもん。
これからいくらでも練習できるよ。
…………ドラムかぁ」

さっきと同じく、意味深に呟く憂先輩。

……聞いてみようか?軽音部のこと……

幸「あの、憂せんぱ

「幸ちゃん、憂ちゃん?どうしたの、こんなところで?」



195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:11:19.35 ID:2txrWpErO

振り返るとムギ先輩がバケツ片手に立っていた。

幸「あ、ちょうどムギ先輩達の教室に行こうと思ってたんです」

そう言ってプリントを取り出した。

紬「ごめんなさい、幸ちゃん。今日私日直で、今手がはなせないの。
……りっちゃんに渡しといてくれる?」



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:12:32.76 ID:2txrWpErO
憂「お久しぶりです、紬さん」

紬「憂ちゃん、久しぶり。元気してる?」

憂「あ、はい。おかげさまで」

紬「ふふ、相変わらず礼儀正しいわね、憂ちゃん」

憂「そんなことないですよ!
……それにもう『私のお姉ちゃん』は帰ってこないですから……。
『できた妹』なんて言えないです……」

憂先輩が顔を歪めてうつむく。
……なにこれ、一気にシリアスに突入しちゃった……。

紬「憂ちゃん……もう限界でしょ?辛いわよね……」



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 21:13:32.45 ID:2txrWpErO

話の意図が分からず蚊帳の外だが、ムギ先輩は憂先輩を気遣っているようだ。

憂「いえっ」

愛くるしい目に溜った涙をふきとって、再び明るい笑顔を作る。

憂「私はお姉ちゃんが大好きですから!
だから……お姉ちゃんのこと、信じてます!」



212 名前:いけるかっ!?:2009/11/18(水) 22:57:48.89 ID:2txrWpErO

紬「強いわね、憂ちゃん♪私も信じてるから♪
それじゃ、ね。幸ちゃんは、また部活でね」

ムギ先輩は振り返ると、水がなみなみと入ったバケツを軽々と運んでいった。

しゃらんらしゃらんら~☆


―――
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213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:03:57.61 ID:2txrWpErO
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幸「軽音部で何かあったんですか?」

どうも私だけ、何も分かってない気がしてならない。
隠し事するのは好きだが、されるのは嫌いな質だ。
私は憂先輩に単刀直入に聞いてみた。

憂「な、なんのことやらー?」

憂先輩、それじゃバレバレですって……




214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:12:14.17 ID:2txrWpErO
憂「よ、横ちゃん、私軽音部員じゃないんだよ?
軽音部のことなら、横ちゃんのほうがよく知ってるって!」

……そうか、やっぱり私には言えないことなのか。
ならこちらも切札を、望み薄の切札をだしてやる!



幸「…………唯」

憂「!!」


引き当てた、かな?



217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:20:14.11 ID:2txrWpErO
憂「……そ、その名前どこで聞いたの……?」

憂先輩はやはり隠し事が苦手なようだ。

幸「私が軽音部に入部した日に一回こっきり、聞いた名前です。
そのときの先輩達の変わりようが異様だったんで……なんとなく覚えてて……」
大雑把とはいえども、大事なことはしっかり覚える。
都合のいい頭だ。


憂先輩は長い間黙っている。
まるで自己の考えと常識での考えを相剋させているような……

葛藤した末、憂先輩が出した答えはこうだった。


憂「やっぱり私の口からは言えない……ごめんね、横ちゃん……」



219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:25:32.18 ID:2txrWpErO


そうか……

幸「いえ、いいんです。すみません、変なこと聞いて」

憂「……でも……でも律さんになら……」



律「私がどうかしたー?」


……タイミング良すぎです、律先輩……



221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:30:53.40 ID:2txrWpErO

憂「……律……さん……」
憂先輩の緊張した声とは対称的に、律先輩はいつもの調子だ。

律「憂ちゃんも幸も、こんなとこにいるなんて珍しいじゃん!
どうかしたのか?」

幸「い、いぇ……」

尻すぼみに声をだしながら、チラッと憂先輩をみた。
先輩、お願いします、律先輩に聞いてください!


憂「あのっ」

Niceです!頑張れ憂先輩っ!
憂「お姉ちゃ

律「憂!!!」



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:34:35.71 ID:2txrWpErO

早すぎる。反応が早すぎる。
その怒声は三年廊下に響きわたり、何人かがこちらを、何何?と振り向く。

律「そいつのっ、名前は、口に、出すなよっ!!」

怒りに言葉も途切れ途切れだ。

憂「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

憂先輩は半泣きになりながら、うつ向いて何度も謝っている。
いくら律先輩でも、これは酷すぎないか?

