戯言ニュース

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(´・ω・`)ショボンが(`・ω・´)だった頃の話をするようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:02:42.83 ID:+lpLzryn0
('A`) (くそっ、何とかあいつに一泡吹かせられないものか……)

鬱田ドクオはクラスメイトの一人、酒田ショボンに対して恨みを持っていた。
転校生であるショボンが、ドクオのカンニング行為を見つけたことにより、
ドクオの地位は『クラス一の優等生』から、『卑屈でキモイ男』へと変わってしまったのだ。

('A`)「ん、なんだこれ?」

放課後の教室でうろうろしていたドクオは、一冊のノートを拾った。
表紙の隅に『シャキン・Z・セフィロス』と書いてある以外、特に変わったところはない。

('A`)「けったいな文字が書かれているな。どれどれ……」

ドクオは拾ったノートを読み始めた。


(;´・ω・)「うわあっっ、あのノートどこに落としちゃったんだ!?」

彼は酒田ショボン、パッと見は普通の転校生である。
しかし彼は、人には絶対言えない趣味を持っていた。

それは自分を主人公にした学園妄想ファンタジー小説である。
神の生まれ変わりであるショボンが、実は魔王である校長を倒すまでの話。
クラスで一番可愛い、しぃという女の子を勝手に物語のヒロインにしている。


教室に飛び込んだショボンが見たのは、強烈なドクオの笑みであり――


2 名前: ◆GU9d5N.Qrc :2008/05/10(土) 23:05:07.47 ID:+lpLzryn0
     *      *
  *     +  うそです
     n ∧_∧ n 上の話は続きません
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *


回線が不安定なので、途中で投下が途切れるかも
その場合はまた後日スレを立てます


それでは本編投下します

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ブログパーツ (´・ω・`)ショボンが(`・ω・´)だった頃の話をするようです
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:06:34.43 ID:+lpLzryn0
河原にある公園、ベンチの上で寝そべる中年の男が一人。
秋の終わりには珍しく、暖かな日差しが彼を包み込んでいた。

(´・ω・`) (雲があんなゆっくり流れていく……)

男はゆっくりと空を眺める。ポカポカとした陽気に、サラサラと流れる川のせせらぎ、
更にはゆったりとした風の流れに誘われ、男は今にも眠りにつこうとしていた。


('、`*川「あら、珍しい。火曜日の人が来てる」

公園に下る土手の階段で、手提げ袋を持った女性が呟く。
女性は公園に降りると、ベンチの上の男に話しかけた。

('、`*川「うふふっ、気持ち良さそうですね。ショボンさん」

(;´・ω・)「うおっ!えっ、えーっと…………」

慌てて飛び起きるショボンと呼ばれた男。
目の前にいる女性の名前を思い出そうとするが、
半分眠っていた彼の頭は働かなかった。

必死で考えるショボン。そんな彼に女性が助け舟をだす。

('、`*川「伊藤ですよ、い・と・う。こないだと変わってませんね」

(´・ω・`)「す、すいません。どうも人の名前を覚えられなくて」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:08:12.82 ID:+lpLzryn0
謝罪するショボン。伊藤と名乗る女性は苦笑しながら話を続ける。

('、`*川「いつものことなのでもう慣れましたわ。
      ところで今日はなぜ公園に?たしか今日は木曜ですよね」

(´・ω・`)「今日は働いてる店が休みなんですよ。
       それでなんとなくここに来ようと思って」

('、`*川「へえ、そうなんですか。ところで今日は読書は?
     見たところ手ぶらに見えますが……」

(´・ω・`)「ああ、たまには自然の中でゆっくりしようと思いましてね」

('、`*川「ふふ、それは風情がありますね。 ……あら?」

(´・ω・`)「?……どうしたのですか」

('、`;川「読もうと思っていた本を家に忘れてきてしまいましたわ……」

この公園に来る二人に共通するもの、それは読書だった。
ショボンは主に晴れた火曜日、伊藤は気が向いたときに公園を訪れる。
二人は大体一ヶ月に一度位のペースで顔を合わせていた。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:10:15.07 ID:+lpLzryn0
(´・ω・`) 「そういえば、初めて顔を合わせてからもう二年位経つのに、
       こんな風に長話をしたことありませんでしたね」

('、`*川 「いつも二人とも本の虫でしたものね。
       ところでなぜこちらで本を読まれるのですか?
       家族がいると集中できないとか……」

(´・ω・`) 「いえ。独り身ですが、どうせならいい環境で本を読みたくて。
        色々探してみたのですが、ここが一番ですよ」

('、`;川 「す、すいません。失礼なことを聞いてしまって……」

(´・ω・`) 「私から言い出したことですからお気になさらずに。
      ……そうだ、どうせなら自分語りに付き合ってもらえませんか?」

('、`*川 「ええ、構いませんよ。面白い話を期待してますわ」

(;´・ω・) 「そんなこと言われるとちょっと自信無くなりますね……」


     「あれは二十年ほど前。私が二十歳の頃でした―――」



――― (´・ω・`)ショボンが(`・ω・´)シャキンだった頃の話をするようです ―――


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:12:05.90 ID:+lpLzryn0
          ☆     ☆     ☆


( ФωФ)「おい、シャキン。味噌が足りないぞ」

(`・ω・´)「あれっ、確か二袋じゃありませんでしたか?」

(#ФωФ)「馬鹿野郎! ちゃんと三つだって伝えただろ!
        早く取りに行って来い! 十五分で帰ってこいよ!」

(;`・ω・)「すいません親方ッ、急いできます!」


僕の名前はシャキン。ラーメン屋「めんま亭」で働いている。
従業員は、店主である杉浦ロマネスクさんと僕の二人きり。
駅の裏手にあり、お客さんが十五人も入れば満員になる小さな店だ。

メニューはそこまで豊富でもなく、値段も一般的な価格である。
しかし製麺所に特注した麺と親方自作のスープにより、
街中での評判は悪くなく、毎日充実した仕事をしている。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:14:06.97 ID:+lpLzryn0
味噌を買うため、僕は全力疾走で近所の雑貨屋「ワタナベストア」に向かった。

从'ー'从「あれれ~、シャキン君どうしたの~?
      財布でも忘れていった~?」

(li` ω )「す…ゼェ……ハァ…すいませんっ、…ハァ…ハァ……
       味噌を……追加一袋ッ……ゼェ……ハァ……」

从'ー' 从「わかったよ~、取りに行くからちょっと待ってて~。
      またロマネスクさんに急かされてるのかな~。
      シャキン君も大変だね~」

(liii` ω )「はっ、…早くっ……ゼェ……お願いっ……ハァ……」

ここの雑貨屋は、色々と業務用の物を取り揃えている店舗だ。
個人的な特注品も仕入れてくれ、店の裏手の倉庫に保管してくれる。

それらは店長の渡辺さんに頼めば、倉庫から出してもらえる。
でも彼女は、物の位置を忘れやすい上に動きが遅いので、
目当ての物を手に入れるのに、十分以上は覚悟しなくてはいけなかった。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:16:12.66 ID:+lpLzryn0
「ワタナベストア」までは全力疾走でも五分はかかるので、
店に帰った頃には、約束の十五分なんてとっくに過ぎていた。

(#ФωФ)「遅いぞっ!早く着替えてこい!」

(・ω・´;)「了解しましたっ、親方!座敷借ります!」

「めんま亭」は親方の家にもなっていて、キッチンの裏手から居間への出入り口がある。
座敷の隅に畳んでおいてある、店の制服であるコックコートを慌てて身につける。
土間で長靴に片足を突っ込んだとき、僕の足の裏に激痛が走った。

(` ゚ω゚´)「アンギャアアアアァァッッッッ!!」

o川*゚ー゚)o「やったー!大☆成☆功ー!」

軽く涙目で長靴を脱ぎ、逆さに振るとポロポロと画びょうが零れ落ちる。
僕は震えながら足の裏に刺さった画びょうを引き抜いたあと、
部屋の奥から飛び出してきた女の子に対し怒りをぶつけた。

(#`;ω;)「痛いじゃないか!」

o川*゚ー゚)o「そりゃ画びょうを踏んづけたんだもん、
       もしシャキンくんが痛くなかったらスーパーマンだよ」

この可愛い顔して酷いことをするのはキュートちゃん。
ロマネスクさんの一人娘であり、趣味はイタズラ。標的は主に僕。
今日は確か平日なんだけど、小学校はどうしたんだろう……


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:18:10.50 ID:+lpLzryn0
o川*゚ー゚)o「今日は創立記念日で休み。油断は敵なんだよー」

(; ФωФ)「おいっ、さっきの叫び声はどうした!」

o川;゚⊿゚)o「あっ、父さん……」

キッチンから、僕の叫び声を聞いた親方が顔を覗かせた。
親方は床に散らばる画びょうを見たあと、キュートちゃんに拳骨を振り落とす。

(#ФωФ)「キュートッ!悪戯はいいが時と場合、方法は考えろ!
        ほらシャキンに謝るんだ!」

o川*つ-;)o「えぐっ、しゃ、シャキンくんっ。ごっ、ごめんなさい……」

( ФωФ)「すまんな、シャキン。そこの戸棚に救急箱があるから
        自分で手当てしてくれ。仕事は出来そうか?」

(`・ω・´)「大丈夫です、やれます!」

( ФωФ)「よし、いい返事だ。無理そうなら我慢せず言えよ!」

言葉は少し荒いが、ロマネスクさんは本当にいい人だ。
僕は傷の手当をし、長靴を念入りに調べた後、恐る恐る履く。
そしてキッチンに向かい、葱を刻むなどの材料の下ごしらえを始めた。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:20:11.27 ID:+lpLzryn0
どこの飲食店も大体同じだろうが、昼時と夕刻から夜にかけてが一番込み合う。


<_プー゚)フ「おっちゃーん、ネギ塩ラーメン一つ」

昼食をここで済ます近所の会社のサラリーマン。


( ^ω^)「おっおっ、ここのラーメンはどれもおいしいんだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「なんでラーメン屋なんかに……塩の半ラーメン一つお願い」

部活帰りに利用する高校生。

  _
( ゚∀゚)「よーし、パパ特盛り頼んじゃうぞー」

从 ゚∀从「よっしゃ、じゃあオレは超盛りで!」

( ><)「パパもママもすごいんです!」

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ!!」

夕食を食べる親子連れ。


いろんなお客さんが来るが、大抵の人に共通すること。
それは店を出るときに幸せそうな顔をしていることだ。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:22:12.29 ID:+lpLzryn0
そろそろ店仕舞いかという頃に、珍しい客がやってきた。

/ ,' 3「こんばんは、まだやっとるんかい?」

( ФωФ)「あれ、荒巻さんお一人ですか。珍しいですね。
        いつもの二人組みは今日はお休みでも?」

/ ,' 3「ほっほっほっ、急にあんたんとこのラーメンが食べたくなってのう、
    こっそり屋敷を抜け出して来たんじゃ。味噌一つ、バター付きでな」

こちらの方は荒巻さん。この辺り一帯を取り仕切る大地主である。
この店がある所も元は荒巻さんの土地であり、
親方の熱意と腕を高く買い、安い土地代で借りさせてもらっている。

土地をかなり持っているために、それに関するトラブルが色々あるらしく、
普段はボディーガードを雇ってるのだが、あまりその事を快く思ってないようだ。

( ФωФ)「シャキン、味噌一つ頼む。バターも付けてな」

(`・ω・´)「味噌バタ了解です、親方!」

暖めてある丼にお湯を入れ、味噌を溶かした後に味噌用の出汁を加える。
茹で上がった麺を手早く湯切りし丼に入れる。あとは刻み葱、チャーシュー、
モヤシ、コーン、注文のバター、そして店の名でもあるメンマをたっぷり加え完成だ。

