戯言ニュース

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唯「ゾロアスター教徒になるよ!」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:14:53.57 ID:zP8LrVH4O
それはいつもの帰り路


唯「ふわぁ~あちぃ…あずにゃん、アイス屋さんよっていこうよぉ!」

梓「先輩…昨日も一昨日も同じこと…」



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ブログパーツ 唯「ゾロアスター教徒になるよ!」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:18:40.71 ID:zP8LrVH4O
唯「暑は夏いからアイスを愛す、そんな私は貴方に熱中症患者♪」

梓「何言ってるん…」

梓「あ…」

唯「どしたの、あずにゃん?」



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:22:38.04 ID:zP8LrVH4O
唯と梓が、ふと、立ち止まったのは、
ちょっとした街角にはよく見掛けるような古本屋。


唯「ど~~したのぉ?あずにゃん??」

梓「先輩、少し寄っていきませんか?」




7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:24:16.44 ID:a7ViZkZtO
ゾロアスター興味あるから期待。鳥葬とか色々。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:27:41.55 ID:zP8LrVH4O
古本屋に入ると案の定無愛想なご主人。夕刊に夢中の様子。


唯「うわっ…むっずかしいほんばっか…」

梓「先輩…」

梓「お邪魔しまーす。」

店主「…」

店主「ん?」

店主「あずさちゃんか!」


途端に店主の顔が綻ぶ。




10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:33:38.19 ID:zP8LrVH4O
梓「小父さん、久しぶりです♪」

店主「○○は元気にしてるかい?」

唯(○○…確かあずにゃんのお父さん…)

唯は数週間前に会った梓の父親を思いだす。




11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:38:44.14 ID:zP8LrVH4O
唯(ねえねえ、)

梓(はい?)

唯(このおじさん、あずにゃんの伯父さんなの?)

梓(いえ、親戚の伯父さんじゃなくて…お父さんのお友達なんです。)

店主「あずさちゃん!友達じゃなくて、腐れ音楽仲間だから!」

そう言う店主は梓の父親よりほんの数年年かさに見える。
けれど、きっと親しい関係に違いない。
梓を見る目が、ほんとに優しいから。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:46:04.52 ID:zP8LrVH4O
唯(本がたくさん…)

梓「通りかかったんで、ちょっと寄って見ました♪」

店主「そっかそっか!」

店主「相方はお友達かい?」



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:48:03.79 ID:zP8LrVH4O
梓「友達というか…部活の先輩です。」

店主「へぇ、そっかそっか…」

唯(私には一生縁のなさそ…な…)

唯「あ…」

人と『本』との出会いは偶然と好奇だ。好き嫌いと直感がよく横顔を差し挟む。

けれど…



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:52:20.37 ID:BNxS7hPtO
ゾロアスター教は善悪二元論のはしりだっけ?



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:54:11.69 ID:mTQ49q+KO
アヴェスターの響きだけで強くなれる気がしたよ。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 03:56:10.85 ID:zP8LrVH4O
唯「あ…」

唯「あべすた。」

梓「はい?」

店主「『アヴェスター』か。完全版の奴だね。
日本語じゃあ、古層アヴェスターから新層まで…」

店主「残ってるやつが全部翻訳されてるのはそれだけだ。」※



※脚色です。実際には存在しません。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:03:19.11 ID:zP8LrVH4O
梓「なんなんですか?それ?」

店主「旧約聖書あるだろ?簡単に言うとアレに近い本だ。」

店主「神の言葉と予言者の言葉がごっちゃになってる…」

梓「キリスト教の本ですか?」

店主「うんにゃ。アーリヤ人の古い宗教だ。」

梓「?」

唯「あべすた…」




25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:08:17.36 ID:zP8LrVH4O
唯「…あべすた。」

唯は数分冊に分かれている、アヴェスターの一つを手に取る。

そのとき。

周辺の音が甲高く反響して、暗くなり明るくなる。

『双子。』

唯「え?」




27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:12:22.11 ID:zP8LrVH4O
『時間は双子を孕んだ。』

唯「…」

『時間は双子を産んだ。』

唯「…」

『私はそれを見る。』

唯「…」

『私は双子のためにある。』
唯「…」

『私はやがて来る。』




28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:15:01.75 ID:zP8LrVH4O
唯「…」

梓「せんぱい?」

唯「あうっ。」

梓「?」

店主「?」




29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:17:22.36 ID:mTQ49q+KO
ふわふわ拝火



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:22:13.69 ID:zP8LrVH4O
唯「あれ?」

梓「せんぱい…大丈夫ですか?」

店主「いやいや、あずさちゃん。馬鹿にしちゃいけない。」

店主「『本』との出会いなんてそんなもんだ。自分の世界を好奇心が突き破ってさ、

   その人を一瞬にして、どっかに連れてくんだよ。」

唯「一瞬?」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:27:21.31 ID:zP8LrVH4O
店主「先輩さん?」

唯「ボケッ…」

梓「せんぱい!」

唯「うん?」




32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:29:42.29 ID:zP8LrVH4O
店主「ほしいのかい、それさ。」

店主「あべすたー。」

唯「…」

唯「ほしい…かも。」

店主「…」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:36:35.71 ID:zP8LrVH4O
店主「じゃ、一冊百円でいいさ、もってけな~!」

梓「え!?いいんですか!?」

店主「ああ。ついでにバンヴェニストの解説本もつけるぞ。」

梓「そんな…悪いですよ!」

店主「いいんだって!さっき言っただろ、本と人は…」

唯「…」


唯は譲ってもらった本を紙袋に入れてもらい、引きずるようにして家に持ち帰った。




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:46:00.26 ID:zP8LrVH4O
唯はそれから貪るように読み始めた。

読み始めた?

後になって覚えれば、両親まで伝った『神の種』が発芽して、栄養を求めたような。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 04:51:29.89 ID:zP8LrVH4O
けれど、ギー太を愛でることも欠かさない。

アフラの王もデーウァの君も、音楽をもまた愛するから。



軽音部部室

唯「ふぁぁ…」

律「眠。」

澪「お前ら…」

和「唯たちの担任、私に直接文句言ってきたわよ…」

和「二人とも弛みすぎだって。」




43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:00:15.47 ID:zP8LrVH4O
律「どぅわってもうすぐ夏休みなんだもーん!」

澪「律、講習受けないんだって?」

律「今年も遊び倒すぜ!」

澪「…」

唯「ふぁ…ぁ…」

ドサッ

和「!」

和「唯、最近よく読んでるわね、その図象の本。」

紬「図象?」




46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:08:00.31 ID:zP8LrVH4O
紬の目に入ったのは、唯の読んでいる古い本の、
羽根(翅?)をもつ人間を象った一種のマーク。


紬(あれ?あのマーク…)

紬(…)

律「おいおい…ゆいちゃんまでお受験対策ですかぁ…」


唯「ん~?」ペラペラ…



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:13:33.51 ID:zP8LrVH4O
梓「ゾロアスター教の『きょうてん』だそうですよ。」

律「ゾロアスター教?なんだそれ?RPGに出てきそうな響き。」

澪「世界史でちらっと出てきたろ…」

梓「確かずっと昔に絶滅したとかって…」

和「あずさ、確かイランやインドにはまだ残ってたはずよ、いわゆる信者が。」




48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:17:22.85 ID:zP8LrVH4O
梓「そうなんですか…」

律「じゃ、何か?唯もゾロアスター教徒になったってか?」

唯「うん。」ペラ…ペラ…

律「へ…」

梓「え…」




49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:26:29.80 ID:zP8LrVH4O
唯「…」ペラ…ペラ…

律「えっと…私の又従兄弟がさあ…例の『しゅーきょー』に捕まって脱会させるのに…」

紬「日本人では一人もゾロアスター教徒はいないはずよ。」

紬「たしか、師資相伝ならぬ親子相伝で。基本的に異教徒が改宗するのは無理らしいわ。」




51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:29:22.11 ID:zP8LrVH4O
和「紬、詳しいわね。」

紬「お父さんのお友達にインドの方がいらしてね、昔ちらっと…」

紬(…)

紬(それに、あのマーク…)

澪「唯は何かに夢中になると…つきっきりだからな。」

律「…唯よ、面白いんかそれ?」




53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:33:12.61 ID:zP8LrVH4O
唯「面白いよ~。」ペラ…ペラ…

律「どんな内容なんだよそれ?」

唯「ん~?」

唯「せかい、かな。」

律「はあ?なんだその中二病的な…」




55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:38:59.93 ID:zP8LrVH4O
唯「基本はザラシュストラの生き方と言葉、神様への『うた』だよ。」

律「ざ、ざら…なんだそれ…」

唯「ゾロアスターはザラシュストラとも読むんだって。
  昔のイランの言葉はわかんないからどう読むかしんないけど…」

唯「でも、言葉の後ろには神様がいるでしょ。」

律「…(こりゃ重症だ…)




56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:47:21.17 ID:zP8LrVH4O
澪「ゾロアスターって予言者、だよな?」

梓「預言者?」

唯「『ふわるなふ』を受けた人の子として『しゅっぴたーま家』に生まれたひと。」

律「あの…ゆいさん?ふらわふるって…」




58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 05:56:46.02 ID:zP8LrVH4O
唯「『ふわるなふ』は神様から溢れる光。
  キリストさんの頭に付いてるのとか天使の『わっか』、だよ。」ペラ…ペラ…

律「…」

澪「イエス・キリストまで出てくるのか、その本?」

唯「出てこないけど、お話の筋は少し似てるかな。」

澪「そ、そうなのか…」




60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:06:12.62 ID:zP8LrVH4O
唯「『さおしゅやんと』っていう人が現れて、デーウァの君と、その配下を全て滅ぼして、」