幸「律先輩!憂先輩泣いてますよっ!いくらなんでもひどすぎ……」

律「さちっっ!!」

その剣幕といったら。
私はびくっとして、のけぞった。

律「さちっ、お前が聞いたのかっ!?
ほっとけよっ!!」



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:40:21.13 ID:2txrWpErO

こんなに怒った律先輩は初めてみた。
いつも面白くて、明るい元気な先輩が、カチューシャを取り外し、髪を振り乱してどなりつける。
逆鱗に触れた。まさにそうだった。


律「ハァ、ハァ……クソッ」

投げやりに悪態をはく。

律「ハァ、ハァ……フゥッ……悪かった……ちょっと自分を忘れてしまった……。
後輩にあたるなんて、部長失格だな……」

いえ、と小さくフォローする。
私も泣きそうになっていた。




226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:45:18.00 ID:2txrWpErO

律「……ごめんな……。
そうだよな、幸の立場だったらめちゃくちゃ不愉快だよな……知りたいと思うよな……。
ホントにごめん……。

でもな、やっぱり……」

律先輩が何かいいかけた……そのとき。

「おーい、大丈夫かぁー?
授業始めるぞぉ、教室戻れぇ平沢ぁ、横川ぁ」

先生が私達を呼んだ。

これでよかったんだ……多分律先輩は『お前には言えないんだ』と言おうとしたんだろうから。
律先輩に隠し事されてるという事実に向き合いたくない……。



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:50:18.05 ID:2txrWpErO

お互い目をあわせずに、なにともなく自分の教室へ向かった。
あ、結局プリント渡し損ねちゃったや、はは……。


途中、憂先輩はヒック、ヒックとすすり泣いていた。
その姿を見ながら、多分『唯』は憂先輩のお姉ちゃんなんだ、と推理している自分
なんて嫌な人間なんだ私。

先輩を梓先輩の教室まで送った後、私は自教室に戻り授業をうけた。

混乱する頭を整理する。
そして否応なしに好奇心は広がる。
詮索してはダメだとは思う。しかし押さえきれないのだ。
ホントに嫌なヤツ……


律先輩をあそこまで怒らせるワード。『唯』とは誰なのか。
軽音部とどんな関係があるのか。


クーラーのないうだるような教室で、私の頭はすごい勢いで回転し始めていた。。



229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:55:19.49 ID:2txrWpErO
幸・肆


翌日、私が向かった所は、この街にある警察署だった。
別に誰かが捕まったとか、そんなのじゃない。
ただの調べものだ、調べもの。


ならなんで、帽子にマスク、メガネなんかしているの?犯罪者なん?
と聞かれても仕方ない格好をしている。


これは……やはり昨日のことで、ほっとけと釘刺されたにも関わらず、『唯』のことを調べようとしている、その罪悪感からだろう。


誰にも見つかりたくなかった。

逆に言うと、見つからなければ調べてもいいと考えた。
私は、結局知りたい気持ちに勝てなかったのである。



231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 23:58:56.18 ID:cWg8x3m3O
幸は横山から横川に改名したの?
支援



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:00:43.31 ID:9qg6QhEVO

警察署に入り受付にむかった。
受付カウンターでは、中年の肉付きのよいおじさんが、肘をついてうとうとしていた。
こんな平和な街だ、やることもなくて暇なんだろう。

幸「すみません。この街で過去に起きた事件記録を見せてほしいのですが」

男「んあっ?なんだって?」

おじさんは私が来たのを見て、だるそうに伸びをする。
……ホントに警察署か、ここ?




234 名前:>>231ごめん、素で間違えた:2009/11/19(木) 00:06:20.61 ID:9qg6QhEVO

幸「ですからっ、過去の事件記録を見せてください!」

おじさんは私の頭の上から、足の先まで見下ろし、胡散臭そうに言った。

男「……じゃぁここに、見たい事件の日付、あとあなたの住所、氏名記入して」

やっぱりそうくるか!
様々な事件が綴られている帳簿は、まさにプライバシーの塊。
隅々まで見せてくれないとは思っていた。


しかし『唯』は、おそらくそう遠くない昔、おそらくこの街で事件に関わった可能性は高い。
見れなかったら無駄骨だ、引き下がらないと!




235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:11:41.14 ID:9qg6QhEVO

幸「私、その事件がいつあったかも分からないんです!
でもどうしても知りたいんです!」

男「規則は規則だから、困るよ」

大方、私が女子高生だとわかってうわてにでたのだ。
よっし、じゃぁとっておきだぁ!

幸「そ、そんなぁ、グスッ」
泣き真似。
おじさんはギクッとし、カウンター奥の同僚からは、『あ~ぁ泣かした』空気。
男「分かった、分かったよおお嬢ちゃん」

意外に簡単♪泣いてみるものだね!

男「……ったく、めんどくせぇな」


…………めんどくさかっただけかよ。


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237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:16:56.97 ID:9qg6QhEVO
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男「とはいってもなぁ……
だいたいいつごろか分からんと、膨大な量だよ?お嬢ちゃん」

幸「えっと、多分ここ一、二年の間だと思います」

憂先輩と軽音部の先輩が知り合って一年半。
憂先輩が関係あるなら、絶対にこの期間に間違いない。

男「二年て……。空き巣、引ったくり、そんなレベルからわんさかあるんだよ?
どんな程度の事件なんだい?」

幸「多分……大きな事件。
桜ヶ丘高校の女子高生が絡んだ事件……とかないですかね?」

ダメもとで聞いてみたのだが……

男「あぁ、あそこの高校で起きた大きな事件といったら、後にも先にもあの事件しかねぇなぁ。
ちょっと待っとき。……えぇっと昨年の……?」

おじさんは棚をごそごそやり始める。

あった。あったのだ。やはり事件が。
そんな有名な事件なのか?……なんか嫌な予感がする。




238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:23:07.79 ID:9qg6QhEVO


男「はいよっ、これだろ?
女子生徒自殺事件。この街始まって以来の大きな、嫌な事件だったなぁ」

おじさんから手渡された資料を食い入るように見つめる。

男「というか比較的最近の有名な事件じゃないか。
この街の者ならみんな知ってるぞ?
なぁ、お嬢ちゃん?…………お嬢ちゃん?」






なんだこれは。




239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:26:31.52 ID:NCOOQ/fqO
自殺…だと…



240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:26:42.70 ID:9qg6QhEVO

一体どういうことなのか、事態がまったく飲み込めない。


なんで二人も死んでいるんだ?




『誰だ、これは?』




殺人? そして自殺?