/ ,' 3「うほほっ、この香りに立ち上がる湯気ッ。たまらんのうwww」

荒巻さんが美味しそうに食べていると、いきなり誰かが店内に飛び込んできた。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:24:11.24 ID:+lpLzryn0
(´<_` ;)「荒巻さん、探しましたよ!!」

/ ,' 3「なんじゃい、もう見つこうてしもうたわい」

(´<_`#)「『見つかってしまった』じゃありません!
      もし万が一のことがあったらどうするんですか!!」

/ ,' 3「万に一つしか当たらんのんじゃろ?ワシャあ宝くじの三千円さえ
   当たったこたあないから平気じゃ。味噌ラーメンでも食うかいの?」

(´<_`#)「宝くじは関係ないです!それに俺は醤油派です!」

/ ,' 3「杉浦さん、すまんが醤油一つ頼むわい。
    安心せい、弟者。ワシの奢りじゃけえの!」

(´<_` )「そういうことじゃなくて……もういいです」

この急に来た人は、荒巻さんのボディガードの一人、流石弟者さん。
弟者さんは双子の弟であり、同じくボディガードを勤める兄者さんという人がいる。
パッと見ただけでは間違えそうになるが、言動などがかなり違うので区別は楽だ。

弟者さんは携帯を取り出し誰かに電話を始めた。おそらく相手は兄者さんだろう。

【(´<_` )「もしもし、弟者だ。うん、『めんま亭』で見つけた。で、兄者は何処に?」

【(´<_` ;)「はあっ!? スナック『Dereel』って兄者が最初に探してた所じゃないか!」

【(´<_`#)「そうか……デレさんと……つい話し込んでたと……そうかそうか……………」
                                                バラ
【( <_ #)「五分待つ。一秒でも遅れたら兄者の持ってるツールヤさんフィギュアを解体すからな」


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:26:11.62 ID:+lpLzryn0
(´<_`#)「全く、兄者の奴は……時間を三分にすれば良かったか……?」

/ ,' 3「ほほっ、弟者よ、兄者を懲らしめたいんじゃろ。
    店の人に協力してもらう必要があるんじゃが、いい案があるぞ」

弟者さんにラーメンを持っていった僕らは、荒巻さんの『案』を聞いた。
僕はキッチンに戻り、親方はキュートちゃんを呼びに行く。


ちょうど『案』の準備が終わったとき、店に人が飛び込んできた。

(; ´_ゝ`)「うおおおいっっっ! ギリギリセーフ!?」

/ ,' 3「四分と五十二秒、一応まにおうとるのう」

弟者さんは兄者さんを睨みながら、ラーメンを口に運んでいる。
おそらく相当フィギュアを破壊したかったのだろう。

(* ´_ゝ`)「イィーヤッホォォォオウ!愛の力は最強!
       …………あれ、ところでオレの席は?」

ちなみに僕と親方とキュートちゃん、荒巻さんと弟者さんは
椅子を一つ足して四人掛けのテーブルについている。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:28:22.47 ID:+lpLzryn0
(´<_` )「ところでシャキン君、また腕上げた?」

( ФωФ)「うむ、一応上達はしているな」

o川*゚ー゚)o「うん、こりゃ父さんもうかうかしてられないねっ」

僕らの手元にはそれぞれラーメンがある。
さっき余った麺で、即行で作り上げたものだ。

(`・ω・´)「いやー、親方にはまだまだ及びませんよ!」

/ ,' 3「よーやるのう、シャキン。なかなか美味かったけえの!」

兄者さんは呆然とした表情で訊ねてくる。

( ´_ゝ`)「…………あのー、オレの分は?」

(`・ω・´)o川*゚ー゚)o( ФωФ)「「「本日は閉店です。またの御来店をお待ちしてます」」」


/ ,' 3「ほいじゃあ、ワシらはいぬるけぇのう」

数分後、泣いてる兄者さんを弟者さんが引きずりながら、荒巻さん達は帰っていった。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:31:38.31 ID:+lpLzryn0
キュートちゃんは部屋に戻り、宿題を始めた。
店では僕と親方が店の後片付けをしている。
ほとんど片付けが終わった頃、親方が口を開いた。

( ФωФ)「なあ、シャキン。またあの家に帰るのか……?」

(`・ω・´)「またですか、親方。一応あそこは僕の家なんです」

( ФωФ)「俺にとっては息子同然なんだよ。家には空き部屋が一つある。
        わざわざ一人にならなくったって……」

          ◆     ◆     ◆

僕は一人暮らしで、母が残した家に住んでいる。

祖父母は父方と母方共に亡くなっていて、
父は僕がまだ幼い頃、離婚同然にどこかへ行ってしまった。

僕の家とロマネスクさん家は、昔から家族ぐるみの付き合いだった。
なぜかというと、僕の母とロマネスクさんの奥さんは竹馬の友だったからであり、
僕は昔から「めんま亭」のラーメンをよく味わっていた。

父がいない僕にとっては、ロマネスクさんが父親の役割を果した。
キュートちゃんが生まれたときは、僕に妹が出来たも同然だった。
もっとも彼女は僕を兄であるとは思ってないかもしれないけど……

実の父親がいなくても何の問題も無かった。
少なくとも高校に入るまでは…………


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:34:33.64 ID:+lpLzryn0
僕が高校生活に慣れてきた頃、母とロマネスクさんの奥さんは、
二人で北陸の方へ旅行に行く計画を立てた。

なんでも『蟹をたらふく食べたい』が理由だったらしく、
僕は三泊四日の旅行の間、ロマネスクさんの家にお世話になることになった。

預けられて二日目の夕方、居間でキュートちゃんのお絵描きに付き合ってるときのことだ。
なんとなくつけていたTVで、とあるニュース速報が流れた。
―――路線バスが崖下に転落、乗客の生存は絶望的―――
正直バスなんて全国で何万台も走ってるし、僕は気にも留めていなかった。

その日の夜遅く、ロマネスクさん家の電話が鳴り響いた。


…………はっきりいって、そこからの数日間はよく覚えてないし、思い出したくもない。
僕には、二人で住むにしても広かった家と、バス会社からの多額の慰謝料が残された。
高校は結局辞めることになり、当時の僕はどうしていいか分からなくなっていた。

数日経った頃、ロマネスクさんから店に呼び出され、話を持ちかけられた。

  『シャキン君、俺の店を手伝う気はないか?
   もちろん給金も出すし、何なら住み込んでもいい。
   ……アイツがいなくなって、部屋に空きが出来ちまったからな』

昔から飲食業には興味があったし、なにより親方は寂しそうな顔をしていた。
家を離れるのは母に悪い気がしたので、働かせてもらうことだけお願いした。

  『そうか、家は出たくないか…………まあ、よろしく頼むぞ!』


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:36:11.90 ID:+lpLzryn0
          ◆     ◆     ◆


( ФωФ)「…………まあ仕方ないな。お前の考えが一番大事だ。
        話を蒸し返すようで悪いが、明日は泊まっていかないか?」

(`・ω・´)「明日って何か……ああ、キュートちゃんの誕生日って確か」

( ФωФ)「そうだ、明日だ。昼間に色々買い物を頼んでも大丈夫か?」

(`・ω・´)「分かりました。プレゼントは何を買うつもりなんです?」

( ФωФ)「ほら、ゲームでアスモンってあるだろ? 数日前なんだが、
         あれの新しいやつをキュートがやりたがっててな……」

(・ω・´;)「……親方、キュートちゃんってDS持ってましたっけ?」

( ФωФ)「ん、お前がキュートに渡したやつがあるだろ?」

(・ω・´;)「親方、あれだと古くて無理なんです……」

アスモンとは携帯ゲームのシリーズで、僕も十歳の頃はよくやってた。
結構前にゲーム機の本体ごとキュートちゃんに渡していて、
今でもちょくちょく彼女がプレイする姿を見かける。

親方に軽く説明と相談をして、本体は親方、ソフトは僕がお金を出すことになった。
他にも色々打ち合わせたあと親方に挨拶し、僕は自転車に跨り家路につく。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:38:08.73 ID:+lpLzryn0
家に入るとき、僕は必ず「ただいま」という。
たとえ待っている人が、誰もいなくてもだ。(いたら寧ろ怖い)
電気をつけながら台所まで移動し、冷蔵庫からお茶を取り出す。

(`・ω・´)「親方の家にか……」

お茶を飲みながら、ふと今日のことを振り返る。

実際のところ親方の家で暮らすのはメリットが多く、デメリットはほとんどない。
でもこの古びた家を手放してしまうのは、どうも何か大切なものを無くしてしまう気がする。
まあ今のところ何か不便があるわけじゃないし、現状をだらだらと維持してる感じだ。


もし母が亡くならなかったら今頃何をしてたのだろう……。
そんなことをふと考え、当時の夢を思い出すために自分の部屋の押入れから、
過去の卒業文集や作文など引き摺りだし、眺めてみた。


保育所や小学校低学年までの自分は、相当色々なものになりたかったらしい。
医者に野球選手、飼育員やパイロット。正義のヒーローに饅頭…………
どんな夢だとしても、夢があるのはいいことだ。……たぶん饅頭でも。

小学校の高学年では考古学者が夢だった。地下遺跡に憧れてたなー。
でも実際の世界に魔法や超文明、DATやルイルなどは在りえないと感づき、
結局は断念したんだっけ。……ちょっと気がつくのが遅かったかもだけど。

中一の頃は、中二病を患っていた。…………思い出したくもない。
今でもNEOという単語を見てしまうと、この頃を思い出し、頭を抱え込んでしまう。
…………今度この頃の作文やノートの処分を真剣に検討しよう。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:40:10.77 ID:+lpLzryn0
中二の頃、一つの夢を見つけた。それは当時読んだ小説からだった。

バーを開いてる男の元にいろんな人が来る、それだけの話。
店主とお客の掛け合いがとても楽しかった。
途中までは確かに読んだ記憶はあるが、何故かオチが思い出せない。

当時はそのバーテンダーに憧れて、色々と真似事をしていた。
図書館に行って知識を多く仕入れたり、母から小料理を教わったりもした。
さすがに未成年だったので、実際に行く訳には行かなかったけど……

(`・ω・´)「そうか、すっかり忘れてたな…………」

高校に入っても夢は変わらなかったが、あの事件が起こってしまい、
「めんま亭」で働き出してからは慣れないことで忙しく、
当時の夢なんて全く思い出す暇なんてなかった。


しかし考えてみると、その職業を目指した理由は、お客さんと話して幸せになってもらうこと。
結果だけ見ると「めんま亭」で働いているのと変わらない。

実際今現在の僕の夢、いや目標は「めんま亭」をこのまま続けていくことだった。
おいしいものを作り、来た人みんなに幸せを味わってもらう。
儲けや客数なんてどうでもいい。……いや、来客ゼロはもちろん駄目なんだけどね。


ふと時計を見ると既に午前2時を回っていた。こういうことをしてると時間は速い。
シャワーは明日の朝浴びることにして、僕は床についた。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:42:11.30 ID:+lpLzryn0
(`・ω・´)「おはようございまーす、親方!」

( ФωФ)「おうシャキン、元気いいな。足の傷は治ったか?」

(`・ω・´)「大丈夫です。親方に言われるまで忘れてた程です」

( ФωФ)「おう、そいつは良かったぜ。買い物は二時過ぎ辺りに頼むぞ」

(`・ω・´)「了解。今日も頑張っていきましょ、親方!」

今日は買出しがないので、やや遅めの時間に出店した。
なぜか座敷のハンガーにかかっている制服に着替え終わったあと、
長靴を念入りに振る。うん、今度は何も入ってないみたいだ。

二人で開店の準備をしてると、急に親方が笑い出した。

( ФωФ)「ははっ、全くキュートらしいぜ!」

(`・ω・´)「どうしたんですか、親方?」

( ФωФ)「朝から何かゴソゴソと服をいじってると思ってたら……
        今度から変わったことがあれば警戒するんだな」

自分の制服の後ろに手を伸ばすと、小さく畳まれたメモが張られていた。
破かないように慎重に開き、内容を読む。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:44:07.95 ID:+lpLzryn0
  ――――――――――――――――――――――――――‐
  ごじつになったけど、シャキンくんには悪いことをしちゃいました。
  めっ、だね。きのうの私。画びょうはしばらくじじゅうします。
  んーと、今日の料理楽しみにしてるよ。
  ねえ、これからもお仕事がんばってね!
                              ☆ キュート ☆
  ――――――――――――――――――――――――――‐

いやー、非常にキュートちゃんらしい。
いちばん気になるのは、自重の読み方が違ってるところかな。
よし、キュートちゃんに言われた通り、今日も頑張るぞ!!
別段と今日は忙しくなるわけじゃないだろう、なぜかそう感じた。
にらの在庫は大丈夫だったかな……?



