戯言ニュース

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真紅「ハッ!?」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:42:32.76 ID:4KUCR4cU0
第一部

真紅「ハッ!?」

翠星石「真紅…この気配は…!」

雛苺「うゆー…」

ジュン「な、なんだどうした?」

ドールたちが殺気立っている。
こんなに目の鋭い翠星石と雛苺を見たのは初めてだ。

真紅「あなたたちも感じるの…このすごくひよこめいた気配を…!」

ジュン「へ?ひよこ?」

翠星石「はい。でも、これは…」

雛苺「数が…多すぎるの…」

ジュン「うーん…なんのことやらさっぱり分からん」

真紅「まったく…いいでしょう。説明してあげるわ」




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ブログパーツ 真紅「ハッ!?」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:44:12.09 ID:4KUCR4cU0
真紅「まず、ひよこってのは…ずばり金糸雀のことよ」

ジュン「最初からそう言えばいいじゃないか…」

翠星石「あだ名みたいなもんですぅ。金糸雀だと鳥の方かひよこの方か分からんのです」

ジュン「そうかなぁ?」

雛苺「ヒナはたまご鳥って呼んだりもするの!」

ジュン「結局鳥じゃないか」

真紅「まあ、ひよこの呼び方なんて何でもいいの。おでこでも不人気でもいいのよ」

一同「んん~?」

真紅「…なによ」

翠星石「ちなみに、水銀燈は白髪、小皺。私は草女。蒼星石は帽子、あるいは野郎と呼ばれていて…」

雛苺「真紅は不人気、あるいは年増、赤だるま、赤ずきん崩れ、パツキン、もみあげがもはやバネ…」

雛苺「…悪女、紅茶臭い、目が青い、前髪もさ、ちっさい、赤、怖がり屋さん、緑ボン…」

雛苺「…ステッキがババくさい、靴がピアノの発表会のヤツみたい、フラッシュバックメイデン…」

ジュン「おい、もうやめてやってくれ!真紅がし…泡吹いちゃってるじゃないか!」

真紅「…」ファー



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:45:14.29 ID:AsosXmtu0
ひよこかわいい



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:46:41.87 ID:4KUCR4cU0
しかし雛苺は止まらない。

雛苺「…傲岸不遜、竜頭蛇尾、羊頭狗肉、苦肉の策、五女…などと呼ばれているの!」

ジュン「そのさ…特徴を羅列するのはあだ名としてどうなんだ?もみあげがもはやバネはねーよ…」

ジュン「それに、悪女とかにいたってはもはや単なる悪口じゃないか…」

雛苺「ちなみにヒナは桃、あるいは小桃、Non子、桃代、うにゅー狂いと呼ばれているわ!」

ジュン「小桃は結構かわいいな…それと」

ジュン「翠星石…お前はもれなく、くさおんなと呼ばれているというのか…」

翠星石「さいです!」

ジュン「いいのか?」

翠星石「?結構気に入ってますけど?」

ジュン「うん…それなら言うことはないんだ…」




7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:47:42.59 ID:Xva4LbAv0
ジュン「おっぱいが見たい!おっぱいがおっぱいが見たいー」

真紅「じゅジュン、な、何を言ってるのだわ!!?」

ジュン「おっぱいが見たいんだよおっぱいが。今すぐおっぱい1セット見せてくれないとまた引き篭もるぞ」

真紅「まったく・・・しょうがないだわ」

水銀燈「しんくぅ~」

真紅「あら、ちょうどいいところに来たのだわ水銀燈。えいっ」

水銀燈「--------ッ!!」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:49:00.44 ID:4KUCR4cU0
真紅が起きない。翠星石が本題を引き継いだ。

翠星石「そして、本題に戻るのですが…」

翠星石「単刀直入に言います。ひよこの気配が強すぎる!です!」

ジュン「気配?」

翠星石「はい。私たちローゼンメイデンは、互いの気配を常に感じています」

翠星石「…細かい説明がめんどくさいです。つまりドラゴンボールにおける気のことです」

ジュン「すっげー分かりやすい」

翠星石「ありがとです。そして、さっき急にひよこの気配がすごく強くなったのです」

雛苺「でも、たまご鳥ひとりが急に強くなったとかではなくて…さっきもちょっと言ったんだけど…」

雛苺「…まるで、たまご鳥の数が急に増えたみたいな、そんな気配なのー…」

ジュン「なるほど…どうも金糸雀が増殖しちまった、そんな感じなんだな?」

翠星石「え?鳥の方ですか、ひよこの方ですか?」

ジュン「…ひよこの方」

雛苺「あー、たまご鳥の方だったの…」

ジュン「(絶対わざとだコイツら…)」




9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:51:35.17 ID:4KUCR4cU0
真紅「こ、これは異常事態なのよ…?」ムクリ

ジュン「真紅!もう大丈夫なのか?し…泡吹いてたぞ?」

真紅「潮は吹いてないわよ!レディに向かってなんてこと…!」

雛苺「そうそう。真紅は何か知らんけど潮レディとも呼ばれているの」

真紅「…」ファー

ジュン「あぁ!またし…泡吹いちゃってるし!」

翠星石「(潮って単語はどっから出てきたんですか…)」

雛苺「えー、そうそう。これは妙に異常事態なの」

ジュン「そうだな、ひよこがそんなに増えちゃあたいへんだ…」

翠星石「いえ、そんなに単純なお話ではないのです」

ジュン「?」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:53:07.50 ID:4KUCR4cU0
翠星石「ひよこの増殖…それはパワーバランスの崩壊を意味します」

翠星石「この気配の強さなら、今のひよこ集団は戦力的には…」

雛苺「ざっと100体分、てとこなの…」

ジュン「そうか。どのぐらいの数かではなくて、どのくらいの戦力かが重要なのか」

翠星石「はい。そして薔薇乙女それぞれの戦力比なんですが…一気に言います」

翠星石「契約なしの水銀燈を100とすると、真紅が90、蒼星石が70、私が50…」

雛苺「あの腐れ蜘蛛女が120、ヒナが30、そしてたまご鳥が…」

翠星石&雛苺「75」

ジュン「あいつ、そんなに強いのか!?」

翠星石「そうなんですよ…あのひよこ妙に強いんです…」

雛苺「オールレンジ対応で攻守のバランスも取れていて、結構手ごわいの」

ジュン「蒼星石よりも強いんだな…」

翠星石「蒼星石は単なる見掛け倒し、要するにかませです」

翠星石「まあ、雪華綺晶、水銀燈、真紅までとそれ以外ではちょっと格が違うんですが…」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:54:02.80 ID:AsosXmtu0
かませ言うなwww



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:54:27.43 ID:4KUCR4cU0
翠星石「…それで、個人個人ではなくて集団で比べますと…」

翠星石「我が桜田軍は、私たち3人に同盟者のひよこと蒼星石を加えて315」

翠星石「あとはそれぞれ水銀燈と雪華綺晶が一匹狼で100、120」

ジュン「ほう、こう見るとうちを頂点とした一強二弱なんだな」

雛苺「でも、単独で脅威の戦闘力を持つあの二人には…」

雛苺「私たち諸侯の足並みがよっぽど揃わない限り勝てないの」

ジュン「しょ、諸侯…いや、でも要するに連合軍てことだから間違っちゃいないか…」

翠星石「エースの真紅を要として、私たちが上手く援護しないと完全な勝ちはないのです」

ジュン「よくできた状況だな…誰が勝つかはいまだ分からないという…」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:56:25.79 ID:4KUCR4cU0
翠星石「しかしです!今回、何だか知らないけどひよこの数が100倍!」

翠星石「こうなってしまった以上、抑えは効きません!よって、ひよこ集団を仮想敵とみなすとすると…!」

翠星石「ひよこ軍団が7500!対して我が桜田軍はひよこが抜けて240!」

翠星石「その戦力比たるやおよそ30対1!あとのふたりは言うまでもありません!」

ジュン「…結構やばいんじゃないか」

雛苺「そうなのよ。今改めて数字で確認して、ヒナも冷や汗が止まらないの…」

翠星石「圧倒的な武力の出現です…猟銃持った人間一人vs熊三匹くらいの戦力差ですぅ…」

ジュン「お前たちの思い違いという可能性は?」

翠星石「おそらくは、ないです…」

ジュン「まじか…」




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:58:44.33 ID:4KUCR4cU0
ジュン「しかし状況が分からんと如何ともしがたいな…」

真紅「わ、私が偵察してくるわ…」ムクリ

ジュン「真紅!潮レディ!」

真紅「…」ファー

ジュン「よし。ふたりのどっちが偵察に行く?」

翠星石「私しかいませんね…まぁ、鞄で飛んで見に行くぐらいならなんとかなります」

雛苺「ヒナはもう少し戦況を分析してみるの」

ジュン「気をつけろよ…お前は戦闘向きじゃないんだから」

翠星石「やばくなったらすぐ逃げてきます…それじゃあ、行ってきますです!」パリーン

ジュン「大丈夫かな…」

雛苺「それ、ジュンのぼりー!」ポア

ジュン「わぁー!」モヘ




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:59:44.04 ID:AsosXmtu0
真紅かわいそすぎるwww



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:00:40.76 ID:4KUCR4cU0
翠星石は気配のする方へと慎重に飛んでいった。
そして…。

翠星石「(ここにいましたか…なんて数…!)」

近所の公園。柱の影からそーっと覗く。
やはり100体ほどに金糸雀が増えている。
全員、思い思いに遊具で遊んでいるようだ。

翠星石「(まさに…ひよこの巣…!)」ガクガク

かしらの大合唱である。やかましいことこの上ない。

翠星石「(敵か味方かはまだ分かりませんが…近づくのはまずそうです)」

翠星石「(今は一旦退きます…翠星石単独じゃ手が出ません…)」ススス




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:02:27.24 ID:4KUCR4cU0
金糸雀37「あー!翠星石かしら!みんな、ひっ捕らえるかしら!」

翠星石「げっ…まずいです!」バッ

翠星石はすぐさま飛び立った。近くにいた5体ほどの金糸雀が追ってきた。
しかし傘で飛んでいるので風に流されてしまい、追撃にはなっていない。

金糸雀×5「かしら~」フワフワ

翠星石「知能が低いのは変わらないようですね…これが分かっただけでも十分な成果です」ピュー

だが、翠星石の震えはなかなか止まらなかった。
本当にあんなに増えていた。どうしよう…。




18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:02:57.59 ID:AsosXmtu0
まるでミニメロだww



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:03:49.08 ID:4KUCR4cU0
翠星石「ただいま…」スタッ

ジュン「おぉ!翠星石、よくぞ無事で帰ってきた!」ギュッ

翠星石「ふぇ…ジュン…///」

ジュン「おっと、ごめん…それで、どうだった?」ワクワク

雛苺「(ジュンがいちばん楽しそうね…)」

翠星石「は、はい。それが…」

ジュン「…やっぱり本当に増えていたのか」

雛苺「公園って…すぐ近くなのよ!」

翠星石「しかも、どうもあれは敵性ですね…一応追われました」

ジュン「やべーな…」

雛苺「いきなり滅亡寸前なの…」

真紅「…」ムクリ

ジュン「おっと真紅、生きてたか」




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:05:20.71 ID:4KUCR4cU0
真紅「あなたたち…みんなで私を馬鹿にして…うぅ…」グス

ジュン「し、真紅…つい悪ノリしちまって…ほら、こっちおいで」

真紅「うわぁぁぁん!」ギュッ

ジュン「ごめんよ…」ナデナデ

ジュン「(あぁ…泣いてる真紅はなんでこうもかわいいのか!)」

あとのふたりは何コイツ泣いてんのみたいな顔をしていた。

真紅「ありがとう、ジュン…」グス

ジュン「本当に悪かった。ごめん」

真紅「もういいわ。許してあげる」ニコ

ジュン「(あれ?なんか今日の真紅はかわいいな…)」

ジュン「興奮してきたぞ…服を脱げ」

このジュンの悪ふざけでまたぐちゃぐちゃした。
あとの1日中ずっとぐちゃぐちゃしていた。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:07:05.00 ID:4KUCR4cU0
一方その頃、水銀燈が蒼星石を奇襲していた。

水銀燈「弱いわ!弱すぎるわよ帽子!」バビバビ

蒼星石「うわぁ!」ムヒ

水銀燈「くっ…何よそのむかつく顔!馬鹿にしてるの!?」

蒼星石「いや、小皺の羽根攻撃がこけおどしなのは良く知ってるからね」

水銀燈「…やっぱそう思う?」

蒼星石「うん。命中精度をもうちょっと上げたほうがいいと思うよ」

水銀燈「そっか…」

蒼星石「今だ!それ!」プッ

水銀燈「きゃあ!何よコレ!」ベチャ

蒼星石「僕がなめてた梅干の種だよ。甘いやつ」

水銀燈「いやあ!汚い!」バッ

水銀燈は、服にペチャリと張り付いた梅干の種をすぐさま投げ捨てた。

金糸雀21「いたいかしらー!」コイン

水&蒼「!?」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:08:30.97 ID:4KUCR4cU0
金糸雀78「かしら」ピケ

蒼星石「…ひよこが来た!これで勝つる!」

水銀燈「くっ…これは分が悪いわぁ…」

水&蒼「…?」

よく見ると金糸雀が10人ほどいるように見える。

蒼星石「ねぇ水銀燈…」

水銀燈「うん…何かたくさんいるわね…」

ひよこたちは気が立っているらしい。
尻を振って威嚇してくる。

金糸雀×10「かしら!かしら!」フリフリ




23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:08:35.04 ID:KnMS9hX80
おいw適当になってきてるぞw



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:09:38.23 ID:4KUCR4cU0
水銀燈「な、なんかまずそうね…蒼星石…」

蒼星石「一時休戦だ!逃げよう水銀燈!」バッ

金糸雀×10「まてまてかしら~!」フワ

ふたりはすぐさま飛び立った。10人の金糸雀全員が追ってきた。
しかし傘で飛んでいるので風に流されてしまい、追撃にはなっていない。

金糸雀×10「かしら~」フワフワ

水銀燈「ちょっとぉ…なんなのコレ…!?」

蒼星石「とりあえずは撒けたけど…何かが起きているみたいだね…」




25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:11:01.24 ID:4KUCR4cU0
ふたりは水銀燈の教会にひとまず逃げ込んだ。

水銀燈「ふぅ…蒼星石、紅茶飲む?」

蒼星石「あ、お願いします」

水銀燈「…はい、どうぞ」コト

蒼星石「ありがとう…うわ、この紅茶すっごく美味しい!ファンタみたい!」

水銀燈「あら、そう?良かったわ」ニコ

ティータイムは乙女のたしなみ。
ふたりは紅茶をぐびぐび飲み、せんべいをばりばり頬張った。

蒼星石「あぁ、美味しかった…」

水銀燈「それで、さっきのことなんだけど…」

蒼星石「うん。よくわからないけどひよこが増えてるみたいだ」

水銀燈「戦いに夢中で気づかなかったけど、向こうの方に90体分の気配があるわ」

蒼星石「これは…結構危険な情勢だね」

水銀燈「うかつに外も歩けないわ…」




26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:12:59.35 ID:4KUCR4cU0
しばし沈思黙考にふけるふたり。
そして水銀燈が口を開いた。

水銀燈「蒼星石、やっぱり私たちだけじゃどうしようもないわ」

水銀燈「それで、考えてみたんだけど…これしか策が思いつかないのよねぇ…」

水銀燈「イヤだけどここは仕方ない。蒼星石、真紅たちと合流しましょう」

蒼星石「いや…だめだ」

水銀燈「え?な、何で?」

蒼星石「水銀燈、良く考えてごらん。今回のピンチは最大のチャンスなんだ」

水銀燈「チャンス…?」

蒼星石「このまま行けば遅かれ早かれ桜田軍の天下統一は確実だった」

蒼星石「確実だった。でも今は違う」

水銀燈「たまご鳥軍団の出現のせい、ね」

蒼星石「そう、不確定要素だけど、ひよこ軍団の出現により桜田軍の優位は消滅したんだよ」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:14:19.34 ID:4KUCR4cU0

蒼星石「この混沌とした状況を利用しない手はない」

蒼星石「もちろんリスクはある。というより、かなり分の悪い賭けだ」

蒼星石「ひよこ軍団の武力はおそらく圧倒的。正面からぶつかっては手も足もでないだろう」

蒼星石「しかし、いくら数が増えても所詮ひよこはひよこなんだ。君もさっきも見ただろう?あの頭の弱さを」

水銀燈「たまご鳥、知力18って感じだからねぇ…」

蒼星石「そう。馬鹿のままなんだ。強大だけど御しやすい勢力。それがあのひよこ軍団なんだ」

蒼星石「それで、まずひよこを上手く利用して桜田軍にぶつける」

蒼星石「そして桜田軍壊滅後、自衛隊なり米軍第七艦隊なりをひよこ軍団にぶつける」

蒼星石「そうすれば、ほら、最後に立っているのは僕らだけ、ってわけさ」

水銀燈「なるほどね…たまご鳥のおかげで、ほぼ決まりかけていた状況が…」

水銀燈「…一気に流動化したってわけね」

蒼星石「上手くやれば一気に天下を取れる。僕には現状がそう見えてならないんだよ」

蒼星石「さっきも言ったけど、分の悪い賭けであることは間違いない」

蒼星石「だけど、座して桜田の天下を待つよりましだ。そう思わないかい?」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:16:31.63 ID:XVeTq0RcO
三国志の始まりだった



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:16:53.53 ID:4KUCR4cU0
水銀燈「でも…肝心のあなたは桜田軍の一員なんじゃないの?」

蒼星石「そうだけどさ…桜田軍は文治主義が過ぎるんだよ。武辺の者である僕には…」

水銀燈「ぬるくてしょうがない」

蒼星石「そう。とりあえず勝ち馬に乗っていただけさ」

蒼星石「だから今の状況は僕にとっては千載一遇のチャンスなんだよ。独立の」

蒼星石「そこでだ。水銀燈…ともに戦ってくれるかい?」

水銀燈「…ふふ。あなたもなかなか救えない野郎ね…」

蒼星石「君こそ。さっきから身体がうずうずしてしょうがないんじゃないのかい?」

水銀燈「その通りよ。所詮、あなたも私も乱世の梟雄なの」

水銀燈「戦乱を望んでいるのよ。ただし、勝てる戦乱を」

蒼星石「…君とは馬が合う気がしてしょうがない」

水銀燈「私もよ。いいわ、手を組みましょう」

蒼星石「ありがたい」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:18:38.66 ID:4KUCR4cU0
水銀燈「でも、これだけははっきりさせましょう。天下統一の暁には…」