それにこれって…………




241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:36:03.09 ID:9qg6QhEVO

幸「私、今春この街に越してきたんです。
桜ヶ丘高校一年生で、軽音学部に所属しています」


資料の信じがたさに、自分が何を言っているのかも分からない。
体がおそろしく震えているのは確かだった。


嘘だ。資料が嘘なんだ。だって意味が無い。 意味が分からない。



男「へぇ軽音学部に!
部活動また再開してるんだねぇ!」

おじさんは私が軽音部員だと分かった瞬間、私ににわかに興味を持ったようだ。
男「まぁ今年越してきたんなら、知らないだろうねぇ。
あれは凄惨な事件だったなぁ。
一人は殺され、一人は自殺。おぉ怖い怖い!
最近の女子高生は狂ってんなぁ」


おじさんに何を言われても、私の心はさわりとも、なびかなかった。



243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 00:47:04.54 ID:9qg6QhEVO

男「どうだい?きがすんだかいお嬢ちゃん?
終わったら早く帰ってくれー」

追い出されるように警察署からでた。

こんなに暑いのに帽子とマスクを着用している私は、周囲にはさぞ変に映るだろう。


そしてこんなに暑いのに、私はとても涼しい。
冷や汗が止まらない。
どうしてだ、どうしてこうなった……



その日、私は足取りもおぼつかず自宅へ帰った。

夕方にはひぐらしが泣き出した。
まだ八月も上旬なのに冷夏のせいなのか。

知らなければ良かった……
今さら後悔しても遅かった。




283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 19:38:41.14 ID:9qg6QhEVO
律・肆


唯「えっ弦って交換するものなの?」

一同「なにぃ!?」


学園祭も近付いた、十月のある日は、唯の常識外れの質問から始まった。
唯がギターを『大切に』してるとこはありありと目に浮かぶなぁ。
でもギターの弦を変えることぐらい私でも知っとるわい!


唯「さわちゃん先生なんとかしてよ~」

さわ子「えぇー、やっぱりそおゆうのはお店の人に頼んだ方がいいんじゃなーい?」

絶対めんどくさいだけだろ……

唯「えぇっ、そこまでしなくても!」




285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 19:43:53.17 ID:9qg6QhEVO

梓「いや!学園祭も近いのにこれじゃ練習にならないですよ!」

梓が唯に詰め寄る。
いつもは梓のやる気に振り回されっぱなしだが、今日ばかりは同意見だ。


唯「りっちゃんはお手入れなんかしないよねぇ?」

律「しとるわい!」

唯「ぶー、りっちゃんのくせにぃ」

一発グーをお見舞いしてやった。


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286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 19:48:13.37 ID:9qg6QhEVO
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律「はいはいとうちゃーく」

澪「じゃあ私ここで待ってるから」

梓「どうしてですか?」

聞くと、右利き用ギターばかりで鬱になるらしい。
自分が使えないもん見ても面白くないわな。
……ん?

律「あ、でも澪?なんかレフティーフェアやってるよ?」


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288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 19:52:54.90 ID:9qg6QhEVO
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澪「ここは天国ですかっ!?」

そう言ってギターに魅入る澪は、まるでおもちゃの王国にやってきた子供のように生き生きとしている。

楽しむ澪をおいて、ムギの所へ行く。

しばらくムギとマラカスをふって遊んでたら、どうやら唯のギターのメンテナンスが終わったらしい。

メンテはまたもやムギの恩恵をこうむった。
……借金だらけだぞー、唯。

梓「あれ、でも澪先輩は?」

帰る段になって梓が気づく。

律「あぁー、呼んでくるわー」




289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 19:59:16.30 ID:9qg6QhEVO

律「澪ー帰るぞー」

澪「やだ」

律「小学生か。澪しゃーん」

澪「やだ」

何かに一生懸命になってる澪を急かすのは気がひけるが……。
みんなを待たせちゃいけないだろう。
私は澪の襟を無理矢理引っ張った……。

澪「バカっ!」



290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:09:22.99 ID:9qg6QhEVO

ズシン!
澪がベースとともにしりもちをついた。

律「あは、何やってんだよ澪!」

いつものようによくあることだろー?
そう思ったのに……。



澪「もういいよ!」

律「……え?」

澪「……馬鹿律」


え?


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292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:19:39.24 ID:9qg6QhEVO
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紬「このあとどうします?」

律「そうだなー。よし!お茶にするか!」

梓「またですか……」

唯「ごめーん、私和ちゃんと約束あるんだぁ」

律「えぇー」

なんだよ唯、のり悪いなー!
パァッと盛り上がろうと思ったのに。

澪「えぇ和も来るの!?私も行っていい!?」

律「え?」



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:27:08.90 ID:9qg6QhEVO

澪がこう言った時の心情は唯の時の心情とは、まったく違っていた。

澪……お前も行っちゃうのか?
私達おいてっちゃうのか?

……私より和のほうがいいのか?



唯「うんいいよー。
和ちゃんに連絡してみるねー」

澪「はは、ありがとー!」

行くな……行くなよ……
澪をとるなよっ!
……ずっと、ずっと私のそばにいてくれよ……!


その時だった。



また……あの視線だ。




295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:33:29.06 ID:9qg6QhEVO

あの視線を感じる。
今度は背後からなんかじゃない。
まざまざと正面から、あの冷気が襲ってきた。


唯がこちらを見ていた。
まるで私の中の全てが見透かされているよう。
数週間前体験したのとまったく同じ感覚。

私は確信した。

唯が……唯が澪をストーキングしていたヤツだ!

澪は……澪は和にも唯にも渡さない!!
澪は私が守るっ!!


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296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:35:02.37 ID:NCOOQ/fqO
りっちゃん…



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:39:24.86 ID:9qg6QhEVO
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その時から私は、唯が澪に近づかないよう牽制した。
確かに和は悪気はない。
分かってはいたのだが、自分でも認めたくない、つまらない感情によって、和も牽制するはめになった。


言うまでもなく、嫉妬、である。


お二人さん仲良いっすねー!
いやーいつもウチの澪がお世話になってますー!

ランチタイムしゅーりょー!
これから学園祭までは、昼休みも練習するから!