<_プー゚)フ「兄ちゃーん、ネギミソと半チャーハン」

(`・ω・´)「あいよー。親方、半チャお願いします」

( ФωФ)「分かった、三十秒待ってろ」

一年ほど前からは僕が麺類、親方がご飯類と洗い物、ホールを担当している。
なんでも僕への麺の特訓らしく、そろそろ親方は僕に炒め物を叩き込もうと考えてるらしい。

客足が落ちた二時半頃、僕は買い出しの準備を始めた。
私服に着替え、店の札を [通常営業] から [半人前] に変える。
…………うん、二人が一人に減るんだから間違えてはないはずだ。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:46:24.00 ID:+lpLzryn0
ケーキ屋とゲームショップは反対方向にあるので、まずはケーキ屋「ミセリ」に向かう。
駅の表にある昔からなじみのケーキ屋で、僕はここのチーズケーキが好きだ。

(`・ω・´)「すいませーん、杉浦キュートの名前でケーキ頼んでたんですが……」

川д川「あらあらー、シャキン君じゃない。仕事はどうー」

この若い店員の人は中学からなじみの貞子さんで、僕はこの人は少し苦手だ。

川д川「うふふー、キュートちゃん十一歳になるんだー、 一番可愛い辺りねー。
     いくら可愛くたって手を出したら駄目だよー。捕まるよー」

(#`・ω・)「出さないって!妹だと思ってるような人に手を出すかい、普通!?」

川д川「世の中にはシスコンって言葉もあるしねー…………
     そういえば昨日ワカッテマス君に会ったよー」

(`・ω・´)「へえ、珍しいな。あいつ医学部に入ったんだっけ?」

川д川「なんでも外科医になるらしいよー。『女の裸がタダで見れるねー』って言ったら、
     真面目な顔して  ( <●><●>)『あなたが破廉恥な性格だってことはわかってます』
     って言い返されちゃったよー。冗談が通じないねー」

(;`・ω・)「いや、それは貞子さんが悪いでしょ……少し言葉を考えなよ……」

川д川「そうなのかなー?あっ、ケーキだったねー。
     えーと、名前はキュートちゃん、十一歳のバースディで、
     いちごショートの五号。これで問題はないかなー?」

お金を払い、貞子さんに別れを告げて僕は店を出た。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:48:07.90 ID:+lpLzryn0
ケーキを運んでるときにアクシデントがあると困るので、
一度親方のところに戻り、ケーキを大型冷蔵庫の片隅にいれる。
店内ではテーブル席で、親方がお客さんから注文を取っていた。

lw´‐ _‐ノv「ベトナムの大地に生きろ。そんなフォー・ボーを頼む」

(; ФωФ)「譲ちゃん、ウチはラーメン屋だ。残念だが店で出来るものを頼んでくれ」
  _, ,_
lw´‐ _‐ノv「むぅ、ならば……米の活け造り、そんなものはどうだ?」

(; ФωФ)「よく分からんが炒飯でいいな? おっ、シャキン帰ってたのか!」

(`・ω・´)「親方、キュートちゃんが帰る前にプレゼントを買っておきたいです。
      わざわざ制服に着替えるのも面倒なので、すぐに行ってきますね。
      …………気休めですが、親方ならうまくやれますよ!」

( ФωФ)「む……そ、そうか…………」

お客さんを相手する親方を横目に見ながら、僕はおもちゃ屋に向かう。
うん、決して逃げた訳じゃない。キュートちゃんに喜んでもらうためだ、きっと……


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:50:54.17 ID:+lpLzryn0
親方がうまくやってくれることを願い、僕はゲームショップ「HANYAN」に向かう。
店の入り口に繋がれてるビーグルを軽く撫で可愛がったあと、店内に入る。
レジでは店員のしぃさんが退屈そうにしていたが、僕の姿を見ると真面目な顔になった。

(*゚ー゚)「あら、いらっしゃい。いつもウチの娘がお世話になってます」

(`・ω・´)「いえいえ、こちらこそキュートちゃんが色々と」

ここの店はギコさんとしぃさんの夫婦で経営していて、一人娘につーちゃんという子がいる。
その子はキュートちゃんの親友で、よく店に遊びに来てるのを見る。

(`・ω・´)「あのー、キュートちゃんの誕生日プレゼントを買いに来たのですが……」

(*゚ー゚)「ああ、そういえばつーが言っていたわね。何にするの?」

(`・ω・´)「DSと、あとアスモンの新しい奴が欲しいんですが」

(*゚ー゚)「DSは今マリンブルーしかないけどいいかな?
     あとアスモンのver.はどうする? クールver.とヒートver.があるんだけど」

青色はキュートちゃんの好きな色だから問題はないけど、ver.までは考えてなかったな。
どちらにするか悩んでいると、しぃさんがアドバイスをくれた。

(*゚ー゚)「ウチのつーはヒートver.をやってるから、クールver.がいいんじゃない?」

(`・ω・´)「じゃあそれでお願いします」

ラッピングを始めるしぃさんだったが、ふと微笑を漏らした。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:53:15.36 ID:+lpLzryn0
(*゚ー゚)「そういえば、昔の君も似たようなことあったよね」

(`・ω・´)「えっ、そうでしたっけ……?」

(*゚ー゚)「ふふ、ドクオver.かプギャーver.かを真剣に悩んじゃってて……」

そういえばそうだったような……確かあの時は……

(*゚ー゚)「私が片方ずつソフトを手に持って背中側に隠してね、
     それで君が大声で『右手』って叫んで……
     どうだった、あのソフトは?」

(`・ω・´)「いやー、当時は寝る間も惜しんでやってましたよ。ホント楽しかったです。
       数年前に本体ごとキュートちゃんに渡しちゃいましたけどね」

(*゚ー゚)「あー、キューちゃんが持ってたのは君のものだったんだ。
     いいよね、そうやって自分が楽しんだものが、別の世代に伝わっていくってこと……」

しぃさんは何か物思いに耽っていて、僕は少しの間口を挟めなかった。

(*゚ー゚)「あっ、ごめんね。えーと、合計で一万円と二千円になります。」

(・ω・´;)「レジを見ると一万と八千円になってるんですが……?」

(;゚ー゚)「あれ、ごめんなさい……なんで二千なんて出てきたんだろう?」

会計を済ませ、店を出る。ビーグルは気持ちよさそうに寝ていた。
プレゼントを持ち、僕はめんま亭に急ぐ。
あれから親方はうまくやってるといいんだけど…………


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:55:11.57 ID:+lpLzryn0
(`・ω・´)「帰りました、親方! さっきのお客さんはどうなりました?」

( ФωФ)「おう、おかえり。さっきの客はまあ満足してたようだったぜ。
        なんでも  lw´‐ _‐ノv『Nice rice. まさにこれは誠。中の人はいない』
        とか話してたしな。」

それって満足してるのか……?まあいいかな。
プレゼントを戸棚に収め、コックコートに着替えなおす。
もうすぐ夕方、もう一頑張りだな。


( ФωФ)「注文は決まりましたか?」

ξ゚⊿゚)ξ「塩ラーメンを一つお願い。後、勘違いしないでね!!
       ブーンがどうしてもまた行きたいって言うから、仕方なく来ただけだから!」

( ^ω^)「あれ、確かツンがここに行きたいって言い出したんじゃ……」


   イチイチウルサイッ ! ξ#゚⊿゚)ξ=つ)゚ω゚):;・':。 イナクトッ !!


(; ФωФ)「おいおい、もめ事は外で頼むぜ……」

時刻はもうすぐ六時。キュートちゃんはまだ帰ってない。
少し不安になっていると、裏口の開く音が聞こえてきた。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/10(土) 23:58:17.19 ID:+lpLzryn0
o川*゚ー゚)o「ただいまー。遅くなってごめんね!」

(*゚∀゚)「ヒャッホー、少しだけお邪魔するぜー」

居間からキュートちゃんとつーちゃんが顔を出す。
無事に帰ってきて何よりだけど、なんでつーちゃんもいるんだろうか。

(`・ω・´)「お帰り、それにこんばんは。こんな時間まで何してたの?」

o川*゚ー゚)o「ヘリカルちゃんとこで遊んでたんだよ」

(`・ω・´)「今度から遅くなりそうな時は電話してほしいな……
       ところでつーちゃんは何しに来たの?」

(*゚∀゚)「オレはキューに漫画を貸してもらいに立ち寄っただけだ!」

(`・ω・´)「家の人に遅くなること連絡してある?もしまだならそこの電話をつかいなよ」

(*゚∀゚)「おー、じゃあちょっと借りるぜ。シャキンの兄貴ありがとな!」

注文が入ったので、ラーメンを作りカウンターに置く。
しばらくすると、つーちゃんの別れを告げる声が聞こえてきた。

(*゚∀゚)「じゃあなー、シャキンの兄貴。キュートをよろしく頼むぜ!」

……それは僕の台詞じゃないのか?