蒼星石「…君が皇帝。ぼくは元帥で結構だ」

水銀燈「よろしい。ちゃんと分かってるじゃないの」

蒼星石「僕はただ戦争をしたいだけだ。一心不乱の大戦争を」

蒼星石「それに、自分の分ぐらいはわきまえてるつもりさ」

水銀燈「よし。あなたは私のプレーンとして思う存分働きなさい」

蒼星石「分かった。よろしく頼むよ」ニコ

水銀燈「こちらこそ」ニコ

しかし、蒼星石は考えていた。
最後にただひとり立っているのは僕だ。
ブレーンをプレーンとか言ってる馬鹿が僕を御しきれるわけがない。
全てを総取りするのは、この僕だ。

なにはともあれ、馬鹿大隊は結成された。
これで、戦力比は桜田軍:馬鹿大隊:雪華綺晶:ひよこ軍団で170:170:120:7500となった。
数の上ではひよこの圧勝だが、水銀燈が言ったように知力が18しかないため、殆ど動物の集まりに近い。
誰でも天下に手が届く、混迷した情勢である。時代はまたも戦国の様相を呈してきた。

第一部 完




32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:21:04.89 ID:4KUCR4cU0
第二部

ひよこ軍団出現から1日が過ぎた。
ひよこ軍団は未だ明確な軍事行動はとらず、公園で遊び続けている。

翠星石「何もしてこないのが逆に不気味ですねぇ…」

真紅「でも、こちらからうかつに手は出せないわ…」

雛苺「た、大変なの!」

真紅「どうしたの!?」

雛苺「悪い知らせがふたつあるの!」

翠星石「こ、これ以上状況が悪くなるというのですか…」

真紅「…いいわ。雛苺、言ってちょうだい」

雛苺「まず、蒼星石が謀叛!水銀燈と手を組んで馬鹿大隊を結成したわ!」

翠星石「な、なんですとぉ!?」

真紅「…いえ、驚くことではないわ」




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:22:22.43 ID:4KUCR4cU0
真紅「あの子はいつも何か企んでいる感じがしていたわ。下卑た目つきで」

翠星石「…そういえば昔から腹黒いやつでした、あいつは…」

真紅「不穏分子を抱えたままでひよこ軍団と対峙するのは危険だった」

真紅「戦力低下は痛いけど、今は私たちが一枚岩になれたことを喜ぶべきよ」

翠星石「そう、かもしれませんね…」

雛苺「それに、どうせ正攻法では勝てない以上、知略を尽くすことが今は重要なの」

雛苺「だから帽子程度の戦力は、今となってはさほど重要じゃないわ」

真紅「そうね、それも一理あるわ」

雛苺「そして、あの馬鹿ふたりをいかに上手く利用していくかが今後は大切なのよ」

雛苺「冷静になれば、必ずしも悪い知らせではないかもしれないの」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:23:30.60 ID:4KUCR4cU0
翠星石「あなたたちふたりの戦略眼は大したもんですぅ…」

真紅「で?あとひとつは?」

雛苺「…ジュンがひよこ軍団に捕まったわ」

翠&紅「なあああああ!?」

雛苺「いえ、正確には捕まりにいった、というべきかも…」

翠星石「は、はやく詳細を教えるですぅ!」

真紅「な、なにが起きたの!?雛苺、言いなさい!」

雛苺「ヒナ…うにゅーが食べたいな…」ボソリ

真紅「!?」

翠星石「まさかここにきての賂要求とは…!」




37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:24:41.02 ID:4KUCR4cU0
真紅「しょうがないわね…ほら」ヒョイ

翠星石「え…?」

雛苺「わーい、うにゅーなのー!」ムシャムシャ

翠星石「真紅…?今靴から…」

真紅「私の靴は、実は食料保管庫になっているの。知らなかった?」

翠星石「知りませんでしたよ…そんなトンデモ設定…」

真紅「あなたも食べる?」

翠星石「いえ、結構ですぅ…」

雛苺「~♪」ムシャムシャ

翠星石「雛苺…美味しいですか?」

雛苺「うん!ヒナ、うにゅーだーい好き!」

翠星石「そ、そうですか…それは良かったです…」




38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:26:17.01 ID:4KUCR4cU0
真紅「さあ、教えなさい。状況を」

雛苺「分かったの。実は、こういうことなの…」

~1時間前~

ジュン「雛苺」ボソ

雛苺「うゆ?ジュン、どうしたの…」

ジュン「しー。小さい声で頼む」

雛苺「…どうしたの。何か用なの?」

ジュン「僕と一緒に偵察に行こう」

雛苺「ふぇ?ヒナと?」

ジュン「うん。本当はひとりでいきたいんだけど、なんか不安だし…」

ジュン「かと言ってあのふたりはそもそも行かせてくれないだろうし…」

雛苺「…それでヒナに?」




39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:27:19.67 ID:4KUCR4cU0
ジュン「そうなんだ。どうかな、雛苺?」

雛苺「(完全に軍人気取りね…中二が)」

雛苺「うにゅー10個。それが条件よ」

ジュン「よし、分かった。今買ってくるよ」

雛苺「さっさとしてね」




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:28:16.62 ID:4KUCR4cU0
不死屋へと向かうジュン。

ジュン「プップップーっと…あ、あれは!?」

ひよこの群れる公園。ここだったのか。

金糸雀たち「かしらかしらー♪」ピヨピヨ

ジュン「(本当にたくさんいるな…)」

でも何故だろう。すごく心が惹かれてしまうのは。

ジュン「(あぁ…あの中に突っ込みたい…そしてもふもふしたい…!)」

ジュンは自分の内なる衝動を抑え切れなかった。

ジュン「や、やあ!金糸雀たち!」

金糸雀56「あっ、ジュンかしら!」

金糸雀27「こっちに来るかしら!カナたちと一緒に遊ぶかしら!」

ジュン「(良かった…人は襲わないみたいだ…)」




41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:28:54.30 ID:23v3huGeO
薔薇乙女三国志



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:29:24.54 ID:4KUCR4cU0
ジュン「あ、あぁ…今行くよ」

金糸雀たち「わーいわーい!よく来てくれたかしらー!」キャイキャイ

ジュン「(…すごくうざいのにすごく癒される…!)」キラキラ

金糸雀3「何して遊ぶかしら!」

ジュン「あ、遊び?そうだなぁ…うーん…」

ジュン「…そうだ!今日は特別にジュン登りをしていいぞ!」

一瞬金糸雀たちの動きが止まる。そして、歓声の嵐。




43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:30:24.46 ID:4KUCR4cU0
金糸雀89「じゃあ早速!ジュン登りかしら~!」ピョン

金糸雀74「あっ、ずるいわ!カナもカナも!」ヨジヨジ

たくさんの金糸雀がジュンをいっせいに登り始める。
ジュンはたまらず仰向けに倒れた。

ジュン「(し、幸せすぎる!なんか柔らかいしいい匂いが…!)」フワフワ

かしらかしらに包まれて、ジュンはただされるがままになった。
特におしりがふわふわしている。顔がおしりとおしりに挟まれたときなど最高に気持ちいい。
ジュンはいつの間にか上半身裸になっていた。素肌ならより柔らかさを感じられる。

断じて変な意味はない。

ジュン「(もうこのまま死んでもいいや…)」ポケー

栄光のハッピーバードの異名は伊達ではなかった。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:30:27.95 ID:XVeTq0RcO
ジュン自殺のお知らせ



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:32:04.06 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…と、いうわけなのよ」ムカムカ

真紅「…」ビキビキ

翠星石「それじゃあ何ですか?ジュンは私たちよりもひよこの尻にまみれている方がいいと?」ヒクヒク

雛苺「そういう意味だと思うわ」ブチブチ

一同「…」プルプル

真紅「…あなたたち!すぐに出撃するわ!目標はもちろん…!」

翠&雛「鳥軍団!」

真紅「そう!あとあのバカメガネも取り返すわ!あれは私たちのものよ!」

翠&雛「おおー!」

真紅「それじゃあ行きましょう!」ダッ

それぞれの戦力が、私ならもっといいことしてあげるのにという思いによって簡単にインフレした。
どいつもこいつも変態ばかりだ。ちなみにそれぞれの戦力は、真紅が700、翠星石が400、雛苺が1200。
しばらくはひよこ軍団とも渡り合えるだろう。桜田軍の出撃である。

ちなみに、この時点で馬鹿大隊は壊滅している。雪華綺晶と戦って敗れたのだ。
局地戦、しかも緒戦でつまずいた上に、雪華綺晶に情けをかけられるというひどい有様だった。
現在ふたりはそれぞれの家で泣いているため、無念の敗退となった。

第二部 完




48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:33:54.95 ID:4KUCR4cU0
第三部~地獄の3104丁目~

真紅「絆パンチ!」ビュン

金糸雀33「ぶべら!」ボベ

翠星石「ノスタルジック・クレセント・プリズム・プラズマ!」ホワ

金糸雀92「はべら!」ボベ

雛苺「スタンドアップ・プレジデント!」マフ

金糸雀64「もぐら!」ボベ

それぞれが思い思いの技で金糸雀たちをやっつける。

翠星石「はぁはぁ…真紅、キリがないです…!」

真紅「くっ…どうやらこれは…!」

どんなに倒しても、100体ちょうどを保つようになっているらしい。
後から後から沸いてくるのだ。とんだアンデッド・バードである。

雛苺「これ以上の交戦は無用よ、真紅!」

翠星石「ぜぇぜぇ…」

特に翠星石が辛そうにしている。全体的に技名が長いためだ。

真紅「ひよこは蹴散らすだけでいいわ!あのメガネ男子を奪還するのよ!」



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:35:19.90 ID:4KUCR4cU0
しかし、今戦っているのが前衛の50体。
この陣を突破しないと、金糸雀まみれのジュンには到達できない。

真紅「…私が囮になるわ!ふたりはがむしゃらにジュンのところに突っ込んで!」

翠星石「えっ!?で、でも…!」

真紅「私なら大丈夫よ。まだそんなに疲れてないし…突撃役は雛苺が適任だから」

雛苺「…分かったわ。任されたのよ、真紅」

真紅「ええ。お願いするわね、雛苺」ニコ

翠星石「ひ、雛苺!?」

真紅「…いいから早く行って!うかうかしてる余裕はないの!」

真紅「翠星石!ひよこ風情に馬鹿にされてあなたは我慢できるの!?」

翠星石「…!」

真紅「悔しいんでしょ!?ならジュンを取り返してみせなさい!それでようやく私たちは…!」

真紅「…誇りを取り戻せるのだから!」

翠星石「うぅ…真紅ぅ…」グス




50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:36:25.66 ID:4KUCR4cU0
真紅「また後で、会いましょう。泣き虫なお姉さん?」ニコ

翠星石「…絶対に、また会いましょうね真紅!」

翠星石「雛苺!行きますよ!」バッ

雛苺「うん…真紅、後で!」バッ

真紅「ふふ、後で!」

ふたりは群がる金糸雀を突破して、さらに陣の奥深くへと突撃していった。

真紅「私はいい姉妹を持ったものね。優しい姉と信頼してくれる妹」

真紅「でも、ひよこめいた姉はいらないの。しかもこんなにたくさんならなおさら」

金糸雀×50「かしら~、かしら~…」

金糸雀たちは異様な雰囲気を感じ取ったのか、手を止めてこちらを睨んでいる。

真紅「いまの私はあなたたちの10倍は強いわ」

真紅「あなたたちごときに簡単に敗れる私ではないの。分かる?分かんないでしょうね」

金糸雀×50「かしら~!かしら~!」フリフリ

金糸雀たちがいっせいに威嚇行動を始めた。




52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:37:54.16 ID:4KUCR4cU0
真紅「あら、なんのつもり?おしりなんて振ってはしたない…」クスクス

真紅「かかってらっしゃい。引導を渡してあげる」

金糸雀×25「かしら!」ブワッ

真紅「(やはりそう来るのね…)」

金糸雀たちは、半分を近接戦闘、残りを支援に回した。
馬鹿な姉だが、戦闘センスはそれなりに昔からあった。
挑発は失敗に終わったようだ。

真紅「(まずは後衛をつぶすわ!)」ダッ

遠距離からの音波攻撃は厄介だ。先に叩く必要があった。
それに、一度敵の配置を崩せば、復活してきても連携が取りにくくなるという利点もあった。
低い姿勢で走り、迫る金糸雀をいなしつつ後衛へと迫る真紅。

金糸雀×25「攻撃の…」ブワッ

真紅「させないわ!キラー・ウェーブ!」ザザザ

金糸雀×25「か、かしら~?」

真紅の手からなんかの波がほとばしる。
ダメージはほとんどないが、後衛の攻撃態勢は崩れた。
チャンスだ。




53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:39:31.66 ID:4KUCR4cU0
真紅「今よ!ケロッグ・コーン・フレーク!!!」モチ

牛乳とシリアルの濁流。8匹ほどは仕留めた。
これで敵の陣形はズタズタだ。ただ緩慢に真紅を取り囲むのみとなった。

真紅「ふぅ…ここまでは順調ね…」

本当にきついのはここからだ。延々と襲い来るひよこを、捌き続けなければならない。
この50体を引き付けておかないと、姉妹ふたりが自由に動けないのだ。
そしてさらに退路確保の意味合いも兼ねていたため、この小さな点は死守する必要があった。

金糸雀×50「かしーら!」プンスカ

もう欠けた人数は補充されたらしい。
さらに、そろそろ向こうも本格的に怒り始めたようだ。

金糸雀76「怒ったかしーら!」プンスカ




55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:40:48.45 ID:4KUCR4cU0
真紅「ふふ…怒った、ですって?」」

真紅「なめた口きいてんじゃないわよ。人の主人をたぶらかしておいて…!」

真紅「…今度はこっちから行くわ!」バッ

真紅は自分から突っ込んだ。力の続く限りの機動戦。
敵の力を集中させないためには、これしかない。

真紅「ローズテイル!!」バラ

死地でひとり気を吐く真紅。
しかしそう長くは保たないだろう。そこは、あのふたりを信用するしかなかった。



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:42:01.85 ID:4KUCR4cU0
一方、翠星石・雛苺は、金糸雀たちをなぎ払いながら前進していた。

雛苺「ジュン!ジュン!どこなの!?」ガビ

翠星石「ジュン…!ど、どこですか…!」ノセ

ジュンがいない。返事もない。

雛苺「くっ…!」

ここいらが攻勢の限界点だろう。
これ以上進むと戻れなくなる可能性があった。

翠星石「はぁ…!はぁ…!」

雛苺「(翠星石の消耗がひどいの…)」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:43:11.03 ID:4KUCR4cU0
翠星石はもともと気が小さく、こういった死闘には特に向いていないのだった。
それは戦力的にというよりも、むしろ気迫の問題だった。

雛苺「(やはりこれ以上は無理なの…何か策は…!)」

雛苺「…そうだ!翠星石、ふっといツタを出して上から索敵するの!」

雛苺「それであの馬鹿ジュンを見つけ出して!下はヒナが守るから!」

翠星石「わ、分かりましたです…スィドリーム!」バババ

ふっといツタが生えてくる。翠星石はそれに乗って高所へと上がっていった。



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:44:18.23 ID:4KUCR4cU0
翠星石「(どこですか…ジュン…!)」キョロキョロ

どうも公園内にはいないようだ。もう少し視野を広げて探す翠星石。

翠星石「(いない…いない…な、なんで…!?)」

向こうでは真紅が押され始めている。もうあまり時間がない。
翠星石は祈るような気持ちでひたすら探し続けた。

翠星石「(あれ?あれですか?い、いた…!?)」

見つけた。でも何故あんな遠くにいるのか。
翠星石は混乱する頭をフル回転させた。まさかあの方角は。
まさか。いや、それ以外には考えられない。
答えは簡単に見つかった。

ジュンは、帰宅しているのだ。

翠星石「…はぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?何ですかそれ!?」

翠星石は怒りのあまりふっといツタを直に飛び降りた。



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:45:56.23 ID:4KUCR4cU0
雛苺「翠星石!どうだったの!?」

雛苺は、金糸雀たちの相手をしながら訪ねた。

翠星石「…あんにゃろー、家に帰っていやがります!!!」

雛苺「…へ?」

翠星石「いま!!ちょうどいま!!帰宅の途についてやがるのです!!」

雛苺「な、なんで!?」

翠星石「知りませんよ!!…とにかく、こうなった以上は!!」

雛苺「そ、そうね!離脱するまでなのよ!!」




60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:47:05.12 ID:4KUCR4cU0
もはやここに居る意味はなくなった。
ふたりは、苦労して突破してきた道を戻り始めた。
当然、新手が配置されている。

翠星石「ざっけんじゃねーです!!どけです!!」バビン

雛苺「(すごいの翠星石…)」

もう長ったるい名前の技など使ってもいない。
翠星石は、単なるキックでどんどん金糸雀を蹴散らしていた。
行きのときよりもよっぽど強くなっている。

翠星石「ひよこが!!邪魔ですどけです!!」ボビン

雛苺「(真紅…!もう少し持ちこたえて!もうすぐ行くわ!)」




61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:48:17.05 ID:4KUCR4cU0
そろそろ限界だ。
もう足は止まってしまった。
あとは力尽きるまで、集中攻撃を集中防御で凌ぐしかない。
数の差が露骨に出始めた。

真紅「シールド・オブ!!」ボワン

金糸雀×50「かしーら!」バイン

弾く。一体一体の攻撃ならどうということはない。
しかし集団の一斉攻撃なのだ。
最大出力でぎりぎり防ぎきれるかどうかというところだった。



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:49:15.69 ID:4KUCR4cU0
真紅「ひよこも…集まれば牙を剥く…」

