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蒼星石「いい天気だなぁ」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 13:58:43.90 ID:50oUlGoQ0
目を覚ますと既に日は昇っていた。
いつもならこんなに寝坊するはずはないのに、と首を傾げる。

「ふああ・・・昨日遅くまで歩いてたから疲れたのかな?」

確かに昨晩は2時過ぎまで出歩いていたような・・・
思い出した。少し遠出したら終電の時間を過ぎてて、とぼとぼ歩いて帰ったんだった。
失敗したなぁとボソッと呟く。誰かがこっちを見た。気にはしない。

「今日は何処に行こうかな。・・・そうだ、本屋に行きたかったんだ」



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ブログパーツ 蒼星石「いい天気だなぁ」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:02:09.13 ID:50oUlGoQ0
街の本屋に行こう。
重い腰をあげて神社の境内を後にする。
一晩泊まってただけだからバチなんかあたりっこない・・・よね?多分。

僕は最近よく歩くようになった。散歩が好きになった。
散歩は良いよ、歩きなれた道でも新しい発見がある。
注意深くあたりを見渡しながら歩くのがコツなんだ。
多分僕だけだと思うけどね、そんなにキョロキョロしながら歩いてるの。

「ワンワンワン、ワンワンワン!!」

犬が吠える。
何だよ、別に迷惑かけてるワケじゃないじゃないか。




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:05:18.38 ID:+NIn7c2l0
わんわんお



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:07:28.62 ID:50oUlGoQ0
「うっとおしいなぁ、ちゃんと躾けないとダメだよおばさん」

「こら!そんなに吠えるんじゃありませよ!」

そうそう、ちゃんと言い聞かせないとね。
犬だってきちんと言えば分かるんだよ。

「いい気味だね。人様に迷惑をかけるからこういう事に・・・」

「??」

「おっと、失礼しました」

こんなこと言うつもりじゃなかった。
僕は一礼して小走りでその場を去った。
我ながら悪い癖だと思う。なんかこうツンとしたモノの言い方。
時間はたっぷりあるんだし、治すように努力しよう。




6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:11:20.42 ID:50oUlGoQ0
段々と人が増えてくる。
そういやすぐそこは大通りだった。
街は活気があっていいんだけど・・・人が多いのはいただけない。
分かってるさ。すごい我侭だよね、この言い分は。
気をつけて、人にぶつからないように本屋を目指す。
幸いにも本屋はすぐそこだ。

「いらっしゃいませー」

店員の大きな声が聞こえる。
いいねぇ、元気に挨拶してもらうと不思議と僕も元気になる。
すぐに後ろからおじさんが追って入ってきた。。
周りをあまり見てなさそうな人だ。足元に僕がいるってのに突っ込んでくる。迷惑だ。
何食わぬ顔で躱す。舌打ちしたのは内緒だよ?
気を取り直して僕は週刊誌のコーナーに向かった。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:14:17.61 ID:wt3M+Im90
こいつらドールだよな?



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:15:25.59 ID:50oUlGoQ0
そうそう、最近漫画も読むようになったんだ。
以前はどうだったかな・・・覚えてないんだ。
やっぱり娯楽は必要だよ。僕は特に趣味も持ってないし、お金もない。
あ、非常時に備えて1万円くらいは持ってるよ。無一文じゃあない。
自由に使えるお金がないって事さ。
仕方ないんだよ、こういう身分だしね。

・・・

・・・

・・・・・・




9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:20:24.76 ID:50oUlGoQ0
・・・・・・・・・

ふと時計を見る。13時・・・13時!?
確か店に入ったのが11時でしょ。・・・2時間も週刊少年ジャンプを読んでたのか。
僕はじっくり読む方だけどさ、2時間は読みすぎだね。
でもさ、面白いんだし仕方がないじゃないか。

「単行本・・・買いたいなぁ」

ポケットに忍ばせてる1万円とにらめっこする。
どうしよう・・・欲しいなぁ・・・ピンクダークの少年。

「いや、ダメだ。これは非常用だよ。我慢するんだ僕!」

1万円を再びポケットにしまう。
偉い、偉いぞ僕。我慢も時には大切なんだ。

欲求を抑え、本屋を後にする。
でも来週号を読んだらまた欲しくなるんだろうな・・・単行本。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:25:01.83 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

電信柱の上からつまらない街を眺める。
つまらない。アリスゲームはあれ以来全く進んでいない。
それに加えて・・・ミーディアム、柿崎めぐと一緒に居すぎたせいなのか。
自分の心が・・・気持ちが・・・

「この水銀燈にも、分からないことがあったのね」

彼女は心のモヤモヤを振り払うようにその場を飛び去った。

水銀燈はひたすら空を舞った。
何かあるといつもこう。自分でも分かってる。

「・・・癖ってヤツねぇ」




13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:29:11.49 ID:50oUlGoQ0
別にこの癖を治す気は無い。
狭い空でも飛ぶのは気持ちがいい。
他の姉妹に飛べるのは居ない。いい気味だわと口元を緩ませた。

「この気持ちよさが分からないなんて三流以下ねぇ」

あれ?そういや誰か飛べたような・・・
えーと・・・か、か・・・??

まぁいいか、と思い出すことをやめ、街から少し離れた場所に飛んで行く。

「かーしーらー・・・」

「??」

だれかの悲鳴が聞こえた気がした。




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:32:47.56 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「ふぅ、本屋で余計な時間とっちゃった」

公園のベンチで一息つく。
ホントにいい天気だ。この公園は誰も来ないからゆっくり休めるんだ。
秘密のスポットって言うのかな?

「ふああ・・・」

辺りを見渡す。誰もいない・・・よね?