そう口実づけて、澪を離れさせた。
昼休み……



299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:45:28.96 ID:9qg6QhEVO

律「ふぅーん、もどれば?」

澪「えぇ?」

律「悪かったよ、せっかくの和との楽しいランチタイムを邪魔してさっ!!」

澪「はぁ?そんなこと言ってないだろっ!」

ほんっと素直じゃない。
これじゃ仲がこじれる一方じゃないか。

……それなのにやめられなかった。


後輩の梓に気ぃ遣われるなんて……かっこわる……私……。

梓「皆さん、仲良く練習しましょぁ………」



300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:50:54.18 ID:9qg6QhEVO
律「……そうだな……」

澪「……うん、やろっか……」





ジャッジャジャジャッジャッ
ジャッジャジャジャッジャッ
ウィーン
ダンダンダカダカダカ


澪「………ん?」



301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 20:58:23.48 ID:9qg6QhEVO

澪「律?ドラム、走りすぎないのはいいけど、なんかパワー足りなくないか?」

分かってるよ……

体に力入んねぇんだよ……

澪「おい!律っ

律「あーあ、なんかやる気出ないやー。
また放課後ねー」

頼む、とめてくれ。
澪、私のこと好きだよな?
私のこと思ってくれてるよな?
私、意地張ってるんだよ。仲直りしたいんだ。ほんとは。

頼む、とめてくれ……。


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303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 21:05:50.05 ID:9qg6QhEVO
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一人外に出ると雨が降り出していた。


時雨。冷たい雨。
まるで『これに耐えないと、冬なんて乗り切れないぞぉ』とでも、お天道様が言っているかのようだった。
律「…………上手くいかねーなぁ」

ポツリと一人言を呟き、どんよりと灰色の雲が立ち込めた空に向かって傘を開いた。


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304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 21:10:51.06 ID:9qg6QhEVO
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…………ん、







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305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 21:15:53.75 ID:9qg6QhEVO
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…………んん、良く寝た。

風邪ひいちゃったのかなぁ、長い間嫌な夢を見ていた気がする……


体が妙に軽い。ふわふわする。
ついさっきまで暖かな繭に包まれていたサナギが、宙に解き放たれたよう。


そうだ、澪に謝りにいかなきゃ。

私の気持ち、澪に伝えなきゃ。

私、澪のことが…………


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307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 21:23:51.06 ID:9qg6QhEVO
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走ってた。

私は疾走っていた………澪のところに向かって。


あれ、向こうに唯たちが見えるじゃん。
……唯めぇ、私がいない間に澪にちょっかいだしてねーだろーなー。

律『おーい、唯ー!!ムギー、梓ぁー!!』

……聞こえないのか?

三人の背後に立った。驚かしてやるぜ!

律『ばぁあ!びっくりしたろー、はは』

私の声は妙に響いた。

三人は振り向かない。……シカトとか質悪ぃーぞ。

律『おいっ、聞いてんのかぁ?』

唯「…………りっちゃん」


……私の体は空に浮かびあがった。




308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 21:43:41.12 ID:f3YH5n4vO
おいどうした?



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 21:54:35.76 ID:9qg6QhEVO
幸・伍


律「おーっす、ありゃ、幸一人か?他のみんなは?」

幸「こんにちは、律先輩。
ムギ先輩と梓先輩は遅れるそうです。
さっき会って話しました」

律「そっかぁ。お、お、お菓子~♪お菓子はまだかなぁ~っと♪
っつーか、今日寒くないか、幸?
八月とは思えねーな」

そう言いながら、律先輩は鞄を長椅子に放り投げた。
律先輩の言う通り、今日はやたら肌寒い。
冷夏とは聞いていたが、これじゃ夏服では風邪をひいてしまうレベルだ。



311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:01:10.61 ID:9qg6QhEVO
律「聞いてくれよ、さちー。
今日さわちゃんがさぁ~……」

律先輩が愚痴を言い始める。
愚痴っていっても、可愛いものだ。つくづく平和な昼下がり。


……なぜこの先輩は私にしゃべりかけているのだろう。
なぜ半年もこうしていられるのだろう。

……律先輩、




あなたの平和、壊していいもですか?




312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:08:45.00 ID:9qg6QhEVO

律「おい、幸、どーしたんだよ?元気ないぞ?」

先輩の話を聞く私の反応が、いつもより鈍かったのだろう。
律先輩が私の顔をのぞきこんできた。

幸「……いえ、なんでもないです」

律「……いつもの幸らしくないぞぉ?
……あっ、さては梓と喧嘩したかぁ?
しょーじきにいったら、仲介してやるぞ」

そう言って律先輩が私の肩ポンポンを叩く。

それでも私がうかない顔をしていたからであろう。
今度はさっきより心配そうな顔をして言った。

律「幸、ほんとに大丈夫か?気分悪かったら保健室連れてってやるぞ?」

幸「……いえ、気分が悪いわけじゃないんです……。
ただ律先輩に答えてほしいことがあって……」



313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:15:18.32 ID:9qg6QhEVO

律「答えてほしいこと?
なんだ、なんでも聞いてやるぞ?」

ほんとにかっこいい。頼れるいい先輩。あなたがいたから、軽音部が回ってました。

……先輩は、間違いなく、軽音部の部長です。

私は…………私は先輩が大好きです。


でも…………







幸「……秋山 澪」



317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:23:53.87 ID:9qg6QhEVO


ガタンッ

派手に椅子の音がした。

律先輩に殴られると思い、一瞬身が縮まったが、律先輩はその場で立ち上がっただけであった。

こんなに狼狽している律先輩は見たことない。
目はカッと見開き、顔全体が引きつっている。
先輩の体が震える中、特に目を引くのはその手だ。
ギターの弦をはじいているようにも見えるし、まるで何か機会を狙うかのように、ピクッピクッと動いている。


律「そ、その名前を、誰から聞いた……?
ムギか?梓か?……憂なのか……?」



318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:26:36.13 ID:9qg6QhEVO

こないだのように怒鳴りつけるかと身構えていたが、律先輩は静かに聞いてくる。

幸「誰からでもないです。

秋山 澪。この人は誰なんですか!?
律先輩、知っているますよね?……いや、知らないはずないんです!
……去年まで一緒に練習していた仲間ですから」

律先輩はしゃべらない。黙ったままだ。

…………黙ったままなんて肯定じゃないですか。

幸「律先輩、答えてください!!なんでも……なんでも聞いてやるって言ったじゃないですか!!」



319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:32:05.67 ID:9qg6QhEVO

指のピクピクが速度を増した。

信じられない……。
……だって、軽音部はあったんだよ?私……私軽音部のスタートに立ちあえたって喜んでいたのに……。


軽音部の結成も嘘だ! 初めての文化祭っていうのも嘘だ!!