また、あの幸せな時間に還れたらいい。
また、あのぬるくてまずい紅茶を皆で飲みたい。
しかし、それはもう叶わないようだ。

真紅「(さようなら…翠星石、雛苺…そして私の愛しい人…)」

50人分の音波攻撃が迫る。真紅は目を閉じた。
そのときだった。

翠星石「おりゃあああ!!」ポムス

真紅「す、翠星石…雛苺…!」

雛苺「もう大丈夫よ!翠星石が覚醒したの!」

たしかにさっきとは打って変わって、積極的に打って出る翠星石。
というか、衝撃波の進行方向をキックで捻じ曲げてすらいた。

真紅「じゅ、ジュンは…?」

雛苺「…その話は後よ!翠星石、殿軍をお願い!ヒナは真紅を守りながら先に脱出するわ!」

翠星石「任せとけですぅ!おっしゃああああ!!」ヌメン

金糸雀86「かすぃーら!!」ボジュ

こうして、3人はなんとか公園を脱出した。
近所の雑木林に逃げ込む。




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:50:59.13 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…もう、大丈夫?」

真紅「えぇ、なんとか…」

真紅は、公園を脱出したと同時に気絶してしまったのだった。

翠星石「とんでもねー死闘でした…何故3人全員が生き残ってるのかが不思議なほどです…」

真紅「それで…ジュンは…」

翠星石「…そのことについては雛苺、お願いします。翠星石には冷静に語れる自信がないです…」プルプル

雛苺「わかったの。真紅、落ち着いて聞いて。ジュンは…」プルプル

雛苺は訥々と語った。あいつは家に帰ってしまったのさ。
真紅の額に青筋が浮かび始める。




65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:52:05.63 ID:XVeTq0RcO
まあ当たり前だわなww



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:52:42.92 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…と、いうわけなの」

真紅「まったく…どこまで私たちをコケにすれば気が済むのかしら…」ピクピク

真紅「ふたりとも…早速行くわよ…」ムクリ

雛苺「真紅!まだ安静にしてないと…」

真紅「いえ…精神衛生のほうが大切よ。今は一刻も早く…」

真紅「…家に帰ること。それが最優先だわ」

翠星石「…本当に大丈夫ですか?真紅…」

真紅「大丈夫よ。それに、あなたたちだってさっきから小刻みに震えてるじゃない」

真紅「あいつをボコりに行きましょう。私たちの名誉のために」ニコ

翠&雛「…うぉおおおおお!!」ウォオ

天高く突き上げられる拳。もう誰も我慢などできない。いや、しない。
3人はもはや夜叉と化した。100m3秒のスピードで街を疾走する。
待っていろ。制裁を加えてやる。でも頭撫でてくれたら許しちゃうかも。
抱きしめてくれたら惚れ直しちゃうかも。

第三部 完




67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:54:14.70 ID:4KUCR4cU0
第四部~北上~

家へと帰る道を大幅に間違えた3人は、南下してしまった。

ジュン「ホッ…」

水銀燈「いえ、まだ油断はならないわ」

ジュン「どういうことだ?」

蒼星石「南下したのなら北上すればいい。つまり、あの3人はいずれ戻ってくるよ」

ジュン「あわ、あわわわわわ」ガクガク

水銀燈「でも大丈夫よ。だって、あなたには私たちが居るわ」

蒼星石「僕らとあの桜田軍の戦力はまったく互角。上手く戦えば勝てる」

ジュン「あ、ありがとうお前たち…」

水銀燈「いいのよ。わが大隊は強きを挫き、弱きを助く。それがモットーだから」ニコ

ジュン「水銀燈…お前はまるで堕天使のようだ!ありがとう、ありがとう…」

水銀燈「ちょ、ちょっとぉ、引っ付かないでよぅ…///」




69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:55:40.11 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「よし。遠路はるばる出撃して迎え撃とう」

ジュン「え?打って出るのか?」

蒼星石「うん」

水銀燈「蒼星石は私の頼れるプレーンなのよ。この子の言う事に従っとけば勝てるわ」

ジュン「でも、この家の守りが…」

蒼星石「まず、ここに敵を到達させないために出撃するんだからその心配は無用なんだけど…」

蒼星石「いざとなったら雪華綺晶が助けてくれるかもしれないじゃないか」

ジュン「あっ、そっか」

水銀燈「もう、ジュンったらあわてんぼさんねぇ…えい!」コツン

ジュン「えへへ、叩かれちゃった」

水銀燈「あはは…」



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:57:07.31 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「さて、僕らはそろそろ出陣するよ」

ジュン「もう行くのか…気をつけてな」

水銀燈「ジュン…もしこの戦いに勝ったら…」モジモジ

ジュン「…なんだ」

水銀燈「わ、私と契約して…くれる?」

ジュン「あぁ、いいよ。喜んで」ニコ

水銀燈「やったぁ!」ピョンピョン

ジュン「ふふ、そんなに小躍りするほど嬉しかったのか」

水銀燈「あ…///」

蒼星石「…」

蒼星石「(僕だって…キミのことが…)」

ジュン「ん?どうした蒼星石」ナデナデ

蒼星石「…しばらく、こうしていてくれるかい」

ジュン「ああ。いいぞ」ナデナデ



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:58:21.89 ID:7W9PCpyIO
よくわかんなくなってきたw



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:58:23.69 ID:4KUCR4cU0
こうして、ふたりは北上する桜田軍を撃破すべく出撃した。
しかし、困った問題がひとつ出てきた。

蒼星石「桜田軍がどのルートを通って進撃してくるかなんだけど…」

山陽道と山陰道。どちらで来るかがわからない。

水銀燈「そうね…困ったわぁ…」

蒼星石「あ…四国方面から海路で来ることも有り得るのか…」

水銀燈「いや、何手かに分かれて進撃してくるかもよ…」

蒼星石「…一旦退こう。中国・四国地方は放棄だ」

水銀燈「致し方ないわね…」

蒼星石「かなり押し込まれてしまうことになるけど…今は戦力の集中が肝要だ」

水銀燈「私はあなたを信頼してるわ…全部やりたいようにやりなさい」

蒼星石「水銀燈」

水銀燈「なあに?」

蒼星石「…ありがとう」ボソ

水銀燈「ふふ、いいのよ」




73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:59:59.71 ID:4KUCR4cU0
退却することで、戦力の再結集を狙った馬鹿大隊。
しかし京の都は譲れないとして、和歌山に絶対防衛線を敷いた。

蒼星石「ここは守り通す。なにがあってもだ」

水銀燈「腕が鳴るわぁ…」

しかし一通の電報がふたりを喫驚させた。

水銀燈「どうしたのぉ?」

蒼星石「…これを見てくれ」

水銀燈「なになに…キ、ヨ、ウ、カ、ン、ラ、ク、ス…京、陥落す!?」

蒼星石「やられた…」ギリギリ

水銀燈「ど、どうして?」

蒼星石「桜田軍は僕らの守っていない地域を通過しながら京に到達したんだ…」

水銀燈「くっ…なんて卑怯な…」

蒼星石「彼女らはただ戦争の常道に従っただけだよ…」

水銀燈「でも、正面から戦わないなんて…!」

蒼星石「仕方ないさ。近畿地方は放棄だ。かくなる上は…」

蒼星石「家康公ゆかりの地、静岡で迎え撃つ!」




74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:01:33.97 ID:4KUCR4cU0
ふたりは、昼夜兼行で退却した。
桜田軍がなぜか近畿地方でまごついたこともあり、先に静岡に到達することができた。

水銀燈「蒼星石、この地に戦略的な価値はあるの?」

蒼星石「いや、単なる験担ぎだよ。それに…」

水銀燈「それに?」

蒼星石「う、うなぎが食べたいんだ…」ボソ

水銀燈「へ?」

蒼星石「だから、うなぎが…」

水銀燈「…うなぎ?」

蒼星石「…」コクリ

水銀燈「あらぁ、意外と食いしん坊なのね、蒼星石!」

蒼星石「…///」

水銀燈「ふふふ、照れなくってもいいのに」ニコニコ



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:02:29.92 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「わぁぁ…これがうなぎ…これがうな重!」

水銀燈「おおげさねぇ…」

蒼星石「だって、こんなにてかってるんだよ!?」ジュルリ

水銀燈「はいはい、よだれ垂れちゃってるから早くお食べなさい」ニコニコ

蒼星石「いっただきまー…」

鳴り響く電話のベル。

水銀燈「何かしら?私が出てくるわぁ…」

蒼星石「いや、水銀燈は電話の使い方知らないでしょ。僕が出るよ」

水銀燈「ご、ごめんねぇ…」

蒼星石「はい、蒼星石です…はい、はい…わ、分かりました…」ガチャ




77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:03:51.33 ID:4KUCR4cU0
水銀燈「どうしたの?」

蒼星石「ここを除く中部地方全域が敵の手に落ちたらしい…」

水銀燈「なんですって!?」

蒼星石「敵は…桜田軍は…なんて戦巧者なんだ…クソッ!」ダン

水銀燈「そ、それでもこの地を守り抜くの?」

蒼星石「いや、今はもうここを守る意味は無い…撤退しよう」

水銀燈「じゃあ、とりあえずうなぎ食べちゃいなさいよ」

蒼星石「…今はそんなことしてる余裕はないんだ…このまま出発しよう」

水銀燈「…本当にいいの?」

蒼星石「し、仕方ないじゃないか…だ、だって…」

水銀燈「…ほら、こっちにおいでなさい」

蒼星石「うぅ…水銀燈…」シクシク

水銀燈「うなぎが食べられないのがそんなに悔しいのね…」



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:05:20.20 ID:4KUCR4cU0
関東地方は、北陸を抜けるルートがあるため守る価値は無い。
ふたりは恐山まで一気に退いた。

蒼星石「僕が狙っていたのはこれなんだ」

水銀燈「どういうこと?」

蒼星石「ここ、本州最北端にくれば、敵はこちらを避けられない」

水銀燈「なるほど、敵に会戦を強制するってわけね!」

蒼星石「そう。水銀燈も兵法ってやつが分かってきたみたいだね」

水銀燈「そ、そうよ!私だってこれぐらい分かるようになったのよ!」

そうこうしているうちに、恐山以南の本州全土が桜田軍の手に落ちた。

蒼星石「これじゃあ不利だな…敵地で戦っているようなものだ」

水銀燈「函館五稜郭あたりが次の拠点としてはいいんじゃないの?」

蒼星石「…水銀燈、キミは本当に成長したね」ニコ

水銀燈「よ、よしてよ…照れるわぁ…」

こうして馬鹿大隊は本州全てを失った。




79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:06:50.69 ID:4KUCR4cU0
しかし、撤退時のゴタゴタで、情報が十分に行き渡らなかった。
そのため、本来の撤退ルートが海路だったのに対し、水銀燈が青函トンネルに行ってしまった。
蒼星石が気づいたときにはもう遅い。蒼星石ひとりを乗せたフェリーは出発してしまっていた。

蒼星石「(まずい…まずいぞ…ここに来て大隊が分断されてしまった…!)」

蒼星石「(北海道についてから、トンネルに戻ろう…それまで無事でいてくれ水銀燈…!)」

しかし、桜田軍がこの齟齬を見逃すはずが無かった。
まず、全戦力を以って水銀燈を敗走させた。
そして、そこにのこのことやって来た蒼星石を返す刀で撃破した。
まさに各個撃破である。惨憺たる敗北であった。

わずかな情報の食い違い。
しかし、そのほんの少しの差で馬鹿大隊は全滅した。

第四部 完



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:08:19.55 ID:4KUCR4cU0
最終部~キミにまた、遭える~

雛苺「ただいまなのー!」

ジュン「おっ!お帰り!」

雛苺「ジュン登り!」ピョイン

ジュン「ふふ、久し振りの登り心地はどうだ!」

雛苺「最高なの~!」

ジュン「あはは…!?」

翠星石「雛苺…ちょっとぐらい荷物持ちましょうよ…」ゼェゼェ

真紅「ふぅ…あら、ジュン」

ジュン「お帰り」ニコニコ

翠星石「ただいまですぅ!」ニコニコ

真紅「…ただいま」ニコ

久し振りに合う面々。和やかな時間が流れる。




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:09:48.80 ID:4KUCR4cU0
ジュン「そういえばお前たち…ちょっと背が伸びたんじゃないのか?」

雛苺「えっ!?ほんと!?」

翠星石「そんなはずはねーのですが…真紅、ちょっと背比べしてみましょうよ」

真紅「えぇ、いいわよ」

雛苺「ヒナもヒナもー!」

久方ぶりに流れる空気。あぁ、この空気だよ。
やっぱり、こいつらがいなきゃ楽しくないな。
ジュンはどうしても笑顔がこぼれて仕方が無かった。

そして、背のほうは全員20センチちょうどずつ伸びていたのだ。
しかし、背比べをしてもお互いの差はちっとも変わっていない。みんな同じ長さ伸びたのだから。
ジュンはこれのせいでペテン師呼ばわりをされた。



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:11:17.85 ID:4KUCR4cU0
ジュン「でもさ、お前ら…ずっと一緒に行動してたんだろ?」

真紅「そうよ?」

ジュン「真紅は焼けたのにあとのふたりはそうでもないんだな…」

真紅「そうなの…私肌が弱くてすぐ黒くなっちゃうのよ…」

ちょうど良く焼けた肌。金髪があいまってとてもエキゾチックな雰囲気だ。

ジュン「なんというか…真紅はセクシーになったな」ナデナデ

真紅「あら、ありがとう」ニコ

翠星石「はい!翠星石はどうですか?」ヒョコ

ジュン「お前は…」

翠星石は、どっちかというと寒いほうの影響を受けたのか、肌が逆に白くなっている。
より清楚さが増し、どことなく大人びて見えた。

ジュン「ますます可憐になったというか、お嬢様みたいな上品さが備わってきたな」

翠星石「わーい!ジュンに褒められたですぅ!」

ジュン「よしよし。ご褒美に頭を撫でてあげよう」ナデナデ

翠星石「えへへ…」ニコニコ




84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:12:28.99 ID:4KUCR4cU0
雛苺「はーい!ヒナはどうですか!」ピョコ

ジュン「…」

足だけが20センチも伸びたらしい。変な体型になってしまっている。

ジュン「お前は…」

ジュン「…長くなった」

雛苺「長くなった?どーゆー意味?」

翠星石「長くなったということはいいってことです!」

雛苺「わーい!ありがとなの!」

ジュン「おぉ!」

雛苺「…あれ?頭撫でてくれないの?」

ジュン「…」

雛苺「…」

翠星石「…」

真紅「…」



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:13:39.54 ID:4KUCR4cU0
その後、3人は思い出話をたくさんしてくれた。
馬鹿大隊が次々と退いて行くので、罠を警戒して近畿で一度進撃を止めたこと。
馬鹿大隊が全然兵法を心得ていないということ。
馬鹿大隊の些細なミスを見逃さず、勝ちを掴んだこと。
馬鹿大隊はただの馬鹿だということ、などなど。

ジュンは、その全てをしっかりと聞いてやった。

翠星石「それでですね…」

ジュン「…今日はもう遅いぞ。そろそろ寝なさい」ニコ

翠星石「…そうですね」

雛苺「はーい…」

真紅「それじゃあおやすみなさい、ジュン…」

ジュン「あぁ、おやすみ」

翠星石と真紅とは一緒に寝たいぐらいだった。




91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:25:19.00 ID:4KUCR4cU0
寝る前にわけも無く、窓から顔を出して月を眺める。

ジュン「あいつら、成長したな…」

本州戦役を経て、本当に成長した。
雛苺があまつさえという言葉を使ったときは本当にびっくりした。

ジュン「今夜は…」

よく見たら月が出ていない。ジュンは空に向かってツバを吐き掛けた。

ジュン「うわ…」ベチャ

しかし、これが娘の成長を見守る父親の気持ちなのだろうか。
嬉しいが、なぜかとてもさびしい。

ジュン「別に、娘でもないのになあ…」

14にて何かを悟ってしまいそうになり、あわてて首を振るジュン。
首を振りすぎて、近くにあった花瓶をぶち割った。

ジュン「血が…」

滴る血液。ジュンはその全てを舐めとって綺麗にした。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:31:37.60 ID:4KUCR4cU0
ジュン「でも…」

時々でいいから、いなくなった奴らのことを思い出してやりたい。
しかし、もう忘れてしまいそうだ。今日寝たら間違いなく忘れる。

ジュン「いや…」

いなくなったわけではなく、存在が曖昧になっただけだ。
ならば、わざわざ覚えておくこともないか。
だって、この世のどこかにはいるのだから。

そのとき、突風が吹いた。メガネが飛ばされた。
腹いせにパソコンのディスプレイをコナゴナにしてやった。

ジュン「血が…」

滴る血液。ジュンはその全てを舐めとって綺麗にした。



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:33:30.42 ID:NwVKiUHy0
邪気眼すぎるwwwwwwwwww



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:34:59.52 ID:4KUCR4cU0
ジュン「あぁ…」

もうイヤだ。寝よう。布団に入るジュン。

ジュン「…」

血液が足りない。
睡眠というより昏睡に近い。
それでもジュンは大丈夫なのだ。若いから。

街を吹きぬける風は暴風雨によるものだ。
それでも、雨は塵などを洗い流してくれる。
明日になればいい天気になるだろう。
しかし、明日が台風本番なのだ。明日のちびっ子涙相撲大会は中止だろう。
いや、そうはならない。なぜなら、屋内で決行するのだから。

ジュンは、色々思っていた。
そして願わくば明日雛苺の足の長さが戻っていますように。
そんなことを考えていたけどそれは意識の混濁というか、本当はただ気絶していただけなのだった。





96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:38:08.90 ID:4KUCR4cU0
支援してくださった皆様。拙文を読んでくださった皆様。
死ぬほど感謝しています。どうもありがとうございます。
初投下SSですが実は7作目にして最新作です。書き溜めました。
ということで、このまま次のを投下させていただきます。
よろしければお付き合いください。