「ちょっとだけ、お昼寝しちゃおうかな~」




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:35:33.67 ID:50oUlGoQ0
誰も居ないのにご丁寧におやすみなさいと言う。
返事は帰ってこない。当然だ。
でも、何事にもけじめは必要だ。
いただきますとかさ、きちんと言うべきだよね・・・

いや、そんな事後ででも考えられるか。
ホントに寝よう。

そういうことを考えながら、やがて蒼星石の意識は闇に堕ちて行った。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:40:00.37 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

おかしい。おかしい。
おかしいおかしいおかしいおかしい。

こんなこと、あるワケが無い。
確かに、私が確かにこの手で奪ったはず。そう自分に言い聞かせる

「・・・レンピカ」

そう呟くと二体いる内の一体が姿を表す。人工精霊レンピカ。
かつて蒼星石の人工精霊だったけれど、蒼星石のローザミスティカを奪ったから水銀燈のものになった。

「レンピカ、あなた・・・説明できる?」

レンピカがチカチカと光る。
説明できない、といってるのか。慌しくその場を飛んで回る。

「説明できない?じゃあベンチで寝ているのは誰だって言うのッ!?」




もう動かないはずの蒼星石が、ベンチで寝息をたてていた。




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:46:00.77 ID:50oUlGoQ0
「何で?確かに私の中には蒼星石のローザミスティカがある。レンピカも居る・・・」

上手く頭が回らない。
流石にこれは予想外だった。
ローザミスティカが無いとローゼンメイデンは動くことも出来ないただの人形になるハズ。

でも蒼星石は動いてる。
百歩譲ってnのフィールドならまだ分からない事もない。
だけどここは紛れもなく現実の世界。

水銀燈はゆっくりと寝ている蒼星石に近づく。
なるほど、確かに蒼星石だ。
この顔、この服。そしてこの帽子・・・

「寝てる、のよね?」




22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:50:07.56 ID:50oUlGoQ0
とりあえず起こそう。
そう思い水銀燈は蒼星石を抱きかかえようとした。

「ハッ!?」

「え?」

蒼星石の目が見開かれる。
何だ、起こす必要もなかったわね。

「ぼ、僕に触るんじゃあないぞッ!!」

蒼星石の手にはナイフが握られていた。
刃はこちらを向いている。

「え・・・!?」




24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:54:21.70 ID:50oUlGoQ0
「君は誰だ?いや、僕が見えるのか?」

「誰って・・・ちょっと、何もしないからそのナイフをしまって頂戴」

「本当に何もしないんだね?」

蒼星石は慣れた手つきでナイフをしまう。
どうやらナイフを扱うのは一度や二度じゃ無いようだった。

「で、君の名前は?」

「はぁ?冗談で言ってるの?・・・蒼星石」




26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 14:58:41.73 ID:50oUlGoQ0
「・・・僕の名前を知ってるのかい!?」

心底驚いた顔で水銀燈の顔を覗き込む。
名前を当てただけなのになんでここまで驚くのだろうと水銀燈は首を傾げる。

「そう、僕の名前は蒼星石。でも・・・いつ、どうやって死んだのかは思い出せないんだ」

「死んだ・・・?」

「うん。名前しか思い出せない幽霊ってワケさ」

幽霊。
ローザミスティカを失ったら幽霊になるのだろうか?
いや、ドールに死という概念は存在しない。
それなら一体何になる?一体どうなる?




27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:02:57.11 ID:50oUlGoQ0
恐らく、目の前の蒼星石が答えだろう。
それとも蒼星石は稀なパターンでこうなったのか?

前例が無い分、考えても無駄ねと水銀燈はため息をつく。

「で、君の名前は?」

「・・・水銀燈よ」

「水銀燈?変わった名前だね」

「よく言うわね貴女」

こうなるものなのか、と思った。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:05:31.58 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「ジュン!ジュンは何処ですぅ!?」

「何だよ・・・うるさいな」

翠星石の声が桜田家に響き渡る。
いつもの事だ。

「クッキーを焼いたからみんなで食べるですよ!」

「えぇ?僕は別にいいよ・・・後でもさ」

「ダメったらダメです!もうみんなリビングで待ってるんですよ!?」

「・・・分かったよ。今行くから」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:10:20.60 ID:50oUlGoQ0
翠星石は大分元気を取り戻した。
蒼星石が動かなくなってからしばらくはとてもじゃないけれど見れたものじゃなかったけど。
真紅や、雛苺、姉ちゃん、みんなが心配して支えてあげたからかな?
僕?・・・そりゃあ心配じゃなかったワケじゃないさ。
あいつのギャーギャー叫ぶ声を聞くのが日常になっちゃったワケだし・・・
結果的には良かったと思う。

ただ、今でも時々、ホントに時々だけど・・・
夜中に翠星石が泣いてることがある。鞄の中で。
夢を見て泣いてるのか、寝ないで泣いてるのかは分からない。
分かってる。全て忘れる事なんかできっこない。
・・・こればっかりはどうしようもない。
当たり前だけど、時間が解決してくれるハズだ。

「ジューーーン!!さっさと降りてきやがれですぅ!!」

はいはいと叫ぶように返事して、パソコンの電源を切る。
やれやれ、またうるさく言われるのかな。




32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:15:20.52 ID:50oUlGoQ0
「ごめん、ちょっとキリが悪かったんだよ」

「ふん、みんなを待たせた罰です。さっさと紅茶を淹れやがれですぅ!」

「全くだわ。さっさと準備をして頂戴」

リビングにつくなり予想通りの言葉を浴びせかけられる。
まあ何となく分かってはいた事だ。
いつもの様にティーポットと人数分のカップを準備する。

「はやくはやく、もうヒナ我慢できないのー」

「ダメよ。ジュンが紅茶を淹れるまで待ちなさい」

「うー・・・」




33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:20:30.57 ID:50oUlGoQ0
「まぁーったく、チビ人間は何をやらせてもダメダメですねぇ」

「うるさいぞ。お前の分の紅茶は抜きだ」

「はあぁぁぁーーー!?何言ってやがるですか!!」

プッ、冗談に決まってるだろ。
・・・と言おうと思ったらテレビのリモコンを投げられた。
全力で投げるな、加減してくれてもいいだろ!