お願いです……律先輩……。これ以上はこの半年の結晶を壊したくないんです……
これを言ったら……もう元には戻れない……

幸「……お願いします……何か言ってください……」








幸「 平沢 唯 先輩 」



321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:37:51.44 ID:9qg6QhEVO


ドスンッ

先輩は全身の力が抜けたように椅子に座りこんだ。
その顔は、まるでいたずらっ子が、しでかしたいたずらが発覚したときのような、汚れない純粋な笑い顔だった。


唯「いつ気づいたの?」

半年間聞いてきた声なのに、声のトーンまで変わったような気がする。

幸「……『唯』のことが気になって、この街の警察署まで調べに行きました。
けっこう大きな事件だったんですぐに分かって……
事件録に、写真入りで関係者の詳細が書いてありました。
……びっくりしましたよ。 田井中 律 は死んでいて、 平沢 唯 の写真が律先輩だったんですから」

律先輩、もとい唯先輩は、ははっと笑った。
観念したように、穏やかな顔でご名答だよ、幸、とつぶやく。



325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:42:58.28 ID:9qg6QhEVO

唯「じゃあこのカチューシャも、もう意味ないな」

そう言って、いつもの、あの黄色のカチューシャを取り外す。
押さえ付けていた前髪が、目までふりかかった。


唯「ほんとに幸の行動力はすごいな、あずにゃんにひけをとらない、ふふ」

あずにゃん……梓先輩のことか……
『律先輩』は梓先輩をそうは呼ばなかったんだろう。



326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:47:15.02 ID:9qg6QhEVO
唯先輩は微笑しながら続ける。

唯「んー、澪ちゃんの名前が出た時点で観念した。
澪ちゃんが分かって私が分からないわけないもんな。
……まぁでも他の三人が口外しなかったのはえらいっ!しっかり口止めしてたからなぁ」

そんなこと……

幸「そんなことが聞きたいんじゃありません!!
どうしてですかっ!?どうしてこんなことする必要があったんですか!!?
私……私律先輩のこと、ほんとに頼りにしていたんですよ……?
半年もっ!!半年も、何も知らない私をのけ者にして、あなたたちは私の信頼を裏切り続けてきたっ!!!
…………どうして……」

呼び慣れた名前が違うと分かっていても口をついた。

高ぶる感情、押さえきれない怒り、大きな喪失感が私の瞳を濡らす。



329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:52:38.74 ID:9qg6QhEVO

唯「泣くなよぉ、幸!別にのけ者にしていたわけじゃないさ。
新入部員にのっけから暗い話するわけにいかねーじゃん。私達なりの配慮だよ」
幸「ヒック……ほんとにそれで慰めているつもりですか?
……それは、それは律先輩が『 田井中 律 』を演じていた理由にはなっていません!!!」



332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 22:59:14.72 ID:9qg6QhEVO

で初めて唯先輩に恐怖の色が浮かんだ。
そこに、その理由の全てが、詰まってる。

唯「そ、それは……
そ、それはねっ、幸、私がりっちゃん演じないと軽音部暗くなっちゃってさぁ!
あずにゃんもムギちゃんもなんも喋んないんだもん! 悲しんじゃってねー」


『律先輩』のしゃべり方がとけて、地がでてきた。
唯先輩は焦っているに違いない。

幸「…………じゃあなんで 秋山 澪 じゃないんですか?」

唯「!!」



335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:02:58.71 ID:9qg6QhEVO

再び指のピクピクが始まった。

幸「だっておかしいです!!
秋山 澪 をストーカーして自殺においこんだのは 田井中 律 でしょう!?
なら、この部にいなければならないのは澪先輩のほうなんじゃないんですか……?
どうして唯先輩は犯罪者のまねごとなん

唯「りっちゃんは犯罪者なんかじゃない!!!」



339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:04:49.52 ID:UwfYd597O
どういうことなの…



340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:05:39.07 ID:9rjAcQwJ0
もしかしてりっちゃんがスト…



341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:06:34.75 ID:9qg6QhEVO

その大声に圧倒され、私は言葉を失った。
唯先輩の顔は、再び引きつり、目は焦点があっていない。

唯「りっちゃんは犯罪者じゃないよ……?
……犯罪者なのは私なんだ……りっちゃんを止められずに、みすみす二人を死なせてしまった……
悪いのは……全部私……りっちゃんは悪くない……」
幸「……唯先輩?」

唯先輩は虚空に向かって、一人言を呟き始めた。
……まるでそばにいる『りっちゃん』を慰めるように……



342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:09:53.85 ID:9qg6QhEVO

唯「りっちゃんは悪くないよ……?
りっちゃん、様子おかしいの分かってた。なのに止められなかった、私のせい。
りっちゃんは軽音部からいなくなっちゃいけないよぉ、部長さんだもんね、えへへ」

その様子に、私は背筋がゾクッと凍りつく。
放っておくと永遠に会話を続けるんじゃないか。

幸「唯先輩っ!!」

唯「ほぇっ?」

あぁ、もう完全に『 平沢 唯 』だ。もう完全に別人なんだ……


『律先輩』は完全にこの世から消えてしまったのだ。


……しかし、まさか唯先輩は……



343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:13:45.63 ID:9qg6QhEVO
まさか唯先輩……