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:40:34.68 ID:AQiSyXSn0
                  , -──-、
      /   i、       / ノ\ ヽ(卯.〉   _/\/\/\/|_  
      { ノ   "' ゝ    / /   \ヽヾ',    \          /
      /       "'.ゝノ/{0}  /¨`ヽ{0}    < かしらー!! >
      /              ヽ._.ノ  ',    /          \
     i                `ー'′  '.     ̄|/\/\/\/ ̄
    /                       }
    i'    /、                 ,i..
    い _/  `-、.,,     、_       i
   /' /     _/  \`i   "   /゙   ./
  (,,/     , '  _,,-'" i  ヾi__,,,...--t'"  ,|
       ,/ /     \  ヽ、   i  |
       (、,,/       〉、 、,}    |  .i
                `` `     ! 、、\
                       !、_n_,〉>

                 .,,......、
    _、   _         ヽ `'i ,‐..,      ___,,,,,,,、
  '|ニ- /   !│        ,!  ゙'"  l     l  ゙    ゙l, 
   ././    .! ヽ        !  ,i--'"゛     ゙'''"'''/  ,,r'''”
   l .!     ! l \     _,,,,,,,)  |         ,,  `゙‐'゜
   ! |    / | ヽ`   /..,,,,,_.   `''-、     ,┘゙,k 
   ヽゝ-__-‐'ノ      | .'(__./  .,、  `'、.   |  '{,,___,,,,,,,,、.〟
    ─‐'''´       ヽ,、   _./ `'-、,,ノ .   'v,_   ̄`  : ,,,l
                 . ̄´            .゙~゚'冖''''"'゙”″



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:41:35.45 ID:4KUCR4cU0
ジュン「っしゃあああああ!」

翠星石「うわ!?」ビク

雛苺「びっくりしたの…」

真紅「な、なに?どうかしたのかしら?」

ジュン「ドレスが…僕の作ったドレスが売れた!」

翠星石「ほ、ホントですか!」

雛苺「いくらで?いくらで売れたの!?」

ジュン「5万円だ!」

真紅「あら、そんなもんなのね」

ジュン「いや、これはすごいことだぞ…」




103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:45:04.52 ID:4KUCR4cU0
これまでみつを通し、オークションにていくつかのドレスを出品してきた。
しかしまったく売れず、これはおかしいと思ったジュン。
独自の調査を進めた。本当にただ売れていないだけだった。
やがてみつは、ジュンの力量に見切りをつけて事業から手を引いてしまった。
それでも諦めきれないジュンは、自力でオークションに出品していたのだった。

ジュン「だから、今回のが初ということになるんだけど…まさか本当に売れるとは!」

翠星石「ちなみに、どんなのが売れたんですか?」ヒョイ

雛苺「う…」

パソコンの画面には、不気味な緑の布の塊が映し出されていた。

翠星石「こ、これは…?」



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:47:33.31 ID:4KUCR4cU0
ジュン「これはな、カエルちゃんドレスっていうんだけど…」

雛苺「うぇぇ…」

ジュン「翠星石、実はお前をイメージして作ってみたんだよ…感謝してる!」

翠星石「そうなんですか…あ、ありがとうです…」ピクピク

雛苺「(翠星石の笑顔が引きつってるの…)」

真紅「よく売れたわね…」

ジュン「ちなみに、ほかに出品してる2着は、あとのふたりがモチーフになってるんだぞ」

ジュン「それぞれ、真紅はザリガニちゃんドレス。雛苺は桃尻ちゃんドレス。ほら、これだ」

悪趣味な布ゴミが画面に映し出された。

雛苺「…」

翠星石「お、抑えるです、抑えるですよ雛苺…」

ジュン「こっちはまだ売れてないみたいだけどな」

真紅「ジュン…あなたってその程度だったっけ…?」

ドールたちとジュンの絆が揺らぐ。



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:49:57.65 ID:4KUCR4cU0
ジュン「よし!生まれて初めての稼ぎだ!」

報酬はもちろん総取りになる。
もしみつと手を結んだままだったら、8割は持っていかれることになっただろう。

翠星石「それでこの先食べていけるとは到底思いませんが…」

真紅「でもあなた、使い道あるの?」

ジュン「う、うん。それが…」ボソボソ

なぜかまごつくジュンに、ドールたちの苛立ちはさらに募った。

雛苺「で、結局何?」

ジュン「…姉ちゃんを温泉にでもつれて行こうと思うんだ…」

一同「え…?」

予想外の返答に一瞬呆然とする3人。

ジュン「ほら、僕は姉ちゃんにいっぱい苦労ばっかかけてるだろ…」

ジュン「一時期馬鹿みたいに荒れてたし…」

ジュン「だから、この機会にでも労わってやろうかなー、なんて…」



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:52:15.51 ID:4KUCR4cU0
翠星石「い、いいじゃないですか…美しい姉弟愛です…」ウルウル

雛苺「やっぱりジュンはジュンだったの!」

ジュン「ハハハ!」

ドールたちとジュンの絆が戻った。

真紅「じゃあ早速のりを誘いに行ってあげなさい、ジュン。きっと泣いて喜ぶわ…」

ジュン「あぁ!そうさせてもらう!」ダッ

翠星石「ふふ、ジュンったらあんなに走って……この音は階段から転げ落ちてますね…」

雛苺「でもただの無能じゃなくて、優しい無能で本当に良かったの」

ふたりがしみじみとしている間、真紅は切ない気持ちでパソコンの画面を見ていた。
将来は、決して楽観できはしない。ジュンは、たとえ優しくても職人としては三流もいいところだ。
いや、もともと才能はあったのかもしれないが、それは開花する前に腐ってしまったようだ。

真紅「(いけない、私なにを考えているのかしら…)」

しかし、どうしても真紅はやるせなさを拭うことができなかった。

真紅「(ザリガニちゃんドレスって何なのよ…)」




112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:54:35.09 ID:4KUCR4cU0
階段を転げ落ちたジュンは、のりに驚かれた。
今はリビングでのりによる治療を受けている。

のり「もう、ジュン君たらあわてんぼさんねぇ…」ポンポン

ジュン「そこいたい…それに、いまどき赤チンはどうなんだ姉ちゃん…」

のり「はい、おしまい…」

ジュン「ありがとう…」

のり「あら、いいのよ」ニコ

姉は飽くまでも優しい。

のり「それで、あんなに急いで…なにか大事な用事でもあったの?」

ジュン「そ、そうなんだよ…姉ちゃんに言いたいことがあって…」

のり「え、私に?」

ジュン「うん…」

のり「何かな何かな?」ニコニコ

いつもジュンの話を嬉しそうに聞いてくれる姉。
そんな姉を邪険に扱っていた過去の自分を、今となっては殴りつけてやりたい。
最近になって、ジュンはそう思えるようになった。




113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:57:06.04 ID:4KUCR4cU0
ジュン「あのさ…僕がドレスを作ってたのは、知ってるよね?」

のり「ええ、すごく頑張ってたわよね」

ジュン「それがさ、さっき…売れたんだよ」

のり「…ほ、本当に!?やったじゃない、ジュン君!」ガバ

ジュン「ね、姉ちゃん…」

姉が抱きついてくる。息が苦しいし恥ずかしいし柔らかい。
どうやら姉はいまだに自分のことを男とは見ていないらしい。

のり「あ、ごめんね…つい嬉しくって。おめでとう、ジュン君!」ニコ

ジュン「いや、ありがとう姉ちゃん…」

姉は本当に嬉しそうにしている。それはもう大げさすぎるほどに。
見ているこちらも幸せな気分になるような笑顔。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 09:59:27.09 ID:4KUCR4cU0
ジュン「それで、当然報酬が入るんだけど…」

ジュン「そのお金でさ…あんまり大した額じゃないんだけど…僕と温泉にでも、行かないか?」

のり「…え?」

ジュン「ふ、ふたりで温泉に行こう、姉ちゃん」

のり「…じゅ、ジュン君…本気?」

ジュン「うん…ほら、姉ちゃんとふたりだけで旅行なんてしたことないじゃないか」

ジュン「たまには姉弟水入らずも悪くないかななんて…だめかな?」

のり「そんなわけないでしょう?…あれおかしいな…すごく嬉しいのに…」

のり「ご、ごめんねジュン君、お姉ちゃん、お手洗いに行ってくるね…」ダッ

ジュン「…いってらっしゃい」

姉の声が震えていた。どうやら快諾してもらえたらしい。
思い返せば、これまで姉孝行なんてひとつもしてこなかった。
こんなに喜んでもらえるなら、勇気を出して言った甲斐もあるというものだ。

ジュン「あれ…」




115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:01:33.10 ID:4KUCR4cU0
のり「ごめんね突然…」

戻ってくると、ジュンが泣いていた。

のり「ど、どうしたの…?」

ジュン「なんでかな…僕もちょっと…」

ジュン「…トイレ行ってくる」ダッ

のり「いってらっしゃい」ニコ

少し前には考えられなかったことだ。
あのジュンが、自分を温泉に誘うだなんて。
しかも自分のお金で。

のり「ふふ、やっぱりジュン君は優しい子だったわ。お姉ちゃんは間違ってなかった」

のり「…」

のりは、声を押し殺してもう一度静かに泣いた。
その後しばらく、この姉弟はトイレとリビングを交互に往復していた。



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:03:38.99 ID:4KUCR4cU0
そして、出発の日。
旅行とはいえ、1泊2日だったが。

ジュン「お前ら、留守番よろしくな」

のり「みんな、ご飯は用意しておいたからそれを食べるのよ?」

雛苺「はーいなの!」

翠星石「留守居役、しっかり引き受けましたです!」

ジュン「なーんか不安なんだけど…」

翠星石「失敬な!私のことが信頼できないというのですか!」

ジュン「うん」

翠星石「うん、って…そんなあっさり…」

真紅「ジュン…安心して行ってらっしゃいな。後のことは私たちに任せて」

ジュン「うーん何でだろう…真紅が言うと微妙に安心できるな…」

翠星石「ば、馬鹿にしやがるのもほどほどにしろですぅ!」キィキィ

ジュン「冗談だよ」



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:05:42.94 ID:4KUCR4cU0
のり「じゃあジュン君、そろそろ行こっか…みんな、行ってくるわね?」ニコニコ

翠星石「いってらっしゃいです!楽しんでくるですよ!」

雛苺「お土産なかったら承知しないの!」

真紅「いってらっしゃい」

ジュン「よし、じゃあな、お前ら」

そういって家を出るふたり。

のり「ジュン君?」ニコニコ

ジュン「な、何?」

のり「今宵は一緒のお布団で寝ましょうね?」

ジュン「……いいよ」

のり「ふふ、ありがとう」ニコニコ

ジュン「(だ、大丈夫かな…今宵とか言ってるし…)」

ふたりは、箱根か熱海か下呂のどれかにいく予定だった。




120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:07:37.20 ID:4KUCR4cU0
翠星石「ふたりとも、行っちまいましたねぇ…」

3人は、すでに暇をもてあましていた。

雛苺「真紅、なにかすることなぁい?」

真紅「あるわよ、ひとつだけ」

翠星石「面白いものですか?」

真紅「…暇つぶしには十分ね」

雛苺「なんなのそれ?」

真紅「みんなを呼びましょう、話はそれからよ」

銀&金&蒼「もういるよ」

真紅「さすがね…じゃあ話をはじめようかしら」




122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:09:38.76 ID:4KUCR4cU0
真紅「コホン。真紅よ」

真紅「まず前置きから…単刀直入に言うわ、あのふたりの小旅行じゃ尺が持たないの!」

一同「…ぶっちゃけた!?」ザワザワ

真紅「内容も面白くならないわ!いえ、あの小旅行が面白くなるようなことがあっては何かダメな気がするのよ!」

真紅「なんというか…人道的に!」

蒼星石「いいぞいいぞ!」

雛苺「その通りなの!」

真紅「ありがとう…よって、今回は私たちが話を盛り上げるしかないの」

真紅「いつも通りのわけのわからない不条理な展開は、私たちで受け持つのよ」

真紅「スポットライトを無理やり私たちに向ける、と言えば分かりやすいかしら」

真紅「ともかく、あのふたりはそっとしておいてあげましょう…ここまでで何か質問は?」




123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:11:39.37 ID:4KUCR4cU0
翠星石「はい!」

真紅「はい、翠星石」

翠星石「じゃあ、今回のコンセプトは…」

翠星石「私たちが身を張って囮になって、あのふたりを守る。そういうことでいいですね?」

真紅「そう。その通りよ。…不満なの、翠星石?」

翠星石「んなワケねーです!喜んでボロボロになってやりますとも!」

翠星石「おめーらも、それで異存はないですよね!?」

一同「当たり前!」

真紅「無用な心配だったみたいね…ほかに質問は?」



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:13:31.63 ID:4KUCR4cU0
水銀燈「はい」

真紅「はい、水銀燈」

水銀燈「もちろん、体を張るのに異議はないわぁ。どうせいつものことだしね…」

水銀燈「でも…こういう風に…何というか、私たちが…」

真紅「質問ははっきりなさい、水銀燈」

水銀燈「わかったわぁ…私たちが尺が足りないとか言っちゃって、いいのぉ?」

真紅「…」

水銀燈「翠星石も、今回のコンセプトとかなんとか言ってたし…」

翠星石「…」

一同「…」

水銀燈「…」



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:15:41.04 ID:4KUCR4cU0
真紅の演説は続く。

真紅「そして今回、なにをするかというと…」

真紅「みんなにひとつずつ、昔語りをしてもらうことにします」

一同「んん~?」ザワザワ

真紅「私たちはもうおばさんという年齢を遥か昔に通り過ぎた」

真紅「乙女の振る舞いをしていても、実は相当の年増ぞろいなのよ」

蒼星石「そうだそうだ!」

真紅「うるっさいわね!」バン

蒼星石「…」ビクゥ

真紅「誰が年増の紅婆よ…」

蒼星石「す、すいません…」ガクガク



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:18:10.68 ID:4KUCR4cU0
真紅「そう、だから小ネタや笑い話は相当に持っているはずなのよ」

真紅「胡散臭い話から、うっとうしい話までね」

真紅「これで尺は十分埋まるはずよ」

翠星石「(さすがは真紅…自然な流れで短編集っぽい構成に持っていった…!)」

金糸雀「(でも別に体を張るってほどでもないかしら…)」

真紅「長女から順番に語っていってもらうわ」

真紅「じゃあ水銀燈、早速あなたからどうぞ?」

水銀燈「えっ、いきなり?」

真紅「あなたは!?」バン

水銀燈「ひぃ!?」ビクット

真紅「さっさとなさい…」

水銀燈「わ、わかりました…こわい…」

蒼星石「(なんでキレ気味なんだろう…)



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:20:29.53 ID:4KUCR4cU0
PHASE1~教会におばけが出たかもしれない~

今を遡ること3日前…。
住処の教会にて、水銀燈は眠りに就こうとしていた。

水銀燈「じゃあおやすみなさい…ヒッ!?」ビク

入り口の扉から不審な物音がしたような気がする。

水銀燈「き、気のせいよね…」

しかし、たしかに聞こえた。
それどころか気配すらする。

水銀燈「ななな、何なのぉ…!?」ガタガタ

何かがいる。恐怖が水銀燈を襲う。
しかし、確かめないことには眠れもしない。
水銀燈は意を決して、震える手で扉を開けた。

水銀燈「真紅…!」

真紅「だわ」

真紅は教会に火を放って帰っていった。




136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:22:35.76 ID:4KUCR4cU0
PHASE2~栄光のハッピーバード~

アメリカ禁酒法時代。
いらいらしていた人々は、金糸雀を幸せの鳥として追っかけまわしていた。

金糸雀「ひー!みっちゃん、助けてかしらー!」ピヨピヨ

残念なことに、みっちゃんが誕生するまでにはなお60年ほどの歳月を待つ必要があった。

ラプラス「ひよこちゃん」

金糸雀「あっ、ラプラスの魔!」

ラプラス「この時代でのアリスゲームはもう終わっちゃいましたよ」

金糸雀「えっ!?本当かしら?」

ラプラス「はい、真紅が水銀燈を燃やしちゃったのです。水銀燈にはしばしの休息が必要となりました」

金糸雀「はー、助かった…」

ラプラス「それでは行きますよ?」

金糸雀「おっけーかしら!」



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:30:56.74 ID:4KUCR4cU0
PHASE3~白ずきん~

この時代はまずい。翠星石は焦っていた。

翠星石「な、なにか策は…?」

自分と真紅と赤ずきんで完全に頭巾キャラがかぶってしまっている。
特に赤ずきんが、この時代屈指の萌えキャラとして絶大な人気を誇っているのだ。
真紅なんて恐るるに足らないが、赤ずきんには勝てる気がしない。

翠星石「うーん…うーん…あ、そうだ!」

私が着けているのはただの頭巾じゃない。三角巾だ。
もしかすると、この時代ではとんだオーバーテクノロジーなのではあるまいか。

翠星石「ふっふっふ…赤ずきん、敗れたり!です!」

翠星石の予想は大当たりだった。
ですです印の三角巾はターゲット層のオランダ妻に大ウケし、売れに売れた。
こうして大商人ドールとして大成した翠星石。

一方、この時代で真紅がしたことといえば、とある洋館を燃やしたことだけだった。



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:34:24.66 ID:4KUCR4cU0
PHASE4~じじいLOVE~

鋏で丁寧にじじいの整髪をしてやる。
至福のときだ。

蒼星石「(この時代のおじいさんは渋くていいなぁ…)」チョキチョキ

そんなことを考えていたら、手元が狂ってしまった。頭頂から血が吹き出る。
じじいが非難がましい目で蒼星石を見てくる。

蒼星石「おっと、ごめんねおじいさん」ニコ

いつの時代のじじいもこの笑顔でイチコロだった。
この時代も例外ではないらしい。



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:36:58.90 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「はい、終わったよ…ハッ!?」