唯「アフラの王が、『あむしゃすぷんた』、『やざだ』たちのもと、
  治める正しい世界が来るんだって。」

唯「『あむしゃすぷんた』も『やざだ』も天使みたいなものだよ。」




61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:13:27.40 ID:zP8LrVH4O
和「いわゆる善と悪の戦いね。」

唯「うん。」

唯「『めーのーぐ(精神的なもの)』と『げーてーぐ(物質的なもの)』の。」

唯「けどね、間違って考えてるんだ、今のマズダー教徒は。」

唯「ザラシュストラもぺるしあ王の『まご(祭司)』たちの考え方も…みんな結構間違ってる。」



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:18:55.46 ID:zP8LrVH4O
唯「…」

唯は一瞬、哀しそうな顔をした。

和「どういうこと?」

唯「今日はおしまい!おしまい!アイス食べにいこ!」

律「プッ…それでこそ唯だな!」

和「そうね…。今日は私も一緒に行くわ。」

澪「はあ…」

紬「…」




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:24:11.90 ID:zP8LrVH4O
その夜、田井中家

律「ぷぅ…食べ過ぎた…」

聡「姉ちゃん!」

律「げふっ…なんだよ…」

聡「なんだよって…エヴァンゲリオンの劇場版のDVD見たがってたろ?
  今日借りてきたんだ。」
律「マジでか!?」




65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:29:43.61 ID:zP8LrVH4O
律「よし見るか!いざ居間へ!」

聡「おう!」


画面の中でなされる、エヴァンゲリオンと使徒の戦い。人と人とのたたかい。


リツコ『MAGIが…』


律「まぎ?」

律「どっかで…」



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:37:42.47 ID:zP8LrVH4O
律「使徒…」

聡「みんな後ろに『~エル』がつくよね?」

律「ふ~ん…」

律「なんか…」

律(不思議な…)




68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:43:38.98 ID:zP8LrVH4O
田井中姉弟がヱヴァンゲリヲンを見ているそのころ…

奈良県某所 琴吹家地所


紬「ありがとう、斉藤。」

車から降りる紬。

斉藤「いえ…」

斉藤「しかしお嬢様、なぜこのような場所に…」



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 06:54:06.02 ID:zP8LrVH4O
あたりは全くの野っ原。少し離れた所に小高い、奇妙に窪んだ小山がある。
ずっと昔の、有力者の墓だろうか?

紬はその小山に目を向ける。
紬「あれも御先祖様のお墓なのよね?」

斉藤「はい、ニニギノミコトから数えて三十…」

紬「ごめんなさい、それはいいわ。」



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:02:44.13 ID:zP8LrVH4O
墓に近付く紬。
近付くに従って悪寒を覚える。
それを御先祖に申し訳なく心中で許しを乞い、周囲に視界を凝らす。


その墓のまわりには奇妙な石像が多いのだ。

紬「お猿さん、鳥?ウサギ…蛙…台のような石。亀?たくさんあるわね。」

斉藤「この辺りにはとくに、猿石の類いが多ございます。」

紬「猿石…」




72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:08:04.66 ID:a9qFfDl6O
むぎってニニギの子孫なのか…



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:19:15.08 ID:zP8LrVH4O
>>72
すまん、それは適当だ。ヤマサチ、ウミサチの祖父さんだから借用した。



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:17:51.44 ID:zP8LrVH4O
斉藤「ヤマト…日本の文物から見て、異質なモノ共です。
   一説では渡来人や異国の教えに関係しているとか…」

紬「異国の教え…か。」

斉藤「道教や…それに、まこと怪しい由緒ですがケン教のものとも。」

紬「ケン教、拝火教ね。」

斉藤「今日日は、ゾロアスター教ともパールシーとも呼ばれております。」




76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:29:16.43 ID:zP8LrVH4O
墳墓の前に立つ。
遠灯かりが紬の髪を微かに照らし、緩く輝く。

紬は、頭を垂れ手を合わせる。
後ろの斉藤も、それに倣う。
正面に向きなおると、紬は墳墓の横手にまわる。歩数で約二十歩。

紬「これね…」

紬の前には、すり鉢のような皿のような1m四方におさまる、半球をくりぬいた岩。



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:39:23.38 ID:zP8LrVH4O
その岩の前に立つ。

半球の円周は、紬の手前で十cmほど途切れ、そこから地面に段々状のものが伸びる。

斉藤「まことに奇怪な岩です。盃のようにも見えますが…『口』が空いておりますゆえ、  そうではないでしょう。」


紬はその『盃』の反対側にまわる。

風雨と年月で朽ちつつあるが、そこには
浮き彫られた、羽根(翅?)をそなえた何か、の図表があった。



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:49:41.27 ID:zP8LrVH4O
紬「この図表…」

斉藤「羽根を持った何か、ですな。中央部分がひどく痛んでいますが…」

紬「ここに葬られている方の渾名は、確か…」

斉藤「『烏飼(からすかい)の臣』です。」

斉藤「これもまた奇妙な…」
斉藤「ハッ…御無礼を…」

紬「斉藤、いいのよ。」




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 07:56:33.25 ID:zP8LrVH4O
紬(ずっと昔に、お父さんやお母さんとお墓参りに来て…)

紬(その時、この標(しるし)を見つけて…)

紬(お父さんは、烏飼っていうぐらいだから烏の彫り物だろう、って言っていたけど…)


紬(唯ちゃんは確か…)


唯『それ?〈あふらの王〉をでほるめした形なんだって。』

紬「アフラの王、アフラ・マズダ…」



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:04:51.01 ID:zP8LrVH4O
同時刻 秋山家

自室でネットをする澪。

澪「ゾロアスター…」

澪「ふむふむ…」

澪「おそらくは紀元前六世紀ごろ…」

澪「スピタマ家に生まれウィーシュタースパ王の友となり…」

澪「いわゆるゾロアスター教の開祖、と言われる…」

澪「ふむふむ…」




85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:07:08.97 ID:zP8LrVH4O
澪「光と闇か…」

澪「次の作詞に生かせるかも…」カチッカチッ…

澪「ふむ…」

澪「…」

澪「ミスラ?」




86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:15:53.61 ID:zP8LrVH4O
澪「ヤザダの一柱…」

澪「唯が言ってたな、ヤザダは『天使』だって…」

澪「ヤザダはゾロアスター教における下位の神格…」

澪「ただし、ミスラの同教における地位は比較的高い…」
澪「ミスラはもともとアーリヤ人の神格であって…
  古くはヴェーダやヒッタイトの碑文にもあらわれ…」

澪「弥勒菩薩の原型で、古代ローマ時代には『ミトラ』として
  キリスト教と二分するほど教勢があり…」



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:22:10.61 ID:zP8LrVH4O
澪「戦いと調停と光の神…」

澪「一言でいえば契約を司る神…」

もともと文芸部を志望していただけあって、
神秘性や秘教性を含んだネタに引き寄せられるタチである。

澪「アテネとかミネルバみたいな…」




90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:26:50.55 ID:zP8LrVH4O
律がその場にいたら、

『さすがナイスばでぃのビーナス様は…』

と馬鹿にしていただろう。

澪「ふむふむ…」カチッ

しかし。

〈次へ〉をクリックした後、澪の目に飛びこんできたのは、



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:34:06.55 ID:zP8LrVH4O
ゴヤの『我が子を喰らうサトルヌス』であった。


澪「ヒイッ…!!」

ギョロ目の巨人が人型を半分ほど喰らい、血潮とともに口からぶら下げている絵だ。


サトルヌス、つまりクロノスは自分の子が己を凌ぐことを恐れ、
それがために食らう、という神話を題材にしている。




92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 08:40:34.83 ID:zP8LrVH4O
澪「う…ぅ…」

この手のモノが酷く嫌いな澪にとっては、まったくもって精神的ブラクラである。

とはいえ、椅子から飛び退きたいのだが、体が言うことを聞かない。

澪「う…うぅ…ぅぅぅ」

それに、視線を逸らしたいはずなのに、なぜか、逸らせない。




111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 13:52:42.61 ID:zP8LrVH4O
澪は画像横にある解説文を読む。

澪「く、クロノスは…『時間』に…まつわる神で…」

澪「ゼウス…以下…主要なオリュンポス諸神…の親神…です…」

澪「ゾロアスターの…宗教のにも…比較的に後の教えですが…」

澪「時間に…まつわる…親神が…あらわれます…」

澪「『ズルワーン』と…呼ばれる…その神は…」


澪「ズルワーン…」



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:02:54.78 ID:zP8LrVH4O
澪「イスカンダル…大王の東征のころには…その存在が確立されており…」

震えや恐怖はいつの間にか止み、解説文を読み下る澪。

澪「イスカンダル大王…?」
澪「検索っと…」

澪「ヤマト…沖田……違う…」

澪「アレキサンドロスⅢ世大王…中東では『イスカンダルと』呼ばれ…」

澪「ふむ…」




116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:13:17.07 ID:zP8LrVH4O
澪「ズルワーン神のゾロアスター教における詳細な位置は、実際のところ、よく分かっていません。」

澪「というのは、ゾロアスター教自体がその時期や、
  おそらくは場所によっても、性格を異にするからです。」

澪「原始仏教と現代日本の仏教諸派が全く異なるように…」

澪「ザラシュストラのころ、イスカンダル大王のころ、
  ローマのネロ帝と同時代、そしてムハンマドと同時代とでは…」

澪「違った様相が展開されます。」

澪「さて、このズルワーン…」




118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:21:09.29 ID:zP8LrVH4O
澪「ズルワーンの属性として確実なのは…」

澪「原初の時間と関係しているということ…」

澪「それと…」

澪「『双子神』の親神であるといことです。」

澪「『双子神』…」

澪「アフラマズダーまたはオフルミズド、アーリマンまたはアンラ・マンユの…」

澪「親神であります…」




125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:41:10.23 ID:zP8LrVH4O
澪「ここで、なぜ私がゴヤの絵をこのページに掲載したかのか…少し解説します…」