「つまらん冗談を言うからこうなるんですよ」

「くそ、覚えてろよ・・・」

痛みが引かないまま紅茶を注ぐ。
雛苺がクッキーに手を出そうとしてるが、真紅はそれを見逃さない。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:25:23.78 ID:50oUlGoQ0
「・・・雛苺?」

「は、はいぃ!」

そんなにビクビクするくらいならつまみ食いをやろうだなんて考えるなよ。

「はい、お待ちどう様」

「ご苦労様。それじゃあ翠星石、いただきましょうか」

「ですです。めしあがれですぅ!」

「うわーい!いっただきまーすなのー!」




37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:30:43.74 ID:50oUlGoQ0
雛苺ががっつく。そんなに一気に食べるなよ。

「んぐんぐ、美味しいの!」

「当然至極ですぅ」

ヘヘん、と翠星石が胸を張る。
僕も小さいクッキーを一つ頬張った。

・・・確かに美味い。サクッとした食感と程よい甘さが紅茶によく合う。
スコーンもいいけどクッキーも悪くはないな。

「あら、美味しいわね」

「うん。美味いぞ翠星石」

「本当ですかぁ?頑張って作った甲斐があったですぅ!」




38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:34:06.48 ID:50oUlGoQ0
真紅も僕も素直に驚嘆の声を上げる。
それくらい美味しかったんだ。

「それじゃあ翠星石もいっただきまーす!」

翠星石がクッキーを口に運ぼうとした次の瞬間

ピンポーン・・・

「・・・はぁ~、翠星石もクッキーが食べたいんですのに・・・」

玄関のチャイムが鳴った。




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:39:36.02 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「ゴメンね、触るのはいいんだけど触られるのはダメなんだよ」

水銀燈は蒼星石の隣に座り話を聞く。
生前・・・というのはおかしい気もする。
が、蒼星石が幽霊と名乗ってる以上は死者として扱うべきだろうか?と考える。
生前の蒼星石よりも明るく、あまりひねくれてない。
やはり記憶がなくなるとこうも変わるものなの、と水銀燈は感心した。

「ダメ?どうして?」

「理屈は分からないけれど、触られた部分は取りこまれて動かなくなるんだよ。以前それが原因で右腕を失いかけたんだ」

「死んでからも大変なのねぇ」

「そりゃそうさ、死んでからの方が大変に決まってる」




41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:45:34.92 ID:50oUlGoQ0
「生前の記憶はないんでしょう?大変よねぇ」

「そう。でも結構稀なケースみたいだよ?そこら辺にいる幽霊に聞いても結構の人は記憶が残ってる」

「じゃあ貴女は何で記憶が?」

「うーん、なんか凄い恨みとか後悔とか、はたまた別の問題か・・・どうだろうね」

アリスゲーム。
何故か水銀燈の頭にはそれが過る。

ローザミスティカを奪われたから?
それともマスターが救われるのを最後まで見届けられなかったから?

・・・翠星石と離れてしまうのが嫌だったから?




43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:51:09.05 ID:50oUlGoQ0
「・・・貴女の知り合いが近くにすんでいるの」

「僕の・・・知り合い?」

「えぇ。姉妹がね・・・どう、会いたくない?」

自分でも何を言ってるのか良く分からなかった。
薔薇乙女の最凶ドール。そう自負していたはずだ。
今回の事でもアリスゲームを脱落した、しかも幽霊になった蒼星石の事なんか興味はないはずだ。

でも、心のどこかで翠星石と蒼星石に負い目をおってるのかもしれない。
アリスになる過程とは言え、翠星石の目の前で蒼星石のローザミスティカを奪ったのは自分。
砂漠の一粒ほど後悔はしていない・・・と思ってた。
やはり・・・めぐと心を交わすうちに水銀燈の心に変化が生まれたのだろうか。

「私としてはどっちでもいいけどぉ・・・どうする?」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 15:55:26.54 ID:50oUlGoQ0
「行く」

蒼星石は即答した。

「今の生活は悪くはないよ?でも、自分は生前どうだったか位は知っておきたいんだ」

「あと、気になることがあるんだけど・・・いいかな?」

「ええ。何かしら?」

「何で僕の知り合いが近くに住んでることを知ってるのかい?」

「それは・・・」

「君は僕の事、何か知ってるんじゃないのかい?」

「・・・」




46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:00:11.06 ID:50oUlGoQ0
「こんな回りくどい事しなくても、君が僕のことを教えてくれてもいいんじゃないの?」

少し間を開けて、水銀燈は答える。

「それは無理よ。貴女と一番近くにいた人物から聞いた方がいいに決まってるからよ」

「・・・ふぅん」

ちょっと厳しい言い訳のような気もするが、正しい事だと水銀燈は思う。

―――私にそんな資格は無いのだから。

「何か言ったかい?」

「いいえ、何も言ってないわよぉ」




47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:07:19.66 ID:50oUlGoQ0
翠星石達が住んでいる家・・・桜田家に向かう途中にいろんな話を聞いた。
魂の結界や魂の許可が存在すること。
誰かの結界の中に入るには魂の許可が要るとか。
全く面倒くさいわねぇ、と水銀燈は呟く。