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:00:07.29 ID:bLpctZav0
仕事も終わり、本日のメインイベントが始まる。

( ФωФ)「キュート、誕生日おめでとう」

(`・ω・´)「ハッピーバースディ、キュートちゃん!」

o川*^ー^)o「うんっ、二人ともありがとね!」

テーブルにはいつもより豪華な料理が並んでいた。
キュートちゃんの好物である鶏の唐揚げにクリームシチュー、
真ん中にはさっきロウソクを吹き消したバースディケーキがある。

o川*゚ー゚)o「ん、このサラダの味変わってるね」

(`・ω・´)「あれ、もしかして口に合わなかった?」

o川*゚ー゚)o「いやいや、とってもおいしいよ!シャキンくんが作ったの?」

(`・ω・´)「うん、そうだよ。喜んでもらえたみたいだね」

大根とホタテの貝柱を使ったサラダ、昔母から教わったものだ。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:02:08.35 ID:bLpctZav0
( ФωФ)「シャキン、一杯どうだ?」

親方が冷蔵庫からビールを取り出してきた。
数年前から飲ませてもらっているが、最近やっと美味しさがわかってきた。

o川;゚⊿゚)o「あっ、父さん達ばっかりずるい!」

( ФωФ)「あと七年待て、キュート」

あれ、たしかお酒は二十歳からだったような……
突っ込む前に親方からビールを渡される。

(`・ω・´)「ありがとうございます、親方」

二人で缶を打ち付けあい、ビールを喉に流し込む。
仕事で疲れた体にとっては、たまらなく美味しかった。

o川*゚ー゚)o「……はあ、早く大きくなれないかな」

( ФωФ)「まあまあ、今をじっくり楽しんでおけよ。
        早く大きくなっても損をするだけだぞ」

o川*゚ -゚)o「……そっかなー?」

( ФωФ)「そうだ。しかし俺も学生の頃を思い出すな……
        高校入試の時、初めてあいつと出会ってな――」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:04:37.96 ID:bLpctZav0
( *ФωФ)「……という訳で、一応夢は叶ったんだ」

(・ω・´*)「へー、そうだったんですか」

およそ1時間後、僕は親方の身の上話を聞いていた。
親方は酔いが深くなると、必ずこの話をする。
正直何度も聞いてるので、少し飽きてきているのだが……

ちなみにキュートちゃんは、早速プレゼントのゲームをやっていた。
画面を見つめる彼女の表情は、とても嬉しそうだ。

( *ФωФ)「そうだ、夢ってものは叶えるためにあるもんだ。
        そういえばシャキンも何か夢があるのか?」

(・ω・´*)「いや、別にそんな大したものじゃないですし……」

( *ФωФ)「ん、なんだちゃんとあるんじゃねえか。
        よし、聞かせてみろ!全力で協力するぞ!」

o川*゚ー゚)o「シャキンくんの夢、私も聞きたいな!」

……ゲームに夢中だと思っていたが、しっかり話は聞いていたようだ。
二人にせがまれ、僕は少し気恥ずかしい思いをしながら夢を語った。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:06:28.22 ID:bLpctZav0
(・ω・´*)「……ってことです」

o川*゚ー゚)o「へー、かっこいい夢だね」

( *ФωФ)「うん、今からでも遅くねえ。その夢目指してみろよ」

(・ω・´*)「いや、さっきも話したと思うんですが、
      ある意味夢は叶ってる訳ですし……」

( *ФωФ)「いいか、シャキン。夢ってのは妥協しちゃ駄目だ。
        一回限りの人生だ、だからこそ最高にする必要がある」

o川*゚ー゚)o「そうだよ、頑張りなよ!」

(・ω・´*)「いや、だから今はこの店を守っていく方が僕の夢なんです!」

( *つωФ)「ふっ、ありがてえな、シャキン。でもこれだけはいっとくぜ。
        もしその夢を叶えたくなったら、いつ飛び出して行っても構わないからな」

o川*゚ー゚)o「そうだ、いっそのこと両方叶えるってのは?」

(・ω・´;)「さすがにそれは……」

こうして、誕生会の夜は段々と更けていく。
親方とキュートちゃんの楽しそうな顔は、多分一生忘れないだろう。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:08:37.57 ID:bLpctZav0
          ☆     ☆     ☆


('、`*川「へえ、楽しそうな暮らしですね」

(´・ω・`)「ええ、あの頃が一番幸せでした」

暖かな日差しは少しずつ傾いて行く。
対岸にある道には、小学生の下校姿が見える。

('、`*川「しかし名前を変えるなんて何があったのですか?
     話を聞く限り、平穏な生活そのものじゃないですか」

(´・ω・`)「……私もこんな生活がずっと続くと思っていました」

('、`;川「あの。もし辛いようでしたら、無理して話さなくていいですよ」

(´・ω・`)「いえ、せっかくだから最後まで話をさせてください」

太陽に薄い雲がかかったことにより日差しが弱まり、辺りは薄暗くなる。
冷たい秋風が吹きぬけ、段々肌寒いと感じる気温へと変わっていく。


     「それから半年ほど後、ちょうど今頃の季節でした―――」


          ☆     ☆     ☆


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:10:16.04 ID:bLpctZav0
(`・ω・´)「親方、チャーシューできました!」

季節は秋の中ごろ。この時期は客がぐんと多くなる。
今はまだ夕方前なので、客はほとんどいないけど。

ミ,,゚Д゚彡「いやー、お宅の若い人頑張ってますね。
      ウチの麺をここまでうまく茹でてくれるんですから」

( ФωФ)「おいおい、それは買い被り過ぎだろ」

ミ,,゚Д゚彡「いやいや、そんなことないですって!」

この人は町にある製麺工場の職員、フサギコさん。
めんま亭の麺はここから仕入れている。

ミ,,゚Д゚彡「そういえば聞きました?なんでも駅で暴行事件があったとか」

( ФωФ)「む、そいつは初耳だな」

ミ,,゚Д゚彡「最近は物騒ですよね。隣町で放火事件もあったらしいし……」

なんか最近暗い話題ばかりだな。明るい話題は無いものか……


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:12:15.44 ID:bLpctZav0
o川*゚ー゚)o「ただいまー。あっ、フサさんお久しぶりです」

キュートちゃんが居間から顔を覗かせる。
手に紙皿に乗った何かを持っているようだ。

o川*゚ー゚)o「これ今日の調理実習で作ったクッキー。フサさんもどうぞ」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとう、おいしくいただくよ」

(`・ω・´)「フサギコさん、気をつけたほうがいいです。
       下手をすると体調を崩しますからね」

o川#゚⊿゚)o「酷いなぁ、人を料理下手みたいに言って!」

(`・ω・´)「一ヶ月前の芥子シュークリーム、忘れたとは言わせないからね」

o川;゚ -゚)o「ん、あれはつい魔が刺して……」

以前つーちゃん家で作ったといって、シュークリームをくれたことがある。
つい無警戒で噛り付いたが、中のクリームが芥子だったのだ。
……一日中何を食べても辛く感じたな…………

ミ;,,゚Д゚彡「……ええっと、食べないほうがいいんですか?」

o川#゚ー゚)o「今回は何も入ってないから!シャキンくん、口を開けて!」

(・ω・´;)「でもこないだのチョコだってタバスコが……」

o川#゚⊿゚)o「いいから食べて!早く!一口でもいいからー!」


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:14:08.11 ID:bLpctZav0
……結局クッキーには何も入ってなく、警戒して食べた僕が馬鹿みたいだった。
時刻は夕方過ぎとなり、客足はどんどん増していくばかりだ。


ξ゚⊿゚)ξ「いつものでお願い」

(; ^ω^)「ツン、一応塩って言おうお……あっ、味噌大盛り頼むお」

すっかり常連さんになった高校生のカップル。
強気な少女の尻の下に敷かれている彼には、少し同情してしまう。

  _
( ゚∀゚)「よし、ネギ味噌の大盛りにライス大だ!」

从 ゚∀从「じゃあ俺は味噌、醤油、塩の大盛りを一つずつ。あと炒飯で」
  _
(; ゚∀゚)「なっ、なんだと……」

(; ><)「ママすごすぎなんです……」

(*‘ω‘ *)「ぽぽっぽ!!」

大量に注文して、ちゃんと完食する親子連れ。
……正直あの女性のお腹はどうなっているんだろう?


いつもとあまり変わらない日々が続いていた。……この時までは。
きっかけは、ある人物の来店からだった。


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:16:11.93 ID:bLpctZav0
/ ,' 3「久しぶりじゃの、杉浦さん」

(´<_` )「どうもこんばんは」

荒巻さん達が訪れたのは、いつもより少し早い時間帯だった。

( ФωФ)「あれ、お二人ですか?」

いつも三人で訪れるか、一人でこっそり来る荒巻さん。
まあどちらにせよ、最終的には三人で帰るんだけど……

(´<_` )「ああ、兄はちょっと用事がありまして……」

/ ,' 3「近頃よおけぇ事件があるけぇのう。調べてもらっとるんじゃ。
    ありゃーブツクサ言いながらはぶてとったがのう」

( ФωФ)「最近は物騒ですからね。何か分かったら教えてください」

/ ,' 3「ん、任せとけぇの。杉浦さん、味噌をバター付きで頼むわい」

(´<_` )「あっ、俺は醤油ラーメンと小ライスで」


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:18:13.26 ID:bLpctZav0
  _
(li ∀ )「ご、ご馳走様でした……会計お願いします」

从*゚∀从「いやー、食った食った。うまかったぜー!」

(; ><)「パ、パパ大丈夫なんですか?」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽぽぽ!!」

家族連れが出て行き、店内は荒巻さん達だけになる。
僕は皿を洗いながら、まったりとすごしていたときだ。


<ヽ`∀´>「ホルホルー、お邪魔するニダ」

( ゚"_ゞ゚) ( ・ω・)「…………」(’e’) (・∀ ・)

入り口のドアが開き、店内に五人ほど人が入ってきた。

( ФωФ)「いらっしゃいませ、五名様ですか?」

<ヽ`∀´>「いや、席はいらないニダ。ちょっとそこの人に用があるだけニダ」

そういって男達は、一直線に荒巻さんの所に向かおうとする。
しかし弟者さんが立ち上がり、男たちの行く手を阻んだ。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:20:08.34 ID:bLpctZav0
(´<_` )「荒巻さんに何のようでしょうか?」

<ヽ`∀´>「ホルホル、ちょっと大地主の顔を見にきただけニダ。
      ……しかし見れば見るほどチンケな爺ニダ」

(´<_` )「……お前みたいな小物臭がする奴に、
      まともな観察眼があるとは到底思えないがな」

/ ,' 3「まあまあ。腹を立てんさんなや、弟者。
    ほいでワシに何の用事なんじゃ?」

先ほどから話していた男が荒巻さんの対面に座り、他の四人は隣のテーブルについた。
弟者さんは荒巻さんの隣に座り、あまり穏やかではない話が始まる。

<ヽ`∀´>「端的に言うニダ、ウリは民奈組のニダーニダ。
      近いうちに駅前の一区画を渡してほしいニダ」

/ ,' 3「なんじゃい、こないだのいなげな連中かい。
    ワシゃあちゃんと駄目ゆうたはずなんじゃがの」

<ヽ`∀´>「そんなの関係ないニダ。あの土地が必要なんニダ!」


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:22:17.60 ID:bLpctZav0
どうやら話は平行線をたどっているようだ。まあニダーって人は無茶なことをいい、
荒巻さんは応じるような人ではないから、どうしてもそうなってしまう訳なんだが……

/ ,' 3「そげなわやくそなこたぁあるかい。ちぃたあまともな話をせぇや」

<#ヽ`Д´>「ファッビョーン!! いい加減にするニダ!
       あと何言ってるかよくわかんないニダ!」

正直僕も荒巻さんの方言は、大体でしか意味合いをとれない。
しかしその言葉からは、否定という意思はしっかり現れていた。

/ ,' 3「もうええかいの?はようせんと麺がのびるけいのう」

そういって荒巻さんが食べかけのラーメンに箸を伸ばしかけたときだ。


<#ヽ`∀´>「こんなの食ってる暇ないニダ!」

いきなりニダーが立ち上がり、丼を掴み上げ床に叩きつけた。
大きな破砕音とスープが散らばる音が店内に響きわたる。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:24:17.12 ID:bLpctZav0
突然の暴挙により、店内の動きが止まった。
僕に荒巻さん達、四人組まで呆然とした表情を浮かべている。


<ヽ`∀´>「ホルホルー、お前もこうなりたくなかったら土地を渡すニダ」

得意げな表情を浮かべるニダー、しかし急に彼の右肩に手が置かれる。

<ヽ`∀´>「ん、なんニd―――」

振り向くと同時、ニダーの右顔面に拳が突き刺さる。
半回転し椅子を巻き込みながら、ニダーは床に崩れ落ちた。

(# ω )「いいか、料理人にとってお客様は神、料理は我が子同然なんだ」

指をゴキゴキと鳴らしながらその人物は話を続けていく。

(#ФωФ)「自分の神と息子を傷つけられて、怒らない奴はいねぇ!」

『めんま亭』の店主、杉浦ロマネスクさんの憤怒した姿がそこにあった。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:26:47.67 ID:bLpctZav0
(#’e’)「てめえ、よくもアニキを!」