澪「この絵はギリシア・ローマの神話をモチーフにしていますが…」

澪「サトルヌスとクロノスはもともと、別別の神格です。」

澪「サトルヌスは、ローマと、
  そしてもともとはエトルリアにおける農耕にまつわる神です。」



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:46:56.85 ID:zP8LrVH4O
澪「エトルリア人はその神話のなかで、自民族の神々と
  ギリシアの神々を結び付けて考えるようになりました。」

澪「ネプテューンとポセイドン、など同じように…」

澪「サトルヌスとクロノスもそうです。」


澪「さて、この絵は先ほどの通り、
  ギリシア神話的にはクロノスの我が子喰い、と解釈できます。」



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 14:53:27.05 ID:zP8LrVH4O
澪「しかし、これを原初的な意味から考えてみると…」

澪「再生と消滅の輪です。」
澪「サトルヌスは我が子を生み、喰らい、また生み、また喰らい…そしてまた生み…」

澪「農耕のサイクル、そして何よりも、自然と宇宙のサイクルを模しています。」

澪「そして、ゾロアスター教の教えにはこれと対照的な、  そして見様によっては類似の、考え方があります。」

澪「『フラショ・クルティ』です…」


ここで秋山家の全電源と灯かりが落ちる。
一瞬にして真っ暗闇に。


澪「ヒィィィァァァ!!!」




131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:01:02.17 ID:zP8LrVH4O
澪ママ「ごめんごめん!」

澪ママ「冷房つけたままでホットプレートの電源入れちゃった♪」

階下から母親の声がする。

澪「プル…プル…」

澪「ママぁぁぁーー!!」



澪の頭の中には、『フラショ・クルティ』という言葉が引っ掛かかっていた。




132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:05:46.10 ID:zP8LrVH4O
平沢家の居間、夕飯時


唯「モグモグ…」ペラ…

憂「…」

唯「モグ…」ペラ…

憂「…」

唯「モグ…モグ…」ペラ…

憂「おねえちゃん!!」




133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:17:24.91 ID:zP8LrVH4O
唯「ん~?」ペラ…

憂「お行儀悪いよ!!」

憂「昨日だって一昨日だってその前だって…」

憂「ご飯食べてる時は食べるのに集中してっ!!」



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:20:27.98 ID:zP8LrVH4O
憂(それにさ…最近ずっと…その本に構いっきりじゃない…)

結局、怒りの大もとはシス魂(こん)由来である。

唯「分かったよ~モグモグ…」ペラ…

憂「プルプル…」

憂のボルテージが飛躍的に上昇する。
珍しいことだ。



135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:20:43.21 ID:fVELE/1CO
のめり込んでるな…



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:28:03.44 ID:zP8LrVH4O
憂「おねえちゃん!!」

テーブルを思いっきり叩く憂。

その衝撃で、烏賊の塩辛を盛ってある小皿が倒れ、
中身の一部が唯のアヴェスターにかかってしまう。

唯「ああぁぁぁーーー!!?」

憂「!?」

憂「ご…ごめん…!」




138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:35:52.41 ID:zP8LrVH4O
開いているアヴェスターの、右側のページに、肌色の液体と烏賊の切り身が点々とつく。

唯「あ…あぅあぅ…」

憂「ご…めん…」

涙目になる憂。
小さい頃の思い出―唯のおもちゃを誤って壊してしまった―が頭をかすめる。




140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:46:50.56 ID:zP8LrVH4O
塩辛がかかったページには、文章でなく絵が描かれている。
あご髭を持つ男性が、トカゲのような竜のような、
爬虫類のような何かを踏付けている絵だ。

髭の男性は長いゆったりとしたローブを着込み、背中に光背と羽根(翅?)を有している。

爬虫類のような何かは、苦悶の表情を浮かべながら、
その目に憎悪をたたえて本の外界を睨みつけている。


憂「ごめんなさい…」

一層、シュン、とする憂。




141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 15:53:00.31 ID:zP8LrVH4O
唯「…」

憂「おねえ…ちゃん…」

唯「ま…」

憂「『ま…』?」

唯「…あ、いいや。読めなくなったわけじゃないし~」

憂「えっ…」

大雑把というか、無頓着というか、大度量というか…




142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:03:27.03 ID:zP8LrVH4O
唯「ティッシュで軽く吹いて…」

唯「ぽぽいのぽいっ…と。」
憂「…怒ってない?」

唯「ぜーんぜん。『あべすた』に夢中だった私も悪いし。」

憂(よかった…)

ご存じの通り、憂がこの世でもっとも恐れるのは、愛姉に嫌われることである。




143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:10:09.35 ID:zP8LrVH4O
唯「一区切りだから、ご飯食べ終わったらおフロ入ろっと。」

唯「久しぶりに憂も一緒に入る?」

憂「!」

憂「うん!」


唯のアヴェスターからは、烏賊の醗酵臭とともに、
微かに、それ以外のにおいが発せられていた。




145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:17:40.61 ID:zP8LrVH4O
先ほどの平沢家の一件から二時間後

中野家、居間


梓父「あずさ、お母さんから氷のおかわりもらって来てくれ。」

梓「うん!」

梓の父が同年代の男性と透明な酒を飲んでいる。
この間の古本屋の店主だ。

店主「ごめん、あずさちゃん、水もお願い!」

梓「はいっ♪」




146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:24:04.20 ID:zP8LrVH4O
店主「泡盛は薄めて飲みなさいよ!割ってさ!」

梓の父「先輩と違って、生(き)を味わいたいんですよ♪」

店主「肝臓にも胃にも悪いっんだよ!」

梓「はい、氷、とお水です♪」

梓は、部室や学校ではあまり見せない、人懐っこい表情を浮かべている。




148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:30:49.95 ID:zP8LrVH4O
店主「ありがとね、あずさちゃん!」

店主「…っと、お前は本屋一つしかないオレと違って、奥さんと梓ちゃんがいるんだから!」

梓の父「本屋一つだけって…」

梓の父「そういえば、この間も、梓の部活の…唯ちゃんだっけか、あの子に…」

梓の父「…高価な本を何冊も、タダ同然で大判振る舞いしたらしいじゃないですか?」



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:36:03.86 ID:zP8LrVH4O
店主「いいんだって、読みたい人間が読みたい本を読めばさ。楽器と同じさね。」

店主「それに、何千冊もあるうちの、ほんの少しだ。」


そういうと古本屋の店主は、傍らに置いてある紙袋から何冊かの古書をとりだす。

店主「あずさちゃん、これもあのお嬢ちゃんにあげてやってくれ!」



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 16:45:54.31 ID:zP8LrVH4O
梓「!」

梓の父「はぁぁ…先輩…」

梓「小父さん!これ以上はホントに悪いですから!」

唯先輩を甘やかすと…、と続けたくなる梓。

店主「いーからいーから!」

こういうタイプの人間は、自分の気に入った相手へ
モノを贈り与えることに矜持を持っているようだ。




154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:13:48.66 ID:zP8LrVH4O
店主が差し出した本は、日焼けが目立つのが二冊、真新しいのが一冊、計三冊。

梓「『ブンダヒシュン』、『ミスラ讃歌』…」

古いほう二冊の背表紙を読み上げる梓。


店主「『ブンダヒシュン』はイスラム教が今のイランを覆った時代のもんで
ゾロアスター教の創造神話が書かれてる。」

店主「『ミスラ讃歌』はミスラに捧げられた『うた』を集めたもんだよ。」



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:23:15.18 ID:fVELE/1CO
どうやらただの知識スレというわけではなさそうだな…



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:24:53.79 ID:zP8LrVH4O
真新しいほうの名前も読み上げる

梓「『アーリマン讃歌』?」

店主「それは眉唾もんだよ。イラン各地でここ最近発見された碑文や石碑を元にしてるらしいけど…」

店主「悪神アーリマンに捧げられた『うた』らしい。」



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:36:04.93 ID:zP8LrVH4O
店主「『らしい』ってのは、どうも捏造されたモノみたいなんだよな、その内容。」

店主「まあ、珍しいもんだから、一応ね!」

梓は『アーリマン讃歌』を手に取る。

見開き部分には、トカゲのような竜のような、爬虫類のような何かが
涙を流しながら、本の外界を無意思の瞳で見つめている。
次に数ページ捲ってみる。

そこはちょうど、アーリマンと腐敗の神秘について謳われた箇所だ。



161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:44:44.23 ID:zP8LrVH4O
梓父「アーリマンですか…昔、大学の講義で聞いたことがありますね。」

店主「キリスト教でいう、サタンみたいなもんだ。
   まあ、堕天使じゃなくて、主神アフラマズダーの兄弟神なんだが…」

店主「学者さんの弁だと、イスラム教以前のイランには
   アーリマンを奉ずる一派もいたらしいんだと。」



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 17:52:29.43 ID:zP8LrVH4O
梓父「いわゆる悪魔崇拝みたいな?」

店主「今の俺らの感覚からすればな。
   もっともさ、昔のイラン人の宗教感覚なんて全くわからんだろ?」

店主「なんともいえんさ。」
店主「とにかく、その本は、アーリマンを奉ずる一派が残した文書を集積したもの、」

店主「ということなってるわけ。」




163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:03:20.65 ID:zP8LrVH4O
梓は読め進める。
次の讃歌は、アーリマンと老いについて謳われた部分だ。

その内容は、自然の移り変わりと老いの意味について書かれている。
率直で醜悪な表現も目立つ。
はたして、これも唯に渡していいものか、と梓は考えてしまう。



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:07:20.69 ID:zP8LrVH4O
店主「おっと、もうすぐ日が替わりそうじゃないか。」

