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唯「あずにゃんのお肉、おいしいねっ」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:06:35.24 ID:ORLFdCUa0
レクター「今日から暫くの間、君達の担任となる──」

レクター「私の名前は、Hannibal Lecterだ。」

よろしく──レクターは流暢な日本語でそう言うとクラスを眺め回した。
生徒達は互いに目を見合わせ、何事かと云った雰囲気で小声で会話を交わしている。

律「せんせーさわちゃんは~?」

物怖じせず最初に声を上げたのは律だった。
何時も通りの軽い口調で質問する律に対して
他の生徒は、一瞬嫌悪の表情を見せたレクターに肝を冷やしていた。

レクター「山中先生は長期研修でお休みすることになっている。」

レクター「と言っても、三週間ほどだがね。」

和らいだ表情で答えるレクターに生徒達は安堵した。

律「へ~さわちゃんも大変だなぁ。」

澪「おいっ律!失礼だろっ。」

相変わらず軽口を叩く律を、澪は小声で嗜めた。

律「あ~わるいわるい。えっと・・・」

レクター「ハンニバル・レクターだ。」

今度は日本語の発音で名乗った。




2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:07:30.50 ID:ywJOVUte0
カニバリズムスレ



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ブログパーツ 唯「あずにゃんのお肉、おいしいねっ」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:08:12.43 ID:ORLFdCUa0
唯「レクター先生かぁ~。なんかカッコいい名前ですね。」

純朴な笑顔を見せる唯にレクターも笑顔で、ありがとう唯と返した。

レクター「担当する教科は山中先生と同じ音楽だ。」

レクター「それから、軽音部と吹奏楽部の臨時の顧問も担当する。」

クラス中がどっとざわめく。

「レクター先生は楽器弾けるんですか?」
「どんな音楽が好きですか?」
「好きな作曲家は?」
「どこの国から来たんですか?」

生徒から矢継ぎ早に出される質問。
しかし、レクターは顔色一つ変えずに、
生徒の顔を見て、名前を言い、それぞれの質問に丁寧に答えていった。
どうやら、クラス全員の顔と名前を既に把握しているようだった。

そして、生徒が発した質問を一字一句聞き逃さず全員の質問に答え終えた頃には
生徒達は感嘆の声を漏らしていた。



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:09:56.51 ID:ORLFdCUa0
律「すっげ~、先生って聖徳太子みたいだなっ。」

レクター「田井中律、君は歴史があまり得意ではないらしい。」

レクター「今は聖徳太子ではなく、厩戸皇子と教えられているはずだが、習わなかったのかね?」

律「え?あはは~そうだっけ?」

澪「習っただろ!ばか。」

唯「外国の人なのに日本のこと詳しいんですねっ。」

レクター「まだ私が若かった頃に日本のことを教えてくれた人が居てね。」

へぇと関心する声が何処からともなく聞こえ
それからも、生徒達の質問は続いた。

ホームルームを終える頃にはすっかり生徒達と打ち解けた様子だった。




5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:12:04.93 ID:ORLFdCUa0
レクターが教室から出た後も、生徒達は話題に花を咲かせ、はしゃいでいた。

律「何か怖そうな人かと思ったら案外いい人だったな。」

澪「そう思ってたなら礼儀ぐらい弁えろよ。」

唯「それにしても、カッコいい先生だったなぁ~」

律「なんだ?唯。お前、あんなおじさんが好みだったのか?」

和「でも唯の気持ちも判るわ。なかなかの紳士だったもの。」

律「和まで・・・。まぁ私は構わないけどさ。」

律はそこで、紬が目を伏せて俯いている事に気がついた。

律「ん?ムギさっきから黙ってどうしたんだ?」

紬は、はっとして律の顔を見ると動揺を抑えながら言う。

紬「い、いえ・・・なんでもないの。なんでも・・・。」

律は一言、そうかと言って自分の席に戻っていった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:18:26.43 ID:ORLFdCUa0
放課後、唯は教室の掃除を任された澪と律を措いて一人軽音部の部室へと向かった。
紬と一緒に行こうかと思ってもいたが、気づいたときには既に教室から姿を消していたのだ。
どうしたんだろ?ムギちゃん──そんな思いを抱きながら階段を上がっていくと
突然、唯は体に衝撃を感じてバランスを崩す。
転びそうになったものの、何とか体勢を立て直し前を見ると
そこには青ざめた顔をした紬が居た。

唯「ムギちゃん、どうしたの?顔真っ青だよ。」

紬「ゆ、唯ちゃんっ・・・ごめんなさい・・・ごめん・・・」

紬は、それだけ言うと慌てて階段を駆け下りて行った。

唯は紬を引きとめようと声を掛けるが、足音は止まる事無く遠ざかっていった。

唯「どうしたんだろ?」

何があったのか考えてみたが、唯にはわかるはずもなく
紬の事を気に留めたまま再び階段を上がっていった。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:22:15.68 ID:ORLFdCUa0
唯が部室に入ると紅茶の香と共に、
いつもとは違う、アーモンドの香を感じた。

室内に目を向けると、椅子に座り紅茶を静かに味わうレクターの姿があった。
唯は一瞬戸惑ったが、朝のHRでの話を思い出し丁寧に挨拶をした。

唯「こんにちわ、レクター先生。」

レクターは唯に視線を移すと優しい笑顔で、こんにちは唯と挨拶を返した。

唯「あの、レクター先生。む、紬ちゃんここに来ませんでしたか?」

レクター「あぁ、琴吹紬か。」

レクターは紅茶の入ったティーカップを顔の前に掲げるようにして続けた。

レクター「私に紅茶を淹れて、一言二言会話をしたら急に思い出した事があると言って出て行ったよ。」

唯「すいません。変なこと聞いちゃって。」

唯は照れたような困ったような顔をして言った。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:25:12.80 ID:ORLFdCUa0
レクター「構わないよ。それより、此方に来て一緒に紅茶でも如何かな?」

唯は慣れない動作でお辞儀をするといつもの椅子に座る。
レクターは手慣れた所作で紅茶を淹れると唯の前にティーカップを差し出した。

いつもより強い紅茶の香が唯の鼻腔をくすぐる。
紅茶の香に包まれるようにさっき感じたアーモンドの香も微かにした。

唯「レクター先生って香水とかしてるんですか?」

レクター「これはハンドクリームの香だよ。」

唯「へぇ~先生ってお洒落なんですね。」

レクター「気に入ってもらえたなら今度君にプレゼントしよう。」

唯「ほっ、ホントですかっ!?ありがとうございます。」

レクター「君は素直で良い子だからね。唯。」

唯「そ、そう言われると何だか照れちゃいます・・・」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:29:09.77 ID:ORLFdCUa0
それから唯はレクターに様々なことを語った。
軽音部のこと、友達のこと、妹の憂のことを。
レクターは嬉々として語る唯に優しい顔で相槌を打ちながら話を聞いた。