ラプラス「帽子ちゃん。真紅が水銀燈を燃やしたためこの時代のアリスゲームはおしまいです」

蒼星石「またなのかい…」

ラプラス「えぇ。水銀燈は髪の毛がアフロみたいになったため休息が必要です」

蒼星石「わかったよ…次の時代ではもっとましなおじいさんに会えるかな?」

ラプラス「知りません」

じじいが血にまみれながら泣きそうな顔でこちらを見てくる。
もう終わった男だ。

ラプラス「それでは行きますよ?」

蒼星石「うん、頼むよ」




145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:40:05.74 ID:4KUCR4cU0
PHASE5~真っ赤な人形~

真紅「来たのね…」

先の戦いで、3個軍団からなる方面軍は消滅した。
今はただ、真紅ひとりが戦場に立っているのみだ。
いや、すでにほとんど戦闘は行われていない。皆、全滅してしまった。

真紅「…」

目を閉じれば浮かぶ。
ローマ軍の兵士たちは人形の私にも本当に優しくしてくれた。
指揮官でもある総督は、いつかこの地を平和にしてみせるとよく笑顔で真紅に語っていたものだ。
真紅も、そんな彼と彼らを心から応援していた。

しかし、皆死んだ。



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:42:46.16 ID:4KUCR4cU0
真紅「あなたたち…」

蛮族の軍勢が迫る。戦略的にはもはや無意味な戦いだ。
本来なら、命があるうちに撤退すべきなのだろう。
しかしまだ、本当にわずかではあるが生き残った兵がいる。彼らの退却を援護してやらねばなるまい。
それが何も出来なかった無力な私の、せめてもの罪滅ぼしだから。
何より、このままむざむざ帰っては私自身の気が済まない…。

真紅「絶対に…絶対に許さないから…!」ザッ

真紅は蛮族の群れに飛び込んでいった。暁の森が紅に染まる。

…その後、奇跡的に千人ほどのローマ軍兵士が本国へと帰ることができた。
真っ赤な人形のおかげだと、彼らは泣きながら口を揃えて言った。
しかし、皆に愛された真っ赤な人形は決して帰還しなかった。

そして時代は流れ、誰もが真紅のことを忘れ去った。




148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:45:35.73 ID:4KUCR4cU0
PHASE6~苺狂い~

居ても立ってもいられず、学生運動に身を投じた雛苺。
苺わだちと火炎瓶を駆使し、機動隊相手にも連戦連勝だった。
一息つき、ふと前方を見る。

雛苺「…あ、あれは真紅!?」

火のあるところに真紅あり。ついでに水銀燈もあり。
真紅が火炎瓶を水銀燈に向かって乱射している。

雛苺「ふう…ラプラスの魔、いるんでしょ?」

ラプラス「おや小桃ちゃん、よくお気づきになられましたね」ヒョイ

雛苺「結果は見なくても同じなのよ…ヒナはもう先に行きたいな」

ラプラス「そうですか」




149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:48:13.00 ID:4KUCR4cU0
いや、もう決着はついたようだ。
水銀燈の髪の毛がチリチリになっている。

雛苺「水銀燈はだんだん火の耐性がついてきたみたいね」

ラプラス「そりゃあ…毎回これのせいで尻切れTomboなんですから、そろそろ慣れてもらわないと…」

雛苺「まったくね…」

ラプラス「さて、行きますか」

雛苺「ヒナはいつでもいいの…」



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 10:53:31.38 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…はい、おしまい…」

一同「…」

水銀燈「真紅…私、話が終わったら真っ先に貴女を襲おうと思ってたんだけど…」

真紅「…」

水銀燈「お、襲えるわけないじゃない…真紅?」

真紅「…」

水銀燈「よかったら私の腕の中でお泣きなさい…」ダキッ

真紅「うぅ…」

ふたりでおいおい泣いた。
つられて皆も泣いた。



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:00:20.53 ID:4KUCR4cU0
下呂の旅館に到着したふたり。

ジュン「な、なんかすごく早くなかったか?」

のり「つくづく、時間というものは均等に流れていないようねぇ…」

ジュン「いや、そういうことじゃなくて」

のり「早速、温泉に入りましょうか?」ニコ

ジュン「(嫌な予感しかしない…)」

のり「あらぁ…ジュン君、ここ混浴だって」

のり「…///」

ジュン「(姉ちゃんが頬を染めている…)」

ジュン「(柏葉、未来のマイハニーよ、僕に加護を…!)」

その頃、巴は家のベンチで寝ていた。



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:03:52.96 ID:4KUCR4cU0
真紅「えー、話が途切れるとこのようにまずいことになるわ」グス

真紅「だから、変に真剣な話は今後一切禁止ね」

真紅「そしてその点については…本当にすみませんでした…」ペコリ

誰も真紅を責めない。

真紅「えっと…じゃあまた水銀燈から」

水銀燈「わかったわぁ…」



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:07:21.95 ID:4KUCR4cU0
PHASE7~すいじょうきばくはつ~

水銀燈「くぅぅ…また負けた…」

水蒸気を急に爆発させるやつにどうすれば配管工風情が勝てるというのか。

真紅「あら、どうしたの水銀燈?」

水銀燈「真紅…ちょっと助けてちょうだい…」

真紅「なるほど、コイツは手ごわいわよね…私も苦戦した記憶があるわ」

水銀燈「あら、貴女このゲームやったことあるの?」

真紅「えぇ、もうやることがないくらいやりこんだわ。まさに傑作と呼ぶにふさわしいデキよ」

水銀燈「へぇ…な、ならこいつに勝つ方法もわかるんでしょ?」

真紅「…私に貸してごらんなさい」

互角以上の戦いを繰り広げる真紅。ついには倒してしまった。

真紅「勝因はこのマシュマロ野郎をパーティからはずしたことよ」

水銀燈「すごい…いえ、それよりもあなたがやると何でこんなに炎技の威力が高いの…?」

真紅「…」

水銀燈「(黙秘なのね…)」



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:10:52.02 ID:KBxn9qhQ0
ヤリドヴィッヒは強かったな……



161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:11:07.57 ID:4KUCR4cU0
PHASE8~浮遊~

人が空を必死に目指した時代。
金糸雀は傘で適当にふわふわと空を飛んでいた。

金糸雀「快適かしら♪」フワフワ

しかし1852年のある日、金糸雀は目撃してしまった。
アンリ・ジファールが、葉巻形ガス気球に3馬力の蒸気機関を搭載した軟式飛行船を飛ばすのを。
ちなみに史上初の操縦可能な航空機である。

金糸雀「(カナのお空が取られちゃう…人間は地面に這いつくばっていればいいのに…)」

その出来事の後、急速に飛行船とやらが増えたような気がした。
そして、金糸雀と飛行船の衝突事故が多発するようになった。

金糸雀「(アンリ・ジファール…許さないかしら!)」

1855年、金糸雀がアンリ・ジファールの工房に潜入。
そのとき、アンリ・ジファールは別の飛行船を製作していたが試験中に爆発した。
当然金糸雀の工作のせいである。
ジファールと仲間は無事脱出した。金糸雀は脱出できなかった。
その後、アンリ・ジファールは蒸気機関用の噴射装置の開発をつづけ、いくつかの特許を得た。



162 名前: [―{}@{}@{}-] 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:13:02.63 ID:5ofUpT84P
バカナリアww



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:14:33.85 ID:4KUCR4cU0
PHASE9~ブロッコリー~

自らの商才に気づいた翠星石。
やがてその時代その時代ごとの大衆のニーズを的確に見抜くことが出来るようになっていった。

そして今回のターゲットは狂騒の大正日本。
この時代の人間も例外なく求めているものがあった。

翠星石「(ブロッコリー、ですか…)」

この時代、ブロッコリーは高値で取引され、未だ一般民衆に手が届く代物ではない。
道端でブロッコリーを食いたいと言って泣き喚く子供を何度見たことか。

翠星石「よーし…やったるでーです!」ワキワキ

翠星石は今回も、オーバーテクノロジーにもほどがある三角巾を駆使した。
結果、当初の狙い通り、ブロッコリーの普及は急速に進んだ。
ですです印のブロッコリーは、まずいけど安いということで日本妻に大ウケした。

翠星石「ふふ…」

道端の子供たちが渋い顔でブロッコリーをほおばっている。
翠星石は微笑んで、よくあんなまずいの食べていられますネ、と思った。



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:17:47.99 ID:4KUCR4cU0
PHASE10~グラン・ペール~

この国のじじいは皆はげている。
整髪しようにも髪がない。
だからたまにふっさふさのじじいを見つけると、蒼星石はすぐさま路地裏に連れ込むようにしていた。

蒼星石「静かにして…お願い、僕に髪を切らせておじいさん…」ウルウル

涙目で上目遣い。いつの時代のじじいもこれでイチコロだった。
この時代も例外ではないらしい。

蒼星石「(あぁ…なんて手入れの届いていない髪…)」ゾクゾク

この時代では、翠星石が急速にシャンプーを普及させ始めている。
だからじじいの臭くてへなへなの髪を堪能できるのは今だけだった。

蒼星石「はい、おしまい」

腹いせにつるっぱげにしてやった。
じじいが非難がましい目で蒼星石を見てくる。
そんなことは関係ない。蒼星石はすぐに人ごみに紛れた。

蒼星石「チッ…」

本当にはげばかりだ。
この時代もそろそろ潮時かナ…蒼星石はそう思った。



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:20:57.61 ID:4KUCR4cU0
PHASE11~剣聖~

もう全ては手遅れだった。松永弾正の手勢が御所を完全に取り囲んでいる。
援軍は間に合いはしないだろう。

真紅「くっ…」

殺到する敵兵。なんとか死守してきた防衛線も、もう保たない。

真紅「ごめんなさい…もう、ダメみたいなの…」

御所の門はすでに突破されたようだ。
門を守備していた皆も死んでしまったのだろうか。

真紅「私もあなたといっしょに最後まで戦うわ…それで許して頂戴…」

少し困惑気味に微笑んだその男は、泣きじゃくる真紅の頭をくしゃくしゃと撫でた。
その無骨な手は、しかしいつだって優しかった。そして、いつもの快活な笑顔でこう言った。
お前は生きなさい、いつかお父さんとめぐり合えることを草葉の陰で祈っているよ、と。

真紅「なっ…!?」

その男はおもむろに真紅を掴み、包囲の外へと思い切り放り投げた。
そしてすぐさま刀を掴み、敵軍に切りかかる。
敵軍を飛び越えて包囲を脱した真紅。しかし、すぐさま館へ向かって走る。
どうか、お願い。お願いだから勝手に死なないで。もう私をひとりにしないで。

鬨の声があがった。剣聖の最期。
また、ひとりぼっちだ。真紅はその場で泣き崩れた。




166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:24:30.52 ID:4KUCR4cU0
PHASE12~苺狂い2nd~

街を行けども行けども、目に入るのは堕落、堕落、堕落…。こんなものは雛苺の望んだ未来ではなかった。
街はまるでごみ溜めのようだ。頭の悪そうな子供が万引きをしている。

結局、何も変えられはしなかった。雛苺は諦念とともに伏目がちにただ歩いた。

雛苺「ただいま…」

巴「おかえりなさい」

巴「どうしたの?浮かない顔して…」

雛苺「巴…ヒナ、もう何も見たくないよぉ…」ポロポロ

巴「そうなの…饐えた臭いを感じとってしまったのね…」

巴はしばし考えたのち、雛苺に言った。

巴「でもね、こんな時代でも本当には腐ってない人をひとり、知っているわ」

雛苺「…それはだぁれ」

巴「私の幼馴染の桜田ジュンという男の子よ」

巴「一見腐っているけど、芯は本当にすごいの。私だってべた惚れなんだから!」

巴ほどの女性がこういうのだ。一応はその男の元へと行ってみようか。
こんな時代に夢を見させてくれる男なんて…。
雛苺は、本当にわずかな期待とともに旅立った。



169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:28:04.89 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…おしまい」

一同「…」

水銀燈と蒼星石が真紅に、翠星石と金糸雀が雛苺に抱きつく。

真紅「うぅ…」ポロポロ

水銀燈「貴女…なんでいつもひどい負け戦の側に居るのよぅ…」ポロポロ

蒼星石「しょ、将軍…でも真紅が放り投げられたところは少し笑っちゃったよ…」ポロポロ

雛苺「うぅ…」ポロポロ

金糸雀「あなたがそんなに苦しんでいただなんて…」ポロポロ

翠星石「世界はおめーが思ってるよりももう少しは美しいはずですよ、雛苺…」ポロポロ

思いがけず連続して重い過去が出てしまった。
こうなると皆、つい忘れていた、いや忘れようとしていたことばかりを思い出す。
あの愛した男が、あの薄幸の少女(めぐ)が、あの美しい風景が…。

その後の昔語りは、書けたものではない。
必然的に下呂の時間がやってくることとなった。



171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:31:20.77 ID:4KUCR4cU0
ジュン「姉ちゃん!さっきから浴衣がゆるゆるじゃないか!」

のり「ごめんね…ジュン君が直してくれないかな?」

ジュン「まじか…」

混浴は、頭から湯気を出し煙幕とすることでなんとかのり切ったジュン。
というかのりがその間はまともだった。恥じらいもあった。
なのに途端にこの体たらくである。風呂上り、浴衣はちゃんと自分で着ていたというのに。

ジュン「(くそ…それ!一気にやっちゃえ!)」パパッ

のり「あらぁ…さすがジュン君、器用なのねぇ…」

ジュン「そ、そう?」

のり「どうする?もう寝ちゃう?」

ジュン「うーん…」

時刻は午後10時。微妙な時間である。
テレビは見ていたら爆発した。ふたりでウノをやるのはもうイヤだ。

ジュン「(ね、寝るしかないのか…)」




180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 11:57:22.70 ID:4KUCR4cU0
のり「一緒に寝ましょうよぅ、ジュン君…」

ジュン「(まずいぞ…)」

姉狂いの予感がする。いや、もうあれはすでに誘惑している目だ。
ジュンはまだ純粋でいたい。14で…というか姉では駄目だ。
水入らずにも限度があると言いたい。

ジュン「(柏葉…加護を!)」

巴はその頃、家でボクササイズをしていた。
巴の助けは求められそうにない。

ジュン「(手詰まりだ…かくなる上は…)」

幼児退行か気絶の二択しかない。ジュンは後者を選んだ。
肺胞をひとつだけ破裂させることで、ジュンは自由自在に気絶することが出来た。
欠点は死の危険が常につきまとうということだ。
しかし、迷っている暇はなかった。

ジュン「南無三!」パチン




182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:02:36.98 ID:4KUCR4cU0
ジュン「…?」

ジュン「な、なんで…?」

そう、ジュンは間違えて心臓に生えていた毛を破裂させてしまったのだ。
ここにきて痛恨の失策だった。

ジュン「ふふふ、よろしい。ならば…」

ジュン「幼児退行だ…もう知らん…」ジュワァ

のり「ジュン君?どうしたの?」

じゅん「おねーちゃん…ね、ねむい…」

のり「え?」

のり「(ジュン君の雰囲気が変わった…)」

のり「(小学校2年生ぐらいの頃の感じがする…か、かわいい…)」

見た目はそのままである。
気持ち悪いことこの上ないのだが、のりにはそうは見えなかったようだ。




184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:07:24.59 ID:4KUCR4cU0
ふたりで布団に入る。

のり「ジュン君…こっちにおいで…」ゾクゾク

じゅん「うん…」

たまらずのりはじゅんを抱きしめた。

じゅん「おねーちゃん…」スリスリ

のり「(あぁ…!)」

のりの胸に顔をうずめるじゅん。
心底安心しきっているようだ。すぐに眠ってしまった。
しかしそれより早く、のりは気絶していた。

抱き合って眠る、年頃の姉弟。危険な感じしかしない。
真紅たちはこの事態を阻止できなかった。




186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:13:19.34 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ただいま…」ゲッソリ

翌日、バナナワニ園などに寄ってから午後6時にジュンたちは帰宅した。
朝起きたら姉の胸に挟まっていたことが、ジュンの気力を奪った。
それでもまだ少年のままではあるようだが。
のりの顔はつやつやしている。

のり「あら、みんなどうしたのかしら?」

真紅たちが出てこない。どうしたのだろうか。

ジュン「リビングにもいない…僕の部屋か…?」

階段を上り、部屋の扉を開ける…。

ジュン「な、なんだコレ…」

6人のドールたちが死にそうな顔で倒れこんでいた。
真紅だけが反応した。



188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:17:18.79 ID:4KUCR4cU0
真紅「ジュン…おかえりなさい…」

ジュン「どうした…なにがあった…」

真紅「ジュン…私たち、あなたたちを助けようとして…」

ジュン「そういうことだったのか…全然助かんなかったけど礼は言っておくよ…」

ドールたちはあの後も一晩ぶっ通しで話し続けた。
しかし、そのどれもがことごとく滅入る話ばかりだった。
ドールたちの気力はもはや尽きた。

真紅「ジュン…私たちはこれからもこの哀しい輪廻を繰り返すのかしら…」

ジュン「真紅…この世に生きとし生けるものはすべて…」

ジュン「別れと出会いを繰り返すんだよ…永遠に…」

ジュン「でも、そんな世界でお前たちとめぐり合えた今という時に、僕は…」

ジュン「感謝する…ただ、それだけだ…」ガク

真紅「そう、かもね…私も今はただ、あなたに寄り添うことにするわ…」ガク

全員寝たのではない。全員気絶していた。
ひとつの部屋で7人もの意識がハネた。異常事態だ。



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:19:35.40 ID:4KUCR4cU0
やがて、深い心の傷を負った7人も回復し、日常が戻ってきた。
ジュンは、すべての元凶はカエルちゃんドレスが売れたことにあるとして、しばらく販売を自粛した。

ジュン「でもなぁ…あともうちょっとで他のも売れそうな気がしてたのになぁ…」

翠星石「本気ですか…」

雛苺「いや、アレが売れたんだから有り得ないとも言い切れないのよ…」

真紅「まったくね…」

それでも、のりとジュンの関係は依然として良好のようだ。
たまにジュンがのりの肩を揉んだりしている。
しかしジュンはいまだに、のり関係の夢でうなされているようだ。

真紅「(あれ、今回の話は幸せになった人が…そう、のりがいたわね…)」

真紅「うーん…」

つい考え込む真紅。そこに、ジュンが外から帰ってきた。

ジュン「みんな、牛丼買って来たぞ!」

翠星石「ほ、ほんとですか!?でかしたです!」

雛苺「いいにおいなのー!」

でもまぁ日常は楽しいし牛丼はおいしい。真紅はもうそれで良しとした。

完~おまけにつづく~




190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:20:59.94 ID:4KUCR4cU0
おまけその1~巴が好きだけど?~