店主「そろそろ、お暇するわ。」

梓父「せっかくだから泊まっていって下さいよ!」

店主「いいっていいって!」

店主「あ、あずさちゃん、その本お願いね。」



そして、また、平沢家。



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:13:15.83 ID:zP8LrVH4O
唯は夢を見ている。
これは唯本人にも分かっている。

まわりは全くの真っ白。
色がない。

そして目の前には、七色に輝く竜のような、大きな生き物が、
長い首をもたげて、大きな、少し細長い目で、唯を見つめている。

唯はパシャマを来たまま、正面の竜と向き合っている。



168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:21:46.86 ID:zP8LrVH4O
竜のような生き物は、長い首と、少し寸胴な胴体を持ち、
視界の端にはヒョロッとした、長い尾がある。
瞳の色は、その輝きのため窺い知れない。

竜の胴体はぷっくりと膨れて、まるで臨月間近の妊婦のよう。


そして竜の傍らには、光りを放つ人型があった。
背中に羽根(翅?)のようなものを生やして、
ローブのような物を羽織っている、ように見える。
あまりにも発する輝きが強く眩しく、それ以上は判別できない。


『わたしは…』

竜が突然、声をあげる。




170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:25:44.45 ID:zP8LrVH4O
『ズルワン。』

『供物、いたみいる。』


竜は長い首を、一層、唯に近付ける。

輝く人型のほうは黙ったまま。しかし、視線は感じる。


『これは、我が子。』

竜は、輝く人型を、我が子、といった。




172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:28:21.10 ID:zP8LrVH4O
『さて、ユイ。』


『お前は何を望む?』


『なんなりと言え。』


竜は唯に問う。

唯は答えない。

かわりに、輝く人型へ顔を向ける。




174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:34:11.38 ID:zP8LrVH4O
唯は、人型を指さす。

そして呟いた。

唯『ドゥルジ。』

ドゥルジ(虚偽)と。


その瞬間、まわりの白が解け始める。

白はどんどん溶けて黒が現れる。



177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 18:48:25.26 ID:zP8LrVH4O
全くの暗闇になる。

『戯れだ。』

竜はそう発した。
大変低く、不快なほど湿って響き渡るようは声。

その瞬間に竜の体が腐り始める。

膨れていた胎(はら)も無くなっている。

高速度写真の映像を見ているようだ。

骨と腐肉にまみれると、竜は朽ちるのを止めた。いや、今でもゆっくりと朽ちているのだ。
時折どす黒い血だまりを作って、腐肉が崩れ落ちる。

暗闇でよく見えないはずなのに?



179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:06:28.10 ID:zP8LrVH4O
唯『デーウァの君。』

『いかにも。ダエーワを統べている。…いや、デーウァを統べている。』

『お前の言葉に則ろう。』

竜は瞳の無くなった、ぽっかりと穴の空いた目で、唯に頭を近付け、唯を見つめる。

竜が近付くほど、その腐臭は強くなる。

唯は少し顔をしかめる。

そのとき、耳に酷く障る哄笑が響き渡った。




181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:19:45.98 ID:zP8LrVH4O
ドゥルジと呼ばれた人型が笑い声をあげているのだ。

すでに光りを失っており、のっぺりとした白色をしている。

本当に大きな紙で作った人型のようだ。

唯が人型のほうに視線を向けると、哄笑は一層大きくなり。人型の形が歪む。
そしてその刹那、見るもおぞましい人型の生き物に姿を変えた。



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:22:46.67 ID:rm4gGJR70
勉強スレかと思ってたが何これこわい



185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:24:45.78 ID:zP8LrVH4O
大きさは小学校低学年の児童ぐらい。
そのかたちは、一言でいえば、単眼症の赤ん坊が成長したような、
そんなかたちをしている。


ゆえに、顔の真ん中には大きな一つ目と、その下にほんのわずかの鼻、裂けた口。
その口内から笑い声が聞こえてくる。
腕は二本だが足は一本。
体色は気持ちの悪いほど血の気の全くない白。死人のそれだ。

メソポタミア神話のフンババにも似ている。



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:40:23.39 ID:zP8LrVH4O
『我が子だ。』

朽ちつつある竜、アーリマンはかしらを人型に向けて、そう言う。

唯『あむしゃすぷんたと争う六柱の君の一柱、ドゥルジ。嘘を統べる君。』

ドゥルジ『フフ…ハハ…いかーにもっフフフ…フハッ…フッハハハハハハハ!!』



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:47:55.61 ID:zP8LrVH4O
一つ目の人型が声を発する。
男子児童の声とも、女子児童の声とも、甲高い老人の声ともとれる、不快な音だ。

ドゥルジが声を発し終えたあと、
アーリマンのまわりの暗闇から五つの物体があらわれる。
あるものは爬虫類と人が融合したかたちをし、地を這い、
あるものはどす黒い血塗れの肉塊として空中に浮かんでいる。

あるものは…

そのような醜悪なかたちをした物体が五柱、ドゥルジと合わせて六柱。



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 19:58:12.84 ID:zP8LrVH4O
『我が子たちだ。』

竜はそういう。

『わたしは、ユイ、お前が気に入った。』

ドゥルジ『うそだうそっ!ヒヒッ…ヒーヒッヒハハハハ!!』

おぞましい笑みを浮かべた後、ドゥルジは口を挟む。




195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:02:48.56 ID:zP8LrVH4O
アーリマンは続ける。

『お前は麗しい。身も心も。』

アーリマンがそう言った後、突然、先ほどの肉塊のような物体から声が発せられる。

『げに…眩しい…げに…ウォフと争うた…時のよう…』




196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:07:49.09 ID:zP8LrVH4O
唯『アカ・マナフ、あむしゃすぷんたが一柱ウォフ・マナフと争う、悪思を統べる君。』

唯は肉塊を指して、そう言う。

アカ・マナフ『いかにも。』
肉塊は答える。

アカ・マナフ『ダエーワの主よ、眩しいからこそ…染め甲斐があるというもの。』

『その通り。』

アーリマンは答える。



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:12:11.69 ID:zP8LrVH4O
『ユイ、お前は麗しい。』

『ゆえにだ、わたしは悲しみ、また喜ぶ。』

そういうと、アーリマンは突然涙を流し始める。腐敗液と涙の混じったものが滴りおちる。

『麗しきものが老い、また朽ちるのは、わたしの喜びであり、悲しみなのだ。』




199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:19:28.81 ID:zP8LrVH4O
アーリマンは言う。

『これからはお前は…』

『些細なことで、お前と同じイマの末どもと争い…』

『男と契りその子を孕み…』
『より多く、またイマの末どもと争う…』

『最後の一息をはきだすその日までだ。』

そのとき、アーリマンの右側を這う、爬虫類と人型が混ざった物体が口を挟む。

『失うべくされた幸福を追ってなんになろうか?』



202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:29:31.72 ID:zP8LrVH4O
すると、爬虫類と人型の物体から別の声が発せられる。

『熱いぞ…苦しみとは灼熱の炎で炙られるよう。』

爬虫類の部分から突然、亀のような頭が現れ、そう口を挟む。

爬虫類と人型が混じったような物体は、
実際は二柱のダエーワが共生している姿だったのだ。




203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:32:24.67 ID:F7h8sdQCO
>>1は何者だよ



204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:34:32.11 ID:zP8LrVH4O
唯は人型のほうを指して、

『ザリチュ、渇きを司る君。』

ザリチュ『いかにも。』

続いて爬虫類のほうを指して、

『タルウィ、熱を司る君。』
タルウィ『いかにも。』



208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:48:30.56 ID:zP8LrVH4O
『もう一度言おう。』

アーリマンが再び話し始める。

『ユイ、わたしは、お前が気に入った。』

『今の世はグメーズィシュン(混合)の世。』

唯『めーのーぐ(精神、天上)、と…げーてーぐ(物質、地上)…の?』

『いかにも。』



210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:52:13.40 ID:zP8LrVH4O
『かつて、わたしのみで…世界を統べていた日々が懐かしい。』

『だが今は、我が〈はらから〉と勢を分けている。』

唯『アフラの王と?』

『いかにも。』




212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 20:57:24.55 ID:zP8LrVH4O
『しかし、混合の世のほうがより麗しい。』

『お前は、マズダーか私かを選ぶ自由がある。』

『両方ともを選ぶ自由もある。我が〈はらから〉は承知しないだろうが。』

『また、私とマズダーとも拒絶する路もある。』




214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:02:53.11 ID:zP8LrVH4O
そう言うと、アーリマンは口をつぐんだ。

唯は何も答えない。

アーリマンは数回瞬きをした後、その細く、極めて長い尾を弛ませた。

そして竜は、尾を唯のからだへ、ゆっくりと伸ばす。



215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:03:31.43 ID:HR0WF5/w0
パンツ脱いだ



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:08:02.32 ID:bZDMSmX/O
まだ早い



217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:08:14.47 ID:zP8LrVH4O
唯の体のまわりを螺旋状に、竜の尾が絡み付く。

唯は無表情のまま動かない。
絡み付いた尾が、また弛んだ後、一気に緊張し、唯の体に直接触れる。

唯の体に尾が触れた瞬間、唯の身に着けているものは、全て消滅してしまう。

全裸になっても、唯は表情を変えない。




221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:16:04.41 ID:zP8LrVH4O
形の良い小振りな胸を、

胸にある二つの印を、

小さく可愛らしいへそを、

女性器の入り口の上にある小丘を、

適度に張り出した尻を、

竜の尾が這う。

『麗しい。』

アーリマンは目を細める。

赤黒く腐り、所所骨の見える尾と、血色の良く張りのある唯の体は、
まことに対照的。




223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:23:13.18 ID:zP8LrVH4O
その時である。突然、唯の体に、暗く影のような人型がまとわりつく。