幸「唯先輩、どうしてそんな律先輩のことを……」

唯「…………」



347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:18:07.62 ID:9qg6QhEVO

唯「…………」

唯「……私、りっちゃんのことが好きだったんだぁ」

唯「好きって、友達としての、じゃないよ……?
楽しいし、面白いし、頼りがいがあるし……」

唯「交わりたいって思った……いけないことだよね、やっぱり……へへ」

幸「先輩……やっぱり……」


私はそれが悪いことだと思わない。

だって……私だって……



348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:22:22.24 ID:9qg6QhEVO

唯「……でもね、りっちゃんには澪ちゃんがいたんだよ……。
二人はほんとに仲が良かった。私が立ち入る隙間なんてなかった……」

唯「私は諦めたの。
……もちろん澪ちゃんのことは少し憎かった。
でもね、澪ちゃんも私の大切な友達。私澪ちゃんも大好きだもん」

唯「そしたら去年あの事件が起きた」

唯「一度に二人が死んで、私達軽音部は奈落の底に突き落とされた……。
あの時のあずにゃんの悲しみようは見てられなかったよ……」




349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:28:48.60 ID:9qg6QhEVO

唯「当然、軽音部は活動中止。
……四月に言ったように、ムギちゃんの家で練習してたけどね、ふふ」


唯「全校生徒には正確な情報は隠されたの。……なんか学校は自分の学校で殺人があったなんて知られたくなかったみたい」

唯「……でも、りっちゃんが悪かったらしいっていう噂はすぐ広まっちゃった」

唯「……りっちゃん…可哀想だよぉ、ヒック
だ、だって死んだ後にも、わ、悪く言われて……」

唯「わ、私……嫌だったんだ……りっちゃんのこと悪く言われるの。
り、りっちゃんが犯罪者のまま、みんなの記憶に残り続けるなんてた、堪えられなかった……」

唯「だから……だから私がりっちゃんになって、りっちゃんの評価を取り戻した」



352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:37:59.03 ID:9qg6QhEVO

唯「ムギちゃんもあずにゃんも、そして憂も、私がしたいこと分かってくれて」

唯「もちろん、私はずっと 平沢 唯 。
でも、周りも私の行動を見て、生前の優しいりっちゃんを思い出してくれた」

唯「噂は消えて、ただの自殺事件として片付いたの」



358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:54:37.41 ID:9qg6QhEVO

幸「……今思えば、みんな先輩のこと『唯』とか『お姉ちゃん』ってよんでましたね……。
初日には、ムギ先輩、このあいだは憂先輩が……
……あれ、先輩のこと呼んでたんですね。
はは、なんで気付かなかったんだろ、私……」

先生も名字、二人分しか呼ばなかったではないか……


幸「唯先輩がギターが上手なのも納得です。当たり前ですよね……」

唯「あずにゃんには、悪いことしたなと思ってる。
……ベースほんと弾きにくそうだったもんね……
私なんかすぐドラム諦めたのに……あずにゃんは最後まで頑張ってくれてた。
ほんといい後輩だよぉ……」

幸「唯先輩がドラム、どこか澪先輩の面影のある梓先輩をベースに、軽音部再結成ですか……


……でも、そんなの……」




360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/19(木) 23:56:41.46 ID:9qg6QhEVO

幸「……でも、そんなの……」

やめたほうがいい。今の唯先輩に追い撃ちをかけてはいけない。


幸「でもそんなの何の解決にもなっていません!」

やめろ。

幸「誰を誰に仕立てあげたって、その人は戻ってきません!」

言うな。

幸「死んだ、その事実を受け止めて、生き残った者が『自分』を生きないでどうするんですか!?」

唯先輩が……

幸「今の唯先輩を見ても……きっと二人の先輩は喜びません!!」



ピクリ



362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:00:10.93 ID:mbJUUyGXO

一瞬だった。


唯先輩は懐から刃物を取りだし、あっという間に自分の喉につきつけた。

幸「唯せんぱっ、

唯「こないでっ、幸!!」

私はビクッとして足がとまる。馬鹿っ、何やってんのよ私の足!!動けっ!!唯先輩を止めなきゃ……

唯「きちゃダメだよ……
こんな大嘘つきさんに触ったら、幸がよごれちゃう……」

嘘だっ!そんなこと私思ってないっ!
動いてよぅ!



365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:03:28.04 ID:9qg6QhEVO

唯「ごめんね幸……私最後まで頼りない部長だったね。
うん、まったく幸の言う通りだ、はは」

そう、分かってた……。
こんなことしてもりっちゃんは還ってこない……。

私のわがままで、みんな共犯者にしちゃったよ……ほんとにごめん……。

ムギちゃん、あずにゃん、私の戯言に付き合ってくれてありがとう。……最後に抱きつきたかったなぁ。

憂、最近あなたの『お姉ちゃん』やってあげれなかった。ほんとにごめんね。

澪ちゃん、『これ』使わしてもらうね。かわいいよね?澪ちゃんにぴったりだよ。



唯「りっちゃん、今行くから」

そう言った時、唯先輩は笑っていた。ほんとに幸せそうな顔で。


幸「ダメですっ!!!!」

瞬間、呪縛が解けた私は、唯先輩に向かって手を伸ばした…………



372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:12:05.13 ID:mbJUUyGXO
律・伍


律『えっ……ちょっ!』

私の身体は地上から1mくらいの場所で静止した。

……は?なにこれ?

律『……ははっ!おーい唯ー、私空飛べるようになったぜー!……』

誰も振り向かない。

律『っ、おい、いいかげんにしろよっ』

正面に周りこんで、愕然とした。

誰も、誰の目もピクリとも動かない。

もしかして、私、見えてない?