( ・ω・)≡つ「ギッタギタにしてやっからよ!」

親方のすぐ後ろにいた二人が立ち上がり、殴りかかる。しかし―――

(#ФωФ)「フンッ!」

(;ω(:;)「なんじゃそりゃー!」

(’e’)「うわぁ~~~」

片方が放ったパンチを左腕で跳ね上げ、右肩から突っ込み弾き飛ばす。
飛び掛ってきたもう一人には、強烈な後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

【+ 】ゞ゚)「これでも食らいな」

残りの一人が店の椅子を持ち上げ、親方に投げつける。

【+ 】<_` )「とおっ!」

しかし同じく椅子を持った弟者さんが間に割り込み、飛んできた椅子を叩き落とした。
テーブルの上に落ちた椅子は調味料入れにぶつかり、破砕音が響きわたる。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:29:04.23 ID:bLpctZav0
( ゚"_ゞ゚)「ちっ、だがこれなら……」

椅子を投げた男は、懐からナイフを取り出してきた。
刃渡りが大きなサバイバルナイフ、おそらく刺さればただではすまないだろう。

( ゚"_ゞ゚)「この俺を怒らせたことを後悔すr ――」

台詞を言い切る前に、ナイフ男は前のめりに倒れた。
こっそり後ろから近づいた僕が、まな板で頭を殴ったからだ。


(・∀ ・;)「あわわわわっ……」

席に着いたまま動揺する残りの男に、親方が近づき言葉を放つ。

(#ФωФ)「お前には手を出さねぇ、こいつらを連れて帰らなきゃならないからな。
       壊れた椅子と丼、その他の代金。しめて二万円置いてとっとと出てけ!」


動揺男と意識を取り戻した二人組は、ニダーとナイフ男を担ぎ店を飛び出していった。
もちろん親方が二万円をせしめたのは言うまでもない。
たしかあの椅子三千円もしなかったと思うんだけどな……


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:31:24.37 ID:bLpctZav0
(´<_` ;)「すいませんでした、荒巻さん!俺がついていながら……」

/ ,' 3「別に気にせんでえぇ、さっきは良うやってくれたしのう。
    杉浦さん、ありがとな。あんたぁ格闘技でもやっとったんかい?」

( ФωФ)「ええ、数年前に通信空手を三年ほど。
        ……シャキン、中々の判断だった」

(`・ω・´)「いえ、それほどでもないです」

正直な話、咄嗟に動けた僕自身が驚きだ。
まあともかく、怪我人が出ずによかったと思う。

o川;゚⊿゚)o「ねぇ、さっきの凄い音は何!?」

キュートちゃんが店に飛び出してくる。
やや火照った顔に濡れた髪、ベットリと腕に張り付いている服。
おそらくお風呂に入っていた時に騒音を聞き、慌てて飛び出してきたのだろう。

( ФωФ)「ああ、ちょっと悪い奴らを懲らしめてただけだ。
        誰も怪我一つ負ってねぇからよ、心配すんな」

o川;゚ -゚)o「そうならいいんだけど…………
       うわぁ、店の中ぐちゃぐちゃだね」


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:33:34.73 ID:bLpctZav0
あらためて店の中を見渡す。
足が折れた椅子に、調味料が散らばったテーブル。
床の一角には、割れた丼からこぼれたスープが池を作っていた。

/ ,' 3「ちぃとばかしたいぎいことになったのう」

荒巻さんがいつに無く真剣な表情を浮かべている。

( ФωФ)「……やはり先ほどの連中のことですか?」

/ ,' 3「ああ、そうじゃ。民奈組ってゆう輩でのう……」


荒巻さんの話によると、先ほどの連中はヤクザであるらしい。
名実共に悪名高い組で、そちらの世界で知らないものは無いとか。

そんな民奈組だが、数日前駅前の空きテナントを借りたいと言ってきた。
しかし荒巻さんは、自分の気に入った人にしか土地を貸さない主義。
当然その場の話はこじれ、うやむやのまま終わったかに見えたが……

/ ,' 3「どうやらまだ諦めきっとらんかったようじゃの」

(´<_` )「奴らはメンツを大事にする。どういうことか解りますか?」

( ФωФ)「つまりボコボコにされた恨みを、俺にぶつけてくるってことだろ」

/ ,' 3「……けどのぅ、狙われるんが杉浦さんだけたぁ限らんで」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:35:17.43 ID:bLpctZav0
相手はヤクザだ。ストレートに親方を狙ってくるとは限らない。
店の悪評を流したりとか、取引先の業者に嫌がらせをするとか。
色々と店に迷惑をかけてくるだろう。いや、それより…………

( ФωФ)「シャキン、キュート。すまんがしばらく迷惑をかけそうだ」

(`・ω・´)「僕は構わないです。それよりキュートちゃんが……」

o川*゚ー゚)o「父さんは自分が正しいと思ったことをしたんでしょ?
       私は気にしないよ。もしまた来るなら、私も協ry――」

(#ФωФ)「キュート!今回は遊びじゃねぇんだ!」

o川;゚ -゚)o「うっ…………わかった」

親方にとっての大事な一人娘、キュートちゃん。
彼女だけは絶対巻き込まないようにしないとな。

/ ,' 3「もたぁワシが悪いんじゃけえ、てごはちゃんとするけぇの!」


その日、僕は親方の家に泊まり、色々と話し合った。

決まったのは、なるべく普段通りの生活を続けること。
店に関る全ての人、特にお客さんに迷惑をかけないこと。
そして、三人とも無事に過ごせるように、常に警戒しておくことだった。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:37:10.24 ID:bLpctZav0
(`・ω・´) (んー、まだなのかな……)

三日後の昼下り、僕は小学校前のバス停ベンチに座っていた。
様々な色のランドセルを背負った子供達が、目の前を通り過ぎて行く。
ふと校門を見ると、よく知った顔の二人組が走ってくるのが目に入った。

o川*゚ー゚)o「ごめん、おまたせー!」

(*゚∀゚)「よお、シャキンの兄貴!毎日ご苦労だな!」

(`・ω・´)「いや、別に構わないよ。じゃあ帰ろうか」

あれから毎日、僕はキュートちゃんの登下校に付き添っていた。
警戒する僕達とは裏腹に、三日経った今でも民奈組の影はない。

(*゚∀゚)「いやー、しかし大変そうだな」

(`・ω・´)「全くだよ。まあ荒巻さんが色々やってくれてるんだけど……」

何でも民奈組に顔が利く人へ連絡を取りつけてる最中だとか。
出来れば穏便に話が済めばいいんだけどね。


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:39:14.62 ID:bLpctZav0
つーちゃんはキュートちゃんに用があるらしく、三人で『めんま亭』に帰ることになった。

o川*゚ー゚)o「ただいまー、父さん。変わりはなかった?」

(*゚∀゚)「ちょっとだけお邪魔しまーす!」

( ФωФ)「お帰り、キュート。あとシャキン、ご苦労だったな」

(`・ω・´)「いえいえ。それほどでも……」

カウンター席の一番奥にいる人物が、雑誌から顔を上げる。

( ´_ゝ`)「おお、やっと帰ってきt…………」

荒巻さんの協力により、『めんま亭』が開店中、流石兄弟の片方が来てくれることになっている。
今来ているのは兄者さん。普段の行動を見ると頼りなく思ってしまうが、やる時はやるらしい。
そんな兄者さんが、なぜか僕らの方を見て固まっているんだけど…………

o川;゚ー゚)o「あの、兄者さん。どうしたんですか?」

(; _ゝ )「そ、そんな馬鹿な……いや、夢じゃない…………」

兄者さんの様子がおかしい。いや、元々か?
何かを呟きながらフラフラと近づいてくる兄者さん。
僕達の前で立ち止まり、そして――


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:41:28.72 ID:bLpctZav0
( *´_ゝ`)「       ┏┓                ┏┓                          ┏┓      ┏┳┓
        ┏━━━┛┃┏┓        ┏━┛┗━┓  ┏┓    ┏┓    ┏┓┏━━┛┗┓┏┓┃┃┃
        ┗━┓┏━╋┛┗━┳┳┳╋━┓┏━╋━┛┗┳━┛┗┳━┛┗╋━┓  ┏┻┛┗┫┃┃
            ┃┃  ┗┓┏┓┃┃┃┣┓┃┃┏╋┓  ┏┻┓  ┏┻┓  ┏┛  ┃┃┃┏━┓┃┃┃
            ┃┃    ┃┃┗╋┻┛┃┃┃┃┃┣┛┃┃┏┛┃┃┏┛┃┃┏━┛┃┣╋━┛┣╋┫
            ┗┛    ┗┛  ┗━━┻┛┗┛┗┻━┻┛┗━┻┛┗━┻┛┗━━┻┛┗━━┻┻┛ 」


                Σ (゚∀゚*;)「んなっ!!」


妙な奇声を発しながら、いきなりつーちゃんに抱きつこうとする兄者さん……もとい変態。
幸いなことに、咄嗟につーちゃんが振り上げた足がお腹に入り、変態は床に崩れ落ちた。

( *´_ゝ`)「ええいっ、まだだ!まだ終わらんよ!」

(゚∀゚*;)「うわっ、まだ来るのかよ!」

しかし変態の奇行は止まらない。床をズルズルと這いながら、距離を取ったつーちゃんを追う。
その動きはさながら生気を求めるゾンビの様であり、最高に気持ち悪かった。

( ФωФ)「おい、いい加減にしろ」

( ゚ _ゝ゚)「ティエレン!!」

親方が兄者さんの体を踏みつけ、動きを止める。
親方の勇気ある行動、僕は敬意を表します。


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:43:39.67 ID:bLpctZav0
もうすぐ日が暮れる時間帯。これからの客に備え、店では準備を進める。
つーちゃんはキュートちゃんからの用事を済ませた後、早めに帰宅してもらった。
いつ民奈組が来るかわからない今、なるべく被害にあう人は減らさないと……

( #)_ゝ`)「いや、だってツールヤさんそっくりの女の子が実際にいたんだぜ!?」

(`・ω・´)「親方ー、刻みネギの残量が少ないんですけど?」

( #)_ゝ`)「だからさ、オレはついに二次元に入れたのかと思ったんです」

( ФωФ)「そうだな、とりあえず十本ほどストックしてくれないか」

( #)_ゝ`)「ええ反省してます。全てはオレが悪かったんです」

(`・ω・´)「了解しました。あれ、メンマの瓶も予備がない……」

( #)_ゝ`)「だから椅子に縛り付けられた縄を解いてくれませんか?」

( ФωФ)「たしか裏の倉庫にあったはずだ。取ってこよう」

( #)_ゝ`)「あれ、ナチュラルにスルーされてる?もしかして」


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:45:25.01 ID:bLpctZav0
十分後、そこには元気に動き回る兄者さんの姿が!