舌や男性器のようなものが、人型から無数に伸び始める。
その中の一つは、唯の女性器の入り口に、その先をあてがい、そして、一瞬弛む。

唯は表情を変えない。



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:27:52.26 ID:zP8LrVH4O
『ひかえよ。』

アーリマンが感情を込めぬ声で言う。

アーリマンの声に反応して、人型はすぐさま唯の体から離れ、
空中で球形のかたちをとる。

唯はその球を指して言う。

『サウルウァ、酩酊を司る君。』

サウルウァ『いかにも。くちおしや…』



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:39:11.86 ID:zP8LrVH4O
アーリマンはまた数回瞬きをすると、ゆっくりとその尾を唯の体から取り払い、
みずからの背後に控えさせた。

それとともに、唯は再び下着とパジャマに包まれる。

『ユイよ、わたしはお前が気に入った。』

アーリマンは、もう何度目かの、その言葉を繰り返す。

『決するのはいつでもよい。
サオシュヤントが我が体を、まさに傷つけんとする、その時でも構わぬ。』


パチッ…




229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:45:05.10 ID:zP8LrVH4O
『ユイよ、わたしはお前が気に入っている。』

『弦を奏で、歌を謳ってくれ。』

『わたしのために。』


パチパチッ…


ベッドの上で瞬きをする唯。

唯「ゆめ、だった…の?」

唯「デーウァ…ううん、ダエーワの主が…」

ベッドから上半身を起す唯。



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:50:51.31 ID:zP8LrVH4O
枕元を見る唯。

アヴェスターが無造作に開かれている。

塩辛をこぼしてしまったあのページだ。

翅を有する人物が竜を、アフラマズダーがアーリマンを踏み付けている絵である。

夢に出てきたアーリマンは、絵のそれと非常に似ているが、
全く同一というわけでもない。




234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 21:58:37.92 ID:zP8LrVH4O
唯「なんなんだろ…」

唯「ダエーワの主、ホントに哀しそうな表情してた…」

穴の空いた目を持つ、アーリマンの顔を思いだす。

唯「…」

唯「とりあえずもう一眠り♪」

唯はまた、眠りにつく。

唯は先ほどの絵が微かに変わっていたことには気付かなかった。
アーリマンの目から涙が流れていることに。



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 22:04:20.64 ID:zP8LrVH4O
翌日 軽音部部室

唯「zzz…」

律「あちぃ…」パタパタ…

梓「イライラ…」

澪「はぁ…」

紬「ボケーッ」




243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 22:51:37.66 ID:zP8LrVH4O
梓「唯先輩!律先輩!それに…ムギ先輩までっ!!」

唯「ふぁっ…」

律「へ?」

紬「ボケー」

澪「ハァ…」




248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 22:56:50.28 ID:zP8LrVH4O
梓「あーいったい何度目に…もうすぐ合宿も…」

唯「あっ練習か!」

唯「やろうやろう!」

梓「えっと…」

唯「練習するんでしょ?やろうよぉ♪」

澪(天然の王道だな…)



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 23:03:45.68 ID:zP8LrVH4O
ぎゅぎゃいいーーーん♪

唯「うん!ギー太も絶好調だね!」

律「かぁ~…。気合い入れますか~!」

梓(さっきのでモチベーション下がっちゃった…)

澪「よし!じゃあ…」



253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 23:13:43.30 ID:zP8LrVH4O
澪「…」

紬「ボケー」

澪「むぎぃ…」

紬「ハッ…」

紬「ご、ごめんなさい…」

澪「お前まで…ほんとに…」




258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 23:39:28.52 ID:zP8LrVH4O
唯「じゃあ…いっくよー!」
律「おう!」

澪「ふぅ…」

梓「よし…」

紬「…」

唯「すぅ…はぁ…」

唯(…)

唯(ダエーワの主に。)

唯「ギー太に首ったけ!」



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 23:54:01.98 ID:zP8LrVH4O
軽音部部室前の廊下

さわ子「あの子たち、練習してるみたいですわ。」

校長「…」

桜高の校長は無口な男だ。細長い面立ちに眼鏡、頭髪は白髪。
けれど、その口端はわずかに緩んでいる。

小市民や善人といった言葉がよく似合う男だ。



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 00:09:48.07 ID:z51nta+UO
さわ子「校長先生が見学なされるのなら、あの子たちも、今以上に熱が入りますよ。」
校長「…」

校長の口端はさらに緩む。

さわ子「ん、あら?」

さわ子は聞こえてくるメインギターと歌声に違和感を覚える。

おかしなビブラートがかかっている。
耳が良い、音楽をよく知った人間が集中しなければ、気付かないだろう。



269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 00:26:29.02 ID:z51nta+UO
微かに調和を乱すようなビブラート。

さわ子(f分の…あの揺らぎでは…ないわね…)

調和が崩れるわけではない。
さわ子(良い気分、少しずつ気分が高揚するわ…)

このわずかな乱れは、聞くものを惹き付ける。


アルコールや好きな菓子を『もうちょっとだけ…』、と欲求に負けて摘まんでしまう。
そんな感じだ、後をひくような。



272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 00:37:11.37 ID:z51nta+UO
校長「…」

よく見ると、校長の後ろ手の指が、楽曲にあわせて小刻みにうごいている。

さわ子(校長先生も楽しんでらっしゃる…)

さわ子(唯ちゃんて、やっぱり天才肌なのかしら?)

さわ子はそれ以上考えなかった。




277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 00:53:39.47 ID:z51nta+UO
ぎゅぎゅーー…ジャン!

唯「よぉっし♪」

梓(すごく…良かった…!)

澪「なんか…軽音部史上で一番良い出来だよ!」

律「…」

律は何もしゃべらず、潤んだ瞳で仲間たちを見やっている。
気分が高まっているのが傍目にもわかる。

紬(…)

紬は静かだった。




280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 01:11:55.60 ID:z51nta+UO
紬も、あの高揚感に触れたが、流されることはなかった。
高揚感とともに、体中を小さな虫が這うような、嫌な疼きを覚えたのだ。

その疼きに意識を集中すると、高揚感は全く無くなった。
同時に疼きも無くなった。


紬(どういう…こと?)




282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 01:17:35.08 ID:K8ZFbYMC0
ムギちゃんは敵側といっていいかわからんが対立してるサイドなんだな



285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 01:35:25.58 ID:z51nta+UO
さわ子「お邪魔するわよっ!」

唯「あー!さわちゃん!」

校長「…」

唯「…と校長先生!?」

一瞬部室の空気が緊張する。温厚なオジさんだとて、校長は校長だ。

校長は無言で唯に近付くと、両手を優しく唯の両肩に乗せ、
ゆっくりと何度も頷きかける。目の端には、じんわりと涙が滲んでいる。




287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 01:54:45.46 ID:z51nta+UO
さわ子「すっごくうまかったわよ!!」

さわ子も幾分、興奮気味だ。

梓「やればできるんですよ!先輩たちは!!」

梓は唯たちに向かって、かなり失礼な言葉を口走る。

梓(軽音部に入って良かった♪)




289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 02:12:34.42 ID:z51nta+UO
律「う~…よいしょっと!」

律は気持ち良さそうに、伸び、をしている。

紬「…」

澪「ムギ?」

澪が紬の様子に気付く。

澪「どうしたんだ?考え事か?」



291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 02:23:27.09 ID:z51nta+UO
澪「どうしたんだ?考え事か?」

紬「えっと…」

紬はどう答えてよいか躊躇し、適当な話題で誤魔化した。
紬「一週間後、合宿でしょ、その事をね…」

律「合宿か~!聡も喜んでたぞ!みんなと一緒に行けるから!」



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 02:31:41.41 ID:z51nta+UO
唯「憂も和ちゃんも楽しみにしてるよ!」

唯も話題に加わる。

紬は、憂、和、聡を誘ったことを思いだした。

紬「あんまり期待しないでね…」

紬は、校長が誘って欲しげに視線を向けてくるのが分かったが、
敢えて気にしないことにした。



296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 02:44:02.51 ID:z51nta+UO
澪「で、今回はどこの別荘になるんだ?」

紬は、まだ行き先を決めていなかった。

合宿やお泊まりの場所で、琴吹家の別荘を借りる際には、
行き先の最終的な選定を紬に委ねることが恒例となっている。

先日、久しぶりに先祖の墳墓に参ったことを思いだす。
あの辺りの、のどかで、そして好奇心をくすぐる風景と文物。

紬「奈良の…明日香村よ。」
紬は、そう答えた。




299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 02:48:56.79 ID:z51nta+UO
さわ子「へぇ…それはまた…情緒あふれるような…おいしい地酒が…ジュルリ」

律(校長センセの前で、よくそんなこと口走れるよな… )

梓「先輩!先生!合宿はですね…」




一方で、唯達の様子を伺っている『眼』があった。



300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 02:59:21.84 ID:z51nta+UO
ギー太が光を反射すると、その『眼』はギー太のボディに、ほんの一瞬映り込む。

あまりにも短い時間なため、人間の視力で捉えることは出来ないだろう。


文字通り、眼だけであった。
ギー太を仮宿としているようだ。



304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 03:11:27.62 ID:z51nta+UO
対ではなく、一つだけ。

けれど唯が、この『眼』を見ることができたとしたら、思いだすかもしれない。

なぜならこの『眼』は、あの夢の中、朽ちつつある竜、アーリマンの背後で
一部始終を見ていた『眼』なのだから。




306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 03:25:21.83 ID:z51nta+UO
合宿の前日

奈良県某市 琴吹家傘下の博物館


紬は、合宿の準備があるからと、唯達と別に、一足先に奈良に入っていた。

この博物館を訪れるためである。

館長「紬お嬢さん、いらっしゃいませ。」

入り口の手前で、館長が紬に慇懃に頭を下げる。側の学芸員や事務員もそれに倣う。
紬も深々と頭を下げる。




307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 03:39:08.79 ID:z51nta+UO
紬と斉藤は館内に入る。

紬「それで館長さん、お願いしておいた…」

館長「はい、こちらです。」
展示室内を通り抜けて、一行は作業所のような場所に入る。

作業所の中は、幾つかの長机と椅子、用途不明の器材がおいてある。

館長は一番奥の長机の端に、紬たちを案内する。



310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 03:53:13.47 ID:z51nta+UO
長机の上には30cm四方、高さ10cmぐらいの箱が置かれている。

館長は白手とマスクをつける。
年配の女性事務員が紬と斉藤にも同じものを手渡す。

館長は箱の蓋を取り去る。

中にもびっしりと和紙が詰められていた。

館長は、和紙も取り去る。
すると、布で包まれた何かが現れる。




312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:07:57.36 ID:K8ZFbYMC0
布を取ると何かを包んだ和紙が、ってことですか?