話し終えると唯はどこか寂しげな表情をしていた。

レクター「どうかしたのかね?」

唯「話してたら、何だか寂しくなってきて・・・」

レクター「寂しいとは?」

唯「こんなに楽しい毎日も今年で終わりだって思うと・・・」

レクター「唯、君は今何を思う?」

唯「もっと一緒に居たいって・・・」

レクター「なるほど、それは──」

律「おい~っす!おまたせ~。」

勢い良く扉が開かれ唯とレクターの会話は律によって中断された。




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:35:47.29 ID:ORLFdCUa0
律「あれぇ?何だ、レクター先生来てたんだ。」

澪「ばかっ!新任の先生を脅かすなってのっ!」

澪は律の頭を平手で叩く。
レクターはその様子を横目で見た後
ゆっくりと腰を上げた。

レクター「唯、また明日話の続きをしよう──TATA.」

そう言ってレクターは部室を後にした。
律と澪には話しかけることもなく、目を合わせることもなく。

部室の扉が閉まり、足音が消えるのを確認して
律は腹を立てて言う。

律「なんだよ、あれ・・・」

澪「お前が調子に乗ってるから、怒らせたんじゃないのか?」

律「べ、別に私はそんなつもりじゃ・・・」

澪「とにかく、明日ちゃんと先生に謝っとけよ。」

律「・・・わかったよ。」

律は、拗ねたように顔を背けて言った。




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:39:36.12 ID:ORLFdCUa0
澪「それより唯。先生となにか話してたみたいだけど、何話してたんだ?」

唯「え?うんとね、りっちゃんの事とか澪ちゃんの事とか、軽音部の事話してた。」

澪「何か言われたのか?」

唯は首を横に振って答える。

唯「ううん。ただ話し聞いてくれてただけ。」

律「な~んだ、それだけか。」

律は面白くなさそうに言った。

澪「とりあえず、お茶でも飲むか。」

律と澪が椅子に腰を下ろした丁度その時
部室の扉が開いて梓が顔を覗かせた。

梓「遅れてすみません。日直だったもので。」

梓が椅子に座ると、漸く澪が気づいた。

澪「そういえば、ムギはどうした?」

律「あれ?唯と一緒に来たんじゃなかったのか。」

唯「ムギちゃん、なんか急用が出来たって行って帰っちゃったみたい。」




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:46:55.06 ID:ORLFdCUa0
澪「そうか、急用なら仕方ないな。」

律「え~お菓子は?紅茶は?」

澪「他に心配する事は無いのかっ!」

駄々を捏ねる律に澪は頭に平手打ちをする。
その様子を見た梓は、私が淹れますからと言って立ち上がった。

澪「悪いな、梓。」

梓「いえ、いいんです。」

梓は紅茶を淹れながら、ふと今思い出したことを語りだした。

梓「そういえばさっき、階段を上がる途中で外国の方に会ったんですけど。」

澪「あぁ、さわ子先生の変わりに暫くうちのクラスの担任をすることになったレクター先生だよ。」

梓「そうなんですか。私はてっきり英語の講師か何かだと思ってました。」

律「日本語ぺらぺらだろ?担当教科はさわちゃんと同じ音楽なんだってさ。」」

梓「でも、何で私の名前知ってたんでしょうか?」

澪「多分、軽音部の顧問もするって言ってたからかな。」

律「そうそう、今日来たばっかりなのにクラス全員の顔と名前覚えてたし、梓の名前知ってたって不思議じゃないよ。」

梓「でも、顧問なら何で出て行っちゃったんです?」




19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:51:27.65 ID:ORLFdCUa0
律「そ、それは・・・だなぁ・・・」

澪「お前が先生を怒らせたからだろっ」

律「ごめんなさい・・・」

澪「梓も、明日部室に先生が来てたらちゃんと挨拶しておくんだぞ。」

梓「大丈夫ですよ。律先輩みたいな態度はとりませんから。」

梓が笑いながらそう言って紅茶の入ったティーカップを机に置く
律は、どういう意味だと言って梓の首に腕を回して詰る。

そんないつもながらの軽音部の風景を見た唯は、くすりと笑った。

唯「あはは、やっぱり楽しいっ」

三人は訳がわからず呆然としていたが
唯の屈託の無い笑顔に釣られて笑った。

それでも唯の中に芽生えた寂寥感は消える事無く
少しずつ肥大していった。
──みんなと離れたくない。
──みんなと一緒に居たい。
──一緒に居られるだけでいい。




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 20:55:02.81 ID:ORLFdCUa0
翌日の放課後、軽音部の部室は重い空気に包まれていた。

澪「なぁ、どう思う?」

律「どうって言われても・・・携帯には出ないし、家電に掛けても不在だって言われるだけだし。」

唯「ムギちゃん・・・何かあったのかな?」

梓「でも、昨日今日の話じゃないですか。そんなに心配することも・・・」

軽音部の皆は一様に表情を曇らせる。
紬は今日、学校を欠席した。
直接欠席の連絡を受けた学年主任に話を聞くと
今の四人と同じような表情で、病欠だとだけ言った。

なにかあったんだ──四人はすぐに直感した。
それから、休み時間に携帯に電話を掛けてみた。
電源が入っていないか電波の届かない場所にあるため──アナウンスが流れるだけだった。

一応メールも何通か送ってみたものの現在まで返信はない。
自宅の電話に掛けると、淡々とした口調で執事が不在であることを告げるだけだ。

学年主任は病欠と言い、執事は不在と言う。
これは明らかにおかしい事だと四人は考えていた。

その時はまだ、最後に紬と会った唯でさえ
個人的な都合で連絡を絶っているだけだと信じていた。




22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:00:50.59 ID:ORLFdCUa0
澪「また明日、先生達に話を聞いてみよう。」

他の三人は何も言わなかった。
自分達に何が出来るのか検討も付かなかったからだ。
澪の言った言葉にも賛成の意を表した訳ではない。
きっと、返ってくる答えは同じだと、誰もが思っていた。

嫌な予感を四人は感じていた。
ただの杞憂であると、そうであって欲しいと願った。


部室の扉が開く音がして重い沈黙は破られた。

レクター「何か深刻な話をしているようだね。」

唯「先生・・・」

唯がそう言ったきり、誰も口を開かなかった。

レクター「行き詰った時には、紅茶でも飲んで落ち着くといい。」

暫く、部室にはレクターが紅茶を淹れる音が響くだけだった。
途端に、紅茶の香が部室中に広がり
四人の強張った表情が少しずつ解れてきた。

梓「いい香り・・・」




24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:04:50.36 ID:ORLFdCUa0
レクターは四人の前にティーカップを差し出すと
自身も紅茶を淹れたティーカップを持って椅子に腰掛けた。

いただきます──そう言って四人はほぼ同時に紅茶に口を付けた。

梓「あぁ・・・おいしいです。」

澪「うん、おいしい。」

唯「やっぱり先生の淹れてくれる紅茶は一味違うよ。」

律「ホントだ・・・美味い。」

皆に笑顔が戻り、やがて──昨日のことを思い出したのか律が言う。

律「あ、あのレクター先生。昨日はすみませんでした。」

レクター「いや、日本の女子高生と言うものに少し気おされてしまっただけだ。」

レクター「不快な思いをさせたようなら、此方からも謝罪しよう。」

律「いやっいいんです。私が全部悪かったんだし・・・」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:09:45.49 ID:ORLFdCUa0
澪「はい。その、ちょっと心配性が過ぎていただけなんじゃないかって」