「本当だよ。仕事の際にわざわざ玄関から許可を得るのは大変なんだよ」

どうやって許可をとるのだろうか。
少しだけ興味がある。その仕事とやらも。
死んでからも仕事をこなす蒼星石を僅かに尊敬した。

「でも貴女、どうやってその事を知ったのよ。幽霊はみんな知ってるワケ?」

「死んだらみんなこの事を知ってる!と思ったら大間違い。僕は別の幽霊の人から教えてもらったんだ」



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:11:33.65 ID:50oUlGoQ0
その人も生前の記憶が無いらしい。
蒼星石の事を見て変わった幽霊だと思い保護したらしい。
確かに人間よりかなり背は低いし、オッドアイ、そして球体関節。

「その人間の興味を引けてよかったじゃない」

「そうだね。今は感謝してるよ・・・吉良さんって言うんだけどね?」

「あら、時間切れよぉ・・・着いたわ」

水銀燈はこの場所をよく知っている。
この場所に何度も襲撃した事があるから。

桜田、と掲げてあった。




52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:15:55.68 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

翠星石がトタトタと走る。
クッキーを食べたい衝動を抑え、インターホーンを手に取った。

「はいはーい、何処の何奴ですか?」

カメラには男が一人映っている。
手に荷物を持っている、宅配便がな何かだろう。

「ゲホッ・・・えー、○○デパートから桜田さんにお届け物です」

――――え?
翠星石は自分の耳を疑った。
今の声、確かにガラガラ声で聞き取りづらかったけれど・・・

蒼星石の声にそっくりだった。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:20:49.09 ID:50oUlGoQ0
「え、あ・・・!?」

上手く言葉にできない。
確かに人間の男がカメラに映ってる。
でも声は蒼星石の声。

「そ、蒼星石・・・ですか?」

聞かずには、いられなかった。

「え?知ってるのなら話は早いね。ちょっと上がりたいんだけどいいですか?」

「蒼星石!蒼星石が玄関に!!」

翠星石は玄関に駆けつける。
真紅は目を丸くした。




58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:24:47.93 ID:50oUlGoQ0
「翠星石、待ちなさい!!」

構うものかと翠星石は玄関に手をかける。
今の声は蒼星石だ。
何十年何百年一緒に居たのだ。間違えるはずが無い。

「翠星石、どうしたのー!?」

「おい、お前が玄関を開けたら大事になるだろう!」

3人は翠星石を追いかける。
蒼星石がどうとか、翠星石は言った。

「翠星石、どうしたの・・・!?」




60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:29:32.94 ID:50oUlGoQ0
真紅は見た。
玄関に立つ蒼星石の姿を。
そして震える翠星石の姿を。

「あ・・・どうも始めまして」

蒼星石が何を言ってるのか、良く分からなかった。
始めまして、というのは挨拶のはずだ。


少なくとも翠星石の喉元にナイフを突きつけて放つ言葉ではない、そう思った。



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:34:44.23 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「あの・・・紅茶、飲む?」

たまらなくなったジュンが思わず聞く。

「お構いなく。幽霊は飲み食いできないんですよ」

「あ、そう」

「で、蒼星石・・・貴女は生前の記憶が無いといったわね?」

「はい。えーと・・・真紅さん」

「何だかむず痒いわね。呼び捨てで構わないわ」

「ヒナも構わないのよー」



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:40:19.02 ID:50oUlGoQ0
「じゃあ遠慮なく。僕はいつ、どうやって死んだかすら思い出せないんだ」

真紅は考える。
ドールズに死の観念は無い。
遠い所に行ってしまうだけだと翠星石に論したばかりだ。
自分の認識が甘かっただけなのか、蒼星石が特殊なのか・・・

「蒼星石、翠星石の事も分からないですか・・・?」

「・・・ゴメンね。あ、ナイフはもう突きつけないよ」

「そうしてもらえるとありがたいですぅ」

翠星石は少しビクビクしている。
一番の仲良しだった妹から刺されそうになったのだ。当然だ。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:47:10.49 ID:50oUlGoQ0
「蒼星石はどうやってここまで来たの?」

「そうです!記憶が無いのに翠星石達の事を知ってるのはおかしいです!」

「ある人から教えてもらったんだ」

「誰からだ?」

「それは言えない。約束なんだ」

水銀燈に口止めをされていた。
自分の名前が出ることは望んでいないという。
水銀燈なりの配慮なのだろうか?

(まぁ、この場所と私たちの事を知ってるのは水銀燈くらいね)

真紅は口にしなかった。




67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:51:20.46 ID:50oUlGoQ0
蒼星石の記憶は綺麗さっぱり消えてるようだった。
生まれたての赤ん坊じゃないけれど、性格や言動も微妙に違う。
翠星石はずっと違和感を感じていた。
目の前の蒼星石は蒼星石なのだろうか?

翠星石以外にはあまり笑わない。
少し刺々しい言動。
他にも探せばもっとあるはずだ。それが蒼星石。

じゃあ、目の前の蒼星石は・・・?

「僕は翠星石と双子の姉妹なんだ。へー・・・」

「・・・何ですか??」



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 16:56:25.28 ID:50oUlGoQ0
「姉妹・・・言われてみればそんな気がするよ」

「どういう事かしら?」

「一度だけ、夢を見たんだ」

「・・・夢?」

「幽霊になってから一度だけね。・・・そうそう、翠星石みたいな娘と一緒だった」

「樹に生っているリンゴを翠星石みたいな娘・・・多分翠星石だね。翠星石が取ろうとしてるんだ」

真紅は思い出す。
翠星石の夢で見た、二人分の記憶の扉。




70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:00:29.77 ID:50oUlGoQ0
「カバンを二つ重ねて、それに翠星石が乗って、リンゴを二つもぎ取って・・・」

「それで、どこまで覚えてますか!?」

「うーん・・・もっと見た気がするんだけどなぁ、ここまでしか思い出せないんだ」

「そう、ですか・・・」

翠星石は項垂れる。
本当に蒼星石は記憶は無いのだと実感した。
けれど、今の夢の内容。もしかしたら・・・

「今の蒼星石の夢は過去の出来事です。翠星石もよーく覚えてるですよ」

「本当かい?ゴメンね、思い出せなくて・・・」

「ふふ、構わないですよ」




73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:06:26.46 ID:50oUlGoQ0
「・・・あのぅ」