314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:13:06.36 ID:z51nta+UO
>>312
説明下手ですいません。
箱の中には、和紙がびっちりと詰められていて、
その中に布で覆われた錠が入っていたということです。




313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:09:20.67 ID:z51nta+UO
館長は布をゆっくりと回転させるように剥いでいく。

段々と中身が見えてくる。

布に包まれていたのは『錠(じょう)』であった。

縦十五cm横三cmほどの細長いものである。




315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:32:29.91 ID:z51nta+UO
うっすらと黒がかった銅色で鈍い光沢がある。おそらく青銅製だろう。

斉藤は紬を見やる。

紬は驚きで目を見開いている。

錠の胴体の部分が、左右に翅を有する円を象ったものだったからだ。

アフラマズダーの翅とほとんど同じ形。




316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:44:23.90 ID:z51nta+UO
館長「電話で説明させて頂いたとおり、
   この錠はアフラマズダーのシンボルとほぼ同じ形です。」

紬「真ん中の円のようなものは?」

館長「日輪を具象化したものです。」

斉藤「すみません…」

斉藤が館長に質問する。

斉藤「錠であれば、鍵とセットになっているのでは…?」
館長「そのはずですが…」

館長「残念なことに、鍵については、どうであったか…
   全く由来が伝わっていないのです。」




317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:53:49.55 ID:z51nta+UO
紬は祖先の墓から帰ったあとも、あの標と半円の石造物が気になって仕方なかった。

そのため父親の許しを得て、琴吹家由来の文物を保管してもいる、
この博物館に問合せを行ったのだ。

翅を有する標を持つ、もしくはケン教由来の文物がないかと。




318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 04:59:55.62 ID:z51nta+UO
紬「この『錠』は…どういった由来のものなのですか?」

館長「ササン朝ペルシア、をご存じでしょうか?」

紬は世界史の授業を思いだす。

紬(パルティアを滅ぼして建国した、ペルシア人の国で、
大化の改新と同じぐらいの時に、イスラム勢力に滅ぼされた…)



319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 05:03:56.53 ID:z51nta+UO
紬「はい、世界史の授業レベルですけれど…」

館長「十分です。」

館長「その錠は、ササン朝の大王専用の祠堂を閉じていたもの…」

館長「…という由来で伝わっているものです。」



320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 05:12:36.55 ID:z51nta+UO
斉藤「大王専用の祠堂?」

館長「大王がアフラマズダーに祈りを捧げる場所です。」

館長「詳しく話しますと…」
館長「ササン朝最後の大王は、イスラム勢力との戦いの最中、殺されてしまいます。」

館長「そして、大王の祠堂は、ムスリム達によって破壊されてしまいました。」

館長「ただ、最後の大王の王子の一人がなんとか生き延びまして…」

館長「その王子は、中国、当時は唐朝です、に亡命しました。」




323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 05:21:49.13 ID:z51nta+UO
館長「その王子が唐に逃げた際に、保有していたもの、だそうです。」

館長「なぜ祠堂の錠を唐にまで持っていったか…。その理由は、全く分かりません。」

館長「錠にまつわる意味についてもです。」

紬「なぜそれが琴吹家に?」

館長「琴吹家に渡ったルートについても、伝わっておりません。」

館長「何より、この錠が本物の祠堂の錠なのかすら…」

館長「第一、最低1400年を経ているわりには、全く錆が出ていないのですから…。」


錠は鈍く輝いており、確かに年月を感じさせない。




325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 05:33:33.40 ID:z51nta+UO
紬と斉藤は作業所を出ると、展示室内の見学をはじめた。

紬は真っ先に『烏飼の臣』の墳墓のコーナーに向かう。

そこでは、墳墓の壁画の、レプリカが展示されていた。


レプリカには、左上のほうに太陽のようなもの浮かび、黒い鳥が数多く飛び回っている。

右下には盃のようなものが描かれており、
その上には、貴人と思われる人物が寝かされている。

黒い鳥は、とくに『太陽』の周辺と、『盃』の周辺を飛び回っている。




351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 11:45:24.39 ID:z51nta+UO
盃のような台座の上に横たわり、貴人は目を閉じている…と思われる。

壁画の古人の顔は典型的なオカメ顔で、
目が細く閉じているのか開いているのか判別が難しい。
(この人物自体は、男性であるはず。)

紬「似ていないわね…」

紬は呟いた。それはそうである。1400年前の先祖だ。
おそらく紬から数えて六十代は軽く溯るだろう。


血の繋がりがあるかどうかすら、かなり疑わしい。




354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 11:54:15.20 ID:z51nta+UO
しかし、紬が気になったのは先祖と思うれる男性よりも、
そのまわりに群がる黒色の鳥である。

鳥たちの『動き』が躍動感を持っているのだ。全く、ヤマト的でない。

館長「鳥葬を描いたものに…見えないこともないですね。」

館長が後ろから声をかける。
館長「私は、その説に反対しますが…」

とも、続けた。




357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 12:07:17.40 ID:z51nta+UO
館長「墳墓の壁画に、このような絵が描かれたということは、もちろん異例中の異例です…」

館長「いわゆる『猿石』と同種の躍動感があるのも確かです。」

館長「しかし、日本にはヤタガラスや、ヤマトタケルと白鳥のように、」

館長「鳥にまつわる神話もあり、というか世界中にあって、その機能も似通っています。」

館長「これはごく当然な話です。」




359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 12:17:20.24 ID:z51nta+UO
館長「イラン高原周辺の諸民族の伝統と日本のそれとに、
直接的な関係を認めようとすりのは、まことに危険な話です。」

館長「ただし、当時の国際的な交流、という点は重んじてみても良いかもしれません。
その刺激の中での試みか、もしくは渡来人の手によるものとして解釈するという…」

館長はそこまで続けると、ふと、あることに思い至った。

壁画を照らす橙灯に照らされて、紬の髪は緩く輝いている。




361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 12:32:02.89 ID:z51nta+UO
紬の髪は日本人にはまず存在しえないほどに、
明るい色をしている。
そして同じく、濃く太い眉毛。

館長は、もちろん、紬の父や、そして祖父の顔も見知っている。

二人とも紬によく似た髪質と眉。



364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 12:45:19.24 ID:z51nta+UO
狂った二人の男、一人は哲学者、もう一人は政治家、の言葉を思いだす。

『金毛種族たるアーリヤ人!』

そこまで考えて、館長は自分の先走った直感に嫌気を覚える。

イラン高原、のみならず中近東の民族構成は、ここ数千年めまぐるしく動いてきた。

仮にコーカサス、もしくは黒海周辺に住んでいた金髪長身の種族が、
イラン高原に移動してきたとして、

それからササン朝が滅びるまでに、どれほど他民族との融合や混交があったのだろう。

館長はそれ以上考えないことにした。




365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 12:51:25.61 ID:z51nta+UO
そう、ペルシア人が七世紀の日本に渡来し、我が国に子孫を残し、

しかもその子孫が先祖の身体的特徴を、現在まで保っているということに。

館長は再び紬に話しかける。
館長「紬お嬢さんは、鳥葬にも興味がおありですか?」

紬は答える。

紬「興味は…ありますね。」




370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 13:09:49.18 ID:z51nta+UO
館長「まず、鳥葬を発明した人々がどのよう者たちだったかについては分かっておりません。」

館長「けれで、メディア人、と呼ばれる、アーリヤ人の一種族で、
古代ペルシア人と非常に近しい関係にある民族。」

館長「少なくとも紀元前七世紀には、
   そのメディア人が鳥葬の習慣を持っていたことは分かっています。」



381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 14:26:21.21 ID:z51nta+UO
館長「そのメディア人から古代ペルシア人に、鳥葬の伝統が伝わったようです。」

館長「これがいつ頃かも、よく分かったおりません。」

館長「鳥葬の意味については…」

館長「まず、鳥類と霊的存在、とくに善神との関わりです。」

館長「先ほども少し触れましたが、鳥は神の眷属、というのはよく聞く話でしょう?」

紬「はい。」

館長「中近東あたりには、犬や猛禽類を人々の守護者と見る向きがあったようです。」




385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 14:50:58.31 ID:z51nta+UO
館長「もう一つは、死体を好む悪神の存在です。」

館長「『ナス』、と呼ばれるその悪神は、羽根を有する小昆虫の姿であらわされ…」

館長「死体の穢れを周囲にまき散らし、拡散させると考えられていたのです。」

館長「これには、伝染病とと言う意味も含められています。」

館長「かと言って、火葬にするわけにもいきません。
   その理由を話す前に、もうすこし、ナスについて…」




387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 15:03:29.64 ID:z51nta+UO
館長「このナスは時代を経ると、アンラ・マンユ配下の大悪神六体の一つ…」