梓「そうですよね。何があったか判らない内から余計な心配し過ぎなんですよ。」

律「うんうん。きっと明日になればいつもみたいに笑って学校に来てるって。」

互いに励ましあう三人。
唯は一人、手にしたカップを見つめて呟く。

唯「一日会わないだけでも、こんなに寂しいんだね・・・。」

レクター「直に会えるさ。」

誰もレクターが浮かべる不敵な笑みに気づくことは無かった。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:13:24.52 ID:ORLFdCUa0
大分落ち着いたのか軽音部のメンバーは
今日の練習を取り止めてそれぞれ部室を後にする。
唯は皆の背を見送った後、レクターに顔を向けて言う。

唯「あの、昨日の話の続きなんですけど」

唯は不安を顔に出して聞く。

レクター「知りたいかい?君の寂しさを消す方法を」

今まで以上に優しい笑みを湛えていた。
唯はその表情を見て確信した。
彼なら、今の自分が抱える疑問に対する答えを持っていると。
そして、もし自分の望みが叶うのなら如何なる言葉にも従おうと。

──みんなと一緒にいたい。




30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:19:41.29 ID:MQuevwPuO
次回作は日本が舞台だと聞いたが、まさか桜高が舞台になるとは



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:22:33.28 ID:ORLFdCUa0
唯はレクターに「会食」に招かれ、彼の仮住まいの屋敷の前まで来ていた。

唯「おおきぃ~」

唯は、お姫様でも住んでいるみたい、そんな感想を持った。

レクター「一人で住むには少々広すぎてね。」

二人は屋敷の中に入り
暫く居間で軽音部のみんなのことについて話をした。

レクター「唯。君は律の事をどう思ってる?」

唯「う~ん。りっちゃんは大雑把で不器用なところもあるけど、みんなのこと思ってくれてて──」

唯「一緒に居ると楽しい。」

唯「それに、本人の前では言わないけど、きっと澪ちゃんのことが好きなんだと思うなぁ。」

レクター「ほう、例えば?」

唯「えっとね。前に澪ちゃんが和ちゃんと親しくしてるのにヤキモチ妬いてた。」




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:25:15.80 ID:ORLFdCUa0
レクター「澪の事は?」

唯「澪ちゃんはねぇ。怖がりで寂しがりやさんなんだ。」

唯「でも、しっかりしてて、りっちゃんより部長っぽいかな。」

唯「澪ちゃんね。怖い話とか痛い話すると耳塞いで怯えるんだよ。」

唯「そんなに怯えることも無いのにってぐらい。」

レクター「それは、過去に何か原因が?」

唯「わかんない。多分りっちゃんが幼い頃から、からかってたのがいけないんじゃないかな。」

レクター「紬の事は?」

唯「ムギちゃんはね、いつも美味しいお菓子とかケーキ持ってきてくれるからだぁ~い好き」

唯「詳しくは知らないけど、良いところのお嬢様みたいなんだ。」

唯「それでね、子供っぽいところもあるんだけどそこがまた可愛いんだぁ~」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:29:17.01 ID:ORLFdCUa0
レクター「梓の事は?」

唯「あずにゃんは、可愛いよ。」

唯「部活の事になると厳しいんだけど、ギターのこととか丁寧に教えてくれる。」

唯「それから、私のこと心配してくれるし、私もあずにゃんに甘えてる、のかな?」

レクター「好きかい?」

唯「うん、あずにゃんも澪ちゃんもりっちゃんもムギちゃんも、み~んな大好きっ。」

レクター「彼女達の顔を見れるだけで幸せかい?」

唯は、その問いに満面に笑みを浮かべて頷いた。

レクターは、そうかと頷いて腰を上げる。

レクター「そろそろ、食事の用意をしよう。支度が調うまでここでゆっくりしているといい。」

そう言うと、レクターは扉を開けて出て行った。

その間、唯は憂に連絡をいれて、食事の時が来るまで寛いで待っていた。

一時間ほどで準備ができたのだろう、唯は大きな部屋へと通された。
そこは、食堂と呼べるほどの広さの空間だった。
薄明かりの中、長テーブルの上には蜀台に立てられた蝋燭の炎が揺らめいていた。

唯は丁度テーブルの中央にレクターと向かい合うようにして座った。




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:35:06.48 ID:ORLFdCUa0
レクター「今宵、君との夕食のために特別な”素材”を用意した。存分に味わうといい。」

唯の前に置かれた皿の上には
表面を軽く炙り、薄切りにされた生肉と
濃い赤色のソース
彩りに生野菜が添えられていた。

唯「わぁ~おいしそぉ~」

レクター「気兼ねする事は無い、まだ前菜だ。」

唯は肉にソースを絡ませ口に運ぶ。
今まで口にした事の無い味と香りが広がる。

唯「おいしい・・・。」

思わず口から零れた言葉だった。

レクター「気に入って貰えたかな。あとで食材も見せよう。」

唯「は、はいっ。あ、あの・・・おかわりしてもいいですか?」

唯は躊躇いがちに言った。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 21:41:59.58 ID:ORLFdCUa0
レクター「ははっ、それではコース料理が台無しだが、特別に振舞おう。」

それから幾皿か料理が運ばれてきたが
どれも肉料理ばかりだった。
コース料理など食べたことの無い唯は疑問に思うこともなく
喜んでその全てを平らげた。

唯は満足した表情で食後の紅茶をすする。

レクター「満足して頂けたようだね。それでは──」

──君の知りたがっていた事を教えよう。唯。




58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:11:23.42 ID:ORLFdCUa0
~梓~

次の日、唯先輩は学校を欠席した。
そのことを知ったのは、教室での憂との会話だった。

梓「また風邪でもひいたの?唯先輩。」

憂「ううん。なんか暗い顔してた。」

憂の表情も暗かった。
きっと同じ顔だったのだろう。

梓「何か言ってた?」

憂「それが、何も・・・」

今にも泣き出しそうな表情の憂を見ていると
これ以上話を聞くのが辛くなり、
唯先輩の事は他の先輩達に聞こう、そう考えた。

放課後、足早に部室へと赴くと
そこには、昨日階段で会ったレクター先生がいた。
どうやら、先輩達はまだ来ていないようだった。




61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:15:25.92 ID:ORLFdCUa0
梓「あの、こんにちは。えと、レクター先生ですよね?」

レクター「やあ、梓。昨日は丁寧に挨拶も出来ず申し訳なかったね。」

ふと昨日の放課後の事を思い出した。
そういえば唯先輩、私達が帰った後
部室にレクター先生と二人でいたんだっけ。
何か話でもしてたのか?
何か言われたのか?
湧き上がる疑問に堪えきれず、口に出して言ってみた。

梓「先生、昨日の放課後唯先輩と二人でいたみたいですけど、何かあったんですか?」

口に出して後悔した。
あまりに直接的過ぎる質問だ。
しかし、レクター先生は嫌悪の表情を見せる事無く答えた。

レクター「唯の妹、憂からは何も?」

聞かなかったのか、と云うことだろう。
何故そんなことを聞くのか
何故私が憂と話をしていると思ったのか
深く考える事はしなかった。

梓「唯先輩のことを聞くと辛そうな顔をするので・・・。」




63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:18:22.90 ID:ORLFdCUa0
レクター「そうか、隠すことではないから正直に話そう。」

レクター「昨日は私の家に誘ったのだよ。」

その言葉に驚き、えっ!と思わず声を漏らしてしまった。
まさか、唯先輩に何かしたのか?