「ん?どうしたんだ?」

翠星石がボソッと喋る

「蒼星石と・・・二人きりで話をさせて下さいです」

「私たちは構わないけれど・・・蒼星石、貴女は良いの?」

「うん。僕ももう少し翠星石とゆっくり話がしたいからね」

翠星石が嬉しそうな顔で蒼星石を見る。
あんな顔されて誰がダメだと言うのだろうか。

「じゃあ僕達は二階に行くよ。何かあったら呼んでくれ」

ここは気をきかせないとな、とジュンは思った。




76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:10:55.49 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「驚いたな。ローゼンメイデンも幽霊になっちゃうのか」

「そんなはずは無いのだわ・・・と言いたいけれど、あの蒼星石は見てしまった以上はね」

「うー、翠星石可哀想なのよ・・・」

雛苺が少し涙ぐむ。
雛苺は優しいのだ。それはジュンも真紅も知っていた。

「そうね、でも翠星石はとても喜んでると思うわよ?」

「うゆ?どうして??」




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:15:38.88 ID:50oUlGoQ0
「蒼星石とこうしてまた話ができる。他に理由なんかいらないわ」

「でも、今までの蒼星石とは違うのよ?」

「さっきの夢の内容を聞いたでしょう?心の深い所で覚えてるのよ」

「いつかは思い出すだろうってこと。分かるか?」

「うん・・・」

「後は翠星石次第ね。私たちが出る幕じゃないわよ」

そう呟く真紅の後姿は、少しだけ寂しそうだった。



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:21:21.64 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「蒼星石、貴女は自分の記憶を取り戻したいんですよね?」

「うん。出来ることなら」

これは本当だ。
記憶が無いよりあった方が良いに決まってる。

「少し試してみたいことがあるんですけど・・・いいですか?」

「うん。むしろお願いします」

「分かったですぅ、スィドリーム!」

翠星石の傍に緑色の物体が現れる。
翠星石の人工精霊スィドリームだ。




86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:27:24.66 ID:50oUlGoQ0
蒼星石の仕事は、(主に)殺し屋の補佐だ。
とても綺麗な世界とは言い難い。

それ故、目の前の幻想的な光景に心を奪われる。

「綺麗だ・・・」

「そりゃそうです。蒼星石だって人工精霊を持ってたじゃないですか」

「本当かい!?」

「ええ。今は・・・他のヤツに奪われちゃってますけど?」

水銀燈の名前は出さなかった。
出したところで蒼星石はもうアリスゲームから脱落した身。
こちら側に首を突っ込む理由は無いのだから。




90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:33:19.27 ID:50oUlGoQ0
「残念だなぁ・・・僕も欲しいよ」

「まぁまぁ、今はそんな事より蒼星石の夢の扉を開くことが先決です」

「夢の扉?」

「はいです!こうするですぅ!!」

スィドリームが激しく瞬く。
目を開けてられない。

「う、うわあああああ!!」

蒼星石はたまらず叫んだ。




93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:36:40.55 ID:50oUlGoQ0
「・・・」

自分の叫び声の反響すら聞こえない。
部屋のなかだから響きはするはずだけど・・・

蒼星石は目を開けた。

闇。
いや、闇というよりも、黒と言った方が正しいのだろうか。

ひどく殺風景。面白いものなど何もなかった。

「翠星石ー・・・?」

答えは帰ってこない。
怖い。蒼星石は恐怖した。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:41:06.46 ID:50oUlGoQ0
ふと思い出す。

自分の一番古い記憶。
恐らく死んでから恩人に出会うまでの記憶。

人気のない道端で、毎日震えていた。

記憶がない、分かるのは自分の名前だけ。
それと・・・自分が幽霊だという実感だけ。

いつも泣いていた。
どうして自分はこう言うことになってしまったのだろうか・・・と。
自分で自分を呪っていた。

思い出してたらまた涙が出てきた。

「翠星石・・・翠星石・・・!」

また、涙が出てきた。



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:46:06.34 ID:50oUlGoQ0
「なぁぁんですかここは!何にも見えないじゃないですか!!」

不覚にも蒼星石を見失った。
初めてだった。こんな真っ暗の夢の世界は。

「蒼星石、一体どんな生活をしてるんですか!?」

夢の世界は、その人物に関わるものが反映されやすい。
つまり、蒼星石は・・・

「蒼星石ー!蒼星石ーーー!!」

これだけは分かる。
蒼星石は、絶望している。

「翠星石・・・!?」

声が聞こえた。




98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:52:11.82 ID:50oUlGoQ0
「蒼星石!?やっと見つけたですぅ・・・」

「翠星石!!」

蒼星石が翠星石に抱きつく。
よっぽど怖かったのだろう。

「うっ・・・うぅっ・・・!」

あれ?そういや幽霊だから翠星石には触れられないんじゃあ・・・翠星石は思う。

しかし、今はそんなことなどどうでも言い。
恐る恐る、抱きしめる。

「・・・何があったかは知らないですけど、やっぱり蒼星石は甘えんぼですねぇ」

暫く、蒼星石のすすり泣く声だけが聞こえた。




99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 17:59:35.23 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「落ち着いたですか?」

「うん・・・みっともない所を見せてゴメンね?」

「気にすんなです。むしろ嬉しかったですよ」

嬉しい?
勝手に一人で泣いておいて挙句の果てに抱きついたのに?