館長「『ドゥルジ』と同一の存在とされるようになったんです。」

紬「ドゥルジ…」

その名を口にすると、一瞬、先日のように、紬の体中を虫が這う感覚が襲う。

館長「『虚偽』、を意味します。」




389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 15:16:31.12 ID:z51nta+UO
館長「ではなぜ火葬にしないのか?
   それは、死体を火にくべることで、
  火が穢されると考えられたからです。」

館長「拝火教の名の通り、ゾロアスター教徒が、
   火に対して礼拝を行うのは、ご存じですね?」

紬「はい。」

館長「火は彼らにとって、スプンタ・マンユ、『聖霊』を意味します、の化身であり、
   アフラマズダーに帰属する存在でした。」




392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 15:27:59.20 ID:z51nta+UO
館長「鳥葬を行う際には、寸胴の円筒をくりぬいた形の祭壇の上に死体を安置します。」

館長「壁画の祭壇のような物と似てないこともないですが…
   先ほど言った通り安易な比定はしないほうがよく、
   また、壁画のほうは円筒ではなく、どちらかと言えば半球ですし…」

紬は墳墓横の石造物を思いだす。あれも、どちらかと言えば半球だ。



393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 15:39:37.46 ID:z51nta+UO
斎藤「お嬢様。」

斎藤が声をかける。

斎藤「管理人との約束の時刻まで、二時間です。」

その日は午後に入ってすぐ、別荘の管理人と落ち合う予定になっていたのだった。
昼食もとらねばならない。


紬は、館長に頭を下げながら、

紬「館長さん、今日は色々とありがとうございました。」
館長「いえ、お役に立てたのであれば…」




394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 15:55:36.98 ID:z51nta+UO
紬「また何かありましたら…」

館長「どうぞどうぞ!お時間があるなら、会長や奥様もご一緒に!」

紬「伝えておきます♪」



翌日

京都駅 近鉄京都線ホーム


唯「まだ来ないのかなぁ…」

和「まあ、気長に待ちましょ。」

唯達一行は明日香村へと向かうため、近鉄京都線のホームにいた。




397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 16:09:10.05 ID:z51nta+UO
一行は橿原神宮駅行きの列車を待っている。同駅で一度乗り換える必要があるのだ。

律「…」

聡「…」

田井中姉弟は、ベンチに座り込み、無線通信を使った対戦ゲームに興じている。

さわ子「やっぱ高いわ…近所のスーパーで買っとくんだったぁー!」

さわ子は、キヨスクでアルコールとつまみを買い終わった所だ。




402 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 16:40:07.83 ID:z51nta+UO
澪は、明日香村ガイドを見ながら眉をつり上げて、思案顔だ。

半分タテマエだとしても、練習第一の澪には珍しい。
和「澪、何をなやんでるの?」

澪「四泊五日で練習入れたらさ、どれだけ見て周れるんだろ…」

澪「五日丸々使える和が羨ましいよ…」

和(基本的には勉強するつもりなんだけど…)



404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 16:45:43.27 ID:9rHm7lQ20
ゾアメルグスター派集まれー(^o^)ノ



406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 16:52:39.75 ID:3l8lcGwiO
>>404
ゾアナ王国に帰れ



407 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 17:00:06.42 ID:z51nta+UO
唯は本を右小脇に抱えて、言葉そのまま、左うちわをしている。

暑さに弱いだけあって、暑天のもとでは本を読む気にならないらしい。

抱えているのは、梓経由でこのまえ手に入れた『アーリマン讃歌』だ。

ギー太とともに背負ったリュックにも、何冊か入れてある。




420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 18:55:59.36 ID:z51nta+UO
梓と憂も澪と同じように、奈良県に関する情報誌を読んでいる。

こちらはグルメ雑誌だが…

梓はここ一週間、唯たちに一度もお小言を吐かなかった。

軽音部、とくに唯が遂に本領を発揮した!と信じるまでになっている。


信じているのだろうか?梓が?梓たちが?
その根拠の源は?




422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 19:05:14.61 ID:z51nta+UO
『カーシハラズングウイクィキュゥゥコゥ…』

アナウンスの声色が聞こえる。

唯「あっ来たみたいだよ!」

赤色の列車が入場してくる。
賑やかに列車の中に入っていく八人。

一行は、対面座席のある一画に席をとる。




424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 19:14:35.97 ID:z51nta+UO
進行方向、つまり橿原神宮方面を向いて、列車は右側のホームに停車している。

さわ子はホームと反対側の対面座席に座ると、前に梓と憂、横に聡をひっぱり込んだ。

すでに発泡酒500m缶二本を空けている。

さわ子「可愛い子ちゃんたちは…おねーさんとお話しましょーねぇ…ウフフ」

目が少し血走っている。

アーリマンのために弁解しておくが、これに関して彼の勢力に責任はない。




425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 19:26:10.28 ID:3l8lcGwiO
さわちゃんwwwwww



426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 19:26:30.78 ID:z51nta+UO
時刻は午前10時を少しまわったあたりである。

梓「ハァ…唯先輩が真面目になったと思ったら…」

憂「まあまあ、梓ちゃん…」

聡「ビクビク…」

さわ子たちと、通路を挟んでホーム側に、律と澪、唯と和が座る。

律「よくやるよ…」

澪「気にするな…」

和「ええ…」

唯「♪」

唯は座席に付くと、ギターのソフトケースからギー太を取り出した。




427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 19:39:39.94 ID:z51nta+UO
律「ゆい、おま…何やってんだ!?」

和「ここで演奏するわけじゃ…ないわよね?」

唯「可愛い子には旅をさせろっていうでしょぉ?」

唯「ギー太にも電車からの景色を見せてあげようと思うんだ♪」

律「…」




429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 19:53:28.10 ID:z51nta+UO
澪「プッ…」

和「まったく…唯らしいわね。」

唯「えへへ…」

憂(おねえちゃんかわいいよぉぉ…)

『カーシワラズングウ…』

発車を知らせるアナウンスが聞こえる。

唯「ギー太!電車が動き出したよっ♪」



433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 20:10:30.09 ID:z51nta+UO
さわ子「コップについでついでぇぇ…そそそそ!良い感じじゃない!」

さわ子は憂からもらった紙コップを使い、聡の手で発泡酒をお酌させている。

左手で聡の太ももを撫でることも忘れない。

聡「…///」

犯罪の匂いがする。


律「そーいやさあ、今日行く明日香村って、大昔は日本の首都だったんだろ?」

弟の危機を無視して、律が話しはじめる。



434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 20:21:23.79 ID:3l8lcGwiO
さわちゃんアーリマンより穢れてるwww



435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 20:21:32.74 ID:zGXhXb+xO
聡逃げてぇぇ



437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 20:29:09.68 ID:z51nta+UO
和「そうね、飛鳥時代って呼ばれる時代はそうかしら。」

和「というか、大王、つまり天皇の宮が置かれた場所だから、
  平安遷都まであちこちに移転してるわ。」

和「飛鳥時代は、敏達天皇もしくは推古天皇から持統天皇まで、約100年くらいね。」

唯「ウマコとかイモコとかエミシとか、変な名前ばっかだよね♪」



441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 20:44:08.26 ID:z51nta+UO
澪「昔の人からしたら、私たちの名前のほうが変だろ?」
唯「あっ…そうか。」

唯「ならなんで、明日香村あたりを都にしたの?」

和「そうねぇ…当然地の利とか、
  あと、当時最有力の豪族、蘇我氏の地盤だったとかってことらしいけれど。」

唯「ふーん…」




442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 20:57:13.49 ID:z51nta+UO
列車は平城京跡のすぐそばを通って、さらに先へ進む。

さわ子は両側に聡と憂、膝の上に梓をのせてセクハラし放題。

澪は風景を見ながら何かを書き取っている。

和は聞き手にまわって、律ととりとめのない話を。

唯は『アーリマン讃歌』の祈祷文に関する箇所を読み進めている。

人間の意識を、こちらに都合よく操作する、といういわゆる黒魔術のような内容である。



443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 21:18:05.91 ID:z51nta+UO
『アーリマン讃歌』の内容は、アーリマン自体に捧げられたものと、
配下の諸デーウァに捧げられたものに分けることもできる。

唯が現在読んでいる箇所は、『タローマティ』という大悪神、
それも女神だと思われる、への祈祷文だ。



445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 21:31:15.24 ID:z51nta+UO
唯はこの部分を読み終えると、小さな声で独り言ちた。


唯『タローマティ、臆見を司る君。』


あまりにも小さ過ぎて、誰も耳に止めなかった。

唯がその言葉を発し終えると、ギー太の中に住む『眼』の瞳孔が、数度収縮と拡大を繰り返す。


なぜそう発したのか、その理由は唯自体にもわからなかったし、
発したという事実さえ、唯の意識のはるか後方に消え去ってしまった。




446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 21:43:58.40 ID:z51nta+UO
ギー太の中の『眼』は、車窓を眺めているようにも思える。

車中ではもう、『眼』が動きを見せることはなかった。


けれど『眼』は、車窓を見ているのだろうか?
人の心見透かす、タローマティの目は?