レクター「いや、君の心配は杞憂だ。私に相談があると言っていたので、ついでに食事を振舞っただけだ。」

まるで私の心の中を読んだかの様に言った。
ほっと胸を撫で下ろしたが
レクター先生に対する警戒心が止む事はなかった。

梓「その、相談ってなんですか?」

レクター「それは言えない。」

わかるだろ?──そう言いたげな眼差しを私に向けてきた。
もう何も言う事ができなかった。

レクター「ところで梓。君は、唯達が卒業した後はどうするのかね?」

その問いかけに胸を刺すような痛みを感じた。
多分、私が今まで考えないようにしてきたことだ。
今でさえ考えたくないと思っている。
口を噤むことでそれに答えた。



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:21:23.19 ID:ORLFdCUa0
レクター「私の見立てでは君は積極的に他者と交友を持とうとするような人間ではない。」

レクター「かといって人見知りの激しい訳でもないのだろう。」

レクター「君は、既に出来上がった関係性に引っ張られるようにして生きてきた筈だ。」

レクター「環境が変われば誰かが新しい関係性を築いてくれる。」

レクター「そんな、安易な考え方で今まで過してきたし、これからもそのつもりなのではないのか?」

レクター「君は、人に嫌われる性格ではない、だから現在も軽音部のメンバーとして仲間に愛されている。」

レクター「しかし、彼女達が卒業した後はどうだね?」

レクター「君は彼女達の演奏に惹かれ、一緒に演奏する事に惹かれて軽音部に入ったのだろう。」

レクター「例え、来年新入部員が入ったとしても、君の心は満たされることは無く、寂しさを感じる筈だ。」

そこまで聞いて私の心の中の
虚しさや切なさや寂しさが一気に膨れ上がってきた。
気づいた時には、制服の胸の辺りをぎゅっと握り締めていた。

レクター「おや?震えているのかね?」

腰の辺りに振動を感じて、制服のポケットに手を入れる。
携帯が着信を知らせていた。

すみません、そう言って携帯を開く。
律先輩からのメールだった。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:24:10.27 ID:ORLFdCUa0
梓「ごめんなさい、今日の部活は中止だって連絡が」

もう一度頭を下げて、逃げるように部室を出ようとしたとき
レクター先生の私を呼ぶ声が一際大きく聞こえて立ち止まった。

レクター「梓。みんなとずっと一緒に居たいとは思わないか?」

考えなかった訳ではない。
ずっと心の隅に仕舞っていた感情だった。
それでも無理だと最初からわかっていた。
だから今を、兎に角今だけを楽しんでいようと思っていた。
惑わされるものか。
何か企んでいるに違いない。
しかし──

ゆっくりと振り向いた。

レクター先生は私の目を真直ぐに捉える。

はい──自分の声を聞いた。




70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:27:02.05 ID:ORLFdCUa0
それから、レクター先生に連れられて
本人が仮住まいだと言う大きな屋敷の門前に立った。

西洋建築、レンガ造りのまるでお城のような外観は
御伽噺の中にでも迷い込んだかのように錯覚させられる。
もしも、彼が魔法使いなら、そんなメルヘンチックな妄想に囚われた。

中に入ると、靴のままでいいとレクター先生は言って
奥へと進んでいった。

幾つか扉を抜けると、台所──というより厨房の中に足を踏み入れた。
レクター先生はそこで足を止めると、私に振り返って言う。

レクター「君に見せたいものがある。開けて御覧。」

そう言って指差した先には
大きな業務用の冷凍庫があった。

その言葉に従って、銀色の扉に歩み寄り
黒い取っ手を握り、ゆっくりと開けた。




73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:29:38.10 ID:ORLFdCUa0
ひんやりとした冷気を顔に感じる。

扉の中にはサッカーボールほどの大きさの──人間の頭があった。

ひっと声を上げて後退った。
逃げ出したくなる衝動を抑えてもう一度中を確認する。
ムギ先輩の顔だった。

後ろを振り返ろうとした直後
背中から羽交い絞めにされて、湿った布の様なもので口を塞がれた。
全身に襲い掛かる恐怖を感じ、必死に抵抗する。
しかし、大人の力に抗う術はなく
手足をバタつかせ暫くもがいた後
目の前に薄っすらと靄が掛かるように
意識を失った。

~梓END~






75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 22:33:29.68 ID:ORLFdCUa0
唯は昨日のことを考えていた。
冷凍庫に入った紬の頭。
冷蔵庫には切り分けられた紬の肉。
自分が口にしたもの。

レクターは何をして
これから何をするのか
全てを唯に語った。

唯は恐怖し、涙も流した。

──全て唯が望んだことだ。

何時までも頭に張り付いて離れない言葉。
既に引き返せないところに来てしまっていた。
いや、引き返す事も出来るのだろう。
しかし、その選択肢は既に唯の中から消えていた。

望みを叶えるなら進むしかない。
唯の後ろには紬の亡骸が横たわっていた。
これから横たわるであろう友の屍骸にも
こうやって背を向けて歩を進めるしかないのだろう。

唯は自分の中で何かが壊れる音を聞いた。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/06(木) 23:17:39.76 ID:YeojbSbX0
夕方、唯は憂に出掛けてくると声を掛けて家を出た。
目指した場所は、レクターの屋敷だった。
沈む西日を背にしたその屋敷を見上げて、
悪魔や吸血鬼が住んでいても不思議ではないなと、
昨日とは違った感想を抱いた。

呼び鈴を鳴らすと、レクターは直に扉を開けて唯を迎えた。
言葉を交わすことは無かったが
レクターは全てを理解しているようだった。

昨日と同じ食堂に通される。
昨日と同じテーブルの中央に座る。
向かい側には”梓の様なモノ”が”椅子に立て掛けられて”居た。

梓は四肢を失くしていた。
梓の手足は丁度付け根の辺りで切り取られ、
切り口は自身の皮膚で覆われ縫合されていた。
切り取られてからそう時間は経っていないのだろう。
縫合された箇所からは血液が滲み出ていた。

梓は丈の短い白のワンピースを着ていた。
焦点の合わない目を、左右に揺らしている。
口は半開きになり、涎を垂らして
顔を引き攣らせるように薄笑いを浮かべていた。




79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:15:06.02 ID:yDW5HXtr0
唯はそんな梓を見ても何も感じなかった。