( ´_ゝ`)「もうあんな危険なことはしないよ!」

( ФωФ)「まあ店内の椅子にずっと縛り付けとく訳にはいかんしな」

(`・ω・´)「お客さんが一人逃げていきましたもんね……」

( ´_ゝ`)「まあまあ、そう落ち込むな!何ならオレのセクシーボイスで客引きを―――」

( ФωФ)「今俺のそばには鉄鍋がある。コンロで熱くなったものだ。
        もしかしたら、こいつが誰かの頭に落ちるかもしれんな」

そういいながら鉄鍋に手をかける親方。

(; ´_ゝ`)「すいませんでした!余計なことはしません!」

イライラが増えていく僕らとは裏腹に、民奈組からは何の動きも無い。
いい加減来るなら早くしてほしいんだけどな……


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:47:48.40 ID:bLpctZav0
結局その日も、店は平穏に終わる。

(´<_` )「荒巻さんは色々頑張ってますが、向こうとは連絡が取れません。
      あれ以来、街中で連中を見たという報告もないですし……」

閉店後、弟者さんが経過報告のため、店にやってきた。

( ФωФ)「……やつらは諦めたかと思うか?」

(´<_` )「正直言って、それは無いと思います。ただ何時に来るかまでは……。
      まあ相手との決着が着くまで、俺は貴方達を守りますから」

( ФωФ)「わざわざすまんな、俺なんかのために」

(´<_` )「いえ、荒巻さんからは全力で協力するよう依頼されてますし。
      ……何より俺は、ここのラーメンが好きなんです」

( #)_ゝ`)「ちょっと待った。『オレ達』だろ、そこは!」

ちなみに兄者さんの顔が腫れてるのは、つーちゃんの件が弟者さんにばれたからだ。
まあそれはともかく、親方は流石兄弟の発言を聞き、照れくさそうに答える。

( *ФωФ)「おいおい、そんなに褒めるなんて嬉しいじゃないか。
        シャキン、まだ厨房の片付けは済んでないよな?」


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:50:13.89 ID:bLpctZav0
僕も弟者さんの話を聞いていたので、当然片付けはまだだ。

(`・ω・´)「はい、ないです!」

( ФωФ)「よし、なら醤油とネギ塩を作ってくれ。スペシャルでな」

(´<_` )「いや、別に俺たちは……」

( ФωФ)「なあに、気にするな」

( #)_ゝ`)「流石だぜ、杉浦さん!いっその事これからも只にs――」 メメタァッ!!

(´<_` ;)「出来の悪い兄ですいません。こいつの言うことは気にしないでください」

( #)_ゝ(#)「…………」

(; ФωФ)「あ、ああ。すまんが明日からも警備をよろしく頼むな!」

( #)_ゝ(#)「了解です!」(´<_` )

威勢よく答える流石兄弟。……兄者さんの声は聞き取り辛かったけどね。
スペシャルなラーメンを食べ終えた兄弟達は、そのまま帰っていった。


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:52:06.13 ID:bLpctZav0
この三日間はずっと親方の家にお世話になっていたのだが、
いい加減、家の様子も気になるので、今夜は帰宅することにした。
民奈組の影が全く見えない今、一晩位なら大丈夫だろう。

( ФωФ)「なあ、やっぱ今晩も泊まっていったほうが……」

(`・ω・´)「家を長く空ける準備をしないといけないですし……
       まあ明日から長い間、また親方の家にお世話になりますしね。
       じゃあ、気をつけてください」

( ФωФ)「それは俺の台詞だろ」

o川*゚ー゚)o「シャキンくん、背後に気をつけて帰るんだよ。
       あとこれ……何かあったら紐を引っ張ってね」

そういって防犯ブザーを渡してくるキュートちゃん。
そういえば以前これで酷いイタズラをされたっけ……

(`・ω・´)「ありがとね。じゃあ親方にキュートちゃん、また明日」

( ФωФ)「おお、またな」

o川*゚ー゚)o「バイバーイ。気をつけてねー!」

店の横に置いている自転車に跨り、家路につく。
秋の夜は冷たく、そしてなんとなく物悲しかった。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:54:28.69 ID:bLpctZav0
その日の深夜、僕は裏庭から聞こえる物音で目を覚ました。
誰かの大声、何かが割れる音、そして激しい打撃音。
慌てて飛び起き、枕元に置いておいたバットを持ち、裏庭に向かう。

裏庭を覗いた僕が見たものは、倒れた男と見知った人物だった。

ν(・ω・ν)「ああ、シャキン君。夜分遅くすまないね」

(;`・ω・)「ほわっちょさん!何があったのですか?」

手首を妙な形で構えてる人は、裏手の家にすむほわっちょさん。
確か何か変わった武術の使い手で、街中で道場を開いている。

ν(・ω・ν)「いや、先ほど君の家の方から何か物音がするのでね。
        ふと見てみたら怪しい男が一人、君の家の裏口をゴソゴソと。
        これは賊だと第六感が告げたので、我が手の錆にしてやったところだ。」

僕は倒れている男の顔を覗きこみ、そして驚愕した。

(;`・ω・)「こっ、この人は……」

ν(・ω・ν)「もしかして知り合い?」

(;`・ω・)「ほわっちょさん!その男を捕まえといてください!」

ν(・ω・;ν)「えっ、それは構わないが……」

僕は慌てて自転車に飛び乗り、めんま亭を目指す。
倒れていた男。それは先日のナイフ男だった。


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:56:14.27 ID:bLpctZav0
数時間前に通った道を、反対方向へ駆け抜ける。
途中あった信号は、全て無視して突っ切った。
車に轢かれそうにもなったが、なんとか切り抜ける。


足が重みを増し、思うように動かなくなる。
色々な心配や緊張により、頭がボンヤリしてくる。
心臓の鼓動が増し、口からは荒い息しか出てこなくなる。


駅前に近づくにつれ、僕の意識は薄くなっていった。
だから、最初はそれが何なのかがわからなかった。
街の灯りであると思い、意識に留めていなかった。


めんま亭がある通りまで来たとき、初めて僕は何が起こっているか気がつく。
信じられないまま、違うことを願いながら、店の前に進む。
しかし、僕の願いは叶うことが無かった。


親方の夢を叶えた場所、僕の夢を叶える場所。
そのめんま亭から、火の手が上がっていた。


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 00:58:23.21 ID:bLpctZav0
( ´∀`)「あれ、キミは確か……」

(・ω・´;)「親方ッ!キュートちゃん!」

(; ´∀`)「ちょっ、危ないモナ!」

店の前にいた近所の人を振り切り、中に飛び込む。
めんま亭の店内は、まだ火の手はない様だ。
少し安心しかけたが、キッチンを見たときに僕の足は止まった。


(; ФωФ)

親方がキッチンで座り込んでいる。
赤黒く染まる親方の右胸。
床には同じ色の水溜りが広がっていた。

(;`・ω・)「親方ッ、大丈夫ですか!」

(; ФωФ)「…………ああ、シャキンか」

言葉を喉から搾り出すように話す親方。
荒い息と共に、肩が上下に揺れている。

(; ФωФ)「……なんとかあいつらは追っ払ったんだが……」

(`・ω・´)「親方ッ、とりあえず外へ!」


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:00:09.30 ID:bLpctZav0
(; ФωФ)「……事より…………トを……」

(;`・ω・)「何ですか、親方!?」

(;  ω )「……俺は……かr……キュートを……」

(;`・ω・)「っ!でも親方は……」

(; ФωФ)「……俺はっ……大丈夫だっ!!」

壁に寄りかかりながら、強引に立ち上がる親方。
倒れそうになる体を、キッチンに手を着きバランスを保つ。
そのままゆっくりと外に向かって歩きながら、親方は言葉を発する。

(; ФωФ)「…………俺は一人で……外へ…………だから
       ……キュートを……連れ出して……無事に……」

(` ω ´)「っ……わかりました、親方」

いくら親方でも、あの傷で外まで歩けないだろう。
それよりキュートちゃんを早く助け出し、
それから親方を連れ出した方がいいはずだ。

僕は親方に背を向けて、居間に続く扉を見つめる。
半開きの扉の向こうでは、大きな炎が舞っていた。


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:02:22.11 ID:bLpctZav0
鍋に入っている水を頭から被り、濡れた布巾を口元に巻く。
炎で床が覆われた居間に突っ込み、一気に廊下まで駆け抜ける。
廊下はそれほど火の手が回ってなかったが、代わりに煙が充満していた。

なるべく姿勢を低くし、階段まで突き進んで行く。
階段を上がって行くにつれ、煙の濃度が増していく気がした。
熱と煙により目を開けるのが少し辛いが、我慢して突き進む。

『キュート』と書かれたプレートが貼られているドア。
ドアノブに手をかけるが、熱を持ったノブをつかめるはずも無く、慌てて手を離す。
上着を手に巻き、ノブを回す。しかし扉は何かに引っ掛ったように開かなかった。

一歩下がり、全体重を乗せて蹴りを入れる。
最初の数回は何の手ごたえもなかったが、段々とドアの揺れが増していく。
何度目の蹴りだろうか、ドアが大きく内側に弾け飛んだ。


部屋に入った僕が見たのは、倒れているキュートちゃんの姿だった。
まだ炎の姿はないが、部屋の中は薄い煙で覆われ、高い温度を持っている。

キュートちゃんはゆっくりと僕の方へ視線を向けてきた。

川*゚ -゚)「……シャキン……くん……」

(`・ω・´)「キュートちゃん!今は喋らなくていいから……」

川*゚ー゚)「本当に……来てくれた……」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:04:05.37 ID:bLpctZav0
口に巻いていた布巾をキュートちゃんの口元に巻き直し、背中に担ぐ。
彼女は左手に何かを握り締めながら、右手を僕の首元に回して体を安定させる。

川* - )「……父さんは…………?」

(`・ω・´)「……親方は大丈夫だよ、きっと」

階段まで戻った僕を待っていたのは、階下を埋め尽くす炎の海だった。

(`・ω・´)「キュートちゃん、今から火の中を駆け抜けるけど……」

川* ー )「シャキンくんなら……大丈夫だから……」


階段を駆け下りるにつれ、高温を持った炎が体を舐めてくる。
キッチンで普段高温に慣れているとはいっても、今回は桁違いだ。
キュートちゃんを支える右腕を離さない、それだけを考える。


先ほどより勢いを増した炎の中を進むにつれ、段々意識が遠のいていく。
見慣れた家の変わり果てた姿、体中に伝わる熱、うっすらと聞こえてくるサイレン。
天井にまで届きそうな火に覆われた居間、そこに飛び込んでいく僕。



僕が覚えているのはそこまでだった。


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:07:01.25 ID:bLpctZav0
(`・ω・´)「…………」

最初に目に入ったのは、白い天井だった。
左右を見てみると、薄い水色のカーテンと青空を移す窓。
そこで初めて、僕はベッドに横たわっていることに気がついた。


(;つ_ゝ‐)「……くっ、まだ俺は負けないぞ……」

ベッドの横から、眠たそうな声が聞こえてきた。
目を向けると、そこには船を漕ぎかけている兄者さんの姿がある。
やがて兄者さんは目を開いている僕に気がつき、一気に覚醒した。

(; ´_ゝ`)「ぬおおぉぉっっ!!目を覚ましたか!」

僕は返事を返そうとしたが、上手く声が出てこない。
兄者さんはそんな僕に手のひらを突き出し、声を張り上げた。

( ´_ゝ`)「ちょっとまってろよ!今ナースさんを呼ぶからな!」

高橋名人も顔負けのスピードで、コールボタンを連打する兄者さん。
舌打ちをしてコードに繋がったボタンを壁に叩き付けたあと、廊下に飛び出していった。

「ナースさーん!プリチーなナースさーーん!シャk……ぐふぉっ!!」

「廊下を走るんじゃねえ!あと大声で馬鹿なことを叫ぶな!」

看護師さんの怒声と打撃音、人が倒れる音が廊下から聞こえてくる。
その後なぜか見覚えのある看護師さんと共に、弟者さんが入ってきた。


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:09:12.31 ID:bLpctZav0
弟者さんは部屋に入ると、僕の方を見ながら床に正座をする。
看護師さんと僕が驚く中、手のひらと頭を床に付け、声を張り上げた。