「蒼星石はやっぱり蒼星石なんだなぁって思ったんです。記憶を失っても、蒼星石は蒼星石です」

「・・・ありがとう。そういって貰えると、勇気がわいてくるよ」

「気にするなですぅ。じゃ、行くですよ?」

「何処に?」

「決まってるです。二人の記憶の扉ですぅ!」




102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:04:30.79 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

薄暗い道をひたすらまっすぐ進む。
凄い、僕一人なら進むことなんかできないのに・・・
翠星石と手を繋いでると、何も怖くない。

蒼星石は自分自身に驚いていた。
この僅かな期間に、翠星石との絆をほんの少しだけ築きあげたことを。

「もともと仲良しだったんだから当然ですぅ」

へぇ、と相槌を打ちながら前へと進む。

そして、目の前に大きな扉が一つ、姿を表した。

「ようやく着いたですぅ」

「この扉は・・・?」




103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:10:05.14 ID:50oUlGoQ0
「これは、翠星石と蒼星石の記憶の扉ですぅ」

「記憶の扉?」

「ですです。これまでの二人の記憶を客観的に見ることの出来る扉なんです」

「便利だね。・・・でも、二人の記憶っておかしくない?」

記憶は本来二人で共有することはありえないはずだ。
少なくとも蒼星石はそう思った。

「二人は、いつも一緒だったから・・・だから扉も一つなんです」

ギィ、と扉がひとりでに開く。
何処かで、誰かの笑い声が聞こえた。
クックック・・・という、何か企んでるような笑い方。

蒼星石は少しだけ、その笑い声に嫌悪感を抱いた。




105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:16:24.35 ID:50oUlGoQ0
扉の先には・・・翠星石と蒼星石が二人で座っていた。
夢で見たリンゴの樹。二人で寄り添うように・・・

見ればわかる。とてもいい天気だ。

「・・・やっぱり、僕の事だったんだ」

【アリスゲームが始まったら・・・】

【蒼星石のローザミスティカを・・・】

【本当の僕は・・・】

何も喋らずに、二人は記憶を見続けた。

【ずーっとずーっと一緒ですよ・・・】

何故だか、また泣けてきた。




107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:21:54.50 ID:50oUlGoQ0
「・・・ね?二人は仲良しだったんですよ?」

「・・・うん」

場面が切り替わる。
切り替わる。切り替わる。
時代を越え、世代を越える。
薔薇乙女の記憶が、蘇る。

蒼星石は食い入る様に記憶に見入った。

「・・・水銀燈!!」

蒼星石だってアリスゲームを繰り返している。
自分と戦ってる相手・・・
さっきまで一緒に話していた水銀燈だった。




108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:27:44.49 ID:50oUlGoQ0
「水銀燈を知ってるんですか!?」

「うん・・・水銀燈に君の事を教えてもらったんだ」

そうですか、とだけ翠星石は呟く。
何を考えてるのかは分からないけれど、水銀燈に感謝すべきだろうか?

「成程、水銀燈をご存知で!」

誰かの声で翠星石は考えることをやめる。
聞きなれた声。よく知ってる声。

「何の用ですか・・・ラプラスの魔」

目の前に、兎か人かよく分からないものが現れる。
蒼星石はおもわず声をあげてしまった。




110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:33:15.14 ID:50oUlGoQ0
「これはこれは、せっかくですから場面を飛ばして差し上げましょう」

ラプラスの魔がパチンと指を鳴らす。
すると扉に映し出されていた場面がパッと切り替わった。

「貴女の死に様ですよ?何が原因でこうなったか・・・知りたいですよね?」

「!?」

言いたいことだけ言うと、ラプラスの魔は音も立てずに消えてしまった。

「何だったんだろう・・・?」

「・・・」

翠星石は暗い顔をしていた。
妹が死ぬ場面など見たくないはずだ。

蒼星石は、何と声をかければいいのか分からなかった。



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:40:54.20 ID:50oUlGoQ0
声をかける暇もなく、その場面は映し出される。

抱きかかえられる蒼星石。
泣きながら語りかける翠星石。

自分の胸の上でふわふわ浮く宝石のようなもの。

あれがさっきから話に出ているローザミスティカか、と蒼星石は気づく。

次の瞬間・・・
水銀燈に奪われる。

【もらっちゃった、もらっちゃったぁ・・・!】

そこで、記憶の扉は閉じられた。

「・・・成程」

言葉が、見つからない。。




113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:44:24.15 ID:50oUlGoQ0
握っていた手が震える。
目をやると、翠星石が泣いていた。

「う・・・うえぇ・・・」

「す、翠星石!?」

「ごめんなさいです、ごめんなさいです・・・!」

翠星石は、ひたすら謝る。

「蒼星石にずっと謝りたかったんです・・・」

あの時、蒼星石を止めておけば。
あの時、蒼星石のローザミスティカを先に手にしておけば。
あの時、刺し違える覚悟で水銀燈から奪い返せば。

こんな事にはならない筈だった。



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 18:54:17.62 ID:50oUlGoQ0
「蒼星石・・・翠星石は、翠星石は・・・!」

「翠星石」

蒼星石がそうしてもらったように、今度は蒼星石が翠星石を抱きしめる。

「君が後悔する必要はないじゃないか」

「でも、でも・・・」

「僕は何も怒ってないよ、君にも、水銀燈にも」

「・・・?」

蒼星石は翠星石を抱きしめたまま、子供をあやすように続ける。



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 19:04:15.15 ID:50oUlGoQ0
「いいかい?この世に存在する以上、やがて死ぬんだ。
いや、どうやら僕は人形らしいから・・・死んでるのとはわけが違うのかも知れないけれどね。
僕はたまたまああいう死に方をしてしまっただけだよ」