唯「あずにゃん。こんばんわ。」

梓の目が一瞬唯を捉えると、また虚空を彷徨った。

梓「あれぇ~唯先輩じゃないですかぁ~どうしたんですかぁ?」

梓はそう言うと声を上げて笑った。

梓「あはははっ、なぁ~んか楽しい気分なんですよねぇ~」

梓「そうだぁこんな気分だから言っちゃいますけど実は私ぃ──」

梓「唯先輩のこと好きだったんですぅ~あははっ」

梓「ずぅ~っと一緒にいたいと思ってたのに卒業だなんてあんまりですよぉ~」

レクター「梓、客人の前だ。失礼じゃないか。」

梓「はぁ~い。ごめんなさぁ~い。」

レクター「唯、今日はいい時間に来てくれた。昨日よりも鮮度のいい食材を振舞えるよ。」

レクターの視線の先には、梓の腕が、白い俎板の上に置かれていた。
切り口は綺麗に切断されていて、血抜きもしたのだろう
白い骨とピンク色の綺麗な肉が覗いていた。




80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:17:35.04 ID:yDW5HXtr0
レクターは慣れた手つきで肉を下ろすと
薄くスライスして、オリーブオイルを引いたフライパンに
細かく刻んだハーブと一緒に入れて軽く火を通した。

皿に盛り付けて唯の前に出す。

梓「あ~ずるいですよぉ唯先輩ばっかりぃ」

唯「あずにゃん・・・いただきます。」

唯は、肉を──梓の肉を咀嚼して
口の中で何度も味わった。

唯「あずにゃんのお肉、おいしいねっ」

唯は至福の笑顔を湛えて笑った。
笑いながら涙を流していた。
決して悲しかった訳ではないのだろう、
ただ、理由の判らない涙が頬を伝う。

唯「おいしいっおいしいよっ、あずにゃんっ!」

梓「あはは~なんかよくわからないですけど、うれしいですぅ~」

レクター「食材を提供してくれたご褒美だ。口を開けて。」

レクターは同じように調理した薄切りの肉を梓の口に運ぶ。
梓は緩慢な動作で口を動かして、何度か噛んでから飲み込んだ。

梓「おいしぃ~あははっすっごくおいしぃ~」




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:19:47.76 ID:yDW5HXtr0
梓「これって何の肉ですかぁ~?」

レクター「君のだよ。」

梓「あははははっ私っておいしぃんですねぇ~」

梓「ゆいせんぱぁ~い、もっとわたしを食べてくださいよぉ~あはははっ」

梓は愉快に何度も笑っていた。

唯はその後も振舞われる、梓の肉を使った料理を
楽しそうに笑う梓を目にしながら食べた。

唯「ごちそうさまでした。あずにゃん、すっごく美味しかったよ。」

唯は梓の目を見て笑顔で言った。

唯が帰ることをレクターに伝えると、梓は寂しそうな顔を向けてきた。

梓「え~もうかえっひゃうんれすかぁ~」

もう、意識も薄れてきているのだろうか、
呂律が回っていない。

唯「あずにゃん──TATA.」

梓「ゆいせんぱい・・・ゆ・・・い・・・」

唯が扉の向うへ消えるまで、梓は唯の名前を何度も呼んでいた。





82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:27:10.36 ID:yDW5HXtr0
~律~

次の日、梓は学校に来なかった。
それを知ったのは、朝開かれた全校集会での学年主任の言葉だった。

律「どうなってるんだよ。行方不明って一体なんなんだよっ!」

澪「そんなの私に聞かれたって・・・」

律「唯は何か知らないのか?」

唯「大丈夫だよ、りっちゃん澪ちゃん。すぐまた会えるよ。」

律「はぁ?唯、お前今日おかしいぞ?なんでそんなのん気にしていられるんだよっ。」

澪「昨日休んでたけど、なにかあったのか?」

唯「ううん、別に何もなかったよ。」

律「唯、いいか?梓は行方不明なんだぞ。病気とか事故とかじゃなくてだ。」

律「何処に行ったかも判らないのに、どうやったら会えるって言うんだよっ!」

自分でも興奮していたのは理解していた。
それでも、抑え切れない不安が感情を高ぶらせていたのだ。




83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:32:59.90 ID:yDW5HXtr0
澪「落ち着け律っ!」

澪の言葉で冷静になれた。

律「わるい・・・唯。」

唯「私こそごめんね、りっちゃん。」

澪「兎に角、私らには心当たり無いし、あとは警察に任せるしか・・・」

律「そうだよな、イラだっててもしょうがないよな・・・」

それに、ムギの事もある。
ムギは未だに学校に来ていない。
先生に聞いても返ってくる答えは同じだった。
なにかあったのだ。
より確信を持って思えるようになった。
しかし、思っていても口には出さなかった。
これ以上みんなを不安にさせたくなかったからだ。
みんなも同じように思って口を噤んでいるのだろうか。

──当分部活は中止だな。

どうでもいいことが頭を過ぎり
直後に自分を嫌悪した。




84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:36:25.66 ID:yDW5HXtr0
その日の放課後、
偶には澪と二人っきりで帰るのも悪くないな
ふとそんなことを思って、教室を見回す。

澪の姿はなかった。
おかしいな、さっきまでいたはずなのに
途端に寂しさを感じた。

何でだろう、澪が居ないだけなのに
不安で堪らなくなる。
きっと、ムギや梓のことと重ね合わせていたのだろう。
もし、澪まで居なくなったら。

悪い予感がした。
頭を振って、今浮かんだ考えを振り払う。

唯「りっちゃん、なにしてんの?」

振り向くと唯が怪訝な表情をしていた。

律「いや、なんでもないなんでも、あははっ」

乾いた笑いで誤魔化した。

律「唯、澪知らないか?」

唯「うん、そのことなんだけどね──」




85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:42:53.24 ID:yDW5HXtr0
唯に連れられてきた場所には大きな屋敷があった。
幽霊でも出そうな不気味さが滲み出ていた。
澪を連れて来たらきっと真っ青になるだろうな
そんな光景を頭の中で思い描いた。

律「でっけー。で、澪は?」

唯「うん。澪ちゃんも呼んだから、多分あとで来ると思うよ。」

律「そっか。」

唯の言葉で安心した。
しかし、何故唯がこんなところに自分をつれてきたのか
疑問に思うことはなかった。
唯は道すがら、梓とムギのことで話があるからと言っただけだった。
そうなのか、としか思わなかった。

唯が呼び鈴を鳴らすと、扉が開き
レクター先生が顔を覗かせた。

律「えっ?レクター先生?なんで?どうして?」

レクター「唯、私の事は話さなかったのか?」

唯「あれ?言わなかったのかな?」

唯は首を傾げて言った。

レクター「まぁいい、入りなさい。」




87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:47:10.97 ID:yDW5HXtr0
唯と並んで中に入る。
レクター先生はそのまま奥へと歩いていき
幾つ目かの扉を開いて、どうぞと言った。

部屋は、教室ほどの広さがあり
ソファーとテーブル、その他高そうな家具が置かれていた。

唯と並んでソファーに座る。

室内は酷く乾燥しているように感じた。
急に喉に渇きを覚え、水の一杯でも貰おうかと考えたとき
それを察したかの様に、レクター先生が口を開いた。

レクター「悪いね。この部屋は湿度の調整が上手くいかないものでね。すぐに紅茶を持ってこよう。」

そう言って暫くすると、目の前に紅茶が差し出された。

律「いただきます。」

差し出された紅茶を一口すする。

レクター先生はその様子を見た後
ほっとしたような表情を浮かべた。

レクター「そうだ、律。君にも是非見てもらいたいものがある。」

レクター先生はさっき入ってきたのとは別の扉を開けて
中から白いものを乗せた車椅子を押して出てきた。



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:52:11.06 ID:yDW5HXtr0
車椅子に乗っていたものは──四肢を失くした梓だった。
暫く思考が停止した。