( <_  )「すまん!!俺たちが軽率だった!!」

看護師さんの制止の声を振り切り、何度も謝る弟者さん。
僕は深呼吸をし、声を絞り出す。

(;`・ω・)「……やめてくださいよ、弟者さん」

( <_  )「俺たちが甘かった!!」

(;`・ω・)「謝らなくていいですから、それより……」

( <_  )「何度謝っても足りない!俺があのとき――」

「いい加減にしやがれっ!!」

怒声と共に、弟者さんの頭に鉄拳が落ちる。

从#゚∀从「兄弟共々病院内で騒ぐんじゃねぇ!!こいつも困惑してんじゃねえか!」

看護師さんの言葉により、弟者さんの動きが止まる。

从#゚∀从「自己満足で謝る暇がある位なら、もっと他にすべきことがあるだろ!!
      とりあえずしばらく表に出とけ!!いいって言うまで入るんじゃねーぞ!!」

看護師さんの言葉により、ゆっくりと立ち上がり出ていく弟者さん。


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:12:41.23 ID:bLpctZav0
从 ゚∀从「さてと……取り乱してすいませんでした、看護婦の長岡です。
      とりあえずあなたの病状について説明します。まず――」

つらつらと火傷がどうとか言葉を重ねていく看護師さん。
わかったのは半日の間意識が無かったことと、後遺症などは無いこと。
それと後三日は入院しなくてはいけないことだ。

从 ゚∀从「――という感じです。他に何か聞きたいことはありますか?」

(`・ω・´)「あの、キュートちゃんと親方は……」

その質問をした途端、看護師さんの表情が明らかに曇る。

从;゚-从「その話は彼から聞いたほうが言いかと……」

そういって弟者さんを呼ぶ看護師さん。
さきほどのことが堪えているのか、弟者さんの表情は暗い。

(`・ω・´)「弟者さん、親方とキュートちゃんは……」

暗い表情のまま、弟者さんは口を開いた。


(´<_` )「…………ロマネスクさんは亡くなった」


103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:14:37.05 ID:bLpctZav0
  流石兄弟が騒ぎを聞きつけてめんま亭に到着したのは、
  僕が店内に入った五分ほど後だったらしい。

  店の前まで自力で這い出してきた親方は、僕のためにこう言い残したらしい。
  『俺にもしものことがあっても、復讐なんて考えるな。
    それより自分の夢に向かって突き進んでくれ、それが俺の頼みだ』

  兄者さんは周囲の反対を押し切って店の中に飛び込み、
  ホールで倒れている僕とキュートちゃんを見つけ、店の外まで引き摺り出したそうだ。

  その後僕らもこの病院に搬送されたが、そのとき流石兄弟に訃報が伝えられた。
  死因は刺し傷による出血多量、正直病院に搬送されるまで生きていたのは奇跡だったらしい。

  火をつけた民奈組は、その後二人ほど逮捕された。しかし主犯格は逃亡中らしい。

  捕まった一人の証言によると、目的はキュートちゃんの誘拐。
  しかし右胸を刺されてもなお暴れまわる親方により、計画は頓挫した。
  苦し紛れに持っていた火炎瓶を家に投げ込み、逃亡したとのことだ。


(`・ω・´)「……そうだ、キュートちゃんは!?」

(´<_` )「ああ、彼女なら――」

廊下の方から、パタパタと足音が聞こえてくる。
やがて病院の室内着を着た少女が、入り口から顔を覗かせた。

o川*゚ー゚)o「シャキンくん、目を覚ましたんだね!」


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:17:04.53 ID:bLpctZav0
(`・ω・´)「キュートちゃん、無事だったんだ!」

o川*゚ー゚)o「うん、シャキンくんのおかげだよ!
       あと父さんと…………」

”父さん”の辺りで表情が曇る。
彼女は既に、親方のことを聞いているのだろう。

从 ゚∀从「彼女は特に火傷などもないので、今日中にも退院できます。
      一応夕方まで様子を見る予定ですが……」

o川*゚ー゚)o「シャキンくん本当にありがとね!!
       消防士の人も褒めてたらしいよ。
       なんでも『He is CRAZY!』とか」

(;`・ω・)「キュートちゃん、それは褒め言葉じゃないよ」

o川;゚ー゚)o「そ、そうなの?それはともかく――」

明るく話を続けていくキュートちゃんだが、どことなく無理をしているようにも見える。
おそらく僕を励まそうとすると共に、僕に心配をかけさせないようにしているのだろう。


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:19:37.83 ID:bLpctZav0
僕達が話していると、入り口から人が入ってきた。

/ ,' 3「ホントにすまんかったのう、シャキン」

(`・ω・´)「荒巻さん……」

/ ,' 3「ワシが馬鹿じゃった、ホントに大馬鹿もんじゃ。
    あんないいやつをつまらんことに巻き込んでしもうて……」

大声をあげながら泣き喚く荒巻さん。彼のそんな姿を見るのは初めてだった。
弟者さんのように土下座しようとするが、キュートちゃんにより止められる。

o川*゚ -゚)o「荒巻さん、そんなことをしてもシャキンくんは苦しむだけだよ……
       ……そういえば、シャキンくんが起きたら話があるって言ってたよね?」

/ ,' 3「おお、忘れるところじゃった。のお、シャキンにキュート。
    二人には辛い話じゃろうが、すまんが聞いてくれんかのう」

看護師さんが退室していき、代わりに兄者さんが入ってくる。
顔が真っ赤に膨れ上がっているのは気のせいだろう。
それはともかく、五人そろった所で荒巻さんは口を開いた。

/ ,' 3「ワシはもう駅前の土地を渡して終わりにしようと思うたんじゃが、
    生憎向こうはワシらを目の敵にしとるようなんじゃ」


113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:21:38.63 ID:bLpctZav0
(´<_` )「……民奈組二人の逮捕後、こんな手紙が荒巻邸に届けられた。
      要約すると、『土地の譲渡に関係なく、荒巻家とめんま亭に報復する』だ」

そういいながら、筆で何か書かれた紙を見せてくる弟者さん。

(´<_` )「多分長い戦いになると思う。それこそ一年や二年じゃ済まないほどの……」

(`・ω・´)「大丈夫なんですか、こんなことになって」

( ´_ゝ`)「なあに、俺たちには広い人脈があるからな。
      今も病院の周りはSPが見張ってるんだぜ!」

窓から外を見るが、とてもそんな風にはみえない。
兄者さん曰く、簡単にそれと分かるような人はSPになれないとか。

/ ,' 3「そんでのう、ワシらは民奈組と最後まで戦うつもりなんじゃが、
    シャキンはどうするつもりなんじゃ?」

僕は親方の最後の言葉を思い出す。答えは決まっていた。

(`・ω・´)「なんとかめんま亭を復旧できませんかね?」

/ ,' 3「……そうか、まああんたならそうゆうじゃろうな。
    今すぐは無理そうじゃが、必ずなんとかするけえの」

力強く答える荒巻さん。

/ ,' 3「さてと……ここからが本題なんじゃが」


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:23:09.68 ID:bLpctZav0
/ ,' 3「杉浦さんに頼まれとることがあってのう。
    『キュートを絶対巻き込むな』ちゅうことなんじゃ」

o川*゚ー゚)o「えっ、父さんが……」

/ ,' 3「ワシの知り合いに外国を飛び回っとるやつがおっての。
    そいつにキュートを任せようと思うんじゃが……」

o川;゚⊿゚)o「えっ?どういうことなの!?外国?」

(・ω・´;)「落ち着きなよ、キュートちゃん。
      用はほとぼりが冷めるまでその人のお世話になる。
      そういうことですよね、荒巻さん?」

荒巻さんから肯定の返事が返ってきたが、まだキュートちゃんは動揺している。

(`・ω・´)「キュートちゃん、外国に行ったら身の安全もまず保障されるんだよ。
      それにこんな機会は滅多にないことだと思うし……」

o川;゚ー゚)o「だって、この町を出て行くなんて……
       シャキンくんはどう思うの?」

(`・ω・´)「……それは僕も色々大変だろうとは思うけど、
       何よりキュートちゃんの身の安全の方が……」

o川* ー )o「……シャキンくんがそう思うなら、私は――」


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:25:25.42 ID:bLpctZav0
退院してから一週間の間、色々なことがあった。
僕も離れた県でラーメン屋の下積みをすることに決まり、
二十年慣れ親しんだこの町を離れることになった。


親方のお葬式は静かに行われた。
渡辺さんやフサさん、店によく来ていた常連さんも訪れ、
改めて親方の人徳がどれだけ素晴らしかったかを知った。


めんま亭は住居の一階がほぼ全焼。
近いうちに取り壊すことになるらしい。


僕の家も、空き家になることになってしまう。
家の中から使えそうなものを整理する、最近はそんな日々が続いていった。


そして今日はキュートちゃんが外国に行く日。
空港に向かうための急行電車を見送るため、駅で待っているところだ。


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:27:12.72 ID:bLpctZav0
o川*゚ー゚)o「……あと十分か」

(`・ω・´)「……そうだね」

( ・∀・)「シャキン君、まあ僕に任せてくれよ。
      彼女の身の安全は保障する、絶対ね」

この人が海外を飛び回っているというモララーさん。
キュートちゃんがこれからお世話になる人だ。

( ・∀・)「……おっと、アレを買っておかないとな。
      しばらく荷物を見ていてくれ」

そういいながら席を立つモララーさん。
去り際にキュートちゃんに目配せしたのは気のせいだろうか……

昼過ぎで閑散としたホーム、目の前を一羽の鳩がゆっくりと歩いていく。
鳩を見ながらこれからのことを考えていたとき、キュートちゃんが話しかけてきた。

o川*゚ー゚)o「あっ、あのね、シャキンくんはこれからどうするの?」

(`・ω・´)「昨日話したと思うんだけどな。とりあえず……」

県外行きのことを話そうとするが、キュートちゃんに遮られる。

o川*゚ー゚)o「いや、そういうのじゃなくてね。もっと将来とか人生的にどうするか……」

(・ω・´;)「将来的にか……とりあえず独立してめんま亭の再建かな」


121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:29:08.88 ID:bLpctZav0
o川*゚ー゚)o「……ねえ、私の誕生日にね、シャキンくんがした夢の話覚えてる?」

(`・ω・´)「うん、ちゃんと覚えているよ」

o川*゚ー゚)o「じゃあさ、私の提案も覚えているかな?」

(`・ω・´)「……たしか『両方夢を叶える』だったよね」

o川*゚ー゚)o「そうだよ、今こそ両方の夢を叶えるべきなんじゃないかな?」

……そうだな、それもいいかもな。

(`・ω・´)「分かった、約束するよ。両方の夢を叶える」

o川*^ー^)o「うん、約束だよ!」

(`・ω・´)「……そういえばさ、キュートちゃんの夢って ――『おー― いっ!キュー―!!』

突然聞こえてきた声により、会話が遮られる。
会話を遮った犯人は、僕達の目の前まで走ってきた。

(;*゚∀゚)「ま、間に合ったぜー……」


124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:31:25.48 ID:bLpctZav0
o川;゚⊿゚)o「つーちゃん、どうして!?」

(#*゚∀゚)「うるせぇ!急に今朝先生から知らされてよ!
       代表で学校を抜け出したんだ!
       せめて一言ぐらい言ってから行けよな!」

(;`・ω・)「つーちゃん、代表って……」

(*゚∀゚)「ほらよっ。クラスの思い、受け取りな!」

そういいながらキュートちゃんに何かを手渡す。
キュートちゃんがラッピングを剥がすと、中から色紙が出てきた。

o川*゚ー゚)o「これは……」

それはクラス全員からの寄せ書きだった。
小さな文字でびっしりと書かれた様々な言葉。
なんと裏面までカラフルに埋め尽くされている。

o川*;ー;)o「つーちゃん……それにみんな……」

(*つ∀;)「へっ、泣くんじゃねえよ!向こうでも元気でやれよな!」

二人が泣き止んだ辺りで、アナウンスが流れる。
時計を見ると、時間まで後五分を切っていた。


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:34:35.28 ID:bLpctZav0
(*゚∀゚)「……そうだ、シャキンの兄貴にあのことは伝えたのか?」

o川;゚ -゚)o「いや、それはまだ……それに今からだと……」

僕に伝えること?一体何なのだろうか。

(*゚∀゚)「なんだよ、そんなのは関係ねぇじゃん!じゃあオレが伝えてやるよ。
     いいか、キューはシャk ――o川;゚⊿゚)o「わーわー!!ストップストップ!!」

(;`・ω・)「一体伝えたいことって何なの?」

o川*゚ー゚)o「はぁ…………シャキンくん、耳を貸して」

(`・ω・´)「?何なんだい、一体……」

キュートちゃんの口元に耳を近づける。

――この時僕は、彼女の趣味を忘れていた――


「…………」o川川*‐)゚´;)「!!!!!!」

(*゚∀゚)=3「うおっ、さすがキュー!」


いきなり手を伸ばして、首を固定してきて、それで…………!!