巴「そんなことがあったのね…」

ジュン「うん…初めて(の胸)はお前って決めてたのに…」シクシク

巴「なっ…」

ジュン「今ならまだ間に合う気がするんだ…柏葉…」

巴「…///」

ジュン「あれ?」

巴「はやく…///」

ジュン「な、無い…胸が無い!」ポーン

ジュンは幼児退行したり気絶したり臨死体験をしたりと、人の限界を試している感じだった。



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:21:45.15 ID:4KUCR4cU0
おまけその2~三途~

ジュン「あれ、ここは?」

見覚えのない場所だ。隣に少女が倒れている。

ジュン「あ…だ、大丈夫ですか!?」

めぐ「うーん…あなたは…?」

ジュンジ「桜田ジュンジです」

めぐ「ジュンジ君…ここ、三途の川よ?」

ジュンジ「ほ、本当ですか?」

記憶が蘇ってくる。
巴にどつかれて肺胞が47個ぐらいポーンだ。

ジュンジ「若い身空で…」

ジュンジ「まぁ僕はなんとかなります。でも、あなたは?」

めぐ「私はちょくちょくここに遊びに来てるんです。病弱なもので、なぜか来れるんですよ」

めぐ「さっき倒れてたのは、その…転んじゃって」

ジュンジ「かわいいですね」

つづく



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:22:46.70 ID:4KUCR4cU0
おまけその3~三途~

川岸で談笑に興じるふたり。
川の水を飲んだらとても美味しかったため、饒舌にもなるというものだ。

ジュンジ「へぇー、めぐさんは年齢不詳なんですか…」

めぐ「そうなのよ…多分私は高校1年生ぐらいだと思うんだけど…」

ジュンジ「じゃあ僕より年上ですね。お姉ちゃんって呼んでいいですか」

めぐ「そ、そんな…照れちゃうわ…」

ジュンジ「僕、めぐさんみたいな綺麗なお姉さんが欲しかったんです」

めぐ「綺麗だなんて…ふふっ、いいよ?」

ジュンジ「じゃあ…お姉ちゃん!」ニコ

めぐ「(あらやだこの子かわいい…///)」

つづく




194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:24:34.97 ID:4KUCR4cU0
おまけその4~三途~

なぜジュンジは会う女子すべてに好意を持たれるのか。

ジュンジ「あ、僕そろそろ行かないといけないみたいです」

めぐ「い、逝く?」

ジュンジ「ふふ、まだ死にはしませんよ。僕は生きてお姉ちゃんのお見舞いに行かないといけない」

めぐ「…絶対に来てちょうだいね?」

ジュンジ「もちろん。お姉ちゃんとは血がつながってないから結婚だってできますよね」

めぐ「もう、気が早いんだから。…そういうのはもっと色々仲良くなってから、ね?」

ジュンジ「そうですよね。それじゃあまた、病院で会いましょう!」

光の膜にヌルリと包まれたジュンジ。飛ぶ。
あれこれやっぱ死ぬんじゃねぇかなー、と思ったりしたが、無事現世へと帰り着いた。

ジュンジ「んん…」

巴が泣いて抱きついてくる。ちょっと小突いただけで昏睡するとは思わなかったようだ。

ジュンジ「(でもやっぱり胸はないなぁ…)」

肺胞はいずれまた生えてくるから大丈夫だろう。
ジュンジ、14歳の夏であった。



196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:27:06.48 ID:4KUCR4cU0
おまけその5~愛の窓辺~

なぜジュンはめぐの見舞いにのりと巴を連れて行くのか。

ジュン「コンコン…ジュンジです」コンコン

めぐ「…本当に来てくれたのね。入って」

そして扉を開けるや否や、めぐに抱きつくジュン。

巴「…」

ジュン「お姉ちゃん…!会いたかった…!」ギュッ

のり「…」

ジュンは、昔から女子に対して無神経なところがあった。
急につれてこられ、目の前で他の女と抱き合っているのを見せ付けられたらどう思うか。
知らない女が自分を差し置いて姉と呼ばれているところを見せ付けられたらどう思うか。
ふたりはしばし呆然とした後に、髪を逆立てている。

巴「あのー、ちょっと失礼しますね?」ヒョイ

のり「ジュンジ君、お姉さんたちとおんも行こうか」グッ

入院すれば、ジュンジはめぐともっと仲良くなれるだろう。死にさえしなければだが。

ジュンジは入院したが、めぐが退院した。





198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:28:37.96 ID:NwVKiUHy0




199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 12:34:10.60 ID:SEuuZiWUO
最後までいっきにはらせていただきました。もうひとつ投下したいのですが、ちょうどいいので13時まで休憩します。もしスレが残ってたら、またお付き合いください。



204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:01:02.67 ID:4KUCR4cU0
それでは引き続き投下します。


桜田家。
夏休み。

翠星石「ジュン、起きてください…」ユサユサ

ジュン「zzz…」

翠星石「ジュン、起きて…」ユサユサ

ジュン「ふが?…おぉ、翠星石…今何時?」

翠星石「9時ですよ」

ジュン「9時か…よし、起きるか…」ムクリ

朝だというのに蒸し暑い。

翠星石「朝ごはんができてますよ?」

ジュン「あぁ、分かった…先行っててくれ」

翠星石「…」ジー

ジュン「はいはい、抱っこね…ほれ」ヒョイ

翠星石「♪」



207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:05:45.72 ID:4KUCR4cU0
リビングへと降りていくふたり。

のり「おはよう、ジュン君」

ジュン「おはよう…ふぁぁ…」

真紅「おはよう」

雛苺「おはようなのよ、ジュン!」

ふたりは先に朝食を始めていた。

ジュン「あぁ、おはよう…翠星石、そろそろ降ろすぞ」

名残惜しそうな顔の翠星石を降ろし、席に着く。

ジュン「いただきます」

適当に喋りながら朝食を済ませる。

のり「おいしい?」

ジュン「うん、おいしいよ」

のり「よかった」ニコニコ




208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:10:35.57 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ごちそうさま」

のり「ねぇ、ジュン君?」

ジュン「ん?」

のり「お姉ちゃんね、そろそろアレをやろうと思うんだけど」

ジュン「あぁ、もうやっちゃうの?」

真紅「…何の話?」

ジュン「あぁ、お前らは知らないんだっけか…」

ジュン「実は姉ちゃんは毎年、部屋にこもって一気に夏休みの宿題をやっつけるんだ」

ジュン「そりゃあもう、飲まず食わずでちぎっては投げの大奮闘!」

ジュン「でも、宿題の多い少ないに関わらず、なぜか必ず48時間きっかりかかってしまうんだよ」

ジュン「だから僕はこれを姉部屋ごもりと呼んでるんだけど…今年はなんか早くないか?」

のり「うん、今年の夏は気兼ねなく遊び呆けようと思ってるの」

ジュン「ふーん、そう…と、いうわけだ」

真紅「な、なんだか良く分からなかったけど…」

のり「じゃあ、後はよろしくね?ジュン君」



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:11:40.40 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ごちそうさま」

のり「ねぇ、ジュン君?」

ジュン「ん?」

のり「お姉ちゃんね、そろそろアレをやろうと思うんだけど」

ジュン「あぁ、もうやっちゃうの?」

真紅「…何の話?」

ジュン「あぁ、お前らは知らないんだっけか…」

ジュン「実は姉ちゃんは毎年、部屋にこもって一気に夏休みの宿題をやっつけるんだ」

ジュン「そりゃあもう、飲まず食わずでちぎっては投げの大奮闘!」

ジュン「でも、宿題の多い少ないに関わらず、なぜか必ず48時間きっかりかかってしまうんだよ」

ジュン「だから僕はこれを姉部屋ごもりと呼んでるんだけど…今年はなんか早くないか?」

のり「うん、今年の夏は気兼ねなく遊び呆けようと思ってるの」

ジュン「ふーん、そう…と、いうわけだ」

真紅「な、なんだか良く分からなかったけど…」

のり「じゃあ、後はよろしくね?ジュン君」




213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:17:55.28 ID:4KUCR4cU0
翠星石「行っちまいましたね…」

ジュン「まぁ、飯は出前で事足りるから何とかなるさ」

翠星石「そうですね…ハッ!?この気配は!?」

ジュン「え?」

蒼星石「やあ」

翠星石「蒼星石!もう大丈夫なんですか?」

蒼星石「うん、なんとかね」

ジュン「ん?どうかしてたのか?」

蒼星石「それがね…」




214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:20:07.33 ID:4KUCR4cU0
ジュン「鼻にせんべいをつめたのか…」

蒼星石「そうなんだよ…つい…」

翠星石「お前は昔からそういうところがあったです…意味のない暴挙に時々出てしまう」

蒼星石「まあ、こういう性分に生まれてしまったんだからしょうがないよ。配られたカードで勝負するしかないのさ」

ジュン「おっ、スヌーピーだな」

蒼星石「スヌーピーなんだよ」

翠星石「スヌーピーですか…おーい、真紅」

真紅「なあに?…あら蒼星石、いらっしゃい」

蒼星石「真紅、スヌーピーは好きかい?」

真紅「スムーピー?」

蒼星石「スヌーピー。君の大好きな二足歩行の犬だよ」

真紅「それはいいわね。スムーピーね…今度チェックしてみるわ」

蒼星石「そうしなよ」




215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:28:41.62 ID:4KUCR4cU0
翠星石「ハッ!?この気配は!?」

ジュン「え?」

金糸雀「かしら」

翠星石「金糸雀!もう大丈夫なんですか?」

金糸雀「えぇ、なんとかね…」

ジュン「んん?お前もどうかしてたのか?」

金糸雀「それがね…」




216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:38:20.08 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ひよこ饅頭になってたのか…」

金糸雀「そうなのよ…つい…」

翠星石「お前はいつもそうでしたよね…なにかとひよこめいてしまう」

金糸雀「まあ、こういう性分に生まれついた以上は仕方ないかしら」

ジュン「おっ、スヌーピーだな」

金糸雀「スヌーピーかしら」

翠星石「スヌーピーですか…おーい、真紅」

真紅「なあに?…あら金糸雀、いらっしゃい」

金糸雀「真紅、スヌーピーは好きかしら?」

真紅「スナフキン?」

ジュン「おっ、ムー民だな」

金糸雀「ムー民はなんかカバみたいな素敵な生物かしら。それに、あなたの大好きな二足歩行なのよ」

真紅「それはいいわね。スナフキンね…今度チェックしてみるわ」

金糸雀「それがいいかしら」




219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:00:24.57 ID:4KUCR4cU0
ジュン「もぐらだったのか…」

水銀燈「そんなこと一言も言ってないんだけど…」

翠星石「お前はいつももぐらでしたよね…」

水銀燈「そ、そうだったっけ…?」

ジュン「おっ、スヌーピーだな」

水銀燈「スヌーピーなの?何が?」

蒼星石「スヌーピーなんだね」

金糸雀「スヌーピーかしら」

翠星石「スヌーピーですか…おーい、真紅」

真紅「何かしら…あら水銀燈、来てたのね。いらっしゃい」

水銀燈「お、おはよう…」

真紅「…」

ジュン「…」

水銀燈「(すごい睨んでくる…なんか怖いんだけど…)」

水銀燈が嫌な汗をかくなか、ただ雛苺ひとりだけが我関せずという風でお絵かきをしていた。




221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:06:25.64 ID:4KUCR4cU0
急に賑やかになる桜田家。水銀燈と真紅はプロレス、いや女子プロレスをしている。
金糸雀と蒼星石と雛苺はモノポリーに興じている。

ジュン「こいつら、さては昼飯をたかる気だな…」

翠星石「昔から姉妹たちの食への嗅覚…食覚はすごかったですもん」

ジュン「今日はピザでも取ろうと思うんだけど…いつもより多めに注文しないとな」

翠星石「そこでジュン、ひとつ提案があるんですけど…耳を貸してください」

翠星石「実は…」ゴニョゴニョ

ジュン「…そりゃあいい!翠星石、是非やってくれ!僕も協力するから!」

翠星石「よし!じゃあ食事のときに決行です!」

ジュン「こりゃあ面白くなるぞ…」ニヤリ

翠星石「きっと、大騒ぎですぅ…」ニンマリ

ジュン&翠星石「あははははは!」ヌワッ

水銀燈「うわぁ…何なのかしら一体…」

真紅「隙あり!」ゴバン

水銀燈「うぐぅ!…よくもやってくれたわね!それ!」ゴイン

ふたりはゼロ距離でのエルボー合戦を延々と繰り広げている。



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:14:32.33 ID:4KUCR4cU0

インターホンが鳴る。

ジュン「おっ、お昼が来たみたいだな」

翠星石「じゃあ私は今のうちに準備しときます…」ニヤリ

ジュン「あぁ、頼んだぞ…」ニヤリン

翠星石は皆に感づかれないようにキッチンへと移動した。

雛苺「あっ、おひるごはん!今日はなあに?」

蒼星石「ちょ…逃げる気かい雛苺!」

ジュン「今日のは…なんと、麺類だぞ!」

雛苺「担担麺なの!?」

ジュン「いや、ジャージャー麺だ!」

雛苺「うわーい、やったなのー!」

ジュン「お前らの分もあるから、睨むのはやめなさい」

金糸雀「…私たちの絆は揺るぎなかったかしら!」

水銀燈「遠慮はしないからね?」ジュルリ

ジュン「(フン…そう言ってられるのも今のうちだぞ…!)」




223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:18:09.68 ID:4KUCR4cU0
ジュン「よし、みんな席に着いたな」

真紅「あれ?そういえば翠星石は?」

そのとき。キッチンからけたたましい破裂音が。

ジュン「なんだなんだ!?みんな、ついてこい!」

皆でキッチンへと駆けつける。
そして、その光景を見て息を呑む一同。

蒼星石「翠星石…あれほどダメだといったのに!」

翠星石「へへ…また、やっちまったですぅ…」

翠星石は、またもレンジでゆでたまごを作ろうとしてしまったらしい。
あたりにはたまごの破片が飛び散っている。



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:23:44.20 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「怒らないであげて!翠星石はジュン君のためを思ってやったんだよ?」

ジュン「わかっているとも…翠星石、ケガは?」

翠星石「はい。…いてて」クタ

ジュン「こりゃあひどい、全身がたまごまみれだ…翠星石負傷のため昼食は中止!」

一同「えー!?」ブーブー

水銀燈「べ、別にご飯は関係ないじゃない!」

ジュン「だまらっしゃい!お前はたまごまみれの妹を措いてでももやしそばを食いたいのか!?」

水銀燈「う…」

ジュン「そこまでもやしが好きか!?…だとしたらお前はもやしそのものだ!」

水銀燈「わ、わかったわよう…お昼はあきらめるわよう…」

ジュン「(しめた!)」




225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:30:15.47 ID:4KUCR4cU0
ジュン「お前らも異存はないな?」

蒼星石「もちろんだよ」

金糸雀「し、仕方ないかしら…」

真紅「まぁ、そういうことなら…」

翠星石「みんな…ありがとうですぅ…」

ジュン「よし、お昼は取りやめだ!」

こうして、昼食は中止となった。

ジュン「じゃあ僕は翠星石を部屋まで連れて行くから」

翠星石「おめーら…すまなかったですぅ…」

水銀燈「いいのよ…ゆっくり休んでらっしゃい」

金糸雀「かわいそうに…」

蒼星石「僕が後始末をしておくから。安心して」

ジュン「よし、じゃあ行くか」

ジュンと翠星石は、笑いをこらえながら2階のジュンの部屋へと向かった。
そんななか、ただひとり雛苺だけが席からも動かず、淡々と食事を終えていた。
よって、いちばんの被害者は真紅ということになった。



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:36:22.32 ID:4KUCR4cU0
翠星石「あぁ…面白かった…」

ジュン「やばい…腹筋が痛い…」

ふたりは、部屋で思う存分笑った。

ジュン「もやしそばじゃないのにな…」

翠星石「もやしそのものって言われたときの水銀燈の顔は傑作でしたね…」

ジュン「いやぁ…お前が体を張ってくれたおかげだよ」

翠星石「いいんです。笑いという刹那の快楽に身を委ねるためなら労力は惜しまない」

翠星石「それが私こと翠星石です!」バーン

ジュン「さすがだ…さすがだよ翠星石!」

翠星石「ありがとです!ジュン、頭撫でてくれますか!?」

ジュン「いや、それは無理だ。お前たまごまみれだし」

翠星石「…」

翠星石は微妙に後悔した。



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:42:55.09 ID:4KUCR4cU0
翠星石「じゃあ…私はお風呂に入りますね…」グッタリ

ジュン「おお。いってらっさい」

翠星石「…」ジー

ジュン「はいはい、抱っこね…ほれ」ベチャ

翠星石「♪」

ジュン「あれ…でもお前、服は?」

翠星石「あ…」

ジュン「仕方ない、あれを出すか…」

ちなみにこのふたりも腹ペコである。




229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:48:50.75 ID:4KUCR4cU0
そういって一着の洋服を棚から取り出すジュン。

翠星石「…それは?」

ジュン「この前の洗濯のとき真紅に着せたヤツさ。サイズもちょうどいいかなーって」

翠星石「あの時?…私は下着のままでしたよ?」

ジュン「そうか」

翠星石「そうかですって…?」

翠星石「…その服じゃイヤです!他のにしてくださいです!」

ジュン「えっ、なんで?」

翠星石「うるせーです!会話の流れで察しろです!おばか!」ポカポカ

ジュン「あ、暴れないでくれ…わかった、わかったから!」

ジュン「まったく…なんなんだよ一体…」ブツブツ

翠星石「フンだ!」プイ




230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:51:51.36 ID:4KUCR4cU0
結局、同じヤツの色違いで落ち着いた。