最初に恐怖を感じ、次に怒りと悲しみを感じて次第にそれらが膨れ上がっていくのを感じた。

律「な・・・なんだよ・・・これ?」

律「あ、梓?梓なのか?」

律「はっ?なんの冗談だよっ!おいっ!テメー梓に何しやがった!!」

レクター先生が梓に何をしたのか、そんなものは一目瞭然だった。
一発ぶん殴ってやりたかった。
それでも梓の姿が、怒りよりも悲しみを優先させた。
たどたどしい足取りで梓の前に屈みこむ。

律「おいっ!梓っ!梓っ!」

何度も名前を呼んだ。
死んでいる事は最初に目にしたときからわかっていた。
こんな状態で生きている訳が無い──
違う、恐ろしいほどに白い肌がそれを確信させたのだ。
それでも、梓の名前を叫んだ。
何度も何度も声を震わせて。

突然、急激な眠気を感じた。

律「あ・・・れ・・・?」

必死に体に力を込めて眠気と格闘するが、数秒と持たずに意識を失った。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:55:54.99 ID:yDW5HXtr0
目を覚ますと薄暗い部屋の中で
どうやら自分は椅子に座っているようだった。

手を動かそうとするが
手首に締め付けられるような圧迫感がある。
手首に目を落とすと
黒い皮製のバンドで肘掛に固定されているのが目に入った。

意識は急速に明瞭となり
頭の中では警笛が鳴り響いていた。

律「はっ!?なんだよこれっ!ふざけるなっ!!」

大声を上げて叫んだ。
足も動かしてみたが手首と同様に固定されているのがわかった。
必死に体を揺さぶって椅子を倒そうと試みるが
椅子自体も床に固定されているようだった。

身動き一つ出来ない状態だと悟ると
不安と恐怖と絶望が一気に押し寄せてきた。

何で?どうして?
梓・・・
唯は?
澪も、まさか!?
嫌だ嫌だいやだいやだいやだ。
──死にたくない!



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 00:58:36.32 ID:yDW5HXtr0
律「誰かッ!誰か助けてっ!」

我ながら女々しい台詞だと思った。

自分の叫びで気が付かなかったが
頬に空気の流れを感じたことで
どこかの扉が開いたことがわかった。
背後に人の気配がする。
首を捻って横目で後ろを見ると
レクター先生が立って居た。

気が動転して、いや、私が馬鹿だったのだろう
助けて下さい、と本当に馬鹿なことを言った。

レクター「そうだね。」

その言葉は私の発した言葉に対するものではないのだろう。
きっと私の心の中を覗いたのだ。
そして、心の中で馬鹿だねと私を侮蔑しているのだ。

レクター「私はね、真剣に考えているんだ──」

レクター「君を食おうと。」

レクター先生は私の顔を覗き込みウィンクした。

何を言ってるのか理解できなかった。
ただ、目の前で薄笑いを浮かべているおっさんは頭がオカシイ事だけはわかった。



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:01:48.56 ID:yDW5HXtr0
律「おっさん馬鹿な事言ってないでさっさとこれ解けよっ」

レクター「日本は世界でも珍しいほどに礼儀を重んじる文化を持つと聞いていたが──」

レクター「まさか此処まで堕落していたとはね。」

律「何する気だよっ!唯は!?唯はどうした!」

レクター「これは、彼女が望んだことだ。」

律「訳がわかんねぇよ。なんだ?唯は私を椅子に縛り付けるのが趣味だったのか?」

レクター「律、君との会話は正直疲れるよ。」

レクター「唯の望みは──軽音部のみんなと、ずっと一緒に居たい──だ。」

律「・・・よそれ。なんだよそれはっ!梓殺しておいて何言ってやがる!梓は死んだんだぞっ!」

自分の叫ぶ声で気が付いた。

律「ま、まさか、ムギも・・・ムギも殺したってのか?そうか・・・そうかよっ」




93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:05:16.82 ID:yDW5HXtr0
律「唯は死体と一緒に居たいとでも言ったのか?抜け殻と一緒にいて幸せだとでも思ってるのかよっ!」

レクター「口が過ぎるよ律。」

レクター「君は抜け殻と言ったが、先ほどはその抜け殻に縋り付いて、梓と名前を呼んでいたように聞こえたが?」

律「知るかっ!知るかよ・・・なんで・・・どうして・・・」

全身から力が抜けていくのを感じる。
項垂れて、膝に自然と目が向いた。
水滴が膝を濡らしていた。
どうやら、ずっと前から涙を流していたらしい。
漸くそのことに気がついた。

律「もう、強がる事も無いよな。」

そう、呟いて
声を上げて泣いた。

~律END~






95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:10:18.14 ID:yDW5HXtr0
~澪~

唯が伝えてきた場所には大きな屋敷があった。
既に日は沈み、辺りは闇で覆われていた。
自分でも意外だったが、自然と恐怖は感じなかった。
たぶん、屋敷から微かに漏れる灯りに救われていたのかもしれない。

早く、唯と律の所へ行こう。
玄関へと足を踏み出した。

呼び鈴を押すと、唯の声が聞こえ
玄関の扉が開く。

唯「澪ちゃん待ってたよ。」

澪「唯か、よかった。」

唯「りっちゃん、もう来てるよ。あがって。」

唯に先導されて、奥の扉の前まで来る。

唯「ムギちゃんとあずにゃんの事だけど」




96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:12:48.71 ID:yDW5HXtr0
澪「あぁ、レクター先生から話があるんだろ?」

唯「うん、でもその前に。澪ちゃんと二人で話がしたいんだって。」

澪「そっか、わかった。」

気丈に振舞ってはみたものの
不安で仕方なかった。
レクター先生とは会ったばかりだし
互いに会話をした事も殆ど無かった。

扉を開けると、レクター先生はソファーに腰を掛けたまま
右手で向かい側のソファーを示し、こちらへと言って促した。

若干緊張しながら、ソファーに浅く座った。

澪「あの、話ってなんですか?」

レクター「君と律のことだ。」

澪「は、はぁ・・・」

レクター「君と律は幼馴染だそうだね。」

澪「そうです。」




97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:15:16.32 ID:yDW5HXtr0
レクター「いつも一緒に?」

澪「いつもって訳ではないですけど、気が付くと傍にいて。」

レクター「それを鬱陶しく思う事は?」

澪「そ、それは・・・」

レクター「君は一人になりたいと思う事があるだろう。」

レクター「しかし、孤独にはなりたくない。」

レクター「人から嫌われていると思われたくない。」

澪「何が言いたいんですか?」

レクター「他に友達と呼べる者が?」

話が見えなかった。
レクター先生が何を言いたいのか
ただ、私をからかっているだけなのか
それとも、可哀想な生徒だとでも思っているのだろうか。

澪「いますけど・・・」

レクター「軽音部の皆のことかな?それとも和のことか?多分両方のことだろうね。」

レクター「しかし、思い出してもらいたい。彼女達との出会いを。」

レクター「彼女達と親しくなる切っ掛けは?最初に会ったときに居た筈だ。田井中律が。」




100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:27:28.41 ID:yDW5HXtr0
その通りだった。
ムギと初めに会ったときも
唯と会ったときも
和と会ったときも
切っ掛けは全て律だった。