449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 22:18:15.66 ID:z51nta+UO
飛鳥駅前

時刻は11時を少しまわったあたりである。

唯「着いたよっ!!」

律「それほど田舎でもないかな?」

和「駅から離れると、ほんとにのどかな所らしいわ。」

律(『和』だけにね…)




452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 22:22:57.91 ID:z51nta+UO
明日香村は、奈良県の真ん中あたり、
橿原市から見て南部、桜井市から見て南西部に位置している。

一方、飛鳥駅は、明日香村のかなり西より、
橿原市と、明日香村からみて南西の高取町との境近くにある。


ともかく、この風光清々しい場所で、大化の改新を始めとした、
日本史における幾つかの激動が起っていたのだ。




454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 22:35:43.69 ID:z51nta+UO
律「ムギからメールで、もう着いてるってよ…」

唯「どこ~?」

澪「お前ら…どう考えても、あれしか考えられないだろ…」

澪が指さした方向には、本当に右左折できるのか?
というぐらいに長いボディの、黒色の車が止まっている。

梓「…(唖然)」

聡「り、リ○ジン…本物はじめて見た…」



457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 22:46:22.64 ID:z51nta+UO
唯「おーい!」

唯が駆け寄って手を振る。

するとリムジンは動き始め、ゆっくりと近付き、一行の前で停車した。

運転席から斎藤が、後部座席から紬が降りて来る。

紬「みんな、ようこそ、飛鳥の里へ♪」

律「ポカーン」

澪「ハァ…」

さわ子「今度の衆院選、左派政党に投票したくなったわ(キッパリ)」



458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 22:54:14.71 ID:z51nta+UO
澪「ムギ、他の車はなかったのか?」

紬「ごめんなさい…これがウチで、一番たくさん人が乗れる車なの。」

澪は、小型マイクロ借りるか、二、三台に分乗すれば良いだろ、
と思ったが口には出さなかった。




460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 23:04:54.92 ID:z51nta+UO
一行を乗せたリムジンは、南部へと進路をとる。

紬「別荘まで20分かかるわ。」

助手席の紬が振り向きながら言う。

紬「あ、あと途中、寄りたい所があったら言ってね!」

明日香村南西部のメジャーなスポットはキトラ古墳しかない。
あとは、ほとんど畑か水田だ。
主要な見所は北部に集中している。



462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 23:14:57.74 ID:z51nta+UO
結局、あまり周囲の風景に気を払わず、リムジンの中でおしゃべりに収支する。

タローマティの『眼』は再び収縮と拡大をし始めていた。

タローマティの『眼』は、数千年来を経、この地に溜まった人間の欲望の臭い、
そして同胞と敵対者の臭いを見ている。



463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 23:24:15.61 ID:z51nta+UO
そして、尾根がまさに張り出さんとする所に建つ、
大きな屋敷の前にリムジンが止まった時、


タローマティの『眼』は、ある一点を見て、はじめて、『眼』、つまり己自身を細めたのだ。

タローマティが何を思っているのかは分からない。



465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 23:30:57.33 ID:z51nta+UO
琴吹家別荘前 駐車場

梓「すごく大きな別荘ですね…」

さわ子「嫌になっちゃうわ…」

律「聡、荷物持て!」

聡「えー…」

律「持て!男子の本分を尽くせ!」

聡「わかったよ…、あ、澪姉のも持つけど…?」

澪「いいのか聡?悪いな。」



468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 23:38:11.48 ID:z51nta+UO
憂「よいしょっと…これで全部…」

憂「…あれ、お姉ちゃんは?」

大きめのバッグを持ちあげながら、憂が言う。

和「唯がいないの?」

憂「はい。」

さわ子「唯ちゃん?唯ちゃんなら、あそこよ。」

さわ子が示した方向には、別荘の母屋の左側を、尾根に向かって歩いていく唯の姿。



471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/21(火) 23:44:57.97 ID:z51nta+UO
唯「…」

唯はさらに小走りになる。

別荘の左裏手の小道にでる。
小道は、下れば公道、上れば尾根を進む。

そして小道から尾根側に10mほど進んだ所に、二つの石像があった。

石像に近寄る唯。




475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:02:12.36 ID:z51nta+UO
一つの石像は鎧を纏い、ヘルメット状の兜を被り、剣を持っている。
古代日本のますらおの姿だ。
ただ、背後には放射線状の光背がある。

もう一つの石像は、猿のような形をしている。
右手に体長の半分くらいの棒状の武器を持ち、
その表情は忿怒で変形している。
明王たちの義憤の表情とは全く異質な、である。


唯は戦士のような石像には気にも留めず、猿のような石像を手でふれる。




477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:11:42.27 ID:5/I6CW4fO
一瞬、唯の心に大きな感情の波が生じる。
がむしゃらに目的を追求するときに覚えるような、焦燥感が走った。

不快ではなかった。
感覚が研ぎ澄まされるよう。

ギー太に住まうタローマティは、ギターケース越しに、より、『眼』を細めた。
タローマティが何を覚えているのは分からない。



480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:20:01.03 ID:5/I6CW4fO
「お嬢様のお友達かな?」

背後から声がする。
少しずつ焦燥感は落ち着いていく。

唯「…」

「どうかしたかね?」

唯「ブルッ…」

唯「あ。」

唯は声のほうへ振り向く。



482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:27:53.10 ID:5/I6CW4fO
眼鏡をかけた老人が立っていた。
麦藁帽に泥のついたナイロン性の黒ズボン、上は肌着一枚。
農家の旦那さんのような格好だ。
還暦はとっくに過ぎたであろう。

唯「えっと…」

唯「第一明日香村人さんですか?」

老人「はあ?」

老人はキョトンとする。



485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:35:33.66 ID:5/I6CW4fO
管理人「おれはほれ、そこの琴吹屋敷の管理をしてるもんだ。」

唯「あっ!じゃあムギちゃん家の…」

管理人「むぎ?むぎ…つむぎか!」

管理人「やっぱりお嬢様の友達の!」

唯「はい!」




488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:40:33.61 ID:5/I6CW4fO
管理人「そっかそっか!」

管理人「よく来たねぇ!」

唯「お世話になります!」

管理人「ああ!食事だけ!…は期待してなさい!」

そう言うと、管理人は、腰にかけたタオルで汗を拭う。

管理人「で、なんで屋敷の外れにいるんだい?」

管理人は唯に聞く。




492 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 00:49:15.76 ID:5/I6CW4fO
唯「この石像が気になっちゃって…」

管理人「それかぁ。まあ、いわゆる猿石の類いだわな。」
管理人「二つで組み合わさってるらしいんだよ。」

管理人「それと、ほれ、そこのお堂。」

管理人はもっと尾根側の斜面を指す。

そこには五畳ぐらいの大きさの、木製の建物が建っていた。



494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:00:56.48 ID:5/I6CW4fO
いわゆる観音像などを納めてあるような、仏教系のお堂である。

管理人「そのお堂には弥勒菩薩の仏像がおられてな…」

唯「へぇ~」

管理人「琴吹家のものじゃないんだが、近頃は仏像泥棒が多いから、
    ついでに管理してるんだ。」




496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:12:02.76 ID:5/I6CW4fO
管理人「そのお堂の由緒、まあ、どうして建ってるかってことだけど…」

管理人「昔は、お堂なんかなくて、石造の弥勒菩薩が野晒しになってたんだ。」

管理人「かなり古いもんだったらしいんだが、いつのころからか無くなってしまってね。」

管理人「危篤な方がかわりにお堂を建てて、弥勒菩薩の仏像を置いたそうだよ。」



497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:13:59.55 ID:5/I6CW4fO
管理人「で、その『ますらお』みたいな像は弥勒菩薩の家来で、
   その猿みたいな化け物と戦っているんだって。」

管理人「弥勒様の石仏のほうが古いのか、
    それとも、その猿石みたいな奴のほうが古いのかは、分からないがね。」

唯「猿…」

猿じゃないのに、と唯は思った。



499 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:26:49.63 ID:5/I6CW4fO
唯(アエーシュマ。)

唯(忿怒司る首人〈おびと〉)
唯は猿のような石像をじっと見つめた。

管理人「ん?どうしたんだい?」

唯「あっなんでもないです!」

管理人「なら…」

管理人「あっ!よくない!」



500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:29:55.14 ID:5/I6CW4fO
唯「えっ…」

管理人「あんたがここにいるなら、お嬢様を待たせちまってるわ!」

管理人「ごめんね、先に母屋に帰ってるから!お堂も見ていいよ!
    弥勒様には触らないでよ!」

そういうと管理人は母屋のほうに走っていった。



502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:34:33.94 ID:5/I6CW4fO
唯「管理人さん行っちゃった。」

唯「私もみんなのとこ行こっ♪」

唯はお堂に見向きもしない。
方向転換して、管理人の後を、てくてく追う唯。


その時、唯の影から球状の形が顔を出す。



503 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:41:30.30 ID:5/I6CW4fO
球状の物体は、その胴体の最大円周まで、
つまり、ちょうど半球ぐらいの形になるまで、体を唯の影から現す。

色は唯の影と同色。平面のようにも見えるが、しかし球である。

唯は鼻歌をならしつつ、小道を下る。

球状の物体から、男性器のようなものが、生えるようにして現れる。




504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:49:20.58 ID:5/I6CW4fO
男性器のような物は、跳躍するようにして球状の物体から分かれ、
弧を描き、猿のような石像に接触する。

すると、石像に吸い込まれるように、それは石像の中に消え去る。

唯は全く気付かなかった。


タローマティの『眼』は、これをギー太の内から見届けると、
瞳を上にずらし白目を見せた後、
すぐに再び、何の感情も持たぬ形に戻った。




505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:50:25.64 ID:5/I6CW4fO
明日は仕事なので寝ます。
残ってましたら、職場からこっそり書きます。



506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 01:50:42.58 ID:RoJomihNO
怖くなってきたな



509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 02:02:04.89 ID:RoJomihNO





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この記事へのコメント
つまんね
2009/08/02(日) 20:50:50 | No.2735 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
布教活動だろJK
2009/08/11(火) 23:50:03 | No.2769 | 匿名 | #-[ 編集]
不気味で怖い
凄いな作者
とても面白いよ
2010/09/06(月) 21:32:22 | No.7499 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2012/04/07(土) 23:54:41 | No.7943 | | #[ 編集]
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