翠星石「じゃあ入りますからね!覗くんじゃねーですよ!」

ジュン「あぁ、ゆっくり入れ」

翠星石「ちょっと…普通に返さないで…」

困惑気味の翠星石を置いてジュンは洗面所を出る。
そのとき、リビングが騒がしかったが、面倒くさかったので無視しようとは思った。

ジュン「なんだなんだ…」

真紅「あら、ジュン」

蒼星石「翠星石は?」

ジュン「今、風呂に入ってるよ…これは?」

ギターやらベースやら楽器が散乱している。

水銀燈「うん、なんか今かわいい女の子が楽器演奏するとどんどん人が集まってくるらしいのよ…」

金糸雀「それが本当なのかどうか検証しようってことになったの!すでに企画倒れの感が強いんだけど!」

ジュン「ホントに暇なんだな…」

真紅「しょうがないじゃない…永遠のインドア派なんだから…」



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:00:33.06 ID:4KUCR4cU0
ジュン「それで、お前ら楽器なんて扱えるのか?」

蒼星石「まあね…昔、ローゼンクロイツっていうバンドも組んでたぐらいだし」

ジュン「もろビジュアル系って感じの名前だな…」

蒼星石「僕ら自身、そもそもビジュアル系っぽい格好してるしね」

それぞれがおもむろに楽器を拾い始める。
真紅がテレキャス、金糸雀もテレキャス、蒼星石もテレキャス、水銀燈はストラト、雛苺はV八丸。

ジュン「雛苺…それはなんの楽器なんだ?」

雛苺「V八丸はね、ギターとドラムとベースの音を同時に出せるスグレモノなのよ!」

ジュン「だからそんな、この世のものじゃないような形をしているのか…キマイラみたい」

あえて形容するなら、バッタとウサギと深海魚をかけ合わせたような形をしていた。

雛苺「本当は翠星石がベース担当でヒナはギター担当なんだけど、翠星石はお風呂だし」

雛苺「誰かがV八丸をやんなきゃ演奏が成立しないし…でもこれを扱えるのはヒナだけだから…」

ジュン「そうか…えらいぞ、雛苺」ナデナデ

雛苺「ありがとうなの!ちなみにヒナはレスポール使いなのよ!」ニコ



237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:11:56.13 ID:4KUCR4cU0
演奏が始まる前のあの音だしとかをしている感じだった。

蒼星石「ふーん…それ、いい音出すね…何年製?」キュイーン

真紅「えーと…見たことないやつだわ」ボローン

蒼星石「テレキャス愛好家の君でも知らないモデルがあるのかい?」

真紅「なんか妙に軽いし、これきっとパチモンじゃないかしら」

蒼星石「あ、なるほどね」

雛苺「でも、どんな楽器でも最高の音をひねり出すのが真のロックンローラーなのよ」

蒼星石「雛苺…良いこと言うね!」

金糸雀「カナのも、どうもパチモンみたいなんだけど…その言葉で俄然やる気が出てきたかしら!」ピヨ

雛苺「それは良かったの!」

ジュン「(雛苺の言葉で皆の表情が引き締まった…さすがだな)」




239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:15:10.68 ID:4KUCR4cU0
真紅「水銀燈、調子はどう?」

水銀燈「ええ、上々よ。やっぱりニセモノみたいだけど」

真紅「さすがエレキギターが似合うドールナンバーワンね…絵になるわ」

水銀燈「ありがとう。あなたの真っ赤なニセテレキャスも似合ってるわよ?まるで一体化してるみたい」

真紅「ふふ、ありがとう。…ところで、今日もあなたのトリプルハンド奏法が見られるのよね?」

水銀燈「もちろんよぉ。それどころか、今日はもしかしたら…」

真紅「まさか…!?」

水銀燈「そう。いくら練習してもたどり着けなかったあの四手観音奏法」

水銀燈「何故なんでしょうね、いまさら出来るような気がしてるのは」

真紅「なんてこと…今日この場に居合わせていることを何となく金糸雀に感謝しなきゃね」

ジュン「(さっきから感じる…)」

ジュン「(あの、そこそこ以上に楽器を扱えるやつら特有の、こいつら妙に出来ると思わずにはいられない雰囲気を…)」

ジュン「(こりゃあ面白くなってきたぞ…!)」ゴクリ



240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:20:17.74 ID:4KUCR4cU0
金糸雀「それじゃあ、そろそろはじめるわ!」

ジュン「(あ、アイツがボーカルだったのか)」

金糸雀「末法、末法、世紀末…」

金糸雀「荒んだこの世に救いの手、すぐに差し込む綺麗な光」

ジュン「(アイツ何言ってんだ…あ、前口上か)」

金糸雀「仏が来るとき迫ってる、薔薇の仏がやってくる」

金糸雀「聞いてください…『薔薇之仏様』!」ジャラーン

ジュン「うわぁ…」

皆がいっせいにギターを弾き始める。

ジュン「な、なんだコレは…!?」フワ

なかなかの音圧がジュンを襲う。

ジュン「すごい…!」

同じフレーズに計5人分のギターが被さっているのだ。
単純にすごくうるさいが、迫力だけはあった。



241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:25:56.76 ID:4KUCR4cU0
ジュン「!?水銀燈…なんて速弾きだ…」

水銀燈がものすごいスピードでニセストラトをかき鳴らしている。
あまりの速さのため、当然2本のはずの腕が3本半ぐらいに見える。

水銀燈「まだ…まだぁ!」ギュラギュラ

ジュン「まだ速くなるって言うのか…!?」

さらに加速した水銀燈の腕は、もはや4本弱ぐらいには見えた。
だが、水銀燈のギターだけがどんどんずれていくので、演奏のほうは残念なことになってしまった。
真紅が苦々しい表情で水銀燈のことを見ている。

金糸雀「♪ローゼン仏陀!」ピヨ

金糸雀の声は滑舌が悪く、ほとんどピヨピヨとしか聞こえない。
真紅と蒼星石の演奏には、特筆すべきことはなかった。



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:27:59.98 ID:i5SUdOK/O
けいおんメイデン



243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:31:19.12 ID:4KUCR4cU0
ジュン「うをおおお!」ウォォ

いつの間にかジュンは無意識のうちに声を上げていた。座ったままだったが。
その声には、騒音による近所迷惑への警告が少なからず含まれていたことは言うまでもない。

そして、雛苺のソロパートである。

雛苺「なあああ!」スカチャンポン

ジュン「なんて速さだ…!」

水銀燈より余程速い。腕が5本半ぐらいに見えた。完全に水銀燈の十八番を食ってしまっている。
しかし、ソロパートとはいえ結局は同じフレーズをやっているだけなのだ。
よって単にギターの音が小さくなっただけであり、迫力には欠けた。

そしてよく見るとV八丸には、バッタ部分に当たるであろう触覚のようなものがついており、それが絶え間なく上下に動いている。
雛苺はさっきからそれに気をとられて、凡ミスを連発していた。

ジュン「(だから最初、微妙にアレを嫌がってたのか…)」

結局、この疑問が解消した瞬間が、演奏中におけるジュンのいちばんのカタルシスとなった。



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:37:20.65 ID:4KUCR4cU0
ついにラストが近いらしい。
ずっと同じフレーズばかりだったが、ちょっとだけ違うフレーズに突入した。
皆の表情が上気してくる。

ジュン「ガンバレー!最後までやることにはとりあえず意義があるぞー!」

渾然一体となる各パート。
相変わらずギターの音しか聞こえない。
グルーヴ感というものはまるでない。

金糸雀「♪薔薇の…仏様かしら~!」ジャラーン

ジュン「あぁ…最後に唯一聞こえたところでかしらとか言ってるし!」

終わった。
2分30秒のほぼギターのみによる鈍角サウンドは、ジュンの脳裏にはほとんど残らなかった。
しかし、満足そうに余韻に浸る5人。
あの出来る人っぽいオーラはますます増幅しており、今はただ腹立たしいのみだ。

真紅「…どう、だった?」

蒼星石「ジュン君の感想を聞かせてよ!」

いちばん印象の薄かったふたりが聞いてくる。
うっとうしいったらありゃしない。

ジュン「…お前たちこそが真のパンクロッカーだよ!!」




246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:48:30.25 ID:4KUCR4cU0
真紅「ジュン…!」ガバ

ジュン「おいおい…!」

真紅が、ニセテレキャスをかなぐり捨てて抱きついてくる。
ほとんど投げ捨てられたに近い形の真っ赤なニセテレキャスは、いとも簡単に粉々に砕け散った。

蒼星石「ジュン君…!」ダッ

なぜか一拍おいて蒼星石が飛びついてきた。水銀燈も金糸雀も一人時間差で突っ込んでくる。
その際、それぞれのパチモンは例外なくうち捨てられ、粉微塵になった。
そのため、床はニセエレキギターの残骸でいっぱいになってしまった。

雛苺は雛苺で、ジュンの胸に飛び込んではこないが、心底忌々しいといった様子でV八丸を床に叩きつけていた。
異様な形の破片が飛ぶ。また床が汚れてしまった。

4人はというと、感極まってジュンの胸の中で泣いていた。

ジュン「お前らってやつは…!」

内容はともかくとして、たしかに一所懸命に演奏していたのは認められる。
でも泣くほどじゃないし、たった2分30秒でなんでこんなに汗をかくのか。ドールのくせに。
まるで滝のようだ。水溜りができて破片が浮いているじゃないか。
服が汗で濡れて最高に気持ち悪い。しかもいい匂いとかはなく無臭なのがまたイヤだった。
真紅、僕の顔に頬ずりしないでくれ。べたつくから。

ジュン「お前ら…風呂に入っておいで?」ニコ

雛苺を含めた5人が、すごい汗とともに風呂に向かう。
ジュンは、ひとりただ力なく口角をわずかにあげて笑った。



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:50:40.51 ID:YqFfcxfhO
このジュン心広すぎだろ・・・



248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:51:54.21 ID:4KUCR4cU0
一方、風呂場。

翠星石「はぁ、良いお湯ですぅ…ようやっと外も静かになったみたいですし」

翠星石「でも微妙に気分が晴れないのは何故なんでしょう…」

翠星石「ジュン…真紅のお下がりなんて…ひどいですぅ…」プクプク

この話題はつい10分ほど前の話である。

翠星石「真紅真紅って…翠星石と一緒のときぐらい翠星石だけを見てほしいですぅ…」

力なくうなだれる翠星石。そのときである。

翠星石「あれ、なんか…?」

風呂場の扉が開く。

蒼星石「やあ!翠星石!」

翠星石「あれ、おめーらもお風呂に…?」

翠星石「ていうか…な、なんでそんなに汗かいてるんですか!?」



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:00:16.11 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「うん、あの曲を演ったんだよ、久し振りに」

翠星石「へ?アレを?」

真紅「そうなのよ」

水銀燈「雛苺が、欠けてるあなたの分も補ってくれたのよ?感謝してあげてね?」

翠星石「そうでしたか…雛苺、ありがとうです」

雛苺「構わないの!」

金糸雀「それじゃあ早速入るかしら!」

翠星石「はっ…そんなこと言ってる場合じゃなかった!」

翠星石「翠星石はもう出ます!」ザバァ

翠星石「(こんなに汗まみれのやつらが入ってきたら油風呂になっちまいます…!)」

蒼星石「えー、いっしょに入ろうよー」

翠星石「くっ…!」

もう遅い。全員が入ってきてしまった。



250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:05:42.23 ID:4KUCR4cU0
翠星石「あー…そんなことより、先に体を洗ったらどうですか?意外と汗かいてるみたいですし…」

真紅「それはイヤ!」

翠星石「な、なんで…?」

真紅「それはね…」

真紅が、体を洗ってから湯船に入ると溺れる確率が高いという迷信じみた話を黒魔術の知識を絡めて懇々と語っている。
まったくもって興味をそそられなかったが、皆は聞き入っているようだ。脱出のチャンスは今しかなかった。

金糸雀「へー、すごいかしらー」

翠星石「(頼むから…誰も動かないでくださいよ…!)」

幸いなことに、誰にも触れずに通れる隙間が確実に存在している。体をくねらせながら、翠星石は徐々に出口へと近づいていった。
真紅の話はまだまだ終わりそうにない。

翠星石「(よし!なんとかたどり着けました!)」

気づかれないように扉を開け、そっと洗面所に出る。

翠星石「(こいつら…ただの馬鹿の香りがぷんぷんするですぅ…)」

姉妹たちに向けて呆れ気味に一瞥を加え、扉を閉める。脱出はなんとか成功した。翠星石は安堵の息をついた。

翠星石「さて、着替えるとしますか…?」

洗面所の入り口にジュンが立っていた。



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:12:05.06 ID:4KUCR4cU0
翠星石「…?」

ジュン「…」

目が合う。

翠星石は自分の下を見る。
なぜか何も着ていない。

翠星石「…」

だんだん事態が飲み込めてくる。
私は裸。なのにジュンがそこにいる。

ジュン「…す、」

翠星石「い…いやぁぁぁぁぁ!!」

翠星石の悲鳴がこだまする。
翠星石はその場にへたり込んでしまった。

真紅「なに!?どうしたの!?」ガラッ

真紅「…?」

風呂場の中の真紅とジュンの眼が合う。
ジュンはその瞬間に耐え切れずに気絶した。




253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:19:25.46 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ここは…?」

リビングのソファの上に寝かされているようだ。
記憶が徐々によみがえってくる。

ジュン「…ぼっ、僕は何てことを!!…ハッ!?」ガバ

ドールたちがものすごい形相でこちらを睨んでいる。

真紅「ジュン、あなた…覚悟は出来てるんでしょうね…?」パキ

水銀燈「薔薇乙女の湯浴みを覗こうなんて、いい度胸してるわぁ…」ポキ

蒼星石「血の雨ってヤツを…見せてあげるよ…」パキポキ

ジュン「ちっ、違うんだ!話を聞いてくれ!」

金糸雀「何が違うのかしら?命乞いは止しなさい…」ブチブチ

雛苺「…みんな、ジュンのお話、聞いてあげようよぉ…」

ジュン「ひ、雛苺?」

雛苺「ヒナは、ジュンは意味もなくこんなことをするひとじゃないと思うのよ…」

真紅「そ、そうね…私の知っているジュンは無暗にこんなことしないはず…」

真紅「ジュン。正直に答えるのよ?…何があったの?」

ジュン「(助かった…)」



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:25:51.85 ID:4KUCR4cU0
ジュン「まず、いちばん最初に断っておくが、僕はお前らの裸は見ていない」

ジュン「真紅と目があった瞬間に気絶しちまったんだよ…あんまりな状況だったから」

金糸雀「ほんとかしら~?」ジトー

皆が疑いの目を向けてくる。

ジュン「ほ、本当だよ!お前らの裸なんて全然興味ないよ!」

水銀燈「それはそれで失礼ねぇ…」

真紅「分かった。信じるわ。…それから?」

ジュン「それで、僕がなんであのとき洗面所にいたかってことだけど…」

ジュン「いま、お前ら着てるじゃないか。代わりの服を」

ジュン「それを持ってってやっただけだよ。下着を持ってくのは正直恥ずかしかったけどな。そしたら…」

真紅「そういうことなのね…私たちも気が動転してたから…こんな簡単なことすら見落として」

真紅「ジュン。あなたはちっとも悪くなかった。ごめんなさい、疑ったりして」

蒼星石「ごめんねジュン君…」

皆が次々と頭を下げる。

ジュン「よ、止してくれ…やっぱりこの件については僕が悪い。僕自身の間の悪さが悪い」




256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:30:31.52 ID:4KUCR4cU0
ジュン「それで…翠星石はどこだ!?」

ジュン「あいつの裸はじっくり見ちまったんだよ…」

蒼星石「上のジュン君の部屋にいるよ…」

金糸雀「(それでもジュンの部屋に居るのね…)」

ジュン「…悪い、僕行ってくるよ!」

どたどたと階上に向かうジュン。

蒼星石「よかった…ジュン君がまともな人で」

金糸雀「でも雛苺はちゃーんと分かってたんでしょ?ジュンが無実だったこと」

雛苺「ううん。口からでまかせだったのよ」

雛苺「もしうそ臭いことを言ったら…」ペカー

水銀燈「ひ、雛苺?そこから先は言っちゃダメよ?」

雛苺「うぃ、むっしゅ」

蒼星石「(恐るべし末っ子…)」

真紅「あのふたり…大丈夫かしら…」




257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:36:57.05 ID:4KUCR4cU0
自分の部屋のドアをノックすることになった。

ジュン「翠星石…入ってもいいか」コンコン

ジュン「…開けるぞ」ガチャ

翠星石は、ジュンのベッドの上に倒れこんでいた。

翠星石「…ジュン」グッタリ

ジュン「う…」

翠星石「私の裸…」

ジュン「はい…」

翠星石「見ましたね…?」

ジュン「み、見ました…」

翠星石「わりと長いこと…見てましたね…」

ジュン「…本当にすまなかった!」ガバ

翠星石「いえ、いいんです…頭を上げてください…」

翠星石「ジュンはのりのかわりにすべきことをしただけですぅ…だからそのことについて責めはしません…」

ジュン「ありがとう、翠星石…」




258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:42:28.67 ID:4KUCR4cU0
翠星石「それで…どうでした?」

ジュン「…え?」

翠星石「グッと…来ましたか?」

ジュン「え、ええ~?」

翠星石「乙女の裸体を見たのです、健全な中学生男子なら来るものがあるんじゃないんですか!?」

ジュン「翠星石!」

翠星石「はい!?」

ジュン「…正気か!?」

翠星石「正気です!ほら、私でムラッと来たかって聞いてるんです!さっさと答えろです!」

ジュン「(マジかよ…ムラッとってお前…)」

翠星石はもはや痴女とあまり変わりがなくなってしまっていた。



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:48:16.04 ID:4KUCR4cU0
ジュン「…いいか、翠星石。よく聞いてくれ」