376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:15:18.44 ID:mbJUUyGXO

なんだこれ。何が起こってんの?

冷静になれ、足りない頭で考えろ。

自分を落ち着けた私。落ち着けようとしたのにのに……

律『……なんでこんなに人がいっぱい……』

なんで気づかなかったんだろう。三人の周りにはゴマンと人が座っていた。

……しかも

律『喪服じゃねーか』

そこにいる人間全員が黒に身を包んでいた。
落ち着けた心臓の鼓動が、跳ね馬のように一気に暴れだす。じわりとあぶら汗が滲む。

律『……どこだ』



378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:18:50.99 ID:mbJUUyGXO

律『……どこだ』

私は無意識に何かを探し始める。
心臓は早鐘を打ったかのようだ。


花が飾られた祭壇。私は滑るように棺に駆け寄り……




心臓が、一回飛ばして打った。



いや、そもそもこれは心臓なのかが怪しい。



二つの棺の中に眠っているのは…………澪と私。



379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:21:31.08 ID:mbJUUyGXO

律『ちょっ、ちょっと待って、なんで私も澪も死んっ!』

なんとも奇妙な気分だ。
自分で『自分だったもの』を見下ろす。

土気色の私の隣に眠る澪の顔は驚くほどに白い。ちょっとピンクがさせば、いつもの澪じゃんか……

律『どうしてっ!!どうしてだっ!!どうして澪が死んでる!!?』

私のことはもうどうでもいい。
なぜ、澪が、澪が死んでるの……?
どうして何も覚えてないの……?

どうしていいか分からず、涙が溢れてきた……その時……


『お迎えにあがりました』




380 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:25:52.48 ID:mbJUUyGXO

律『っ!!』


凍りつくような声に、私はギョッとして振り向いた。

そこにいたのは……身の丈2mもあるボロ布……かと思えば、顔の所にポッカリ暗い穴のあいたフードを被った、何か。

私は直感的に感じた……ソレは、私を絶対『いい所』へは連れていってくれないだろう……。



382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:28:30.90 ID:mbJUUyGXO

律『だ、誰だおまえは!!』
『おやおや、申し上げましたように、あなたを迎えにきました死神ですが?』

死神だって!?そんな漫画そっくりの死神がいるかってんだ!!

ソレの声が私は嫌いだった。
よくニュースで、『音声は変えてあります』とある時のあの声……。
あの人口的で、暖かみがない、甲高い声……。


死神『ふふ、さぞ怖がっておられるようですねぇ。
私がどんな風に見えるか存じませんが、私の姿は、あなたのイメージを反映してますから』

それで……

律『ふざけんなっ!死神が私になんの用があるってんだ!!』



383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:31:46.93 ID:mbJUUyGXO

死神『おやおや、物わかりの悪い方だ。
あなたは死にました。ストーカーなんて馬鹿な真似をしてね』

律『はっ!!私がストーカー!?あれは、唯が……』

死神『ちょうどいい具合です。今唯さんが真相を語ってくれますよ』

見ると唯が二人に何かしゃべりかけていた。……真相?

唯「澪ちゃんと、りっちゃんが死んだのは私のせいだ……。
私、澪ちゃんがストーカーにあったって言った日から……りっちゃんの様子が変なことに気づいていたの……」



384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:36:09.95 ID:mbJUUyGXO

梓「……ヒック、唯せんぱい?」

唯「まるでりっちゃんの中に、もう一人りっちゃんがいるみたいだった……。
そのりっちゃんは……多分澪ちゃんの、自分に対する愛が揺らいだと感じたとき、出てきてたんだと思う……」

唯「そのりっちゃんは……その、怖かった。
『澪は私のものだ!』『私のものになるまで放さない!』……絶対そんな目だったの、ヒック」

唯「私は……私はそれにずっと気づいてて、り、りっちゃんの挙動を見守っていたの……。
な、なのに……なのにっ、二人とも死んじゃった……!
どうしよう……私のせいだっ!私のせいでっ!」


紬「唯ちゃん……それが唯ちゃんのせいなわけないじゃない!
私達だって……私達だって、全然気づかなくて……グス」

…………



387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 00:39:26.52 ID:mbJUUyGXO

死神『クスッ、あはは、はい、お分かり?』

死神『?ククッ、りっちゃーん?』




嘘だ。

私はまだ夢を見ているんだ。

私がストーカー?澪のことを思うあまりに?……自分を忘れて?

ばかばかしい、そんなことあるわけない。嘘だ。



―深層心理が表にでるって怖いですね……―




397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:17:20.69 ID:mbJUUyGXO

突然の梓の声に、私は驚いて顔をあげた。

律『死神っ、お前か!?』

死神はククッと笑いながら続ける。


―そうよ唯ちゃん?ストーカーがエスカレートして殺人事件まで発展することもあるのよ?
相手を思いすぎるあまりに、ね。歪んだ愛、というものなのかしら―


今度はムギの声。

律『やめろおぉ!!汚れた姿であいつらのマネすんなあぁぁ!!』

私は激昂した。

事実なのか?……ほんとに私が澪をストーカーしていたのか?