……永遠とも思える時間が過ぎ、僕の頭と口は開放された。


127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:36:46.18 ID:bLpctZav0
(*`//ω/)「なっ、なななっ、なななな」

o川*゚ー゚)o「……やっぱ、気がついてなかったんだね」

イタズラが成功したときのいつもの顔、
小悪魔的なあの笑みを浮かべ、言葉を続ける。

o川*゚ー゚)o「私、杉浦キュートは、ずっと前からシャキンくんが大好きです!」

(;`//ω/)「っうぇっ、そっ、それって!?」

o川*゚ー゚)o「……ねえ、シャキンくん。お願いがあるの」

(;`・ω・)「な、なんだい!?」

一瞬どんな無理難題を押し付けられるかと思い、少し身構えてしまう。

o川*゚ー゚)o「多分今の私じゃ恋愛対象にならないだろうから……
       十年後、また告白していいですか?」

(;`・ω・)「えっ、いや、でも……」

o川*゚ー゚)o「……もしシャキンくんに好きな人が出来たら、私は諦めるよ。
       でももし私を待っていてくれるなら……」


o川*^ー゚)o「十年後、きっと振り向かせて見せるよ。絶対にね」


131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:38:40.16 ID:bLpctZav0
キュートちゃんのその言葉を待っていたかのように、モララーさんが戻ってきた。

( ・∀・)「いやー、アレを探すのに手間取ったよ……
      じゃあいこうか、キュートちゃん」

o川*゚ー゚)o「あっ、最後に少しいいですか?」

( ・∀・)「……手短にね」

つーちゃんといくつか言葉を交わした後、僕の方を見つめるキュートちゃん。

o川*゚ー゚)o「シャキンくん、私の夢の一つはね、めんま亭に勤めること。
       だから早くシャキンくんも夢を叶えてね。それと……」

キュートちゃんは、彼女がいつも着けているヘアゴムの片方に手をかける。
透明な水色の玉が付いた、年季の入ったもの。これはたしか……

o川*゚ー゚)「シャキンくんの始めての給料日に私が貰ったプレゼント。
      ……これを片方預かってて」

(`・ω・´)「えっ、いいのかい?」

o川*゚ー゚)「私のもう一つの夢、それはシャキンくんとまた暮らすこと。
      それまでこれを大事に持っていてくれないかな?」

(`・ω・´)「……わかった、大事にしておくよ」


133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:40:12.98 ID:bLpctZav0
ゆっくりと電車がホームに滑り込んできて、目の前に止まる。
モララーさんは荷物を抱え込み、先に中へ入っていった。

o川*゚ー゚)「……じゃあ、またね」

(`・ω・´)「うん。夢を叶えて待っているから!」

(*゚∀゚)「元気でやれよ!無事に帰ってこいよ!」

o川*゚ー゚)「絶対だよ。私も元気に頑張るから!」

車掌の笛が響き渡り、ドアがゆっくりと閉じていく。

ゆっくりと、だが確実に進んで行く電車。
キュートちゃんはこちらを見つめている。

そんな中、僕の足は自然に走り出していた。
大きく手を振り、叫びながら電車を追いかける。

(`・ω・´)「キュートちゃん!ずっと待っているから!」

(つω;´)「めんま亭を復活させて!バーも開いて!」

(`;ω;´)「だから、絶対に戻ってきてくれ!僕の元へ!」


   o川*つー;)

ガラス越しに彼女が頷くのが、ちらりと見えた。
電車がどんどん離れていき、見えなくなっても僕は手を振り続けた。


136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:42:48.95 ID:bLpctZav0
          ☆     ☆     ☆

(´ ω `)「……それが、私が見たキュートちゃんの最後の姿でした」

(;、; 川「えっ……最後ということは、つまり……」

日の光はほとんど落ち、オレンジ色だった空も大分薄れてきた。
伊藤は火事の件辺りから、たびたび涙を流している。
何度かショボンは話を中断しようとするが、伊藤は気にせず続けるように促していた。

(´・ω・`)「ええ、それ以来彼女とは会っていません。
      最初の数年は荒巻さん経由で手紙が送られてきたのですが……
      あるときを境にパッタリと途切れてしまいました」

(;、⊂川「……その後、あなたはどうしたのですか?」

(´・ω・`)「荒巻さんから新しい戸籍を手に入れてもらい、ラーメン屋に弟子入りしました。
      それと共にバーの勉強も本格的に始めて……」

('、`*川「そうですか、それで名前が……」

(´・ω・`)「荒巻さんと民奈組ですが、事件から五年後に荒巻さんが老衰で亡くなられました。
      それで彼女との繋がりが完全に絶たれてしまって……
      民奈組は流石兄弟の苦労が実り、今から十年ほど前に解体、消滅しました」

('、`*川「その後彼女と連絡は取れなかったのですか?
     たとえばそのモララーさんに連絡を取るとか……」


137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:45:34.10 ID:bLpctZav0
(´・ω・`)「私もあらゆる人脈を辿ったのですが……荒巻さんの情報操作には敵いませんでした。
      なんとか五年ほど前にモララーさんとコンタクトが取れたのですが、
      キュートちゃんが十八歳のときに離れ離れになったらしく…………」

('、`*川「…………ねえ、ショボンさん。今でも彼女を愛していますか?」

(´・ω・`)「……愛してないといえば、もちろん嘘になります。
      未だに恋愛感情か、それとも家族愛なのか解りませんがね」

薄暗くなった公園を、外灯が照らし出す。
町の中心からは、六時を知らせる鐘の音が聞こえてきた。

('、`*川「ああ、そういえば肝心なことを聞き忘れましたね。
     あなたの夢は叶いましたか?」

(´・ω・`)「まず一つ目の夢ですが、もうすぐ独立してもいいという話が出ています。
      次に二つ目の夢ですが、数年前から深夜に小さなバーを開いています」

('、`*川「あら!じゃあ夢は全て叶ったのですか」

(´・ω・`)「……ただあの日に出来た三つ目の夢は叶いそうにはないですね」

そういって苦い表情を浮かべるショボン。


138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:47:22.44 ID:bLpctZav0
('、`*川「やはり三つ目の夢とは……」

(´・ω・`)「ええ、『彼女と再会する』。それが自分の叶えるべき最後の夢です。
      ……ただもう半分諦めかけていますがね」

('、`;川「諦めちゃ駄目ですよ。この世界の何処かにいるはずです!」

(´・ω・`)「……ふふ、そうですね。とりあえず一つ目の夢、めんま亭の復活。
      それが出来てから、必ず彼女を見つけ出しますよ!」

('、`*川「そうです、その意気込みです!」

(´・ω・`)「ありがとうございます、わざわざ勇気付けてくれて。
      そうだ、せっかくなのでこれを見てください」

ショボンはポケットを漁り、丸まったハンカチを取り出す。
慎重にハンカチを開くと、中からやや薄汚れたヘアゴムが出てきた。

('、`*川「これが話に出ていた……」

(´・ω・`)「彼女が最後に残していった物、愛用だったヘアゴムです。
      もっともゴムの部分は変質して、もう使い物になりませんが……」

('、`*川「なんか感動的ですね。それにまだ綺麗だし……」

確かにゴムの部分は長年の歳月により劣化していたが、
水色の玉は綺麗に磨かれ、今でも透明感を保っていた。


140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:49:04.15 ID:bLpctZav0
ヘアゴムを大事に収めながら、ショボンは口を開いた。

(´・ω・`)「……さてと、これで私の話はおしまいです。
      この後どうなされますか?」

('、`*川「うーん、私も話したいことがあったのですが、夜も遅くなりそうですし……」

(´・ω・`)「もしよろしければ、私のバーに来てみませんか?
       お好きなお酒をサービスしますよ」

('、`*川「えっ、いいんですか?」

(´・ω・`)「ええ、どうせ趣味でやっている店ですし……
       話したいことを話すには、ピッタリの所ですよ」

('、`*川「ではお言葉に甘えて……よろしくお願いしますね」

(´・ω・`)「大抵の人を満足させる自信はありますよ。
      ところで伊藤さんはどんなお話を……」

('、`*川「……そうですねぇ、じゃあ同じく『夢』の話でもどうです?」

二人は立ち上がり、薄暗くなった公園を離れて行く。

     「へえ、それは興味深い。ぜひ聞かせてください」

     「ふふっ、心打たれる素敵な話をしますね!」

     「ええ、バーのマスターとして、ゆっくりと聞かせてもらいますよ」


142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:50:38.20 ID:bLpctZav0


歩きながら、伊藤はポケットの中身をこっそりと握り締める。
その中身が放つ水色の輝きを、ショボンはまだ知らない。



――― (´・ω・`)ショボンが(`・ω・´)シャキンだった頃の話をするようです ―――


                   【終わり】



145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:52:31.83 ID:23XNcVCa0
作者乙 なかなか良かった
感動した



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:53:39.60 ID:QbzHHrXq0

面白かった



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:54:23.98 ID:Tg4DD6zY0
( ;∀;) イイハナシダッタナー



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:57:53.13 ID:X5JRirLe0
ところで>>136
>(´・ω・`)「荒巻さんから新しい戸籍を手に入れてもらい、ラーメン屋に弟子入りしました。

なぜ新しい戸籍を?



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:59:21.47 ID:QbzHHrXq0
>>155
バレたら困るからじゃない?


158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 01:59:31.01 ID:xBwdDE7b0
>>155
シャキンもターゲットになったからだろ


159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 02:01:21.94 ID:23XNcVCa0
>>155 民奈組の追っ手から身を隠すためじゃね?


160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/11(日) 02:02:21.94 ID:bLpctZav0
あとがきとか


この作品は、大昔に総合で貰ったお題で書いたものです。
お題は『画びょう』『忠誠心』『老いらくの恋(←使わないことにした)』でした。

軽い気持ちで書き始めたこの作品、色々反省するところが多かったです。
特に前半はもうちょい省いてもよかったんじゃないかとか、
親方をあんなことにする必要は無かったんじゃないかとか……


深夜まで付き合ってくれた皆ありがとう!
次は途中でつまらないと思わせない作品を作るぜ!

>>155
シャキンは平穏な暮らしを望んだため、荒巻さんが用意してくれたという感じです。
めんま亭のメンバーもターゲットになっていましたし……

とここまで書いて、>>157-159が答えてくれてるのに気付いた





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この記事へのコメント
大好きなシャキンに二年間何も言わずのんびり読書とは

恋愛対象となって結婚してから素性を明かすつもりだろうか
2008/05/21(水) 01:50:24 | No.142 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
感動した
2008/09/14(日) 22:51:18 | No.1054 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
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2008/05/25(日) 16:02:25 | おまとめブログサーチ
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