翠星石「なんですか!?」

ジュン「ものすごくぶっちゃけてくれたお前に対しては、僕もぶっちゃけなきゃ失礼だと思う」

ジュン「だから、全部正直に言うぞ…これから言うのは全部僕の本音だ…覚悟はいいか?」

ジュン「…相当えぐいぞ?」

翠星石「…あったりめーです!ドンとこいです!」

ジュン「よし…まず、お前は人形なんだ。それに、雛苺ほどじゃないがやはり幼いと思う」

翠星石「そうです!その通りです!」

ジュン「さらに僕はつい1年前まで姉ちゃんと一緒に風呂に入ってたんだ」

翠星石「えぇ…?」

ジュン「だからな、わりとその、なんだ…ふくらみやへこみを知ってるんだよ、乙女ってヤツの…」

翠星石「な、生々しい…ちょっと、すごく気持ち悪いですぅ…」

ジュン「それと比べたら、お前は…言っちゃあ悪いが…板だ」

翠星石「うぅ…分かってはいたけど改めて言われるとキツイですぅ…板とは…」



262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:53:57.98 ID:4KUCR4cU0
ジュン「しかし、知ってのとおり僕は思春期真っ只中だ」

翠星石「またヤな言葉ですねぇ…」

ジュン「女体が嫌い?そんなわけないだろう。好きに決まってる」

翠星石「そ、そうですよ。そりゃあそうです」

ジュン「それに…僕は結構お前のことが好きなんだよ、普段から」

翠星石「!?ちょ、ちょっと待って!…今のところもう1回お願いできますか?」

ジュン「…僕は普段からお前のことが結構好きなんだよ…恥ずかしいから2回も言わせないでくれ」

ジュン「それらを鑑みてだな…総合的に考えてだな…お前の裸は…」

ジュン「き、…来たんだよ、ちょっとだけ…す、翠星石?」

翠星石「(ジュンが私のことを好きと言った?…夢?)」

翠星石はいきなりベッドから降り、危ない足取りでふらつき始めた。

ジュン「おい…」

翠星石「あれ?あれれ?」クラクラ

翠星石「(ま、まずいです…ちょっとこれはまずい…)」

ジュン「翠星石…ついに頭が!?」




264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:00:16.08 ID:4KUCR4cU0
ジュン「あ、危ない…」ポス

ジュンは転ぶ寸前だった翠星石を抱きとめた。

翠星石「ジュン…?」

ジュン「翠星石…お前酔ってんのか?」

翠星石「そ、そんなわけ…あなたのせいですぅ…」

翠星石「ジュン…さっきの言葉に偽りはないですか?」

ジュン「ま、また言わせる気かよ…だから、ちょっとだけムラッと…」

翠星石「そっちじゃねーです!私のことを、その、好きって言った方です!」

ジュン「……そっちか………本当だよ……」

翠星石「わ、私のどこが!?」

ジュン「全部」

翠星石「…」

翠星石の意識が一瞬トんだ。

ジュン「おい、今一瞬白目剥いてたぞ…大丈夫か…?」




265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:06:15.72 ID:4KUCR4cU0
翠星石「ジュン…」

翠星石はもう夢でも現実でもどうでも良くなった。

翠星石「もう一度、聞きますね?…私のこと、好きですか?」

ジュン「…うん」

翠星石「本当に?」

ジュン「…うん」

翠星石「…真紅、よりも?」

ジュン「僕はお前のことがいちばん好きだ」

その瞬間、翠星石はすごい笑顔で完全に気絶した。




267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:12:37.55 ID:4KUCR4cU0
翠星石「んん…ジュン…?」

ジュン「まさかお前まで気絶するとは…」

翠星石「ジュンがあんなこと言うからです…」

ジュン「し、仕方ないだろ…お前のせいで洗いざらい吐かなきゃいけなくなっちゃったんだから」

翠星石「ジュン…私…」

翠星石「…嬉しい!」ガバ

翠星石は思わずジュンに抱きついた。
そして、そのままジュンの胸で泣き始めてしまった。
ジュンはその頭を優しく撫でてやる。

翠星石「わ、私は、ジュンが私のことあんまり好きじゃないんじゃないかって、ずっと不安だったんです…」

ジュン「そんなこと考えてたのか…」ナデリナデリ

翠星石「だ、だってジュンは真紅とばっかりいつもベタベタして…」

翠星石「いつも真紅の話ばかりするし…さっきだって私に真紅の着た服を着せようとしたじゃないですか…」

ジュン「もちろん真紅も好きなんだけどさ…なんというか、お前は僕の中で別格なんだよ」

翠星石の泣き声がいっそう大きくなった。

一方その頃、リビングでは仮装大会が行われていた。
真紅は鼻メガネとかをつけていた。



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:18:11.73 ID:4KUCR4cU0
しばらく翠星石のうれし泣きが続いた。

ジュン「…もう大丈夫か?」

翠星石「…ありがとです、もう大丈夫です…」グス

ひとたび落ち着くと、翠星石にものすごい幸福感が襲ってきた。

翠星石「…ジュン?」ニンマリ

ジュン「(うっ…満面の笑み…)」

翠星石「いつから?いつから私のことが『大好き』だったんですか?」

翠星石「もしや一目ぼれ?一目ぼれですか?」

ジュン「いや、残念ながら一目ぼれじゃない」

ジュン「…そう。きっかけはあの事件だった…」

翠星石「?」




269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:23:59.58 ID:4KUCR4cU0
~ある日~

ジュン「おっ、何やってるんだ?」

翠星石「ちょっとお庭が殺風景だったもので…お花を育てようかなと」

ジュン「ほほう…そっか、お前は庭師なんだもんな」

翠星石「です。実はこれは何の球根だかよくわからないのですが…」

翠星石「翠星石の手にかかれば、絶対きれいなお花が咲くに決まってます!」

ジュン「どれどれ…お前、こりゃあ…」

翠星石「?」

ジュン「球根じゃなくてにんにくだぞ…」

翠星石「…?」

~ある日終わり~



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:25:20.73 ID:4KUCR4cU0
翠星石「あ、あれで…?」

ジュン「いや、あれは反則だった…だってお前…」

ジュン「花を育てるぞって意気込んでおきながら、にんにくに直に水やってんだぞ?土にも埋めないで」

ジュン「そこに、僕が指摘したときのあの何がなんだかわからんという表情だよ…ドタマを鉄球でぶん殴られたような衝撃…」

ジュン「あぁ、こいつは僕が守ってやらないとダメなんだ…と冗談抜きで思った」

ジュン「そしてその瞬間から僕はお前に首ったけ、ってワケさ」

翠星石「…///」

ジュン「それからというものの、僕はお前のことが愛おしくてたまらないんだ」

ジュン「いたずらに奔走するお前も、真剣に菓子作りに励むお前も、拗ねるお前も大好きなんだよ、僕は」

ジュン「翠星石、お前は正直可愛すぎんだよ…」

翠星石「ま、真顔で言わないで…///」

翠星石は、顔を真っ赤にしてもじもじと照れている。
その頃のリビングでは、真紅の鼻メガネが火を噴いている。



272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:35:23.85 ID:4KUCR4cU0
ジュン「だから僕はお前の裸で…」

翠星石「!?…も、もうその話はやめてください…///」

今となっては逆に恥ずかしい。

ジュン「あぁ…全部勢いで言っちゃった…は、恥ずかしい…」

翠星石「じゅ、ジュン?」

ジュン「何だ…」

翠星石「ジュンは私が好き」

翠星石「そして私もジュンが大好き」

翠星石「それなら…これから堂々と、その…」

翠星石「…もっといちゃいちゃしませんか?」

ジュン「い、いちゃいちゃ?」

翠星石「わ、私は!大好きなジュンと1秒でも長くくっついていたいんです!」

翠星石「だから…!ねぇ、いいでしょう…?」ジー

ジュン「……お前にそんなに見つめられちゃあ、断る理由はないな」

翠星石「じゃあ早速!」ガバ




273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:41:59.64 ID:4KUCR4cU0
ジュン「うわ!…いきなりきたな…」

翠星石「…ダメでしたか?」

ジュン「そんなわけあるか!」ニコ

翠星石「ジュン、大好きですぅ!」ニコニコ

ジュン「僕もだよ、翠星石!」

ジュン&翠星石「あはははは!」アハハ

ようやく互いの気持ちに素直になれたふたり。それは実に微笑ましい光景だった。
しかし残念なことに、両者とも単なる馬鹿かもしれないという線は、いっそう濃くなってしまった。
全裸とにんにくによってつむがれたふたりの仲。

一方その頃、真紅はとあるオコジョさんの声真似をしていた。上手すぎた。



275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:49:56.67 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ただいま」

翠星石「心配かけたですぅ!」

蒼星石「翠星石!…元気そうだね!」

翠星石「ばっちしです!」ブイ

真紅「遅かったのね。でも、その様子なら…?」

ジュンが翠星石を抱っこしているだけだ。
しかし何かがおかしい。仲が良くなりすぎていやしないか。

真紅「ず、随分仲良くなったのね…雨降って地固まるって感じなのかしら?」

翠星石「それどころかジュンは私のことを…むぐ」

ジュン「そ、それ以上は言うな…恥ずかしいにもほどがある」

金糸雀「なんだか…ふたりとも恋人同士みたいかしら…」

水銀燈「何かあったんじゃないのぉ?」

真紅「(やはりおかしいわ…ふたりとも手を握ってるだなんて…)」

翠星石「そうです!なんとジュンが…むぐぐ」

ジュン「だから言うなって…」

雛苺「そういうことなのね」



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:54:45.50 ID:4KUCR4cU0
その後も、これ見よがしにふたりはベッタリくっついている。

真紅「な、何でなの…」

雛苺「…真紅」

真紅「雛苺…あ、あれはなんだと思う?」

雛苺「真紅…さっき、あなたは何してたっけ?」

真紅「鼻メガネを…ハッ!?」

雛苺「あなたが鼻メガネをして小躍りしてる間、あのふたりはふたりきりだった。そして今、あんなに仲良くなっているの」

雛苺「これがどういうことだか、分かるよね?」

真紅「ひ、雛苺…私…」ウル

雛苺「上等な日本酒があるの。飲みましょう、真紅…」

蒼星石「何でかな…向こうから負け犬の匂いがしてくるぞ…」




277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:55:33.68 ID:4KUCR4cU0
…そうこうしてるうちに夜になった。
あの5人はリビングで寝ているようだった。
ジュンは、昼間のライブの恨みがあるので、そのままにしておいた。
翠星石も疲れ果てたのか、早々と眠ってしまったようだ。

ジュン「11時か…僕も疲れたし、今日はもう寝ちゃおうかな」

ガチャ。

ジュン「ん?ガチャ?」

翠星石「よ…ようやくですか…」ヨロリ

ジュン「おわ!…翠星石、まだ起きてたのか?」

翠星石「一緒に寝ようと思って…でもジュンに迷惑かけたくなくて…」

ジュン「それで僕が寝るまで鞄の中でずっと待ってたのか…しかしすげー眠たそうだな…」

翠星石「ふ、ふぇ…」フラフラ

ジュン「ふらふらじゃないか…いじらしいやつめ」ヒョイ

翠星石「あぅ…」

翠星石を抱っこしてベッドまで運ぶジュン。




278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:00:15.54 ID:4KUCR4cU0
ジュン「なんか僕ら今日一日で随分仲良くなったよなぁ…翠星石?」

翠星石「zzz…」

ジュン「もう寝とる…」

すぅすぅと寝息を立てる翠星石。
今は彼女のことがただただいとおしい。

ジュン「おやすみ、翠星石」ニコ

翠星石「zzz…ジュン…」

ほっぺたを軽く突っつく。
翠星石が小さな手でジュンの指を軽く握る。
ジュンは少し微笑んで、しばらくその可愛らしい寝顔を見ていた。
そのままずっと見ていたいと思いながら、ジュンは次第にまどろんでいった。
寄り添うように眠るふたり。

夏の夜が更けていく…。

完~おまけにつづく~




279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:01:48.58 ID:4KUCR4cU0
おまけその1~涙の酒~

リビングの隅の方で、陰鬱な酒盛りが始まった。

真紅「鼻メガネして小躍りしているうちにジュンを寝取られてしまうなんて…うう…」

雛苺「よしよし…」

水銀燈「あれ、どうしたのぉ?」

雛苺「それがね…」

金糸雀「…そう、そんなことになっていたの…」

蒼星石「僕らも付き合うよ、真紅」

真紅「あなたたち…ありがとう…」グス

水銀燈「よーし…今日は涙酒よぉ!」

雛苺は真紅の泣き言を優しく辛抱強く聞いてあげた。
ほかの3人も、だいたい半分ぐらいはちゃんと聞いてあげた。
しかし酔いも回り、いつしか雛苺を除く4人の愚痴の言い合いが始まった。
ずっと鼻メガネのことを猛烈に叩くだけの真紅と、出番が少ないとかなんとかゴチャゴチャ言ってるその他。
さすがの雛苺も業を煮やし、ついに酒に睡眠薬を混ぜ4人を眠らせてしまった。



280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:05:12.30 ID:4KUCR4cU0
おまけその2~のり姉ちゃん~

あの姉部屋ごもりから二日。
のり姉ちゃんの部屋の前でジュンは待つ。

ジュン「そろそろか…来た!」

のり姉ちゃん「じゅ、ジュン君…」ガチャ

ジュン「真紅は塩をもってこい!雛苺はこってりとした食べ物を!

翠星石「わ、私は?」

ジュン「翠星石は休んでていいよ。全部こいつらと僕でやっちゃうからさ」

翠星石「なんて優しい…ありがとうですジュン!」



282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:06:47.82 ID:4KUCR4cU0
紅&雛「…」ブチブチ

真紅と雛苺の作業がはかどらない。

ジュン「お前ら…このままじゃ姉ちゃんが!」

のり姉ちゃん「ジュン君…」

ジュン「姉ちゃん、今すぐ塩とこってりとした食べ物が来るからな!もうちょっと待っててくれ!」

のり「み、みずを…」

ジュン「ミミズを…?」

のり姉ちゃん「…く…」ガクリ

ジュン「ね、姉ちゃーん?」

つづく




283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:08:58.95 ID:4KUCR4cU0
おまけその3~のり姉ちゃん~

ジュン「くそう、このままじゃ…ハッ!?」

ジュン「お、お前ら!?帰ったんじゃなかったのか!?」

真紅「のりのピンチとあっちゃあしょうがないわ」

雛苺「ほら!今は敵味方でいがみ合ってる場合じゃないのよ!これを持っていってあげて!」

ジュン「コレは…真紅、雛苺、恩に着るよ!」ダッ

真紅「あのまっすぐな眼差し…ジュンったら、うざいわ」

雛苺「わずか2日であそこまでうざくなるなんて…正直思いもしなかったの」

ジュン「姉ちゃん!水分が手に入ったぞ!」

のり姉ちゃん「ジュンくん…あ、ありが…?」

養命酒だった。

のり姉ちゃん「…」ガク

ジュン「ね、姉ちゃーん?」

つづく




284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:10:20.88 ID:4KUCR4cU0
おまけその4~のり姉ちゃん~

それでも養命酒を飲んだのり姉ちゃんは、なんとか自力で水場にたどり着いた。
そしてがぶがぶと水を飲んだ後、さらに水を飲んだ。

ジュン「ふふ、姉ちゃんたら…あんなに水を飲んで」

水を飲みに飲んだあと、のり姉ちゃんはトイレに駆け込んだ。

ジュン「ふふ、姉ちゃんたら…あんなに水を飲んだからさ」

そしてトイレから出てきたのり姉ちゃんは、真っ先にジュンに向かってきた。

のり姉ちゃん「ふう…あらジュン君?」スタスタ

ジュン「(ふふ、ここまでか…)」

覚悟を決めるジュンに予想外の言葉が!

のり姉ちゃん「なんだか、急にジュン君とお風呂に入りたくなっちゃった…入ろ?」

ジュン「はい…りますか!」

のり姉ちゃんとジュンがふたり仲良く肩を並べて風呂場に向かう。もちろん合言葉は…?

ジュン「ね、姉ちゃーん?」

のり姉ちゃん「はーい♪」

翠星石「え?なにがどうなったんですかコレ?」




285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:11:33.55 ID:4KUCR4cU0
おまけその5~本編ラストの没バージョン~

ジュンと翠星石のふたりは幸せそのものといった感じでいちゃついている。
真紅たち4人を睡眠薬で眠らせた雛苺は、それを苦々しげな眼で見ていた。

ジュン「翠星石はかわいいなぁ…ほんとうにかわいいなぁ!」

翠星石「ありがとです!…それに、ジュンだってなかなかのおっとこまえですよ?」

ジュン「じゃあ、僕らは美男美女のカップルってことになるな!」

翠星石「カップルですか!しかも美男美女の!いいこと言いますねジュン!」

ジュン&翠星石「うっふっふっふ!」ウフフ

雛苺「…チッ」

時刻は午後3時。雛苺は庭に出る。
見上げた空は紫色。こりゃあ、一雨来るわね。
案の定、すぐにポツポツと水滴が落ちてきた。
まあ、いいわ。今宵は雨に濡れたい気分なの。
襲い掛かる雪華綺晶をものの一撃で退けた雛苺は、何となく天を仰いだ。
ふるさとのロシアは今どんな天気なのかしら…そんな取り留めのない思考が頭の中をめぐる。
いよいよ強くなる雨。どうか私の汚れをすべて洗い流してくれますように。

雛苺はどしゃ降りのなか、長いことただ立ち尽くしていたのだった。





286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:14:54.85 ID:KBxn9qhQ0
ヒナ思春期



288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:19:50.60 ID:4KUCR4cU0
これにて終了です。また最後は一気に貼らせて頂きました。
初のスレ立てで途中手間取り、お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした。
全部無事終えることができたのは皆様のおかげです。
何度も繰り返しますが、読んでくださった皆様、本当に有難うございました。
少しでも楽しんでいただけたなら望外の喜びです。

最後に長文、乱文失礼しました。
また機会があればお目にかかりたいと思います。

それでは、これにて失礼させていただきます。




290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:25:26.34 ID:H2+3p/2tO
>>1
久方ぶりにしっかりしたローゼンSS読めたわ



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この記事へのコメント
妙なセンスを感じるな
2009/08/04(火) 00:18:16 | No.2738 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2010/12/04(土) 00:52:23 | No.7855 | | #[ 編集]
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