……私が澪を脅えさせていたのか……。


はっ!!じゃ、じゃあまさか、私が死んだのって……


死神『はい、その通りです。あのグッズはしっかり役割を果たしましたね、クク』



399 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:23:39.22 ID:mbJUUyGXO

あざ笑いながら、死神は祭壇を指差す。

そこにはあの日買った、あの護身刀が、綺麗に血を拭き取られ安置されていた。

律『そ、それじゃあ、まさか私は……』

私は浮遊している自分の体を見た。



穴が空いている。
ちょうどみぞおちのあたりに、細長い穴がポッカリと空いていた……


死神『そ♪澪ちゃんは見事、ストーカーを撃退したのでした♪

ま、そのままそれで自分の胸を貫いたけどね』



401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:29:20.75 ID:mbJUUyGXO


なんてことだ。

澪が私を刺したのだ。

そして、それが私だと分かり……自殺した……。


死神『あの時の澪ちゃんの顔最高だったなぁ♪
自分の親友がストーカーで、そいつ、刺しちゃったんだもん。
あの時の絶望した顔、悲痛の叫び、胸から吹き出る血潮、たまんなかったぁ、ククッ』

死神はしたてに出ることも忘れ、自己の快想に浸っている。

澪の遺骸はきちんと整えられ、胸の傷は見えなかった。

しかしそこからは、今も血が溢れているような気がする。

その血は、私にまとわりつき、締めつけ、染みこみ、何度も言ってくる。



『律のことは信じていたのに』




404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:35:30.43 ID:mbJUUyGXO

死神『さぁって、そろそろ行きましょうか』

死神がそう言った途端、視界が暗転し、回転しだした。

律『ちょっ!!待ってくれ!!
まだみんなを、家族を、軽音部のみんなを見ていたい!!』

死神『はぁ?無理無理、もう行くんだよ。
……まぁ、そう落ち込まなくていいよ、喜べ。
一年もしないうちに、お仲間さんがやってくるしさぁ』

死神はおかしさを堪えられないかように、体をよじる。




406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:41:01.01 ID:mbJUUyGXO

律『お仲間?それ、どういう意味だっ!?』

死神『まぁ待ってりゃ分かるって、ヒヒ。
どっちにしろ、君はもう、軽音部のみんなを見ることもねぇな』

そんな……。

父さん、母さん、聡……

ムギ、梓ぁ……

唯ぃ……唯ごめんな、私が間違ってた……


もうみんなとは会えない……お別れだ。


でも……


律『なぁっ!!澪は!?澪なら会えるだろっ!?澪も死んだんだし!!
私謝るから!澪を傷つけてごめんって!
これからは澪を怖がらすことは絶対しないって謝るから!!』



407 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:46:17.60 ID:mbJUUyGXO

死神『あぁ澪ちゃんね……』

死神はそう呟いたかと思うと、突然高笑いし始めた。

その内臓にまで響きわたるような凍りつく声に、私は戦慄する。


死神『アァーハッハッハ!!キヒッ、クククッ、君は澪ちゃんとはもう会えないよ、ククッ』



410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:51:56.45 ID:mbJUUyGXO

律『どうしてっ!?』

私がそう言うと、死神は突然フードを脱いだ。
その下から顔を出したのは、生気のない、土気色の、のっぺりした顔。
口は耳もとまで裂け、目は下弦の三日月を描いている。

その姿を見た瞬間、私の視界の回転は強くなり、強い目まいがしてきた。


死神『だってさぁ……




―こんな刀で刺されたストーカーさんは、間違いなく地獄いきだね!―



413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 01:58:29.83 ID:mbJUUyGXO

あぁ……唯の声だ……そっか私が行くのは……


…………ああ……澪……

あのころに戻りたいよ……澪とずっと一緒に……ずっと一緒にいられると思ってたあのころに……


私も大好きだよ、澪。




414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 02:03:35.70 ID:mbJUUyGXO

目まいが強くなる。目を開けていられない。……もう時間なんだ……。

私が見る現世最後の景色。
薄れゆく意識の中、私が最後にみたもの。
ソレの口がニヤリと耳もとまで裂け、さぞ楽しそうに大きく口を開ける。

だってさ……


ソレはこうのたまわった。







『 行き先が違うんだから 』


-Fin-




415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 02:04:15.17 ID:nOyRqXETO
同じ刀で自殺したんなら澪ちゃんも逝き先同じでは…?



416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 02:05:51.08 ID:ZO4EGnVA0
乙ー

>>415
まぁどっちにしろ唯来るまでの辛抱じゃね?


420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 02:10:13.05 ID:nOyRqXETO
楽しかった

あの天然唯が他人になりきれちゃう辺りが一番のミステリーな気がしないでもないがw



425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 02:21:22.49 ID:nOyRqXETO
澪が死んで唯も部室で首かっ切って自殺


あずにゃんが廃人になっちゃう(´;ω;`)



427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/20(金) 02:25:10.19 ID:YfvlDi7gO
いちおつ
幸は結局唯を止められなかったのか…
残されたけいおん部どうなってしまうん



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この記事へのコメント
なんかいろいろ寒い…
2009/11/22(日) 13:16:28 | No.3887 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
オ・・リ・・キャ・・ラ・・?
2009/11/22(日) 13:33:22 | No.3888 | 兄織田 | #4hq/J1Uk[ 編集]
LAB=01かと思った
2009/11/22(日) 20:14:35 | No.3889 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
女子中学生が書いたような文章だな・・
携帯小説っぽい
2009/11/23(月) 03:44:22 | No.3894 | 戯言ヴぃp | #MyJ0QW/M[ 編集]
版権物にオリキャラ入れるのはどうかと思う
2009/11/23(月) 04:23:03 | No.3895 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
夢小説(笑)に似た気持ち悪さを感じた
2009/11/23(月) 07:17:28 | No.3899 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
作者高3らしいね
2009/11/23(月) 15:12:50 | No.3905 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
ぼくはおもしろいとおもいまう。みっきまうwwwみっきまうwwwあうあうあう
2009/11/24(火) 02:13:51 | No.3910 | USHI | #-[ 編集]
高三でこんだけ書けたら上等だろ
オリキャラなしで、次回作に期待する
2009/11/28(土) 22:32:25 | No.3943 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
律が多重人格者障害だったとは・・・
それにしても、律が澪に刺殺された上に(正当防衛とはいえ)澪も自殺
そんでもって唯まで自殺・・・
残ったあずにゃんとムギそれに憂も間違いなく後追いするだろうな・・・
2009/12/03(木) 01:37:04 | No.4002 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
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