レクター「君と彼女達との関係は概ね、君と律との関係に組み込まれたものなのではないのか?」

レクター「律が居なければ今の君達の関係は無かった。」

レクター「君は律と離れた後どうするのかな?」

澪「どうって、別に律が居なくたって私は」

レクター「そうだね、君と律は家が近所で連絡する手段もあるだろう。」

レクター「いつでも会える、いつでも相談できる。」

レクター「もしかしたら、君のために何かしてくれるかもしれないね。」

澪「私はそんなことっ!」

レクター「望んでいない?しかし、律はどうだろう。彼女は君の庇護者として振舞っているのではないのか。」

レクター「律は自分が居ないと澪は何も出来ない、自分が澪を守ってあげるとでも思っているのではないのか。」



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:31:17.96 ID:yDW5HXtr0
澪「律がそんなこと思ってるわけが・・・」

レクター「彼女から直接聞いたのかね?」

澪「それは・・・」

レクター「教えてあげよう。君が怖がりで寂しがりやで恥ずかしがりやな理由を」

レクター「全部、律が望んだ結果だよ。」

澪「嘘・・・そんなはずありませんっ。私は律が望んだ通りに生きてきたわけじゃ──」

レクター「本当に?」

澪「・・・はい。」

レクター「君は律に幼い頃から、からかわれてきたそうだね。」

レクター「怯えさせ怖がらせて、その度に彼女は言ったのではないのか」

レクター「私が付いてるから大丈夫だ・・・と。」

レクター「律は君に頼って欲しかったのだよ。」

レクター「そして君も心のどこかでは彼女を頼りにして、何時までもその性格を直せずにいる。」

レクター「怖がっていれば律が助けてくれると、そう思っているのだね。」

レクター「お互いに依存し合っている。」



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:55:40.97 ID:yDW5HXtr0
澪「私にどうしろと」

レクター「私は君を救ってあげようかと言っているのだ。」

澪「どうやって。」

レクター「君はどうなりたい?」

私は、どうなりたいのだ。
怖がりな性格を直したいのか。
律が居なくても生きていける人間になりたいのか。

強くなりたい。
律に甘えていた今までの自分を
消してしまいたい。

レクター「今、答えは聞かないよ。」

レクター「もし、”そのつもり”ならこれを持って、あの扉を開けるといい。」

レクター先生は、ナイフをテーブルの上に置き
廊下側の扉の向かいにある扉を指差した。

レクター「少し、考える時間をあげよう。」

そう言って廊下側の扉を開けて出て行った。



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:58:57.97 ID:yDW5HXtr0
一人取り残されて様々な考えが頭を過ぎる。
律とは今までずっと一緒だった。
何をするにも律がいた。
律が居て私が居て、軽音部の仲間が居た。
律は私の親友だ。
私は律の事が好きなのだ。

ふと、律が私から離れていったら
そんな考えが浮かぶ。
ありえない──本当に?
律が私を見捨てるかも知れない。
律のことだ、私と離れても新しい環境にも直に馴染むだろう。
友達も沢山作れるだろう。

じゃあ私は、私は一体どうなるのだろうか。
律と離れて、一人で何が出来るのだろうか。
初対面の人に積極的に話しかけられる性格ではないし
いつも受身で話しかけられるのを待ってるだけだ。

怖い、寂しい。
私は律が居ないと何も出来ないのか。
違う、そんな事は無い。
私は──律が居なくたって




113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 01:59:16.73 ID:xGjOwN7+0
落ちてたのか

レクターって元ネタなに?



>>113
「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」、「レッドドラゴン」、「ハンニバルライジング」です。
小説は読んでないので口調は適当ですね。映画も字幕で見ただけです。




114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:00:32.65 ID:yDW5HXtr0
左手は自然にナイフを掴んでいた。
足は扉に歩を進めていた。
右手でドアノブを捻り。
扉を開けた。

薄暗い部屋。
その部屋の奥に──椅子に座らされた律がいた。

一歩一歩律へと歩み寄る。
左手は必要以上の力が入り、震えていた。

丁度部屋の中央まで来ると
正面に、髪の長い少女がぼんやりと浮かんでいた。

足を止めて彼女を見つめる。
彼女も此方を見つめていた。

漸く理解した──私だ。

そっと右手で触れてみる。
冷たいガラスの感触がした。

その時、律の背後にある扉が開いた。

澪「先生・・・これは、いったい・・・。」

レクター「澪、君は酷い人間だ。」

澪「えっ?」




116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:03:15.89 ID:yDW5HXtr0
レクター「まさか、親友の律を殺そうと思っていたなんて。」

殺す?
誰を?
私が律を?

澪「ち、違うっ!私はそんなつもりじゃ」

レクター「そうかい?ではその左手に持っているものはなんだ。」

左手の先にあるものを見つめる。
冷たい目をした少女の顔が映りこんでいた。

澪「いやっ!」

左手を振り払ってナイフを床に投げつけた。

澪「律っ!違うの、私そんなこと思ってない。」

律は項垂れたまま何の反応も示さなかった。

レクター「では何故此処に来た?」

レクター「私は律が此処に居るとは一言も言っていないのだがね。」

レクター「君は、私が”そのつもり”と口にしたとき何を考えた?」




119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:06:08.49 ID:yDW5HXtr0
レクター「律を殺す事を頭に思い描いたのではないのか?」

澪「違うっ!違うっ!そんなこと思ってないっ!」

レクター「無理をする事は無い。代わりに私がやってやろう。」

澪「いやっやめてっ!」

澪「律っ!律っ!ねぇ聞こえてるんでしょっ!?律!」

律が微かに動いた。
ゆっくりと顔を上げて口を開く。

律「みお~?澪・・・澪・・・みお・・・」

擦れた声で私の名前を呼んだ。
律の目は泣き腫らして真っ赤になっていた。

ずっと私の名前を叫んでいたのか
声が枯れるまで。

澪「律・・・律・・・」

澪「先生っ!お願いっやめてっ!」




122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:08:41.68 ID:yDW5HXtr0
レクター先生は律の左肩に左手を乗せ
右手に持ったナイフを律の右の首筋に宛がった。

レクター「これは、君が望んだことだ。」

レクター「それから、君を救うといったが──あれは嘘だ。」

そう言って右手を一気に後ろへ引き抜いた。
律の首からは赤い鮮やかな血が噴出した。

澪「いやああああああああああああっ!」

律は最後に私の目を見て
口を動かした。
声は聞こえなかった。
それでも何を言おうとしていたのか判った。

みお──たすけて

絶望に打ちひしがれて
大粒の涙が零れ落ちた。




123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:10:48.16 ID:yDW5HXtr0
嗚咽の入り混じった声で言う。