「・・・水銀燈は、蒼星石が復活できるチャンスを奪ったんですよ?」

「それがアリスゲームなんでしょ?水銀燈も僕が憎くてああしたわけじゃないよ」

「それに・・・さっき言ったでしょ?水銀燈と話したって」

「・・・はい」

「今やっと分かった。少し申し訳なさそうな顔で話してたんだよ」

「あの水銀燈がですか・・・?」

信じられない、といった顔で翠星石は蒼星石を見る。




117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 19:11:10.65 ID:50oUlGoQ0
「彼女も負い目を感じてたんじゃないかな?」

「・・・そうですか」

翠星石は泣き止んだのか、蒼星石の顔をジッと見る。

「ま、こうしてまた僕と会えるんだし、いいじゃないか」

「・・・ふふっ、そうかもしれませんね」

翠星石は、にっこりと笑っていた。
それを見て蒼星石も思わず笑ってしまう。

「君は泣き顔より、笑った顔のほ方が似合ってるよ?」

「そんなの分かってますよーだ!!」




125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 19:51:47.03 ID:50oUlGoQ0
扉がふっときえる。
もうその場に必要がないと察したのかは分からない。

「・・・光が・・・!」

蒼星石が呟く。
空から光が差し込み、暗闇の世界が明るく照らされる。

「蒼星石の心が・・・晴れている証拠です」

全く気がつかなかった。
今までの暗闇が嘘のようだ。

二人は、緑で溢れる泉の真ん中に居た。

「これが・・・僕の心?」

「まぁ簡単に言えば、ですけど?」




128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 19:59:48.89 ID:50oUlGoQ0
蒼星石の心はこれまでで一番晴れやかになっていた。
死んでからここまで明るい気分にはなれなかった。
恩人に助けられた、いや、それ以上だと蒼星石は感じた。

「記憶は戻らなかったけれど、何も得られなかったワケじゃない」

「翠星石もです。こうやってまた蒼星石と出会えたことに感謝してるです」

「・・・僕だって、君に出会えたことを誇りに思う」

「記憶はいつか蘇りますよ。翠星石が言うんだから間違いありません」

「ふふっ、すごい自信じゃないか」

「あ!?信じてないですねー!!」

ありがとう翠星石。このちっぽけな幽霊は救われたよ。




132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:23:09.66 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「行っちゃうんですね・・・」

翠星石が残念そうに玄関に立つ蒼星石を見る。
蒼星石だって行きたくはない。

「うん。でもこれから仕事なんだ」

「残念ね。・・・で、どうだったのかしら?」

「うゆ・・・記憶は戻らなかったの?」

真紅も雛苺も、そしてジュンもそれが気がかりだった。

「残念だけど戻らなかったよ」

「・・・そうか」




134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:28:21.03 ID:50oUlGoQ0
でもね、と蒼星石が続ける。

「そんなに焦っても仕方がないと思うんだ。僕が言えたものじゃないけれどね」

「・・・翠星石は、いいのか?」

「いいんですよジュン。だって蒼星石は翠星石とずーっと一緒なんですよ?」

「そういう事。時間はたっぷりあるんだ、この仕事が終わったらまた会いにくるよ」

「はいです。だからさっさと仕事を片付けるです!」

怖いなぁ、と蒼星石が呟く。
一歩外に出て、最後にじっと翠星石を見つめる。

「な、なんですか!」

「・・・行ってきます」

そう言って、蒼星石は扉を閉じた。




135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:32:30.16 ID:50oUlGoQ0
暫く翠星石は誰もいない玄関を眺めていた。
ジュンが心配そうに顔を覗く。

翠星石は、笑っていた。

「さ、また紅茶を淹れるですよジュン!」

「ああ、分かったよ」

二人でリビングに向かう。
真紅と雛苺は先に戻ってくんくんを観ている。

椅子に座り、翠星石ほふと外を見た。

「ジュン」

「何だ?」

「・・・今日はいい天気ですねぇ」

そう言わずには、居られなかった。




137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:37:50.55 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

蒼星石が街に向かう。
もう桜田家が見えない位置までくると、上空から誰かが降りてきた。

「水銀燈・・・」

「はぁい、蒼星石」

自分を間接的にとはいえ、殺した人物。
しかし蒼星石はこれっぽっちも怒ってはいなかった。

「ダメだったよ。記憶は戻らなかった」

蒼星石は少し残念そうに語る。
自然と水銀燈の顔も曇る。

「・・・残念だったわねぇ」




140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:43:35.53 ID:50oUlGoQ0
「でも、記憶の扉で客観的に見ることは出来たよ」

「・・・それじゃあ、私が何をしたのかも?」

「うん。君の中には、僕のローザミスティカが在るんでしょ?」

「そこまで知ってるのねぇ・・・」

水銀燈は何て言えばいいのか分からなかった。
いつもの用に強気で行くのか、それとも平謝りすればいいのか?

「私はね、蒼星石。正しいと思ってやったのよ」

「・・・」

「貴女には悪いと思ってるわよ。本当よ?でもこれが私達ローゼンメイデン「水銀燈」」

そこまで言うと、蒼星石が水銀燈の言葉を遮った。



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:53:15.10 ID:50oUlGoQ0
「君が負い目を感じる必要はまったくない」

「え?」

予想外の言葉に間抜けな声が漏れる。
真紅が居たら馬鹿にされてただろう。

「生前の僕がああなる道を選んだんだ。君は単なる漁夫の利を狙っただけだろう?」

「それは・・・そうかもしれないけれど・・・」

「君はアリスになるためにそういう行動をとった。ただ、それだけ」

蒼星石は、淡々と続ける。

「翠星石には気の毒かもしれないけれどね。ということで、僕は気にしてないよ」



145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 20:59:01.55 ID:50oUlGoQ0
「でも、貴女は死んでしまったのよ?」