澪「私も、殺すんですか?」

レクター「私は君に何もしない、生きている裡はね。」

言葉の意味は理解しようとしなかった。
兎に角、逃げないと。
早くっ!
まだ唯が屋敷に居るはずだ。
唯だけでも、助けないと。

脚に力を込めて立ち上がると
急いで、後ろの扉へと駆けた。

扉を開け、大きく一歩を踏み出したところで
何かに体がぶつかった。

勢いで尻餅をつく。

前を見ると唯が同じように尻餅をついていた。

澪「唯。」

声を出した途端、腹部に痛みが奔った。



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:13:06.79 ID:yDW5HXtr0
目を移すと突起がお腹から突き出している。
違う、何かが刺さっているのだ。

澪「唯・・・なに、これ?」

声を出すたびに腹部に痛みを感じる。

唯は這うように私に近づくと
ごめんね、と言って腹部に突き立ったものを
一気に引き抜いた。

激痛とともに血が噴出し
自分の悲鳴を聞いた。

澪「痛いっ!唯っ痛いよ唯、助けてっ」

唯は恍惚とした表情を浮かべて
真っ赤に染まった私の腹部を見ていた。

顔を近づけ匂いを嗅ぐ。

唯「おいしそう・・・」

そう言って血を啜った。

澪「・・・唯?なにしてるの?ねぇ、唯・・・いたい、いたいよ」

唯「やっぱりあの時食べた味だよ。」




127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:15:26.23 ID:yDW5HXtr0
唯は何を言っているんだ?
おかしいよ唯。
どうしちゃったんだよ唯。
怖いよ唯。

唯は、一頻り血を啜ると
今度は指を腹に空いた穴に入れた。

澪「ぎゃああああああああああっ!」

自分の悲鳴とは別に、体を伝わって
何かが裂ける音が聞こえる。

唯が穴を指で裂いて広げていた。

裂ける音が聞こえるたびに
血飛沫が唯の顔にかかる。

その光景を意識を保ったまま眺めている
そんな自分を酷く呪った。

唯「澪ちゃん、見える?」

見えてる。
見えてるよ唯。

腹圧に耐えられず外にはみ出した内臓が。




129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:17:06.89 ID:yDW5HXtr0
唯「ぷにぷにぃ~」

唯は私の内臓を楽しそうに指で突付いている。

澪「なにこれ?私の?いやだ、いやだよ、戻してよ唯。」

唯「私まだ内臓だけは食べた事ないんだ。」

唯「子供にはまだ早いって先生が言ってたの。」

唯「それに調理に時間がかかるんだって。」

唯「このままでも美味しそうなのになぁ。」

声は聞こえていた。
しかし、頭の中は激痛と恐怖に支配され
唯が何を言っているのか理解できなかった。




133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:19:22.98 ID:yDW5HXtr0
澪「ゆい、出ちゃうよ・・・ねぇ内臓でちゃう・・・戻してお願い・・・」

唯は血を浴びて真っ赤に染まった顔を向ける。
笑顔だった。
いつもの笑顔で可笑しなことを言う。

唯「うん、じゃぁ全部だしちゃおっか。」

唯は両手に力を込めて
私のお腹を一気に引き裂いた。

そして、大事そうに中のモノを取り出すと
自分の顔の前に掲げて見つめていた。

~澪END~






135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:21:32.37 ID:yDW5HXtr0
翌日、学校では全校集会が開かれ
軽音部の律、澪、紬、梓の四人が行方不明だと伝えられた。
紬は、今まで誘拐の可能性もあるとして
非公開で捜査されていたが
今回の事態を重く見た警察が公開捜査に乗り出した。
四人がそれぞれ同じ事件に関わっているのかどうかもはっきりとはしていないらしい
それでも同じ部内の人間が行方不明となっていることから
同様の事件として捜査する方針だそうだ。

軽音部でただ一人被害に遭わなかった唯は
暫く警察の人間が護衛に当たると聞かされた。

事情聴取も受けたが、知らないと言ってただ時が過ぎるのを待った。

一ヶ月も経つと唯は日常を取り戻し
今まで通りに学校に通っていた。
軽音部は廃部となったが、今でもギターは弾き続けている。

寂しくは無かった。
最近一週間ごとに配達されてくる50cm四方の箱。
中には、丁寧に梱包された軽音部の仲間達の剥製にされた頭部。

今日で最後だった。
澪が箱に入っている。
そして、先生がくれると約束したサンタ・マリア・ノヴェッラの
ハンドクリームも一緒に入っていた。
澪が揃って漸く軽音部のメンバーが集まった。




137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:25:13.93 ID:yDW5HXtr0
これでみんなとずっと一緒に居られる。

憂「お姉ちゃ~ん、学校遅れちゃうよ~」

階下から憂の呼ぶ声がする。

唯はクローゼットに澪を皆と一緒に並べる。

唯「いってきます。」

そう声を掛けて、クローゼットを閉めた。

唯は、今日届いたハンドクリームを手に馴染ませてみた。
アーモンドの香りがする。
ふと、何かが足りないような気がした。
それでも皆と一緒に居られる嬉しさで胸がいっぱいで
深くは考えなかった。

唯は憂と一緒に学校へ行き
退屈な授業を受け
和と楽しい昼食をとって
和と一緒に下校する。




139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:26:46.35 ID:yDW5HXtr0
和は唯のことを思ってか
軽音部のみんなの事は何も聞かなかった。
ただ、唯が笑顔になるようにと
毎日を常に一緒に過していた。

和「唯、偶にはどこかでお茶しない?」

唯「うん、いいよ。」

和「何か食べたいものある?」

唯は突然、異様な空腹感に襲われた。
それが一体何なのかすぐにわかった。
家にあるみんなの顔を思い出す。
今日届いた澪の髪の香り。
懐かしい香り。
そう、アーモンドの香りを。

唯「私ね──和ちゃんが食べたい。」





おしまい。




143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:28:47.30 ID:vwuaWrmmO
お疲れ様

やっぱSSはこんくらいぶっ飛んでなきゃな…
文章綺麗ですごい読みやすかった



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:30:07.13 ID:Z94IWum4O
面白かった乙



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/07(金) 02:31:19.46 ID:SP7yxkcYO
これは>>1



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この記事へのコメント
羊たちの沈黙は面白かったな、ハンニバルはグロ杉ワロタwww
2009/08/10(月) 04:58:45 | No.2760 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
ハンニバルだとアーモンドのハンドクリームじゃなくて石鹸だったよな
ハンドクリームはレモンじゃなかったっけ
たしかにSMNにはアーモンドのハンドクリームもあるけど…
2009/08/10(月) 11:46:02 | No.2762 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
yahooの検索ランクング上位の実績。新感覚・であい系サイト、アイナビでは毎週のように大好評・逆ナンイベントを開催中!夏休みで登録される女の子が急増していますので、男性の方は今が新しい出会いのチャンスです
2009/08/10(月) 16:15:37 | No.2763 | 案内 | #-[ 編集]
文章がちゃんとしてるだけにきついな…
2009/08/13(木) 05:11:51 | No.2778 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
紬がいなくなって担任と執事の話が食い違ってたのは結局どうゆうこと?
2009/08/15(土) 21:02:25 | No.2783 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
なんか涙出てきた
2009/08/17(月) 18:31:14 | No.2794 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
あずにゃんの所でギブアップ・・・
2010/06/17(木) 01:44:13 | No.6056 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
うぎゃあああああ澪があああああ
2010/09/30(木) 11:17:37 | No.7729 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
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