「死んではしまったけれど、僕はここに居る」

蒼星石の一言一言が逞しい。
この瞬間、水銀燈は蒼星石を尊敬していた。

「むしろ感謝してるんだよ?君がいなかったら翠星石達に再び出会うことはなかった」

ありがとう。
水銀燈を見据えて蒼星石はそう述べた。

「・・・強いわね。私なんかより、ずっと」

「いえいえ、そんなそんな!」

蒼星石が大げさに手を横に降る。
なんだか挙動が可笑しくて水銀燈はつい笑ってしまう。




147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:08:30.17 ID:50oUlGoQ0
「あ、僕はこれから仕事だからさ。ここでお別れだね」

もう少し歩けば街に出る。
水銀燈はこれ以上着いていかないことにした。

「ええ。・・・また、ゆっくりお話しましょう?」

水銀燈は心からそう願った。
少なくとも、水銀燈は蒼星石に救われた。
幽霊に救われる、というのも可笑しい話だけれど。

そんなことを考えてると、また少し笑ってしまう。
馬鹿にする笑いじゃない、にやけてしまうような、そんな笑い。

「じゃあね、また会おう」

蒼星石は、人ごみのなかに消えて行った。
水銀燈はそれを見届け、姿が見えなくなると空を眺めた。

「ふふ、いい天気ねぇ」




150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:16:49.07 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

また、この本屋に来た。
朝に来たばっかりなのになぁ、と思う。
でもここが待ち合わせ場所なんだ。

店に入ろうと入り口を見る。

「お」

一人の男が蒼星石を見る。
端から見たら中々奇抜な格好をしているが周囲は気にしない。

それもそのはずだ。その男は幽霊なのだから。

「送れてすみません、吉良さん」

「いや、私も今着いた所なんだ。気にしないでくれ」

彼の名前は吉良吉影。
蒼星石を救ってくれた恩人だ。




151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:22:04.63 ID:50oUlGoQ0
――――・・・

「今回の仕事の標的はコイツだ」

新聞の記事のコピーを渡される。
15年前の児童殺人事件の記事だ。

「今夜0時時効成立・・・間に合うんですか?」

「間に合うも何も・・・殺すんだから関係ないだろ?」

蒼星石は少し考えて

「そうですね」

とだけ答えた。




154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:28:36.21 ID:50oUlGoQ0
「そうそう、この辺にちょっと感じの悪い馬鹿も標的に入ってるんだよ」

「はい?どんな人ですか?」

「それは後日でいいらしいんだけど・・・監禁や強姦でかなり女性から恨みを買ってるみたいだな」

「へぇ、腹が立ちますね」

「包丁で一突きにして殺してほしいだと。全く、女は怖いねぇ」

吉良は腫れ物を見るかのような目で蒼星石を見る。

「僕は関係ないじゃないですか!!」

「冗談だよ」

ニヤニヤしながら一瞥される。
この人のこういう所がダメなんだよなぁ、としみじみ思う。




155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:33:16.56 ID:50oUlGoQ0
でも、そんなことも今日は気にならない。

「吉良さん、前に言いましたよね?」

「うん?何をだい?」

「自分だけの結界がある場所をいつか見つけたい、と」

「・・・ああ。この仕事が終わったら探してみようと思うんだ」

「僕は、見つけちゃいました」

「マジか!?」

珍しく吉良が叫ぶ。
先を越されて余程悔しかったのか。




157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:38:18.99 ID:50oUlGoQ0
「僕の双子の妹が見つかったんです」

吉良がはぁ、とため息をつく。

「じゃあ記憶が戻ったのか?」

「いえ、記憶は戻りませんでした」

「・・・そうか、そりゃあ残念」

「吉良さん、記憶は重要じゃありませんよ」

「そうだな。私もそれには賛成だ」

「心の拠り所がある。これだけで世界は変わるんです」

「成程、私もそういう所が欲しいものだな」




160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:45:09.44 ID:50oUlGoQ0
「いつか見つかりますよ。時間はたっぷり有るんですから」

「そうだな、私たちは幽霊だからな」

「・・・行きましょうか、早くこの仕事を終わらせて妹に会いにいかなきゃ」

「ああ。住所は分かってるから楽だな。行こう」

それだけを話して、二人は本屋を後にした。
幽霊になっても立派に存在し続ける蒼星石と吉良吉影。

ただ、蒼星石はいつもよりも勇ましく、前へと進んで行った。

夢の世界のあの晴れやかな景色を思い出し、そのまま空を見た。
どちらも変わらない、綺麗な青空だった。

「いい天気だなぁ」

誰にも聞こえないくらいの声で、呟いた。

おしまい




161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:46:35.74 ID:50oUlGoQ0
うわああああああああああ!!
ちょっとまって全然気がつかなかった!!

妹じゃなくて姉じゃん!!

うわあああああああああああアナザワンバイツァダスヘッヘッ!!!!




162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:46:41.39 ID:/71QQDEXP
乙1



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:49:42.60 ID:Dc7tb4pQO
>>161
狼狽っぷりに萌えた



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/03(日) 21:50:05.55 ID:50oUlGoQ0
あと>>154また来るですで殺されたやつのつもり。
あっちも面白かったよなぁ・・・タイミングが悪かったぜ。

何とか終わった。
蒼星石がもし幽霊になったら・・・っていう話。
デッドマンズQ読めば幸せになれるかも?

読んでくださった方乙っした!




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この記事へのコメント
しかしジョジョとローゼンって実に馴染むなあ
2009/06/19(金) 20:41:26 | No.2566 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
こういう救いのある話は結構好みだ。
幽霊というのもありそうでなかったかな。人形だし。
それと控えめながらピンクダークの少年とか、マニアックなところからねたを持ってくるのはなかなかw
というか題材自体がマニアックかw
2009/06/19(金) 23:32:11 | No.2569 |      | #JalddpaA[ 編集]
これは面白かった
2009/06/20(土) 16:06:57 | No.2573 | 戯言ヴぃp | #-[ 編集]
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